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恋愛脳オタクの初異世界生活と闇翼の黒竜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
【連載版】三角関係勃発! 三角お山の上のトライアングラー‼︎
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第4話!

「……それにしても……塔って言う割に低っく!」


 騎士塔は同じ中央区の東区寄りにあった。

 塔と言うからにはそれなりに高い建物を想像していたがせいぜい三階建て。

 他の建物より少し高いくらい。

 なんか拍子抜け。


「あまり高いと町の景観にそぐわないんだそうです」

「……あ、そ、そうなの……」


 そうか、ユティアータは大きい町。

 景観とかも気にするのね……。

 ご、ごめんなさい。

 中に案内されると、思ってたよりも綺麗なロビー。

 え? ロビー!?

 騎士塔なのにロビーがあるわよ!? 受付があるわよ!?

 役割がさっぱり分からない!


「あの、落し物をしたんですが……」

「いつどの辺りで、何を落とされましたか?」

「西区の用水路付近で小銭の入った財布を落としたんです。ついさっきなんですけど……」


「!」


 男の人が、カウンターに座る衛騎士に落し物相談してるわ!

 衛騎士さんって町中の見回りしてるだけじゃないんだ!?

 まるで交番じゃない……落し物預かりとか……。

 かと思ってると……。


「すいません、宿屋がどこにあるか教えてもらえませんか」

「はい、ご予算は?」

「えーと、このくらい……」

「でしたら、こちらなどいかがでしょう? 部屋は広々としていて、薬草を煎じたお風呂が人気の宿なんです」

「わあ、綺麗な部屋ですね」


「……!?」


 あっちでは案内所みたいな事やってる!

 えーーー! 衛騎士さんってあんな事もやってるのー!?

 し、知らなかったー!


「なにキョロキョロしてるです」

「え、いや! 衛騎士さんって町中を巡回してるイメージしかなかったから……! こんな事もしてるのね……!」

「ですよ。衛騎士隊は各町や村に駐在する場所があり、市民の安全安心を守るのが主な仕事なんです。騎士団の中では最も規模が大きな騎士隊で、指揮系統も全く別物。衛騎士隊の隊長は必ず騎士団の団長か副団長を担う決まりがあるほど重要な存在です。我々のような戦闘に特化した隊より、余程市民に身近な騎士隊です。まあ、全然危なくないかと言えば魔獣が出現した際、やはり戦わねばならないのでそうではないですが」

「た、大変なお仕事なのね……!」

「ええ、衛騎士隊こそが騎士団の基盤といっても過言ではないです。華々しさがあると言う点で衛騎士隊以外は注目度が高いですが、騎馬騎士隊も魔法騎士隊も天空騎士隊も海竜騎士隊も衛騎士隊に二年以上勤め、試験に合格しないと入隊できないです。僕はスカウト枠なので衛騎士隊経験ないですけど、普通に考えて他の騎士隊より危険度低め、安定した収入、週休二日制、国民に尊敬される職業第一位の騎士を名乗れるなど実に理想的ななりたい職業ではないでしょうか」

「お、おお……!」


 それは素敵ね!

 大変そうだけど……お給料もお休みも安定していて国民に尊敬される職業第一位なんて……!

 ……でも、そうだったんだ……確かに騎馬騎士隊とか魔法騎士隊とか、派手なイメージ。

 強くてかっこいい感じするわー。

 花形だったのね……。


「仕事と言えばミスズはやりたい事とかないの? ゲーム以外で」

「ブッ!」


 …………………………。

 じーっと見つめる金色の無垢な瞳。

 恐る恐る振り返る。

 つ、ついに聞かれる日が来てしまったか……!


「……マ、マーファリーには……通信端末が使えないうちはダメって……」

「まあ、連絡取れないのは仕事に差し支える場合もあるしね。じゃあ何かやりたい事とかあるの?」

「うっ」


 おのれ、アホっぽいくせに話逸らしが効かない!

