気の早い(詰まらない?)クリスマスキャロルほか
ある日のこと
男はPCのハードディスクの底に
つまらぬデータがこびり付いて居るのを見つけました。
『嗚呼なんてつまらないゴミが』
これをこそげ落として捨てようとしました。
世の中にまるっきり無駄な物もあるまい、
世の中にはご奇特な方もお出でだろう
と捨てるのを躊躇。
気の早いクリスマスキャロル2
北の国では早々と白い綿帽子が舞い降りて来た
ロビンは待ち遠しくて仕方が無いのでしょう。「未だかな、早く来ないかなぁ。ねえ、おとうさん。」何かって、其れはお出かけ。「あ~。御主人さま。未だかなぁ。」「はっはっはっはっは。ロビンや、辛抱おし。」「お前もとうとう、そんな年になったんだねぇ。おとうさん。」「だって、ぼくは、初めてなんだよ。クリスマスまで、あと何日?」微笑みながら。「あと一週間ですよ。」「待切れない~。」「しょうがない子ね。」「でも、大変な事なんですよ。だって世界中の子供達が、私達を待っているのよ。」「そうだ。まあ、早く寝なさい。」外は又時間が止まった様に吹雪いてます。「ぼく、眠れない。」………………………………外では、ごうっと風が唸ります。「息子は寝たかい。」「ええ。」………ぼく、赤はな三世。今年からいよいよ現役宜しく。
気の早いクリスマスキャロル パート3
冷たい石畳みの路地に、小さな男の子と女の子が立っていました。街は行き交う人々で溢れています。「おやおや寒そうに、坊や達どうしたの、こんな所で。」買物帰りの奥さんが、思わず足を止めました。空からは綿の実のような、ふっくらした雪が落ちてきます。「あら、やだ。人形じゃないの。でも誰がこんな所に置いて行ったのかしら。」お店の小父さんに聞いても分りません。「そうだ、お巡りさんに聞いてみましょう。」奥さんは重たい人形を抱えて、警察署に行きました。ところが警察では、クリスマスで大賑わい。それどころじゃありません。「良いから、持って行きなさい。」奥さんは「そうだ、持って帰ろう。」とぼとぼと、家路を急いで帰る道、大事な荷物を警察に置きわすれてきました。「あら、大事なクリスマスの御買い物。」荷物を受け取り、思わず小さな手を二つ握って、夢中で帰って来ました。外はもう暗い夜道で、お家では旦那様が表に灯りを出して待っていてくれました。「おおい、おまえ。その子供達は、どうしたんだい。」奥さんは思わず握りしめた、二つの温かい手を見つめました。しばらく無言の奥さんは、熱い涙を流して云いました。「かみさま。子供をありがとう。」勿論二人には初めての子供でした。(念の為申しますが、奥さんが人形と本物の子供を間違えて帰った訳ではありません。)こんな話があっても良いよね。
気の早いクリスマスキャロル .5
「いそがなくちゃ。」一匹の小ネズミが、ちょろちょろ。「いそがなくちゃ。」大きな木の実をえっちら、おっちら。坂道も岩の割れ目も、何のその。すると一匹のしまりすが、「ネズミくん、どうしたんだい。」気付いた小ネズミは「それが大変なのさ、ネズミ社会でも、あすはクリスマスなんだよ。サンタさんにプレゼントの木の実をたくさん、頼まれていたのに、まだ足りない分があったんだよ。」「そりゃ、本当に大変だ。では私もお手伝いしましょ
公園で女の子は海を見ていました。
何が見えるのでしょうか。港の青い船、白い山の教会?ハイウエーを走る車?
