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恋愛脳オタクの初異世界生活と闇翼の黒竜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
【連載版】三角関係勃発! 三角お山の上のトライアングラー‼︎
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第7話!


 その日の夜。

 夕飯を終えてから、私は突然マーファリーに部屋でドレスへと着替えさせられた。

 なぜ!?

 理由も笑顔で誤魔化され、お化粧も髪型もバッチリに整えられて連れて行かれたのは本邸一階にあるダンスホール。

 屋敷の中にダンスホールがあるのかよ、と最初は驚いたものだけど、領主邸には当たり前にあるものなのだという。

 エルフィの誕生日会も行われたそのダンスホールには、美味しそうなお菓子やお茶やジュース。

 高価なシャンデリアが輝く中、優美なピアノの音が音楽を紡ぎ、盛大な拍手が私を迎え入れてくれた。

 何!? 何!? なんなのー!?


「マ、マーファリー、どういう事!?」

「あ、えーと、ハーディバル先生が……」

「マーファリー・プーラ」


 咎めるような鋭い声。

 ハーディバルと、同じく騎士の装いのハクラ。

 お、おお、初めて見た……ハクラの騎士服姿……。

 マントは白に金の刺繍。

 なにあれ豪華、高価そう。

 髪も下ろしてるし、こうして見ると確かに王子様っぽい……!

 正装のカノトさんに、ドレス姿のエルフィとユフィ。

 使用人やメイドの皆さんもいつもと制服がなんか違う! 刺繍が施してあって豪華よ!?

 え? どうしたの? どうしたの!?

 私の知らないところで恋愛イベントが起きてるの!?

 それとも何かの祝いごと!?

 どうしたっていうのー!?


「秘密にしていてすみません、ミスズ様。実はとある方の提案で、ミスズ様に是非パーティを楽しんで頂こうと急遽準備いたしましたの。ミスズ様がいらしてから既に一ヶ月……改めて歓迎パーティーを開くのも、良いかと思いまして……」

「えええ!? そ、そんなわざわざ!?」

「お見合いパーティは中止になっちゃったんでしょ? ハーディバルのせいで全然楽しむどころでもなかったみたいだし、いいんじゃん?」

「ハクラっ」

「まあ、それはそうだけど」


 ムッとしたハーディバルだが、ハクラに愚痴った記憶はあるので否定はしない。

 でも、そうか、私がこの世界に来て一ヶ月かぁ……あっという間だったな……。


「嬉しいけど……でも、いいの? こんな状況なのに……」

「確かに不謹慎かもしれませんが、ミスズ様をこの世界に誤って呼び出してしまったのはこちらの落ち度ですわ。この一ヶ月、ミスズ様は一度もわたくしどもを責めたりなどなさいませんでした。それどころか、わたくしやお姉様にも優しく接してくださり……とても仲良くしていただいて……きちんと感謝をお伝えしたかったのです」

「エルフィ……そ、そんな大袈裟よ〜?」


 それは下心的なものが……げふんげふん!


「ミスズからすれば大袈裟かもしれませんが、私たちは本当にそう思っているの。今日も、私の悩みの相談まで受けてくれて……ありがとう……。私、いえ……私たちは、貴女に出会えた事を心から感謝します。そして改めてお約束します。貴女を元の世界へ必ずお帰しします、と」

「ユフィ……」

「ですから、それまではどうかこの世界で、この国で、この町で……わたくしたちと共に心穏やかに過ごしてくださいませ。ミスズ様がこの世界に来た事を少しでも良い思い出にしていただけるように」

「……エ、エルフィ……」


 うっ!

 や、やばい、泣きそう……!

 こんな状況なのに、大変だし忙しいしそんな場合じゃないはずなのに、なのに……わ、私なんかのために……!


「それにせっかくパーティマナーやダンスを教わって披露する場がないのももったいないですよ。頑張ってくださいね! ミスズお嬢様」

「……え、ええぇえぇ……」


 そ、それはマーファリーも同じじゃないの!?

 口にするよりも早くハクラがなにやらはしゃぎながら私の手を掴む。

 え、ちょ、なに!?


