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モンスターの料理人  作者: 混沌の魔法使い
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プロローグ 始まりの寄せ鍋と雑炊

数年ぶりになろうに復帰する事にしました。テーマは「料理」最近はやりの「異世界」で料理人の小説を書いてみることにしました


荒い所も多いと思いますが、どうかよろしくお願いします

プロローグ 始まりの寄せ鍋と雑炊


「ありがとうございましたー」


こじんまりとした店だが、清潔感に溢れた店に響く青年の声。その声に笑みを零す最後のお客は名残惜しそうに振り返る


「こっちこそありがとう。美味しかったよ、再開発の後は店は……?」


「はは。店は出したいですけどねー、どうにも俺の店は市長とかには人気が無いみたいで」


小さな地方都市に構えられたこの店は、今日で閉店する事が決まっていた。その理由は都市の再開発である、都市全体の一大プロジェクトとし、青年だけではなく。この周辺の店もその殆どが今日を持って閉店としていた


「そうなのか……私はこの店は好きだけどね」


「ありがとうございます。そう言って貰えると俺も嬉しいですよ」


カウンター席に、4人掛けの机が3つ。小さくは無いが、決して大きいとは言えないその店の壁には和食に始まり、洋食までありとあらゆる料理のメニューが張られていた


「人間食べたい物って一杯ありますからね。その人が食べたいって思う物を提供したくてやってたら、こんな感じになっちゃいましたよ」


最初は和食だけだったが、店に来た若い客に中華が食べたいと言われ、中華をはじめた。そして今度は観光客が洋食は無理ですか?と言うので洋食を始めた。和食処と言う雰囲気なのに、中華も洋食もやる。それが青年の店だった


「またどこかで店を開いてくれる事を祈ってるよ」


そう笑った男性が店を出て行った後。店主……「岩崎司」はもう1度ありがとうございましたーと頭を下げ


「ふう……本当また店を持ちてえよなあ」


疲れたように溜息を吐きながらそう呟いた。彼だって店を閉める事に納得している訳ではない、だが廃れた地方都市を復興するという名目での再開発。政府の許可があり、市もそれに向けて動いている以上。諦めるしかなかったのだ……


「飯にするかぁ……」


直ぐに諦めた訳ではない。市長にも直談判したし、彼の料理を愛してくれる人達の署名もあった。だが市長の言葉は冷たい物だった


『和食もやる、中華もやる、洋食もやる。そんな中途半端な料理屋は生まれ変わる我が都市には必要ない』


青年の料理は中途半端だったわけではない、死に物狂いで努力し客に出しても恥ずかしくない味になっていた。だがそれは1度も店を訪れなかった市長にはわからない


『君の店があった所には有名な料理人の弟子や子供達が店を構える事になっている。そこに君見たいな半端者が入る隙間は無い』


有無を言わさない声に青年は引き下がるしかなかったのだ、親の残した店があったから料理屋を営む事が出来ていた青年に新しく店を構える余裕がある訳も無く、明後日から暮らす場所に仕事にさえも悩まされていた。生い先真っ暗の状況に深い溜息を吐きながら、店の暖簾を外し残り物で飯を作ろうとしていると


「もう店は終わってしまったかい?」


「あ、ああ。もう終わりだな」


ガラス戸が開く音も無かったのに突如背後から声を掛けられ、冷蔵庫を覗き込んでいた青年は驚きながら振り返る。そこには幼い少年の姿があった、コスプレのような白い服を来た姿に驚きながらも返事を返す


「困ったな、空腹なんだけど……」


「……ちゃんとした飯は出来ないが、俺が今から食う余り物で良ければ出すぞ?」


その困ったような表情とぐーっと鳴った腹の音に可哀想になった青年は少年にそう笑いかけ、居住スペースに少年を招きいれた。だが良く見ていれば気付いただろう……少年が一度も瞬きをしていない事に、そしてその影が存在していなかった事に……








冷蔵庫の中を改めて確認するが酷い有様だ。朝から何人も訪れていてくれていたのが響いている……


「ねー?何を食べさせてくれるの?」


「ちょっと待ってくれ、今考える」


楽しそうに話しかけてくる少年に待ってくれと返事をする。招き入れたのに碌な料理も出来ないというのは、料理人として、そして招き入れたのに責任が無さ過ぎる


(……これしかないか……)