いいえ、彼女の目には何も映っていませんでした。その時、「わんわん。」子犬が近寄って来ました。「あら、ごめんなさい。」初老のご婦人の声。「いいえ、いいのです。」女の子の様子を見て、ご婦人が云いました。「どうか、したの?」「いいえ。」女の子はかぶりをふりました。その時公園の入口から足音が聞こえて来ました。「ごめんね、遅くなって。」空から白いものが降りてきました。ご婦人はほっとすると、さり気なく、踵を返しました。「クリスマスが近いだろ。サンタの爺さんがあんまり忙しそうでね。今日の分けりを付けてきちゃった。」女の子はにっこり微笑むと、「いいのよ。」彼はフリーター。今サンタさんのプレゼントの仕分けを手伝っています。
若かった頃1970年代だったかな。儂は初めて地球の引力圏を抜け出す事ができたんじゃ。何に興味があったかと云うと、火星の軌道と木星の軌道の間にある、小惑星を知っておるじゃろう。あの膨大な天体から直に鉱物を採取する事業じゃ。ほぼ無限と云って良い。1972年春。おおそうじゃった、南半球での春じゃった。今でも覚えて居る程エキサイティングじゃった。儂も45歳まだまだ少年の様なもんじゃった。想い浮かべてみたまえ、忘れもしない小惑星のβ-15975330544星の夕べは実に荘厳じゃった。何しろ見上げれば天空に月が7、8個昇って来るんじゃ。(儂を誇大妄想狂だと馬鹿にしている顔が浮かぶわい。まあ、良いか。)すると突然山陰から照明弾が飛んで来て、アルファー卿率いる悪者共が儂のε鉱石採掘権を奪いに来るんじゃ。すかさず儂達ε鉱石採掘事業団は理事長の儂を始めとして反撃に出たんじゃ。しかし未だ『国際救助隊』も『地球防衛軍』も結成前でのう。SOSを出しても仕様も無い。頼るものは矢張り我が力のみ。さーてこれからが面白い処じゃが、儂はちょっと私用を思い出してな。Ice-man
それはそれは懐かしい思いで
少年はいつもの時間に家を出ました。
そとは一面 銀世界。
上を見ると無数の灰色の雪が舞い落ち、
下を見れば目の眩む 純白の絨毯。
ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっ
裏路地を未だ誰も通っていないのか、
後ろを見れば ぽっくり ぽっくりと
長い行列が続く 初めての雪。
やがて左に曲がり道なりに緩やかな坂を登ると
右手には家並みの向こうに、うまっこ山が
うっすらと霞んでた。
遠くの山々から氷のような栗駒おろしが吹き付けて来る。
道はやがて杉木立の中を通る。
久々の雪で杉の枝は大きくしなり、
白いゲートが出来ていた。
坂を登り切ると一本松の梢に烏の親子が寂し気に
鳴いていた。
そんな日でも山小はもう、起きていた。
用務員のおじさんが、いつもの様に、大釜で
たっぷりと 掃除用の湯を湧かしていた。
教室では冷えきった、だるまストーブが、
火入れの時を待っていた。
寒々としたガラス戸から今日は海は見えなかった。
かって牡鹿半島の鮎川に鹿の大きな群れがあり、一匹の大鹿がその群れを支配して居たという。毎日昼になると半島の山間から、海端まで降りて来るその数は計り知れず、2000頭とも5000頭とも云われた。或日一頭の子鹿が波打ち際で波と戯れて居た。間もなく子鹿は岩から足を滑らすと、あっと云う間に海へ落ちてしまった。生憎の引き潮が強い日で子鹿はどんどんと、沖へ流されて行った。其れを知った母鹿は海へ飛び込み子鹿を助けようとしたが、子鹿は更にどんどん流されて行った。一部始終を見て居た大鹿は母鹿を制して、自ら沖合いへ向かって飛び込んだ。どんどん泳ぎ渡り瞬く間に子鹿に追い付き、首筋を銜えて岸へ向かって泳ぎ、へとへとになって岸へ辿り着いた。大鹿は胴震いをしたあと、肩で息をすると一声鳴いて息絶えてしまった。母鹿は大鹿の女房で、子鹿は倅だったそうな。浜では勇敢な大鹿の死を悼んで、古老が云ったそうな。「雄々しか。」(質問:其処でどうして九州弁が出るんじゃ。駄洒落鹿言えんのか!!)余り鹿らないで。
是が《牡鹿半島の名の由来と云う訳ではありません。誤解の無き様。》
かくかく鹿鹿の物語り。
