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ゲームブック(四十頁目)

ゲームブック(四十頁目)


はじめに色が、ふたつめに音が。順番に俺の世界に帰ってきた。いつのまにか仰向けに倒れていたようで、正面にお天道様が見える。虹色の日輪を背負ったその光は、我々を祝福してくれているかのようだ。


ちらちらと、天より降り注ぐ光の小片。これは魔法剣のかけらだろうか、それとも。


「……!?」


はっと我にかえり、上半身を持ち上げる。

全身がひどい筋肉痛のようで、だるいというか、何というか。力が思うように入らない。


「おはよう」

「えっ?あ、おはよう」


やっとの思いで身体を起こすと、十班のメンバーが俺を囲んでいた。場にそぐわない挨拶をよこしたのは、急遽ショートカットになったさやだ。


「ユウ。やったな」

「やりましたな」

「さすがに疲れたわ……」


ノブと山本さんが、俺の肩を叩いた。

どさくさに山本さんがそのまま抱きついてこようとしていたので、それは手で制した。


「女王は?勝ったのか?」

「消えたわ、光の彼方にね」

「つまりは俺たちの勝ちだな」


その言葉を聞いた時、力が抜けた。

ぐるんと仰向けに倒れてお天道様と再び目を合わせる。


「はぁぁぁぁー……やった」


心臓を、ゆっくりと達成感が満たしていく。鼓動とともに心地よいそれが広がって、実感を得る。


「ついに……ついにクリアか!」


そう短く呟いた時、いつものあの感覚が背中を撫でた。



ズズズズ……



ついに若き勇者は、古い迷宮に巣食う女王を討ち滅ぼした。この地を支配している迷宮は消失し、領地には光が戻った。


十分な経験点を得た君はレベルアップする事ができた。レベルが10に上昇した。そして、新たな力を得られる可能性がある。

ダイスを一度降る。


黙って指示に従い、ダイスを振った。

カラカラカラ……「6」



おめでとう。


君は魔法剣士としての枠を超え、「魔砲剣士」という新しい(クラス)を得ることができた。

さあこの力を手に、全ての富と名誉が集まる『彼の迷宮』を探し求めたまえ!



……




「魔砲剣士って何だよ。ん、何かおかしいぞ?」


もう一度、ゲームブックを確認する。


「なになに、さあこの力を手に、全ての富と名誉が集まる『彼の迷宮』を探し求めたまえ……か」


少し考える。ボスは倒したし、迷宮はクリアした。そう思っていたのだけど。

どういう意味だ、これ。


「クリアしたじゃん。今」

「もしかしてこの迷宮は、『彼の迷宮』ではない……のか!?」


さやと顔を見合わせる、嫌な予感がする。


そこに博士がやってきた。頭から流血しているし、わりと重傷だ。それでも平然として生きているあたり、かなりの修羅場をくぐって来たのだろう。


「ユウ、やってくれたな大金星だ。……しかし、ここも違ったか」

「あの、博士。迷宮っていくつもあるんですか?」


「ああ、知らなかったのか?迷宮は無数にこの世界に点在していて、皆『彼の迷宮』を探しているのだ」


「えっ!」

「「ええええええーーっ!?」」



……




カシャーン!


氷でキンキンに冷やされたグラスが打ちあわされた。祝勝会開始、乾杯の合図である。


「かはぁー!やっぱり月白の葡萄亭は最高だな。マジでストロングだわ!」

「あーあ。祝勝会ってさ、こないだの良いホテルみたいなところでやりたかったなぁ」

「しょうがないですよ。迷宮クリアといえども結局治療費やら、何やらで経費と儲けがトントンだったのですから」


マイペースのノブ、わがままなさや。

そしてそれをなだめる山本さん、我がパーティはこともなし。いつも通りの感じである。

いい感じに安くて美味い酒の肴を摘みながら話が弾む。


「これでゲームクリアだと思ったんだけどなぁ」

「三期生じゃ知らなくても仕方ないかも。でも、それでも六階のボスの止めを刺しちゃうんだから凄いよね」

「いや、まぁ、ありがとうございます」


面と向かって褒められると、気恥ずかしいものがある。


「そういえばボスの残骸とか、ルルとかどうなったんだろう?」

「ああ。ボスは灰になって、ドロップ品ってなにも無かったらしいぜ。くたびれ儲けだよ。ルルはなあ……」


口ごもったノブに、突っ込んで尋ねる。


「ルルは消えた。リリもいつのまにか居なくなっていたそうだ。ひょっとすると」

「生きているかも?」

「そうだな」


ふぅと一つ。息を吐く。また出会う事もあるだろうか。


「で、これからどうするよ?」

「うーん……そりゃゲームクリアの為に、次の迷宮を探して、とは思ってるんだけど」


今まで一緒に戦ってきた戦友達の顔を見る。


「私はユウくんについていくよ!」

「うーん、最寄りの迷宮も攻略されちゃったしね。私もついて行こうかな」


横合いから参加要請が届いた。女性陣からの信頼は厚いようだ。ノブがにやっと口角をあげて言った。


「実は、川沿いに進んだ少し東にな。まだ探索され尽くしていない迷宮があるんだ」

「良いですな、乗りかかった船ですから」


「じゃあ、次はそこへ向かおうか!」



世界は広い、捜し求める迷宮はどこに?

俺たちのダンジョン生活は終わらない!








あとがき


「今日から突然ダンジョン生活!」を応援頂きました皆様、ありがとうございます!


これにて完結です。


最後までご覧の皆様、いかがでしたでしょうか。打ち切りエンド的な……?いやいや。

キリが良いので終わりにしていますが、ネタが思いついたら新章として再開しても良いかなっとも思っております。


しかしファンタジーって難しいですね。剣と魔法って!なんだよ!

それでも結構好き放題していて、ストレスフリーに書けたので作者的には面白かったです。


さあ!

ブックマーク、評価、感想、レビューなど、是非是非お待ちしております!

ポイントが入って来ると、嬉しいもので。やっぱり「次も頑張ろう!」と、こうなりますから!


また次回作の案内などもございますので、良ければお気に入りユーザーにもご登録を!

では、他の作品で。


また!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ショートカットのアイデア。 豪遊(水着回) [気になる点] 山本さんは元パーティに戻るのか。 [一言] 読了。面白い。 (o^-')b ! 読む前まで、目次を使ったゲームブックだと思い込…
[良い点] 第一部完結お疲れ様でした! 少しずつ読もうと思ってたらいつの間にか最後まで読んでしまってました! ときおり入るモノローグがすごく好きです。 古き良きダンジョン物ってきっとこんな感じなんだと…
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