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第八話 部活はどこにする?

その日の授業は、午前中しかなかった。


授業が終わり、梨恵が近づいてくる。


「いちごちゃん、いっしょ学食いかん?」


うん――と、一冴はうなづいた。


寮は台所が開放されているため、弁当を作ってくる寮生もいる。しかし、この学校には学食があるので、どちらかと言えばそちらを利用したかった。


「えーっと、菊花ちゃんは――」


言って、梨恵は教室を見回す。


しかし菊花の姿はない。


梨恵と共に教室から出る。


すると、廊下の向こうに菊花の後ろ姿が見えた。


そんな菊花へ梨恵は近寄る。


「菊花ちゃん、どこ行くー?」


菊花は振り返り、一冴の姿を目にして顔をそむける。


「学食。」


「なら、一緒いかんかえ?」


「別にいいけど。」


どことなく機嫌が悪いのを察したようだ――困惑したような視線を梨恵はよこす。


何も知らないふりをして一冴は首をひねった――心の中で毒づきながら。


――仕方なかったじゃないか。


女子校へ通う以上、こういうことが起きると菊花も分かっていたはずだ。


しかしその後ろ姿を目にしていると、菊花との深い溝を感じた。女子として生まれたことは、ここにいる当然の権利があることなのだ。


学食へついた。


カウンターのケースには様々な料理が竝んでいる。パンやスクランブルエッグ、ベーコン、ごはんや味噌汁などの和食もある。猫うどんと犬うどんもあった。特に、猫うどんは白山女学院の名物だ。


三人とも猫うどんを頼み、会計を済ませる。


そしてテーブルに着いた。


うどんの上には、大量のかつおぶしが載せられていた。猫の形のかまぼこと、梅干しとねぎも添えられている。


昼食を前にして、菊花の機嫌も少し直ったようだ。


名物だけあり、猫うどんはかつおぶしの香りと旨みが効いていた。


ふと、食堂に這入って来た少女の姿が目に入る。


元伯爵家の気品を感じさせる歩き方と、かすかにゆれる栗色の髪。


隣には、長いお下げの少女がいる。凛とした顔は、貴人に仕える従者のようだ。


ふと、梨恵が発した言葉で一冴の意識は引き戻された。


「二人は、部活ってどっか入るん?」


「部活?」


「明日から部活が始まるが? やっぱ、どっか入ったほうがええがん。」


問い返したのは菊花だ。


「むしろ、梨恵はどっか入る予定あんの?」


「うちはテニス部! 中学のとき、ずっとテニス部だっただけえ。で、受験で(しばら)くやっとらんかったし、高校に入ったらまた始めたいなって思っとったにぃ。」


そう――と言い、一冴は考える。


入る部活はもう決めている。だが、菊花に知られたくない。


「私は、どちらかといえば文化系かな。放課後は静かに過ごしたいって思ってるし。」


菊花も同意する。


「私も運動部は苦手。入るなら文化部になると思う。けど、入りたい部活は特にないし、帰宅部かも。」


「それかぁ。」


梨恵はやや残念そうな顔をする。


食堂の片隅へと一冴は目をやる。


そして、テーブルにつく蘭と目が合った。というより、蘭の方が先に顔を向けていたのだ。


刹那、にこりと蘭はほほえむ。


胸が(つか)えたような感覚がして、顔をそらした。


そんな一冴の様子に気づいたらしい。梨恵が問いかける。


「気になるぇ? 鈴宮先輩。」


「いや――別に。」


「ほんにー。うちは気になるけど。」


「そうなの?」


「だって、生徒会の鈴宮先輩だらぁ?」


「生徒会?」


「うん。生徒会書記の――。白山の生徒会って選挙が一度も行なわれたことないだけん。生徒会長も役員も先生が選んどるだって。成績や家柄で決めるとか。」


「そう――なんだ。」


成績も家柄も――蘭と自分とでは違うのだ。


「でなー、鈴宮先輩は次の生徒会長かもしれんだって。」


菊花も、興味深そうに目をやる。


「隣にいるのは高島先輩だっけか。確か、鈴宮先輩のルームメイトだったと思うけど。易占いで有名な高島家のお嬢さんだって。」


易占い――と一冴は問う。


「うん。高島断易とは違うらしいんだけどね。」


梨恵が箸を止める。


「あ――なんか聞いたことある。政治家とか経営者とかの御用達になっとるところだら? 高島先輩も易占いしんさるらしいだけど。」


「へえ――」


本当に――ここは名家の娘ばかりらしい。

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