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そんな勇気、無いくせに  作者: あきしおり
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遠くからでも分かる人。

その日から私は、有原先輩を目で追うようになってしまいました。

と、いうより、有原先輩の銀髪は目立つので、どうしても目に入ってきてしまうのです。むしろ、今まで、有原先輩に気づかなかったことが不思議でした。


昼休み。渡り廊下から、中庭で仲間らしき人達とバレーをしている有原先輩を見つけました。あっ、有原先輩、転んだ。しかもボールが頭に当たった。

「ミワコ。誰、見てるの?」

友人のゆきちゃんに聞かれました。

「あ、あの人。髪が銀で」

とっさにしどろもどろになってしまいました。

すると、ゆきちゃんは「あぁ、あの人ね」と言いました。「3Aの有原先輩でしょ」

どうやら、有名人だったみたいです。


***


私は、サボりすぎないように気をつけながら、時々、授業をサボって屋上に行くようになっていました。私は普段から真面目で目立たない生徒でしたので、時々サボるくらいでは、先生方は気づかなかったようです。


「よっ」

有原先輩は大抵は屋上に居ました。私に、とても気さくに接してくれました。

「おつかれさまです」

「いいって、部活の先輩とかじゃないから、敬語とかやめよっ」

と有原先輩は言うのですが、性格なのでしょうか、敬語をやめるのは私には難しかったです。なので、基本的には私は敬語でした。


有原先輩と私は、屋上で、とりとめのない話をしたり、有原先輩が持ってきた漫画を読んだり、スマホでゲームしたりして遊びました。有原先輩はゲームが上手で、私は大体負けました。

「水野ちゃんヨワスギ」

と言って、有原先輩は笑いました。


サボり始めて5回目くらいに、有原先輩の友達が、屋上に来ました。


「おっ。なに。有原のカノジョ?」

背の高い、チャラそうな方でした。ゆきちゃんがイケメンと言いそうな顔の方でした。


「ちげーよ!サボり仲間。1年生の水野ちゃん」

「…水野ミワコと申します」

私が頭をぺこりと下げると、チャラ男は笑って、「加瀬です、どうぞよろしく」と丁重に頭を下げてくださいました。


それから加瀬先輩も時々混じるようになりました。


***


私は調子に乗っていました。


"校内でも有名な銀髪の不良と、授業中に屋上で遊んでいる。"


それが、なんだか、私までワルになった気がして、正直に言って愉快でした。このツマラナイ、毎日皆が同じことを繰り返している学校という閉じた不自由な空間で、私と有原先輩と、時々加瀬先輩だけが自由なのだと、浮かれていました。


そんなこと、なかったのです。


少なくとも、一番自由に見えていた有原先輩は、ずっと不自由に苦しんでいたのだと、私は後から気づきました。私が気づいたときには、有原先輩は、もうずっと、遠くにいました。

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