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第二話 めいどからの言葉。

水曜日の夜のことである。


麦彦はベッドの中で目を覚ました。


そして、自分を覗き込む多くの顔を目にした。闇の中、顔は青白く光っている。自分の妻、愛妾、両親、祖父母、伯父、親戚――全て死んだ者だ。中には、餓鬼や(くだん)、皮膚をはがされて舌に釘を打ちつけられた者もいる。


その壮絶な情景を目の前にして、麦彦は動けなかった。全身が氷漬けにされている。声も上げられない。ただ、冷たいものが背筋を這ってゆく。


死者たちが次々と口を開いた。


――麦彦、お前は一体なにをしておるんだ。


――この学園を任せたはずなのに、悪ふざけばかりではないか。


――せっかく孫のことを頼んだのに、何たる有様か。


――お前ももうじきこっちへ来るぞ。


――来世での裁きは娑婆ほど甘くはないぞ。


麦彦は震えようとした。しかし、震えることさえできない。目も閉じられない。そんな麦彦へと、死者たちは言葉を浴びせかける。先祖の顔が――生皮のはがされた顔が――目の前に迫った。


――たっ、助けてくれえぇっ!


心の中で絶叫した時、麦彦は目を覚ました。


うっすらと朝陽で明るくなった天井。しかし、先祖の姿はない。外からは、ざあざあと雨音が聞こえる。試しに指先へ力を入れた――難なく動く。身体中が動く。しかし、全身は汗で濡れている。


――何だ、夢か。


上半身を起こす。


――人は死んだら無じゃ。先祖なんぞ怖くないわ。


枕元のハンドベルを鳴らした。


しばらくして、メイドたちが這入ってくる。


麦彦を前に、メイドは怪訝な顔をした。


「旦那様、お身体の調子はよろしゅうございますか?」


「はあ――何のことじゃ?」


「いえ、今日はお顔の様子が優れないように存じますが。」


麦彦は首を捻り、ベッドから降りた。


そして、鏡の前に立つ。


自分の顔は死人のように白くなっており、頬はそげ落ちていた。

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