「ケーキ食べよう! ……あ、間違えた」

「は!?」

「ハーディバルの魔力の気配がしたけどミスズだった。ごめん、間違えた。行こう、ハーディバル」

「は!?」


 振り返って私の顔を見るなりシュンとしてそんな事を言いやがる。

 そして改めてハーディバルへ手を指し延ばす。

 こ、こいつ!

 ま、間違えたってなに!?

 私とハーディバルを間違えた〜〜!?


「…………お前感覚で生きすぎです。僕はいいです、満腹なので」

「えー。じゃあミスズ行こう」

「なによそれ!? そもそも私とハーディバルを間違えるってなに!?」

「魔力補助器のせいだよ。ミスズの付けてる魔力補助器はハーディバルの魔力を間接的に使うものだから、残滓が漂ってたんだよね。だから間違えたの、ごめんってば」


 そ、そういうものなのか……。

 じゃ、なくて!


「だからって間違える!? 普通間違える!?」

『ぼくもまちがえてた』

「うわぁ!?」


 ハクラの腰に下がっていた少し大きめのポシェット。

 そのフタが上がると中からティルが首を伸ばしてきた。

 えへ、なんて首を傾げる姿にエルフィから「可愛いですわ〜」という声が上がる。

 普段はフードの中で寝ているホワイトドラゴンのティル。

 今はそこにおいででしたか……。


「ティルもケーキ食べる?」

『ケーキ? たべる〜』

「ドラゴンってケーキ食べるの!?」

「うん、ティルは雑食だからね」

「……へ、へぇ、ドラゴンって雑食なんだ……」

「いや、ドラゴンも種類によっては肉食だよ。例えば翼竜種や巨竜種は肉食だね。特に巨竜種は同族同士でもお腹が空けば喰らい合う事もあるらしい」

「なにそれ、コワッ!」

『ぼくはちがうよ〜。ぼくは“ひりゅうしゅ”だからフルーツとかがすき』

「種類によるのね……へぇ〜……」

「肉食のドラゴンはほとんど人の世界には居ないよ。ドラゴンの森で暮らしているから」

「……確か、ドラゴンの領域なのよね、そこ」


 前にマーファリーが言ってた。

 この大陸の半分くらいはドラゴン族の領域。

 その領域はドラゴンの森と呼ばれ、立ち入ったら最後、アルバニス王国国民の市民権を破棄したものとみなされる。

 なぜならドラゴン族とアルバニス王国は『人はドラゴンの領域を侵さない。その代わり、ドラゴンは人を食べない』事を条件に不可侵条約を結んでいるのだ。

 その約束を守らない人間はアルバニス王国の民ではなくなる。

 厳しいかもしれないけど、そのくらい厳しくしなければ密猟目的の馬鹿が減らないのだそうだ。

 ドラゴンの鱗は高価だし、血や肉、内臓は薬にもなる。

 大昔はそれが普通に流通していて、弱いドラゴン族の種族は狩りの対象にされていたらしい。

 でも種族は違えど『八竜帝王』は色ごと……正しくは属性ごとで群れになっているので、弱い種族が人に狩られると同属性の別の強いドラゴン種が敵討ちに来る。

 その悪循環でドラゴン族の人間への好感度はだだ下がり!

