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ゆめいろジャンピング  作者: 水平リイベ
9/15

えっ、また新メンバー加入?あの子に、あの子もめっちゃ意外

 ゆずる君が加入してちょうど一週間がたった土曜日の午後、集会所で私たちを待っていたキリンさんとトオルpの横には、またまた意外な子たち、一人はある意味ゆずる君よりもびっくりするような子が立っていた。

 

 まるでくまちゃんの耳のようなお団子ヘアーで、もちろん学校指定ではないラメラメのド派手なぴっちりジャージ姿のその子は、この場所でひと月前に大立ち回りをしたママにオーディションから連れ出された宮本きらりちゃんその人だった。


 きらりちゃんは満面の笑顔でジャージの袖をいじりながら、聞かれてもいない加入の理由をぺらぺらとしゃべりだす。


「あのねー、きらりあれから毎日ママにお願いしていたの、どうしてもアイドルがやりたいって、キリンさんの振り付けでダンスまで踊れるって知ってますますやりたくなったから、朝起きてもおはようの前にやりたいって言って、朝ご飯のときも、ただいまを言う前にも、夕ご飯のときも、お風呂の前後にも、寝る前にも、ママがネットで海外ドラマの「愛のめぐり会ったり、会わなかったり」を観てるときも、ずーっとずーっとお願いしてたら昨日やっとお許しが出たんだ!」


 あー、そりゃさしものきらりちゃんママも根負けするわ……と私たち三人が苦笑いをして顔を見合わせ合っていると、きらりちゃんの横に立っているもう一人の子の肩をキリンさんがポンポンと叩いた。


「あ、あの、恩田ゆりあです、よろしくお願い……」


 語尾が聞き取れないほどのめっちゃ小さな声で挨拶したゆりあちゃんは、ゆずる君以上にすごくおとなしい子で、休み時間にはかかさず図書室にいる学校一の読書家だ。

 きらりちゃんとは水と油のような気もするけど、この二人はなぜかウマが合うようで、学校でも休日でもよくいっしょにいるところを見かけたりする。


物静かで派手なことには全く興味のなさそうなゆりあちゃんがグループに加入する気になるなんて意外過ぎるけど、大方一人で後から入るのに気おくれしたきらりちゃんが、なんだかんだ言って引っ張って来たんだろう。

 おとなしいゆりあちゃんに、あのきらりちゃんの誘いが断れるはずがないのだ。

 勝手に納得して新メンバーを受け入れた私たちは、その後のレッスンでもっと意外な光景を目にすることになった。


壁にもたれかかってぽろりんぽろりんとギターをつま弾くトオルpのかたわらで、キリンさんのはげしいメニューにも全く息を切らせず誰よりもきびきびとついていくゆりあちゃん、そしてレッスンがスタートして初めてとなるステップレッスンで私たちが口をあんぐり開けて目を奪われてしまったのは、ゆりあちゃんのキレッキレの足さばき、その軽やかな身のこなしだったんだ。

めったに褒めないキリンさんですら、「あら、ひよこにしては、なかなかいいじゃない」だなんて口元をゆるませていたし、とにかくすごかったの一言に尽きるんだ。


ぜぇぜぇと息を切らしながらよれよれへろへろステップをなんとかこなしたきらりちゃんは、まるで自分のことのようにえへんと胸を張る。


「ゆりあはねー、ただの本好きな地味地味地味子なんかじゃないんだよー、ゆりあママは結婚してこっちに来るまでずっとモダンダンスのインストラクターをやっていたんだからね、だからゆりあはゆりあママからダンスの英才教育されていたんだし、私もまだ幼稚園に行ってたすごくちっちゃいときからいっしょにならっていたんだからねっ!」


 それにしては、アンタのへろへろステップは一体……という言葉を私たち三人の古株メンバーはぐっと飲みこみ、ゆりあちゃんの隠されていためっちゃすごいそれこそきらりと光る才能にひたすら感心しきりだったのだ。


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