 やりたい事……やりたい事……ゲーム以外でやりたい事、なんて……。


「そ、そもそも、この世界の仕事とか何があるのかまだよく知らないし……」

「職業訓練所に通えば?」

「……まあ、まずは魔力の使い方をマスターしてからでしょう。魔力によっては向き不向きがもあるです」

「それもそうだねー」


 ……はぁ。

 溜息が出た。

 そりゃ、私だって無職のままただユスフィアーデ邸でごろごろおやつ食べながら勉強の日々には疑問を抱いていたわよ?

 一応成人してるし、同い歳のユスフィーナさんがこの町の領主やってるんだもの……そりゃ意識するわよ。

 でも高卒でスーパーのパートしかしてない私が、この世界でどんな仕事につけるっていうの!?

 ええ、分かってるわ!

 本当のところ日がなのんびりして過ごすのが楽すぎて楽しいのよ!

 勉強だってほとんどRPGみたいなファンタジー世界の事を学ぶんだから楽しいだけだし!

 つ、辛いのは文字の練習と剣術の訓練くらい!

 あとは美味しいご飯とおやつとお茶!

 そんな生活、最高に決まってるじゃなーい!


「それはそれとしてハーディバル、竜人の騎士さんってどこ? ターバストさんについて聞いておきたいんだけど!」

「お前まだそんな事を……」


 いやー、だって私にしてみれば最重要任務だもの!

 受付ロビーの脇の廊下を歩いて行くと、これまた綺麗なラズベリーみたいな赤い髪のお兄さんが近づいて来た。

 薄い紫のマント……って事は、ハーディバルの部下の人かしら?

 あ、いや、でも見覚えある気がするわ……どこで見たのかしら?

 確かかなり最近見たような……?


「隊長、遅かったですね」

「ちょっと……。引き継ぎは終わりましたか?」

「はい、滞りなく。それで、ええと」

「……一応紹介するです」


 あ、私たちの事か!


「例の異界の女と、魔法使い志望のクソガキです」

「それ紹介になってないから!」

「これは魔法騎士隊副隊長、レーク・スティルページ。お前ご所望の竜人族です」

「はじめまして」

「「え!? 竜人族!?」」


 私と声が被ったのはナージャだ。

 えー、イメージとちがーう!

 すっごい普通の人っぽーい!

 ドラゴンの要素全然見当たらないんだけど……!?


「あのあの! 全然鱗や翼もないんですかぁ!?」

「ええ、私は竜人族の父と人間の母を持つハーフなので容姿は人間寄りなんですよ」

「あ……そ、そうなんですね……ごめんなさい……」

「いえ……?」


 いきなり食いついたと思えば、しゅん、とうなだれるナージャ。

 へぇ、そういう人もいるんだ〜。


「じゃあ普通の竜人族の人はもっとドラゴンっぽいの?」

「お前、それ若干差別入ってるぞ」

「え! あ、ごめんなさい……そんなつもりは……」


 ハーディバルに素で叱られてしまった……。

 そ、そう、確かに今のはそう捉えられかねない言い方だったわね……。

 うう、王子様にハゲとか毛深いとか言っちゃったんだから気を付けなきゃいけなかったのに……アタタタタ……。


「いえいえ。……竜人族の容姿は生まれつき様々なんです。トカゲのような姿で二足歩行する者、翼がある者、鱗しかない者など、千差万別。私のように人に近い者は珍しいですね」

「だからと言って魔力量やパワーは竜人族のそれなんですよ、こいつ。素手で暴れるラックを放り投げた時はゾッとしたです」

「あはははは」

「………………へ、へぇ……そ、そうなんですか……」


 ラックというのはこの世界の肉用の家畜だ。

 牛のように大きく鳥のように鳴き、めちゃくちゃ凶暴。

 でもその肉はとろけるように美味しい。

 実物を見た事はないけど、牛くらい大きい暴れたラックを素手で投げたって……考えただけでヤベェわよ!


