第8話!
町の入り口にあった魔石車でまた関所まで戻り、そこからハクラの転移魔法で王都へと行く。
国立王都第一病院という場所で色々検査を受け、暖かな食事や飲み物でほっと息をつき、ユフィやエルフィの病室にも行った。
そこにはすでにカノトさんが居て、二人はベッドの上で横たわり輸血を受けている。
顔色がだいぶ戻っているわね……良かった〜。
「……あの、ミスズお嬢様、わたし、お屋敷に連絡をして参りますね」
「あ、そうよね。お願い!」
病院を出て行くマーファリー。
残ったのは私とカノトさん……と、私の腕の中でスヤスヤ眠るウィノワール。
病院の人にもそれはもう驚いた顔をされたけどそれも一瞬。
ハクラがティルを連れていたので、そういう種類の人間だと思われたのか突っ込まれる事はなかった。
複雑だわ……。そういえばハクラとティルはどこへ行ったのよ……?
……正直カノトさんとお話しする事が思いつかないんだけど……。
そういえばカノトさん、ずーっとユフィの顔を眺めてるわね……。
表情は深刻そう……ここはそっと立ち去るのが正解な気がするわ……。スススス……。
「ふう」
「あ、いたいた」
「ハクラ」
フードにティルをインしたハクラが歩いてきた。
こいつ、今までどこにいたのよ。
文句を言うと騎士団と連絡してたらしい。
……仕事してたのか……ごめん。
「はい」
「はい?」
何か細長い布を手渡された。
広げてみると……抱っこ紐的なやつ?
「あるのとないのじゃ全然違うから」
「……ありがとうございます、先輩……」
ハクラに手伝ってもらいながら装着!
背中にウィノワールを背負うようにすると、まあ! なんて楽!
両手が解禁したわ!
「でも肩凝りそう……」
「スヴェンさんに相談すると腰に巻くポシェットとかくれるよ。あの人、ドラゴンのお世話に関してはプロだから。俺もよく相談に乗ってもらう」
「プロ……! なんて心強いの……!」
「まあ、ウィルはティルと違って会話も出来るし記憶もあるみたいだからそこまで苦労はしないと思うけど……」
「……全然起きないんだけど、大丈夫なのかしら?」
「ああ、うん、ドラゴンって人間と時間感覚がそもそも違うんだって。特に『八竜帝王』クラスのドラゴンは寿命がないから、寝ている事が多いらしいよ」
……そうなんだ。
そういえばティルもほぼほぼ寝てるものね……。
ティルといえば……ティルも邪竜と戦えていたわよね?
それって……。
「ねぇ、ハクラ……ティルって、何者?」
「…………」
急に真顔になるハクラ。
ウィノワールと私が契約した時といい、不思議と共通点が多かったような……。
それに『ニーバーナ』って、頻繁に出てきた名前……あれは……『八竜帝王』のうちの一体『銀翼のニーバーナ』って事?
確か『光属性』を司る銀白竜で、アバロン大陸を維持するために残った王様ドラゴンってマーファリーが……。
「……ティルはニーバーナ王の転生体だよ。ウィルと違って、ニーバーナ王はアバロンを守る為に力の全て、肉体の全てを使った。だから記憶も力も全部失って転生したんだ。本人は一応『八竜帝王』の一体って自覚はあるみたいだけど……何も覚えてないんだよね。まあ、俺はそれで良かったと思ってる。アバロンは変わらないといけないから」
……私にはアバロンがどんな場所かはよく分からないけど、マーファリーはようやくつい最近奴隷制度がなくなったと言っていた。
偏見や差別はまだ色濃いだろう。
ハクラが『八竜帝王』のうちの二体、『雷鎚のメルギディウス』と『獄炎竜ガージベル』に頼んでアバロンの大地を取り戻し、アバロン大陸は変わろうとしているんだって。
ウィノワールの温もりを感じる今ならそれがどれほどすごい事なのか、改めて実感できた気がする。
そして、ドラゴンの王様達がどれほど寛大なのかも。
「……やっぱり全然違うわよね」
「うん?」
「ドラゴンと竜人の人たち! ……比較対象が王様だからか余計そう思うわ。……ドラゴンって、本当に誇り高くて寛大な生き物なのね……」
「……うん。竜人族の人たちは、やっぱり人間に近い人が多いよね」
自己犠牲とか、そういうのとはまた違う。
自分の力が大きいから、下々の者どもを助けてやるのが当たり前、みたいな感じ。
それに対して竜人族の……ターバストやクレイドルはその巨大な力を利用しようとした。
それは、人間の考え方にとても近いと思う。
「でも人間に近いから、ケイルさんやレークさんみたいに騎士になった人たちもいる」
「…………やっぱり竜人族は竜人族っていう種族なのね」
「うん、俺もそう思う」
ドラゴンの力を持つ、人。
良い人もいれば悪い人も変な人も強い人も弱い人もいる、って事だ。
なんだ、至極当たり前の事ね。
「今回は規模が大きくなりすぎたけど」
「後始末めちゃくちゃ大変そうよね……」
アルフ副隊長の休暇がまた遠退いたんだろうな、と、ぼんやり思った。