 トドメは戦争を繰り返し、邪竜を誕生させた事。

 アルバート王が大陸を平定して、ドラゴンとも不可侵条約を結んだ事でドラゴンが領域に引きこもり、人間を食べなくなったから余計な争いは無くなるわけだ。

 そりゃそうよね、ドラゴンと人間じゃどう考えたって人間の方が弱い。

 無駄な喧嘩はするべきじゃないわよね。

 それなのに未だ市民権を捨ててでも、ドラゴンの鱗や血肉を求める馬鹿はいなくならないみたいで、そういうやつらの命の保証をしないのが国の方針というわけ。

 うちの国の人間ではないので煮るなり焼くなりどうぞご自由に、というわけだ。

 おっかないわよね……。


「まあ、肉食じゃないドラゴンもたくさん棲んでるけどね。地竜種とか、樹竜種とか」

「……ふーん……」


 正直ドラゴンってあんまり興味ないのよね。

 だってトカゲとか蛇みたいでただ怖いだけだもん。

 ティルはギリギリオーケーな大きさだけど、これ以上大きいやつは絶対怖いと思うわ。

 爬虫類系、可愛さがまるで分からない。


「で、ミスズもケーキ食べに行く?」

「いいわ、結構よ。私も夕飯食べたばかりだもの」

「……お代わりまでしてたもんね」

「……だってこの世界のご飯美味しいんだもの……」

「そういえばハーディバルの作ったお菓子は食べた?」

「…………え?」


 あ、そういえば朝、ハーディバルが私にお菓子作ってきたとかなんとか言ってどこからともなくバスケットを持ってきていたな。

 あの毒舌ドS、毒舌ドSのくせに料理が趣味なのだという。

 フェルベール家という家系が料理を嗜みとしているらしいけど、想像つかないわよね。


「僕の作ったヤツならテーブルに置かせてもらっていますよ」

「え? ほんと? どれどれ?」

「タールパイです」


 お腹はいっぱいだけど、あれだけ大口叩かれたとなると興味はある。

 ケーキやクッキーなんかのお菓子や軽食が並べられているテーブルに、ハーディバルが作ってきてくれたお菓子があるのか。

 ハクラと一緒にハーディバルの作ったお菓子……タールパイとやらを探す。

 タールパイっていうのはあれよ、ピーチパイ的なやつね。

 二年ほど前から流通するようになったというタールという果物。

 元々はアバロン大陸にしかない果物だったんだって。

 二年ほど前に種や現物が持ち込まれて以降、バルニアン大陸でもアバロン大陸の野菜や果物が栽培されるようになってきた……とか、マーファリーが嬉しそうに話していたのよね。

 ふふ、アバロン大陸にも美味しい食べ物はあるんですよ、なんて胸を張って……可愛かったわ〜。

 ん? アバロン大陸の野菜や果物……?


「ねえ、ハクラ……アバロン大陸の野菜や果物ってやっぱり珍しいんしゃない?」

「え? うん、そうだね。でも、ほらハーディバルは割といい所のお坊ちゃんだから、タールも手に入れられたんだと思うよ。お菓子作りには本当手を抜かないから」

「って事は、アバロン大陸の野菜や果物を栽培したら結構いい商売にならないかしら?」

「……そっち? ……ああ、まあ、でもそれはそうか……な? 地質や気温や湿度が関係しているのか、アバロンの野菜や果物はバルニアンではまだ上手く育てられていなくて、出回ってるのもアバロン大陸から輸入しているものだけみたいだし…………聞いてる?」


 ぃよっしゃー!

 やっぱりそうなのね! いい事思いついたんじゃない!? 私!

 なによ、薬草の勉強よりも野菜や果物の方が楽そう!

 うんうん、そっちにしよう!

 私ってば頭いい〜!


「例えば一番簡単に育てられるやつって!?」

「……え? ……うーん……俺はラズ・パスっていう国の出身だから、ラズ・パスの野菜や果物くらいしか知らないけど…………でもそうだね……ティマティーとか?」

「なに? ティマティーって。どんな物なの?」

「赤とか黄色い実がなる野菜。一つの苗でたくさん採れる、ラズ・パスではポピュラーなものだね。スープの材料やサラダに使われるかな〜」


 うーん、話に聞いた感じ全然想像付かないわね……。

 色はともかく形を改めて聞くと、どことなくトマトっぽい。

 トマト、トマトかぁ。

 トマトなら確かに簡単そう、かも?

 小学校の頃に夏休みの宿題でプチトマトなら育てた経験もあるし、なんとかなるんじゃない!?


「で、食べたです?」

「ま、まだよ」


 う、後ろからの圧が……!

 ハーディバルがさっさと自分の作ったおやつを食えと圧をかけてくるわ!

 エルフィたちも来たし、レナメイド長が切り分けておいてくれたパイを皿に盛る。

 見た目も綺麗に焼けてて美味しそうだけど……これ、本当にドS騎士が作ったの?



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