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第三話 チート能力貰えなかった

早くも不定期更新になってしまった……

メリナ村へ向かうことも決まり、私は他にも疑問に思っていたことをアイントさんに訊くことにした。


目下、訊ねるべきは……アイントさんの膝の上で猫みたいにスヤ~している幼女の姿をした超生物についてだろう。アイントさんには随分と懐いているみたいだけど、どんな関係なんだろう?


先ず、遠回しに訊いてみようか。


「そう言えば、その子、いとも簡単にオークをやっつけてしまいましたよね……こんな無邪気に寝ている姿を見てたら、夢か幻だったんじゃないかと思っちゃうぐらい」


私の感慨深い感想に、アイントさんは苦笑いしながら、照れ臭そうに答えてくれた。


「まあ、戦いとは無縁な生活をしている方にとっては別世界の存在でしょうね。キュロル……この子の名前ですが、キュロルは肉弾戦能力に秀でた〝虎人(ティグリス)〟ですし。既に〝狩猟者〟の『天啓(オラクル)』がランク5。こと森林での戦闘であればランク6の近接戦闘系『天啓』持ちの大人にも匹敵します。つまらない言葉で表現しますが、控えめに言って天才です」


ふむ。キュロルちゃんのことを語るアイントさんは、ことのほか上機嫌で饒舌だ。まるで、娘を自慢したくて仕方がない親みたいな……親子か!?いや、それよりも!


「『天啓』が、ランク5?その子、私には五歳児ぐらいにしか見えないんですけど……?」


「ははは……当然驚きますよね。通常、戦闘系の『天啓』ランクを1から5に上がるまで、みっちり訓練や実戦を重ねて四~五年は必要とされていますから。でも、本当ですよ。私が〝鑑定技能〟を持っているのは御存知ですよね?」


「ええ、まあ……」


そう、この世界には、魔法もあれば特殊技能も存在している。地球で生まれ育った私にとっては不可思議にしか思えないのだが、この世界では存在していて当然の能力なのだ。


そして、戦闘系『天啓』のランク5といえば、この世界で最も実戦機会の多い職業である冒険者でも、そこまで到達できるのは全体の一割に満たない(大抵その前に死ぬから)と言われている。


……一体、キュロルちゃんがどれだけ才能に恵まれているのか計り知れない……。


「あ……確か、キュロルちゃん魔法も使っていたような?でも……全身を電撃で包むような魔法なんて、記憶に無いのですけど?」


そう、マリアは勉強熱心な子で、様々な魔法に関する書物を読んでいた。それが、将来アイントさんに押し掛け女房する為であったのは割愛するとして……田舎で手に入る本に限りはあっただろうけども、それらしい魔法に関する記憶は……全く無い。そもそも、自分自身の魔法だとはいえ、電撃を身体に密着させて感電も火傷もしないとか奇妙なんですけど!?


「あの術ですか……〝魔纏術〟は自身の身体ごと魔力性質を変換させる魔法なのですが……恐らく、世界中捜しても現在の使い手はキュロルだけです。そのキュロル自身にまだ語彙力が無いので……正直私にも、どうしてそんなことが可能なのか判らないんですよ」


「それって、かなり危険なのでは?」


「そう思われるでしょうが、キュロルは感覚だけで魔力コントロールをこなせるのですよ。正に天才です。先天的に魔力総量が少ないので持続力はどうにもなりませんが……悔やまれます」


……まあ、短所の一つもないとね。にしても、アイントさん、本ッ当にキュロルちゃん大好きだな。マジで娘自慢したがる過保護パパに見えてきたぞ。


それにしても魔法か……私にも使えるのかな?マリアは基本的な回復系統魔法が使えたみたいだけど。あ、そもそもそれって……!


「あの、アイントさん!私を……〝鑑定〟してくれませんか?そして、出来れば『加護(プライズ)』もお願いします!」


そうだ。判らないならば、調べられる人に調べて貰えばいい!それに、マリアが回復魔法を使えるようになったのは、アイントさんが原因……もとい、お陰だったのだ!


《才覚神ディマ》とは、人の能力を司る神。ディマより与えられた先天的な才能こそ『天啓』である。アイントさんは、そのディマに仕える神官であり、『加護』とは神官によって与えられる才能の萌芽。『加護』は『天啓』に若干劣るとされているが、それは自分を望む理想の姿へと成長させる確かな指針なのだ。


そして、本来はディマの神官であってもディマの聖域にある神殿でなければ『加護』を与えることが出来ない。ごく少数の特別な訓練を受けた神官を除いて。


その特別な訓練を達成し、聖域の外でも『加護』を与える能力を得て、各地を巡礼している神官が〝出張神官〟と呼ばれているのである。


「『加護』ですか……吝かではありませんが……その前に〝鑑定〟してみなければどうとも言えませんね。私自身も経験ありませんし、異界人を〝鑑定〟した話を聞いたことも記録を読んだこともありませんからね……マリアが修練していた技能がどうなっているのかも定かではありませんから」


そっか……確かマリアも説明されていたっけ、『天啓』は肉体と魂両方の性質によって決定されるって。そして『加護』は魂に干渉して才能を引き出すとか……。


そのマリアの魂が肉体とゆう器から失われて空っぽになったからこそ、私が転生できた訳で……うん。諦めておこう。


マリアの技能(それ)も含めて、調べて貰いたいんです。それに……神様が私を転生させた理由も気になりますし……一体、私なんかに何があるのか……」


本当にでっかい疑問だよ。地球での私は容姿も学力も体力も特徴のない……良くて平凡な一般人。それでも、神様がわざわざ選ぶくらいなんだから、気付いていないだけで超希少な能力でもあったりするのだろうか?……平穏に過ごせなくなるような厄介な能力とかじゃないといいんだけど。


