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ゲームブック(三十四頁目)

ゲームブック(三十四頁目)


第六階層、一体どういうカラクリなのか。

見渡す限りの砂、砂、砂。まさに砂漠である。もっと不思議なのは、我々は地下に潜って来たはずなのに、この階層では天井が無く、空が見えている事だ。

全く不可解ではあるが、狭く苦しい洞穴の中を進み続けるよりは気分は晴れやかだ。


敵の強さ……と言うより、知恵も格段に上がっている。一匹でなく群れて活動する魔物が多くなったし、連携のような行動を取ることもある。

幸いにして攻略隊から落伍者は出ていないが、ヒヤリとする瞬間は何度か経験した。


俺たちは、先に調べていた水場のある安全地帯に陣取り、キャンプを張ることにする。うっすらと肌寒い星空の下、明日の決戦に備える事になった


砂漠の中のオアシスに、博士の声が響いた。


「明日の朝、ついに我々は第六階層の深奥に突入する。ここまで、ただ一人として欠ける事なく来れたのは、ひとえに諸君らの働きによるものに他ならない。後は第六層ボスを討伐し、この世界に終止符を!そして我々の故郷を取り戻すだけだ!」


「そして最後にガエリオに一言頂こう」


「うん、みんな。今まで良くついて来てくれた。全員で生きて帰ろう、以上だ」


「「おおおおお!!」」


攻略隊最強、つまり人類最強との呼び声も高いガリオスの声に、野太い歓声が上がった!

最近知ったが、ガリオスはおっさん連中に絶大な人気がある。

ガリオス人形を作って、リュックに付けているおっさんもいるし、隠れファンクラブもあるらしい。理由は不明だが、おっさん界のカリスマと呼んでも良いだろう。俺にはまだちょっとわからない。


「良いですよねぇ、ガリオスさん」


いつのまにか隣に立っている甲冑の男(山本さん)が呟いた。やばい、ここにもガリオスの魅力に取り憑かれた者がいた。


「えっ!?あ、カッコいいですよね」

「本当にそうですね。あの腕とか。おひげとかどう思いますか?」

「……」



ズズズズ……


若い勇者には、熟練の戦士の妙が伝わらない。君は山本の問いかけに賛同しても良いし、賛同しなくても良い。返事をするのも自由だ。


①太いあの腕でギュってしてもらいたい。

②おひげザラザラしてそう、触りたい。


……



「おい!!」

「え、何ですか?」」


思わず声が出てしまった。ゲームブック、やる事ないからふざけはじめたな。①も②も罠じゃないか。正解は沈黙だな。


「……」

「ユウさんどうしました?」

「…………」

「ユウさん?」


山本さんの問いかけを全て黙殺する。ひたすらに口を結んで我慢した。


「………………」

「………………」


山本さんも、諦めたのか無言になる。俺はそうではないと、目だけでメッセージを送った。


「おい、あいつら何見つめあってるんだ?」

「さあ?」


遠くから、ノブとミカさんの声が聞こえてくる。選択を間違えたかもしれない。



……



その夜。


「ぎぎ……」


すぐ隣の天幕から、呻き声が聞こえて目が覚めた。そこにはノブが寝ている筈だが。

どうした、と断りながら中を覗き込むと、真っ青になったノブが腹を押さえてうずくまっている。


「おい!どうした!?」

「っく!はぁ、はぁ、腹が痛え」

「待ってろ、ミカさんを呼んでくる」


回復魔法は腹痛にも効くだろうか。しかし、それ以外に手立てを知らない。兎に角行動あるのみと判断し、天幕を出て立ち上がった。


すると。


「ぐぐ……」「ぐぎぎ……」


いくつもの、痛みを堪えるような呻き声が聞こえて来た。何人かはテントの外に這い出てもがいている。


嘔吐しているもの、意識の曖昧なもの。一目で異常事態であると言うことが分かった。

急いでミカさんとさやのテントに向かった。彼女らは二人用のテントで寝ている。ばっとその入り口を開いて声をかけた。


「ミカさん、さや!無事か?」


二人ともに寝ていたのだろう。びくりと動いて飛び起きた。


「ど、どうしたの?」「何?」


ぼさっと髪に寝癖のついた二人を見て、ちょっと悪い事をしたような気分になった。

現実には、そんな事を言っている暇は無いのだが。


「いや、みんなが大変なんだ!あとノブが。とにかく外へ!」


どたばたと、三十秒で準備をして飛び出す。すると山本さんが自分の天幕の前で、白目をむいてぐったりしていた。すぐにミカさんが駆け寄り、回復魔法を唱える……が効果が無いようだ。


「これは……怪我でも、毒でもなさそう。病気には回復魔法は効果が無いから」

「病気……集団食中毒的な?」

「いや、そこまではわからないけど」


そこに大きな声が飛び込んで来た。


「非常事態だ、動けるものは外に出ろ!!」


大きな声をだして、テントを回っているのはガリオスだ。真っ先に動き出す博士が黙っていると言う事は、彼もやられたのだろうか。

ひとまず俺たちは、ガリオスに合流して各テントを回ることにした。

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