ある所にお爺さんと、お婆さんが居りましたそうな。」お爺さんは優しく、お婆さんは器量良しでした。二人仲良く暮してたそうです。ところがお爺さんは有る時、突然死んでしまわれたそうじゃ。それはそれは、お婆さんは悲しまれたそうじゃ。その日お婆さんがお部屋の掃除をしていると、部屋の隅にお爺さんの大切な神楽の横笛が見つかった。実はお爺さんは笛の名手じゃった。「これは可哀想じゃ。」と云うと、ふと考えついた事があった。何かを思い出したお婆さんは、庭に・ささげ・の実を蒔いた。「ささげどん、ささげどん、芽出しゃれ。」「ささげどん、ささげどん、芽出しゃれ。」すると、ささげは突然芽を出し始めた。やがて、ささげは、ずんずく、ずんずく、ずんずく伸びに伸びたそうな。ささげの頭に、お婆さんは、横笛と愛情たっぷりの団子を包んでぶらさげた。ささげは、頭をふりふり更にずんずく、ずんずく、ずんずく伸びに伸びた。すると極楽の三丁目の池の端では、通りかかったお爺さんが、「なんじゃろう。」すると蓮池の底からささげが頭をもたげてきよった。なんとはなしに包みを解くと中にはお爺さんの大事な横笛が入って居った。「こりゃ良い。婆さんありがとう。」さっそく横笛を構えて吹き始めた。余りに見事な笛に極楽では大人気。しかしお爺さんは大好きなお婆さんとの楽しかった日々が忘れられずにいました。在る日お釈迦さまへお婆さんに会いたい旨、それとなくお伺いをたてますと、「わかって居る。暫く休暇をやろう。」流石はお釈迦様は偉い。云わなくても以心伝心。にっこり、お微笑みになられると、お爺さんを一羽の小鳥に変えられた。さあて小鳥に変身したお爺さんは天空から舞い降りると、お婆さんの住んでる、懐かしい我が家へ飛んで行った。お婆さんがその日洗濯物を干して居ると、見た事も無い、珍しい緑色の小鳥が鳴き始めた。「ほーほけきょ。」(やっぱりね。見えてました?)「あら、嬉しや。大好きなお爺さんじゃ。」いつ迄もいつ迄も、その声に聞きほれていたそうです。
七月のある未明の朝、ジム少年は異常な物音で目覚めた。その時窓から遥か上空より真っ赤な火の玉が落下して来るのが見えた。ドッカーンと云う爆発音と共に真白な閃光が走った。ジム少年はベットから飛び降りると、両親の部屋へ行った。しかし昨夜は特別な日で両親の結婚記念日で、二人は帰らない事になっていた。「ママー。」昨夜の両親との約束を思い出したジム少年は、仕方なく上着を着て外へ出てみた。町外れのジム少年の家からは森が見えた。その森の切れ目の草地に何か大きな物が、墜落した様であった。恐る恐る近づいて見ると、何と二本足で歩く無気味なエイリアンがあちこちを探査していた。思わず目に入ったエイリアンの宇宙服の胸に奇妙な文字が記されていた。シャープな線で『NASA』。
。」二匹は大忙しで山を越えて、とうとうサンタさんの家につきました。「おや、二匹とも、どうしたんだい。」サンタさんが、まだ居ました。「あら、サンタさん、今日はお出かけでしょ。」「あっはっはっはっはっは。小ネズミさん、今年も一日まちがえたよ。イヴは明日だよ。」でも、間に合ってよかった。
ある晩、儂がクラブのカウンターで、一杯やっていると、ダークスーツの男が隣の席に着いた。ウオッカを一杯、ぐいっとあおったあと、サングラスの奥から儂をじっと見つめると云った。「男爵」ポーカーフェイスの儂だが思わず驚いた。「どちらだったかな。」「名乗る程ではありません。」「用件は。」「実は、先日の…小惑星のつづきですが…。」「ふんっ。旧い話を蒸し返さんで欲しい。」「…。」「あっはっはっはっは。では、もっと面白い話をして進ぜよう。じゃが儂は忙しい。続きは明日、オフィスでしよう。ではさらば。」「…。」
「其処へ掛けたまえ。」「いやー、昨日は失礼しちゃいました。私気分屋なもんで。躁鬱の気がありまして。」「……。別件のの話しじゃ。儂が四十八の頃。」「宇宙の話しにしては、何となく年数の計算が合わない気が…。」「細かい事は無し。」「その頃。良くバカンスで火星に行ったものじゃ。」「都合の良いワープ航法ですな。」「そうそう。ま、笑わんでよい。」「そう、行った時。矢張り、何も居らんかった。だがそこで簡単に引き下がる儂ではない。」男は突然真顔で「どう、しました。」「あらゆる周波数の電波で、ラジオ番組を流した。勿論自動翻訳機を通してな。」「どの様な。」「火星の皆。今夜も聞いている。…臨時ニュースを申し上げます。本日太陽系の第三惑星より、大量の宇宙船が飛来。間もなく火星に襲来する予想…。そうしたらどうなったと思う。」「どっかで、聞いた様な。」「あちこちの岩穴やら、岩影から、火星人が出るは、出るは。驚いたよ。そう、パニックさ。」「で、どうなされました。」「携帯で緊急の呼び出しさ。」「さ、勤務に戻らなくちゃ。」
気の早いクリスマスキャロル .6
