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ぺらり、ぺらりとページを捲る。
目で文字を追ってから、ぱたんと本を閉じ表紙を指でなぞった。
“聖女”という国を豊かに導いてくれる存在がいることを初めて知った。
前に現れたのは50年ほど前らしい。
聖女と将来の契りを結んだ国の王子は、栄える国の安寧と幸せな未来が約束されるのだと言う。
でもそんな事自分には関係ないと、興味を失いベッドの中にもぐりこんだ。
だって、
「何にも惹かれないんだもの…」
毎日が色あせた世界の繰り返しのようで、王子様との恋も、生まれるか分からない聖女様への憧憬も、まるで何にも興味を持てなかった。
持っていた本を本棚に直すと、スカート翻してカーテンをあけた。
薄暗かった部屋の中に光が射しこんでいく。
「…何か胸を熱くする、そんなものがないかしら…」
小さなため息をつき、可愛らしい特徴的なタレ目をまばたきさせて、ラズベリーの色をした自分の髪の毛を指でいじった。
―そう…心を躍らせるような、そんな何かに出会うことを夢見て、
“レイチェル・ドルレット”伯爵令嬢は今日も興味を持てない読書に明け暮れていた。
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