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新しい世界

ー--俺には名前がない。


「それじゃあ後のことは俺に任せて、隠居生活を送ってな」


こんな人生を左右する大切な場面ですら。


「バイバイ、『元』勇者さん?」


本当の名前を、呼んでもらえないのだから。


ーーーその日俺は、勇者でありながら、勇者パーティを追放された。



俺に勇者なんて向いていない。こんな肩書、ただの重りだ。ずっと俺は、そんな風に思っていた。


・・・だけど、いざ追放されて初めて気づく気持ちがあった。


それは、寂しさだ。


勇者っていう肩書にではない。それは、おんなじパーティーだった皆に。


俺はフェルンも、シュトラも、そしてヴィルラドも。俺は彼らが何を考え、何を大切にして生きてるのかさえ知らないんだ。


・・・そんなことを考え、漠然とした『寂しさ』を持て余しているからこそ。


『ぜひ元勇者様に紹介したい商品があるんですよ』


そんなことを言う、怪しい男について行ってしまったんだろう。



男に連れてこられた場所は、薄暗い地下だった。部屋中に並んでいる檻には、奴隷と呼ばれる人たちがいた。


笑顔で『商品』の自慢をする男に、不快感を覚える。大した理由なんてない。ただ何となく気に食わないのだ。


同じ人間を商品だなんていうこの男も。それを受け入れてしまっている人たちも。


男はいまだに自慢を続けているが、俺の心は決まっていた。同じ人間を飼う趣味なんてない。


会話を断ち切り、地下から出ようとしたところで・・・。


俺は振り返り、足を進めた。


初めて来た場所だというのに。迷うことなく、何かに引き寄せられるように足が進む。


やがて、ある檻の前で立ち止まった。


その檻の中にはー--『運命』がいた。


「この人が・・・いいです」


膝を抱え、泣いている彼女から視線を外さないまま、俺はそういった。


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