「それては、見てみましょう。私の手を握ってください」


「……触れてないと、無理?」


「出来なくはありませんが……時間がかかるし鑑定の精度が下がります。見て、嗅いで、聞いて、触れる。〝鑑定〟を行う際、対象の事前情報が多いほど〝鑑定〟で得られる情報も多くなるのです。特に、人の場合は〝鑑定〟の同意を得られているかが大きく影響するんですよ」


ふむ……理屈は通っているようではある。しかし、参ったな……手に、触れるのか……男の、手を……この数年、男子同級生の手だって握っていないのに!それが、怪物を容易く撃滅してしまう爽やかなイケメンの手を握れと?……ハードル高いわ!惚れてまうやろ!ただでさえ、マリアの記憶に影響されそうなのに!


……しかし、躊躇うばかりで無為に時間を浪費するのも惜しいんだよね……ここで〝鑑定〟されるのを先伸ばしにして、それが原因で面倒なことになったり、最悪取り返しのつかない事態を招いたりするかもしれない。……慎重に判断するのが大事だって、身をもって体験したばかりだしね。


「わ、判りました。お願いします……」


私はアイントさんのすぐ側に正座し、両手を差し出した。


「では、失礼致します」


私の手に、アイントさんの手が重なる。……思っていたより、堅さを感じる。けど、暖かい……それにしても……男の人の手に触れるだけで、どうしてこんなに恥ずかしいの~?


落ち着け、クールになれ三里真理愛!こんなのは……身体測定みたいなものだ!男の医者に聴診器を当てられるような、仕方のないことだと割りきるんだ!


「あの……目を開いて頂かないと、読み取りに時間が……」


う……恥ずかしさのあまり、思わず目を瞑ってしまっていたか……ま、まあ、仕方のないことだし、少し、目蓋を開いてみるとしよう……


「では、そのまま私の目を見ていて下さいね」


ぬぐっ!?……男性耐性のない乙女に、イケメンとみつめあうとか、マジ拷問なんですけど!しかも……マリアの記憶補正が入っているのか、キラキラエフェクトがかってる!眩しくって直視できないよ!これ、絶対に記憶を捏造しちゃってるよね!?


「……ん?これは……はい。終わりました」


……終わった?なんか……あっちゅう間なような、それにしては心臓の動悸が激しいような……ちょっと、マリアの記憶に引っ張られ過ぎだよ……勘違いすんな私、これは、私の感情とは違う……筈。


「えと……それで、結果は?」


……沈黙?うわ、すっげぇ答え辛そうに瞑目してるよ。そりゃ、何の取り柄もない無気力JKだったもんなぁ……レベル1の遊び人以下でもしゃあ無しだからなぁ……。とても残念な結果だったのだろうと私は覚悟した……が、結果は私の予想とは異なっていた。


「申し上げ難いのですが……マリアさんの『天啓』、それと所有技能は……判りませんでした」


「……ん?判らない?なんで?」


判んないってなに!?こっちは恥ずかしいのを耐え忍んだんだよ!説明プリーズ!


「それがですね……恐らく貴女を転生させた女神様によってでしょうが……〝鑑定〟を阻害する措置が為されていました。マリアさん自身が自覚しているであろう個人情報……名前や、身長や体重等の〝鑑定〟を用いなくても数値として計測可能な類いの情報は読み取れたのですが……」


へ~、身長や体重は判ったのか……って!身長は兎も角、体重は保護されるべき個人情報だろうが女神っ!?


「それにしても……不思議な阻害術式……?でした。通常〝鑑定〟の技能ランクが低くて読み取りが困難である場合は意味不明な文字の羅列や歪んだ画像になるものなのですが……〝見せられないよ!〟と書かれた看板?を持った二頭身の小人か妖精らしきイラストが見えたのですよ。こんなの、初めての経験です」


自主規制くん~!!あの女神、やっぱ遊び半分以上で対応していやがったぁ~!!!


「つまり……私は〝鑑定〟を気軽に受ける訳にもいかないってことですね?そんなのがあるってバレたら、要注意人物扱いされたって可笑しくありませんものね……」


「まあ、観察対象とされて不自由を強いられるのは想像に難くありませんね。やはりセイアス正教大神殿に赴くべきですね。そうすれば、その愉快な阻害も解いて貰えるでしょうし」


……こっちの世界の価値観でも、やはり愉快なのか自主規制!


「それと、重ね重ね申し上げ難いのですが……現状『加護』を与える訳にはいかなくなりました。『天啓』や技能の素養が判らない状態で『加護』を与えられるのか、与えられたとして、どう影響するのか、全く未知数ですので……私の立場と責任上、それはできないのです」


「そんな……いえ、御気遣い、ありがとうございます」


くっ……チート能力貰えるチャンスがフイに……まあ、アイントさんの職務上、神様に喚ばれた人材に不具合を起こす訳にはいかないものね。


それにしても、大神殿か……宗教の総本山なんて、日本人の私からしたら浮世離れしていて近寄り難いなあ……まさかと思うけど、聖女なんかに祀り上げられたりしないといいなぁ……。





次回は村へ行く話。

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