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奴隷と主人

商人から買った少女を家に連れてくる。・・・買った。我ながら嫌な言い方だ。


家に来るまでの間、俺とこの少女の間に会話はなかった。それどころか、あの店の地下以来その声すら聴いていない。・・・この人も、自分の人生をたった数枚の金貨で買った男と仲良く話す気になんてならなかったのだろう。


・・・会話がないのは仕方ない。それよりも大変だったのは、やはりみんなの眼だ。


この人の服を買うために入ったお店でも、大分注目を集めてしまった。


つい先日勇者パーティを追放された男が女の子を引き連れて、女物の服や下着を買ったんだ。そりゃあいい話題の種だろう。


「ここが今日から君の家だ。・・・って偉そうに言ってるけど、俺も買ったばかりなんだけどさ」


彼女が緊張しないように微笑んで見せる。


・・・が彼女はクスリともしなかった。強張った表情のまま無言で家を見つめている。


そして、ようやく言い放った言葉は。


「・・・みすぼらしい。元とはいえ勇者のくせに、こんなボロッちい家に住んでるのね。あなたの格が知れるわ」


とても奴隷のものとは思えない罵声だった。


あっけにとられていた俺のことなんて全く意に介さず、我が物顔で家の中へと入っていく。家主であり、一応は彼女の主人である俺を差し置いて。


彼女は迷うことなくどんどんと進んでいき、リビングの椅子に腰を下ろした。


そしてバンバンとテーブルを叩き・・・


「なにボーっと突っ立ってるのよ、私はお腹がすいてるんだけど?」


驚いていた俺を睨みつけた。



女性への免疫がない俺があんな風に睨まれて断られるはずもなく、彼女の空腹を満たすためにいくつかの料理を作った。


・・・あれ?これって奴隷の仕事じゃね?なんて思考を何度も振り払って。


まぁいいか。もともと知らないところに連れてこられた彼女の緊張をほぐすため、今日は俺が料理を振る舞うつもりでさっき食材を買ってきたのだし。


俺が食卓に並べた料理は『振る舞う』なんて言い方ができるほど、豪勢ではないのだろう。どれもこれも、故郷の村で父親が作ってくれた料理だ。見た目なんて気にしていない、食えればそれでいいやくらいの漢の料理たち。


・・・それでも、心を込めて作った。これで彼女も少しくらい柔和な態度を・・・


「不味い」


そんな俺の思惑を、彼女はたった一言でぶち壊した。


「・・・とてもとても不味い。あなた、料理なんてしたことないんじゃないの?」


グサッ。彼女の言葉が俺の心に突き刺さる。確かに、俺はこれまで料理をする機会があまりなかった。


俺も料理を少し口に入れる。・・・確かにおいしいとは言えないが、不味って作った本人の前でいうほどだろうか。この女は俺に嫌われたいとでも思っているのか。


「あー不味い。とても、とーっても不味いわなによこれ。こんなの人間の食べ物じゃないわ」


彼女はそう愚痴りながらも、次々と料理を口に運んでいく。


「あの、そんなに不味いなら無理に食べなくてもいいんですけど・・・」


彼女の雰囲気に押され、思わず敬語で話しかけてしまう。主人の威厳なんてあったものじゃない。


パクパクパクパク。


彼女は俺の静止なんて聞かずに、不味い不味いと言いながらそれでも料理を食べ続けた。

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