「それはそうとハーディバル隊長、アルフ副隊長は会議室でお待ちですよ」

「あー、忘れてたです」

「え、ずるい……」

「ずるい?」


 そこでなぜ「ずるい」なのかが分からず思わず口に出てしまった。

 すると横からハクラが……。


「ハーディバルの部下だよ? 察しなよ」


 ……と、なんて事もないように言う。

 察しろって何を……と声に出そうになってからスワッとハイネル・グロウリーというドMの魔法騎士を思い出した。

 ……え……まさか?


「放置プレイだけでも羨ましいのに……更に忘れられるなんて……! 同じ副隊長なのにこの扱いの差! 私も隊長に蔑ろにされたい!」

「もう少し仕事モード維持しやがれです」

「こほん……すみません、つい……。気を付けます」

「「………………」」


 ……魔法騎士隊、ヤバイ奴率高くない?


「でも一発だけ殴ってくれませんか」

「ハクラ、訓練所は地下です。好きに使いやがれです。許可は僕が出すです」

「うん、分かったありがとう」


 真顔でなに頼んでるの!?

 突っ込みはハーディバルのスルースキル発動により言葉にこそならなかったけど、衝撃は当然残る。

 ……魔法騎士隊ヤッベーなっ!!!!

 ハクラは笑顔でハーディバルを見送るが、振られたレーク副隊長はがっくりうなだれる。

 分かってる、竜人がみんながみんなこうじゃないのは分かってるわ。

 むしろ魔法騎士隊がアレなのよね!

 ハーディバル……恐ろしい子…………関わった人間をとんでもない性癖に目覚めさせる体質なのかしら……。

 私も気を付けよう……!


「さーて、それじゃあ俺たちは地下で訓練しようか。ミスズは魔力補助器の使い方、ナージャは魔法の練習かな?」

「あ、あのぅ、ナージャ、今……魔法が使えないんですぅ……魔法を封じられていてぇ」

「そうなの? あ、もしかしてそれが誤召喚のペナルティ? 随分軽いやつで済んだんだね〜」

「う……は、はい。お嬢様がお口添えくださったからかもしれませぇん……」

「じゃあ魔力の収集と凝縮と固定までの練習しようか。それなら出来るんじゃない?」

「は、はい! よろしくおねがいしますぅ」


 というわけで地下。

 意外と広い訓練所が四つの部屋に分かれている。

 空いていた訓練部屋に入るなり、ハクラはバケツを二つ、持ってきた。

 なぜバケツ?


「ついでにミスズもこれ使って練習したらいいよ」

「バケツ? 何に使うのよ?」


 私同様、ナージャも変な顔をしている。

 ハクラはバケツを床に下ろすと手をかざす。

 バケツの中に白い光が瞬く間に溜まって、たっぷたっぷになった。

 これは、魔力?


「魔法を使うにはね、最低限バケツ一杯分が必要になるんだ。身体強化魔法はこれの半分くらいで済むんだけど、初級の魔法の必要量はおおよそこれくらい。つまり、バケツの中に魔力を収集、溜め込んで凝縮、固定出来れば初級魔法は使えるようになるって事」

「!? こ、こんなに必要なの!?」

「!? こ、こんなに必要なんですかぁ!?」

「現在の魔法陣と詠唱だと最低限これくらい必要なんだよ。昔は浴槽一つ分必要だったらしいから、これでもかなり必要魔力は節約出来るようになってる。今後研究が進めば、さらに節約出来るようになるだろうけど……」

「そ、そうなんだ……」

「は、はわわ〜……」


 魔法陣とか詠唱にそんな意味があったのか……魔法って奥深い……!

 うーん! 使ってみたい〜!

 私も練習したら使えるようになるかしら……?


「ミスズはただ魔力補助器から魔力を取り出すイメージでバケツに魔力を注いでみてよ。収集、凝縮、固定は魔法を使うわけじゃないから気にしないで。ナージャは体内魔力を出来るだけ使わず、自然魔力の収集、凝縮、固定に専念してみようか」

「わ、分かったわ」

「は、はいですぅ」



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