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そんな勇気、無いくせに  作者: あきしおり
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初めてのサボり

初めて授業をサボった日、私は有原先輩と出逢いました。


「あっ。すみません、誰も居ないと思っていまして、その」

と私はすぐに立ち去ろうとしました。やはり邪魔をしてはいけないと思いましたし、何より、有原先輩は髪が銀色で、一目で不良だと分かったからです。


「1年生?」

先輩は鋭い目で私を睨みつけていました。

正確には、睨みつけているような気がしました。

私は顔をぶんぶんと縦に振って返事をしました。そうです、1年生です。


「おれ、3年生で、アリハラって言うんだけど、別に偉ぶるつもりも無いから、逃げなくてもいいし、」


睨んでいるように見えたのは、私の思い違いだったのかもしれません。有原先輩はにかっと笑って、私が怯えないようにしてくれました。


「授業サボりなんでしょ。ここに居ても良いよ、喋ろっ」


私は、本当は屋上からすぐにでも立ち去りたいと思っていました。有原先輩は笑いかけてくれたけれども、やはり髪が銀髪ということは、不良に違いないと思って恐ろしかったからです。先輩は制服も崩して着ていて、どうみたって不良でしたし、大体、授業をサボっているんだから不良です。しかし、喋ろう、と誘われたのを断って立ち去るのは、恐ろしい不良に喧嘩を売るということ。


そう思うと、立ち去ることもできず、私は仕方なく、有原先輩の前に座りました。


有原先輩は、にこにこしていました。

「名前はっ?」

「水野ミワコです」

「部活はっ?」

「吹奏楽部です」

「何中だった?」

「三中です」

「そうなんだっ!おれ、一中。部活は、行ってないけどテニス」

「そうなんですか」

「そうなんですっ」

語尾がよく跳ねる人だなぁと思いました。有原先輩は、首を傾げてさらに私に問いかけました。


「水野さんは、何で授業をおさぼりしてんですかっ」


この質問は、答えるのが難しいと思いました。


「……なんか、勉強ばっかりしているのが、嫌になってしまって」

そう言ってみたものの、勉強が嫌いなわけではありません。何だか自分の気持ちを正しく伝えられたかどうか分かりませんでした。

「ふぅん、嫌になっちゃったかぁ」

しかし、有原先輩は、うんうん、と頷きました。納得してくれたようでした。


「正しいと思うよ。嫌なことばかりやって、限りある時間を無駄にしたくないもんね」

「限りある、時間……」

少し、はっとしてしまいました。

「俺は、授業出るの無駄だと思うから、ここで時々昼寝したり、ゲームしたりしてるよ。時々他のやつも来るけど皆いいやつだから、水野さんも、さぼりたくなったらいつでも来ていいよ」


私は、はい、と言ってしまいました。


私は、もう、有原先輩のことを恐いと思っていませんでした。むしろ、その銀髪の自由さが眩しくて、憧れ始めていました。

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