まともな料理を作る材料は無い。だがその代わりと言ったらなんだが、色々な材料が残っている。俺は戸棚を開き、そこから土鍋を取り出した


「少し寒いから鍋でいいよな?」


「鍋?何でもいいよ~」


お腹空いてるからと笑う少年にそうかと返事を返す。こんな時間に子供1人、迷子かそれとも外人特有の見かけよりも年を取っているパターンか?まぁどっちにせよ、腹を空かせているのなら俺の客だ。残り物の食材で悪いが、最高の飯を作ってやろうじゃないか


(まずはっと……)


土鍋に水を張って、その中出汁昆布を入れ、鶏がらスープの元、醤油、みりんを加えて火をかける。鍋のスープはこれでOKっと、次は鍋の具の準備だ。鮭の切り身を取り出して、一口大に切り分け、毛抜きで細かい骨を抜いてやる、外人だから魚の骨を取るのは苦手かもしれないと思ったからだ


「はーお兄さん、凄いね。そんなに早く包丁を動かして、よく手を切らないね?」


「これでも料理人だぞ?手を切るわけ無いだろ?」


白菜とネギを切っていると少年がキッチンまで入ってきてそう呟く。その幼い口調にやっぱり見かけ通りかと心の中で呟く


「お前さん家族は?」


「んー?居るよ?観光に来て、ここが美味しいって聞いたから食べに来たんだ。家族は日本があんまり好きじゃないから、ホテルに居るよ」


それは正直どうなんだろうな?子供をこんな時間に外に出して、親としての責任が無いんじゃないのか?と思わずには居られない


「直ぐ準備するから大人しく部屋で待ってろ」


「はーい」


ちょこちょこと歩き回る少年に苦笑しながら、今度は鳥のひき肉をボールに入れて、塩、胡椒などの調味料に片栗粉を入れて混ぜ合わせる


「あ?お兄さん、このゲーム何?」


「あーそれか、昔やってたゲームだよ」


大人しくしてろって言ったのにと思いながら、少年が差し出したパッケージを見て苦笑する。「モンスターズワールド」プレイヤーが様々なモンスターになり、冒険したり、畑を作ったりする。オンラインのゲームだ、俺は勿論料理人のモンスター「コックマン」をアバターにしてプレイしていた。店が繁盛するまではそのゲームで料理の勉強をしたよなあっと昔を思い出す。このゲームと親父の残してくれたレシピ、それが無ければ俺はここまでやってこれなかったと思う。肉団子が白くなってきた所で小さく丸め、鍋の中に落としていく。続いて鮭と野菜もどんどん入れて灰汁を取ってから、蓋をして煮詰める


「うん。まずまずだろ」


残り物で作ったという事を考えればまずまずの味だ。本当はシメジとか、豚肉を入れたいところだが、正直材料が無い


「おら出来たぞー」


「わーい♪待ってたよー」


嬉しそうに笑う少年に思わず俺も笑いながら、コタツの上に鍋を乗せる


「ふわあ……おいしそー」


「美味しそうじゃない、美味いんだよ」


俺の料理はなんであっても最高に美味いんだよと言って、取り分ける用の小皿に鮭と肉団子、それに野菜とスープを入れる


「ほら、熱いから気をつけてな?」


「はーい♪」


ふーっふーっと肉団子に息を吹きかけるその姿を見て、「ああ、これだな」と思った。飯を食べる人が美味いと笑ってくれる。それが嬉しくて俺はここまでやって来たんだよ


(やっぱりまた店を持ちたいな)


俺の理想を叶えるには誰かの下で料理をしていては駄目だ。自分がトップじゃなければ無理なんだなと改めて理解した


「お代わりー♪」


「はいはいっと」


お代わりの声に考え事から引き上げられ、少年の皿に料理の追加を入れてやり。今度は自分も具を更に盛り付け、かなり遅めの夕食にするのだった……


「もう無い……」


子供だから大丈夫だろう?と思っていたのだが、凄まじい食欲で鍋の中は空になっていた。まだ物足り無そうな顔をしているのを見て


「ちょっと待ってくれ。確か炒飯用の冷や飯があったはず」


折角鍋にしているんだ、ここはその冷や飯を使って雑炊にしよう。俺は冷や飯を冷蔵庫から取出し、鍋を再び火にかけ、冷や飯を加える。仕上げにと残っていた最後の卵2個を取り出す