雪の降り続く或日の午後、女の子ジェノは森の小道で足を挫いているお婆さんを見つけました。「お婆さんどうしたの。」「芝を集めに森に入ったら、足を挫いてね」助け起すと、近くの小屋で介抱して上げました。ジェノの優しい心づかいにお婆さんは涙ぐみました。「有難うよ。お礼に是をあげよう。」と云って何でも願いを叶えて呉れる手袋を呉れました。実はサンタさんの奥様だったのです。
さて、どうしましょう。「願いは一杯有るわ。まず、世界の平和なんかどうかしら。」するとお婆さんは云いました。「それは無茶と云うもの。その手袋は、お前のその善意に反応するセンサーが付いて居るのだよ。全世界の人々が、善意に満たされれば、そんな手袋なんか不用さ。」「サンタさんの奥様、私この手袋今はいらない。誰か困っている人にあげてください。」「そうかい。私はもう大丈夫だからもう、お行き。」「はい。サンタさんの奥様。」
北欧丁抹のある小さな町に古い靴職人の店があった。店の奥ではお爺さんが毎日コトコトと、赤い革ぐつ青い革ぐつ、素敵なブーツ等を作っていた。店の二階では一人の痩せっぽちの少年が、ベットの下で何やらぶつぶつと、囁いていました。少年の目の前にはコオロギが一匹いましたが、ふところから、やおらバイオリンを取り出すと、得意中の得意、セレナーデを奏で始めました。すると部屋のすみでは、いつの間にやら土蛙のカップルが優雅にダンスを踊り始めるではありませんか。外はクリスマスが近いのに、この部屋だけは暖かな気分で一杯です。その時窓ガラスをコツコツと叩く者がいました。「おおい、儂も入れてくれ。」「だれ。」少年は聞きました。窓を叩くのは赤い服を身に付けた、おお何と可愛いサンタさんでした。「どうぞ。」少年はガラス窓を開くと一寸法師のサンタを招きいれました。「動物や虫とも話の出来る、広い心を持った君を見込んで、ちと聞きたい。よろしいか。」「何の事でしょう。」「実はのう、此処から百キロ程の村に、八十才のお婆ちゃんがおっての。」「はい。」「年老いて動けないでいる。何かプレゼントをしたいが、何も要らんと云う。どうじゃろう。」「夢を見るのは、大人も、子供でも楽しい事です。」「なるほどのう。夢か。儂も夢を忘れとったわい。」ガタッと音がして窓から隙間風が吹き込んで来ました。気が付くと部屋に、小さなサンタは居ませんでした。
天下の名城『安土城』と云えば信長公。それは秋の良く晴れ渡った日であった。安土の天守第七層の窓から、城下の街並が明るい日射しを浴びて、光っているのが見えた。今日は珍しく客も無く、長閑な一日であった。窓から身を乗り出して眺める信長の手に、真白な鷹が舞い降りた。純白の羽が蒼い空にぱっと散った。「おおっ、来たか。」近くで鷹匠が何気なく観ていると、公のお気に入りの鷹ではあったが、何を間違ったか、手の上にそそうをした。それを観ていた鷹匠は驚いた。しかし、「おっほう。中々元気が良いわい。蘭丸手ぬぐいをもて。」云われる迄もなく、既に蘭丸は懐中の手ぬぐいを差し上げた。その時居合わせたお伽衆の物部荘平は、思わず怪訝な素振りを見せてしまった。流石、信長公は気が付いた。「鳴かぬなら、殺してしまえ時鳥。…はは、誰ぞ。このような戯けた歌など儂が作るものか。その方、儂が手の上にそそうをした鷹を殺すと見たか。」「はっ、いいえ。」「この儂とて無闇に殺生する訳もない。」「鷹は猟に役立てば良い。糞をするのは当たり前じゃ。」「のう、媛」「ほほ、殿。荘平殿も驚かれておる。」
アラビアの西海岸に風が吹いた
紅海から吹き付ける熱い風は
港の小舟の帆を巻き上げて
はたはたと、音を立ててはためかせた。
丘の上では海の男たちが
風の止むのを待っていた。
明くる日も風は強かった。しかし、シンは凪ぎなど待って居られなかった。
遂に意を決して、荒れ狂う海へと舟を出した。
襲い掛かる大波をすり抜けて、
小舟は進んだ。
すると小舟は何かに引かれる様に、走りだした。
シンは思わず止めようとしたが、それも叶わず、
舟の行くままに、身を任せるしかなかった。やがて宵闇が迫る頃、漸く舟は小島に流れ着いた。
丘に上がると、
シンは、えも言えぬ不思議な、甘い香りに誘われ、何か音のする林の方へ向かって行った。林の奥には、明るい草むらが広がり、見上げると明るい月が、煌々と輝き始めていた。ふと、気が着くと、眼の先にたき火があり、火に架けた鍋にはえも言えぬスープが、ふつふつと煮えたぎっていた。
シンは思わず呟いた。「あ…。」
其の時
「貴方、もう起きなさい。」