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第十二話 造花の百合

追いかけっこは数分ほど続いた。途中、教師から蘭は引き留められ、廊下を走るなと叱られていた。


その傍らで、蘭を差し置いて一冴は菊花を追いかける。


やがて、校舎の裏側で菊花と合流した。


菊花は――疲れ果てたようにベンチに坐り、ぐったりしている。


「大丈夫なの――?」


「いや――」と菊花は答える。「まさか、蘭先輩があそこまでしつこいとは思わなかった。」


「うん――そうだよね。」


一冴は菊花の隣に坐る。


菊花は横目で一冴を視た。


「分かったでしょ。蘭先輩のことは諦めなって。」


一冴も詰まる。告白したことはいい――しかし、見事に振られてしまった。たとえ一冴を同性だと思っていたとしても、結局は菊花しか見ていない。


けれども、前向きにも考えられる。


性別を偽って交際するまで――少し猶予が生まれたのだ。


「諦めない。」


なので、一冴はそう言った。


菊花はやや呆れた顔になる。


「――本気?」


「だって――蘭先輩だって諦めてない。」


「まあ――私は諦めてほしいいけどね。」


百合の花を誰もが少女は心に持つと蘭は言った。


自分にはあるのか――百合の花が。


一冴が蘭を好きでも、それは百合とは言わない――自分がレズビアンではないように。


あるとしたら――造花の百合だ。


――大切なのは、心。


梨恵の言葉が蘇る。


朝、しっとりと白百合が朝露に濡れているように、


造花の百合に――心は宿るのだろうか。


(第一部 - 終)つづく

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