のら猫 ノラ
うららかな夕暮れのひととき、夕刊を取りに外に出た。のら猫ノラがゴミ箱をあさっていた。
『こら、だめだよ』ノラは私の声におどろき、ふり返り逃げたが、どうしてもゴミの中に入っている魚が欲しいらしい。
まるで『ねぇ、いいでしょう?』と、言わぬばかりに、私を見て『ニャーニャー』と、甘えた声で泣きながら、身体は少しずつゴミの方へ近づいていた。
私はノラに『あまり散らかさないでよ』っと言い、家の中に入った。
次の日、朝刊を取りに出た。またもや、あのノラが居た。でも、昨日とはうって変わって緊張感が漂っていた。真剣に何かを見ている。
『ノラ、何してるの?』っと声をかけた。『ニャーゴ』とひと泣き、まるで『ちょっと静かにして』と言わんばかりに振り向き、また直ぐに何かを見る。
ノラの視線をおってみると、、、
・・・わかった・・・トカゲだ。結局、逃げられ罰悪そうにすごすごと何処かへ行った。
いつも、おすまし顔で通り過ぎるのら猫ノラにも、こんなにも色々な表情があるのかと思ったら、何となくノラも、愛おしく思えてきた。