プロローグ
この世界は、不公平と理不尽で出来ている。
容姿、知能、貧富の差。
数えるのもバカらしいほどに存在するそれらは、人に負の感情を植え付ける。
(……あんな奴に負けるなんてありえない)
(……この女バカだな。ブスに欲情なんてしないっての)
(……少し業績が良かっただけの癖に、ムカつくなぁ)
そんな人の負の感情が聞こえる俺、三孤藍駆は間違いなく不公平と理不尽に見舞われている人間だろう。
もちろん理不尽にめげず立ち向かった。人に歩み寄る努力をした。何度も何度も何度も。
……だが、何一つとして実を結ぶことはなかった。
そしていつからだろうか?
何も聞こえないように、誰とも関わらないようにと心を閉ざし、人との交流を避け、無気力に生きることを選んだのは。
耳を塞ぎ、下を見ながら道を歩く。こんな世界に…………俺の幸せはない。
「あんた、呪われているわね」
……誰かが俺の前に立ち塞がる。
「安心しなさい。あなたの呪い、私が解呪するから」
耳が痛くなるほど明るいそいつの声は、悩みなど何一つないような自信に満ち溢れている。
気怠げに顔を上げる…………そこには、声に劣らぬほど自信満々に立つ小さい少女がいた。
黒い髪を一つにまとめた、見るだけで分かるほどに勝気で男勝りな少女。顔は幼いが、元の素材が良いため整って見える。
中学生、いや小学生だろうか?
こんなガキに俺の何が分かるのかと思うと同時に…………聞こえてしまったのだ。
「……心の中で泣き叫んでる奴に、助けてもらおうなんて思わねぇよ」
目の前の勝気な少女の誰よりも大きな声を。「私を助けて」と叫ぶ心の声を。