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第一話 二十五人の消えたパンツ

翌日・月曜日の三時間目の授業は美術であった。


クラスメイト達は美術室へ集まり、撮ってきた写真を元にそれぞれ水彩画を描いている。室内は空調が効いていた。涼しい空気に触れると、夏になったという感じがようやくする。


絵を描きながら、ふっと梨恵は口を開いた。


「伊吹先生、倒れとったらしいな。」


「うん」と一冴はうなづく。「なんか、廊下で寝てたって話だけど。」


紅子は怪訝な顔となる。


「大丈夫なのか――あの人は? 一昨日も、鼻血をどばどば出しながら廊下を駆けまわってたし。それが――廊下に倒れて寝てたって。」


「一体、何があっただらぁな?」


「さあ――」


菊花が口をはさんだ。


「彩芽先輩も、何か変な感じだったよね。やつれてる――っていうか。元気がなさそう――っていうか。そのくせして、なんか私に目を向けてきて、ぎょっとした顔してたんだけど。」


紅子は溜息をつく。


「なんか、最近、寮では変なことが立て続けに起きてないか? パンツはなくなるわ、薄い本は置かれてるわ、寮長先生は倒れるわ――。私たちの知らないところで何かが起きつつあるんじゃ――」


一瞬、その場が静まり返った。


本当に変なことばかりが起きていると、梨恵もそう思う。しかし、紅子の言った「何か」について自分は触れてしまったのではないか。


気にかかって、梨恵は尋ねる。


「ところで、菊花ちゃん――パンツがなくなった件で、何か分かったことあるん? 聴き込み調査、土日もやっとっただら?」


「まあ、少しは。――気になるの?」


「ちょっとだけ。それに、テニス部の先輩からも訊かれとるだけど――あの東條さんって子が、パンツのことについて昼休みに聴きに来とるって。」


菊花は恥ずかしそうに目をそらし、そう、と言う。


「とりあえず、分かったことは――去年から今年にかけて、卒業生も含めて二十五人ものパンツが盗まれてるってこと。」


「――二十五人も?」


「うん。中には、干す前に消えてたっていう人もいた。――やっぱり、全ての事件は同一人物の犯行で、しかも寮生で間違いないと思う。」


――二十五人ものパンツが去年から消え続けている。


犯人が同一人物ということは――やはり事件と一冴(いちご)は関係がないのか。


「あと、気になったのは――蘭先輩って保健委員だったのね。」


「それが?」


「いや――あの人のイメージじゃなかったから意外に思って。てっきり、図書委員かと思ってた。中学のときも、ずっと図書委員だったわけだから。」


「へえ。」


「それと、鎮守の杜の入り口に東屋(あずまや)があるでしょ? あそこで何度か――」


授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


ひとまず、授業の後始末をする。


教室へと四人は戻った。


ロッカーへ菊花は寄る。


バッグを開け、次の授業の準備を始めようとする。白い物が奥で融けているのを見たのはそのときだ。


しまった――と思う。既に夏であることを忘れていた。まさかこの気温で融けるとは思わなかったのだ。

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