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大チャンス到来

「悲劇、勇者の人生。第1部完」


そう言って、俺は長い長い自分語りを締めくくった。


「第二部の配信予定は?」


「まださすがに決まってない。これから次第かな」


「ファン一号として、末永くお待ちしております」


ずっと話を聞いていてくれた彼女が深々と頭を下げる。


「俺がアオイに負けて、勇者が変わったって話は明日にでも国王からあるだろうな」


「勇者が変わりますーなんて、そんな簡単に受け入れられますかね?」


彼女が言いたいことはわかる。・・・が。


「簡単さ。誰が勇者かなんて、正直どうでもいいんだよ。大事なのさ勇者が本当に世界を救ってくれるのかどうかだけだ」


俺に求められていた役割は結局その一つだ。


その一つが守られるのなら、だれが勇者でも変わらない。この世界の全員がそう思っているだろう。・・・もちろん、同じパーティだった3人も。


・・・だった、か。その言い方を実感するだけで少し悲しくなる自分がいる。


「そりゃそうかもしれないけどさ、なーんか釈然としないよねー」


「・・・同情してくれるのか?」


「そんなんじゃないよ、同情して上げれるほど、君とは親しくないんだし。・・・でもさ、君は『アオイ』って人にムカついたりしないの?話を聞く限りそうとう嫌なヤツっぽいよ」


「ムカついてたとしても何もできないよ。俺はあいつに負けたんだから」


「・・・わからないね、男の人って」


彼女はグラスに口をつけ、フッと息を吐く。


「それで、君はこれからどうすんのさ」


「あー・・・」


彼女の言葉に、少々思案する。


傷心のままここまでやってきたせいで、今後のことなんて一つも考えていなかった。


「取りあえずは、家を買わなきゃな」


これまでは国からの支援で、この国の宿ならすべて無料で利用することができたが、今後はそうもいかない。


「家って・・・『取りあえず』で買えるものでしたっけ・・・?」


「まぁあれです。一応は元勇者なのでお財布は潤っております」


高い買い物であることは間違いないが、まぁ何とかなるだろう。


「そのあとのことは・・・それこそ家でゆっくり考えるかな」


「何をするにも、明日になるよね」


彼女につられて窓の外を見る。すでに日は落ち、あたりは暗くなっていた。


あんなに長話をしていたんだから当然か。


「悪いな、長い時間突き合わせて」


「ぜーんぜん気にしないで。他人の不幸は蜜の味ってね」


「・・・愚痴を聞いてくれたいい人なのか、それともただのゲス女なのか、謎が残るな」


「いい女は謎が多いってね」


「ふふっ、そーかい」


笑みを零して席を立つ。完全に・・・とはもちろん言えないが、荒くれだった心は、多少マシになっていた。


「・・・どこに帰るの?」


「今日は普通に宿を借りるよ」


「あ、それならさ」


彼女は二人分のグラスを、取りやすいように端に移動させてから立ち上がる。


「今日は私の家に泊まっていきなよ、これも何かの縁だし。勇者様が寝るにはちょっと貧相かも知れないけどさ」


「元な、元。・・・いやいや、それはよくないだろ」


「なにー?元勇者さんは私にえっちなことする気なのー?」


彼女は自分の体を抱きしめて、目を細めニマニマと笑う。


「ばっ、違うよ!世間一般的にだなっ!!!」


「顔赤くなってるし。うしし、やっぱり勇者さんには冗談通じないなー」


なんだよなんだよからかいやがって。


こんなかわいい子に『私にえっちなことをー』なんて言われたら誰でも赤くなる。


そう、誰でもだ。俺だけじゃない。


もっと言えば、俺に女性とお付き合いした経験が全く無いせいでは断じてない。


「『爺に選ばれた勇者さん』が私に変なことするわけないってわかってるから、一晩くらい平気だよ。ほらほらー、いつまでも赤くなってないで行くよ?」


彼女は強引に腕を組み、歩き出すのだった。

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