いきなり過去編突入 終
端的に結果だけを述べると、俺は完敗だった。
無様にしりもちをついて、真の勇者様とやらを見上げる。
『本気でヤったのか?』・・・というシュトラの問いかけに対する俺の答えは沈黙だった。
半端な勇者である俺よりも神に選ばれたというアオイの方が・・・と。
そんなことを全く思っていなかっただなんて、そんな嘘は言わない。
しかし、全力で戦ったとしても恐らく結果はおんなじだった。
・・・まあ、内にどんな想いを秘めていたって変わらない。俺との決闘にアオイが勝った。真実はそれ一つだ。
国から支援を受けるのは、国王が認めた勇者はただ一人、アオイだけだ。
『これでいいの・・・?』
どこか不服そうな顔を向けてくるフェルンに、作り笑顔で答えた。
いいとか悪いとかではなく、これはただの結果だ。
やっぱり教会の爺さんはボケていて、俺に勇者としての運命なんてなかったんだ。
勇者だからと、世界を救うんだと、切り捨てて来たものすべてが無意味なんだ。
「あーやっぱ最強だわ、俺」
これまでのすべてが、踏みにじられる。
「ま、異世界転移ものはこうじゃないとな」
これからの全てが、奪われる。
「お前もそう思うだろ?フェルン」
アオイが馴れ馴れしく、フェルンの肩に腕を回す。
何も思わなかったわけではないが、ここで怒る資格が俺にはあるのだろうか。
俺は負けたんだから。
俺はアオイに・・・このパッとでの男に全部を奪われたんだから。
俺はもう、勇者じゃないんだから。
ーーー勇者じゃ、ない。
俺はもう勇者じゃない。俺は、俺は・・・
俺はいったい誰なんだ?
もう一度言おう。俺には名前がない。
「それじゃあ後のことは俺に任せて、隠居生活を送ってな」
こんな人生を左右する大切な場面ですら。
「バイバイ、『元』勇者さん?」
本当の名前を、呼んでもらえないのだから。
「勇者さん、これでお別れなんて・・・」
「おい大将。ほんとにこれでいいのかよ。アンタはオレたちを・・・」
二人の声を無視し、うつむいたまま部屋を出る。アオイの見下したような笑い声が背中に突き刺さった。
ーーーその日俺は、勇者でありながら、勇者パーティを追放されんだ。
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