「よっとっ」


「おーっ!」


片手で卵を割るとそれを見ていた少年が手をぱちぱちと叩く。その反応に気恥ずかしい物を感じながら、鍋の中に卵を解き加え


「後は火を止めて。蒸らせば出来上がりだ」


本当は刻みネギを加えたい所だが、ネギも残ってない。本当食材が無いってのは辛いな……


「いただきまーす!あふっ!おいひい!!」


「そうか、そいつは良かったな」


美味しい美味しいと笑いながら食べる少年。最初はなんで家に招きいれたんだろ?と思ったものだが、その笑顔で大事な物を改めて実感できた


「ご馳走様でした。迷惑かけてごめんなさい」


「いや、構わない。俺はやっぱり料理をしたいんだって思ったからさ」


ここでこの少年に会わなければ、俺はきっと料理をしたいって言う思いに蓋をして、生きる為だけに仕事をしただろう。やりたくも無い事を仕事にして、本当にやりたい事から目を逸らして生きていただろう。料理をしたい、その想いを裏切りたくない、そう思わせてくれたこの少年には本当に感謝している


「これ、お礼」


ポケットから少年が何かを取り出して差し出してくる。それは少しいびつな形をしているが金貨だった


「ガキが気にするな、大事に持ってろ」


「いいの、美味しいご飯を食べさせてくれたから」


だから貰って?と俺の手に金貨を握らせた少年はううーんっと背伸びをしながら


「お兄さんは料理できるならどこでもいい?見たこと無い人や、知らない人が多くても」


急に訳の判らない質問をしてきた少年に驚く。子供子供だと思っていたが、その嘘は許さないと言わんばかりの眼力に圧倒された


「そうだな、それも面白いかもしれないな」


外国で店を開くのも面白いかもしれない。見たこと無い料理が受け入れられないという可能性もあるが、それでも美味いというのは万国共通だ。もしかすれば、受け入れられるかもしれない。もっとも金が無いので夢のまた夢と言う所だが……


「そっか、またお店を持てると良いね。お兄さんのご飯美味しいから!ありがとう!」


そう笑って掛けて行く少年を見送り、俺は大きく背伸びをして


「もう1回頑張ってみるか」


明日市が斡旋している仕事で料理関連の物が無いか?それを見てみよう。この街に無くても、別の街へ向かうってのもありだと思うしな。俺はそんな事を考えながら店の中へ戻った


「……遠いなあ」


半日掛けてやっと斡旋してもらったのは東京の小さい小料理屋。距離もさることながら、東京は物価が高い。家を借りるのも往生しそうだが、それでも料理が出来る。自分のやりたい仕事が出来ると思えば十分だろう


「ん?」


引越しの手続きを終え、住居兼店舗の家に戻っている途中で俺は見てしまった。居眠り運転だろうか、蛇行運転している車が子供に向かっているのを……そこからは反射的だった。持っていた荷物を投げ捨てて走り出し、呆然としている子供を突き飛ばし、自身に向かってくる車が俺が見た最後の光景だった……


『まさかこんなに早く死んじゃうなんて、でもこれでいいのかも、お兄さん。おいで、僕の世界へおいで』


信じられない激痛と薄れ行く意識の中。俺は昨晩飯を食わせてやった少年の声を聞いたような気がしたのだった……










「ん?ここ……は?」


近くから聞こえてくる鳥の囀り。それで目を覚まし身体を起こす


「病院じゃない?」


俺の視界に飛び込んできたのは緑に満ちた森の中。全く見覚えの無い光景に夢か?と呟き、手を顔へ伸ばそうとして……


「んんん!?」


伸ばした筈の俺の手は何故か丸っこい……なんと言うかあれだ……うん、人間の手じゃなかった


「おいおいおい、嘘だろ?」


顔にも触れてみるが、明らかに人間の骨格じゃない。それなのに見に着けているのがコックスーツなのが妙に腹立つ


「川……か?」


近くから川の流れる音を聞いて、そこなら全身が見えるかもしれない。そう思い音の聞こえるほうに足を向け、透き通った川を覗き込む。水面から俺を見つめ返していたのは丸っこくて、そしてどこか愛嬌のある顔をしたモンスター。ずっと前に俺がプレイしていたゲーム、「モンスターズワールド」のモンスターの1つ「コックマン」だった……


「なんじゃこりゃああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!」


なんで俺がコックマンになっているんだ!?俺は受け入れがたい現実を前に意識が闇の中へ沈んでいくのを感じるのだった……



メニュー1 素朴な味のポトフへ続く

どうも混沌の魔法使いです!なろうに今回飯テロで復活する事にしました。飯テロチャレンジをして見たいと思っていたのですが、その欲求を抑え切れなかった感じです。今回はプロローグなので短いですが、次回からはもっと料理や味の描写を書いて見たいと思います


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