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恋愛脳オタクの初異世界生活と闇翼の黒竜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
【連載版】目指せマイナス五キロ。人生初のパーティで恋愛イベントを成功させよ!
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第7話!


 ハクラと別れて湖のほとりにある広場へと進む。

 その広場はそこそこの人が集まっており、そのほとんどは今回のパーティの参加者へ意気込みをインタビューするメディアの人。

 うわぁ、めんどくさい。

 私たちも立ち所にロックオンされる。


「すみません、参加者の方々ですね!? 意気込みをお願いします!」

「申し訳ございません。目立つ事は控えたいのです。お許しください」

「あ、えっとでは、その後ろの!」

「す、すみません、急ぎますので!」

「わ、私も!」


 涼やかにインタビューを断るエルフィに付いて、マイクを避ける。

 広場の転移陣を発動させるエルフィ。

 次の瞬間、王城門前……城壁広場へとたどり着く。

 六つの城壁への転移陣が並んでいる。

 赤い転移陣、騎士のオブジェは『騎士団の城壁』。

 名の通り騎士団の詰所や宿舎や訓練所などがある。

 黄色い転移陣、本のオブジェは『歴史と知識の城壁』。

 通称『図書館』。この国の知識の宝庫。

 紫色の転移陣、女神のオブジェは『慈愛の庭の城壁』。

 城で働く士官や客、旅人などが泊まれる超大型ホテル町だ。

 青の転移陣、剣と盾のオブジェは『力と守りの城壁』。

 闘技場付きの健康ランドのような場所らしい。

 緑色の転移陣、花のオブジェは『国光の城壁』。

 国の研究施設や戸籍の管理など役所の中枢。ここはアイテムがないと入れない、一般人立ち入り禁止。

 白い転移陣、クリスタルのオブジェは『眠りの城壁』。

 衣類、食料、魔石などが保管された氷点下の貯蔵庫。一応施錠された扉はあるが、用がないのに立ち入ると下手したら誰にも気付かれず凍死する。

 普段なら多くの人が『図書館』や健康ランド……じゃなく『力と守りの城壁』に訪れる場所。

 その奥に、十メートルはありそうな城門がそびえている。

 普段は閉まっているその門が、今日はしっかり開いてお客を迎え入れていた。

 お、おお……すげぇ迫力……。


「参加者の受付は中になります! 参加者の方は奥へどうぞー」


 門番の衛騎士さんに促されて、ついに城門をくぐる。

 噴水と、左右に広大な庭。

 まあ、山頂なので緑は豊かだろうけどさ。

 噴水を過ぎていよいよ城内。

 また衛騎士さんたちが待機していて、こちらへ、と案内される。

 まあ、案内してもらえるのはいいんだけど。


「やばい……もう足が痛い……!」

「は、早いですわ、ミスズ様……!」

「だ、だってこんな高いヒール、そんなにすぐ履きなれないわよ〜」


 足がガクガクなんだけど! つらい!

 愚痴る私をマーファリーが支えてくれるが、それで治るわけもなく!


「どうしました?」

「あ……」


 エルフィがサクサクと受付を済ませ、私が休める場所はないかと受付にいた衛騎士に聞いてくれた。

 しかし、その前に私とマーファリーに女性の声がかかる。

 振り返ると胸元が大きく開いたボディコンのような服に薄い肩掛けを纏った紫髪の美女。

 な、なんというグラマラス……! かつ、お色気!


「まあ、ミュエ先生! ごきげんよう」

「ごきげんよう、エルファリーフ」

「先生、どうしてこちらへ?」

「会場設営の手伝いよ。男ばかりでは華やかな飾り付けに欠けるでしょう? それから女性たちへのアドザイザーとして別室で講義をしていたの。あなたたちより前に到着している一般参加の子たちへ最低限のマナーとかをね」

「そうでしたの」


 ……あのミニスカボディコン風の服装はマナー的に大丈夫なんだろうか?

 非常に気になるんだが、そこは異世界。

 私の世界とは常識が違うのかも。


「……ですが、その……本日はまた、いつも以上に刺激的なお召し物ですわね……」

「この後旦那とデートなのよ〜! うふふ! つい張り切って買っちゃった」


 既婚者!? 既婚者でそれ!?

 ひ、ひえええぇ!? 旦那さんいいもん食ってんなぁ!?


「今年はうちの末弟がパーティに参加するでしょ? 少し覗いて様子を見てから待ち合わせ場所に行くつもりなんだけど……エルファリーフ、ハリィがなにか失礼な事を言ったら容赦なくぶん殴って注意してくれていいからね」

「と、とんでもございませんわ! ハーディバル様には先日も我が町に出現した魔獣を退治していただきましたし……。わたくしの誕生日プレゼントで頂いた魔石のネックレスも、攻撃無効化の魔法が封じてあり、守ってくださいましたもの。本日は改めて御礼申し上げねばと思っておりますの」

「……まあ! なんてダサい……」

「そ、そんな事はございませんわ! このネックレスのお陰でわたくし命拾いいたしましたのよ」


 テンション高めのお姉さん……いやお姉様はエルフィの手にあるネックレスを見るなりテンションが下がり声も下がった。

 うーん、それには同意する。

 効果は抜群だったけどなにぶんダサい。

 まさか今日もそのダサいネックレスを大切そうに首に下げているとは思わず、私とマーファリーの肩が一瞬強張った。

 あのドレスに、あのダサいネックレスを合わせてきた!?

 正気の沙汰とは思えないわよ!?


「だとしてももう少しセンスのいい物があったと思うんだけれど……? ……あいつ、うちに帰ったらゲンコツね」

「ミュエ先生……!」

「ところで、そちらのお嬢さん大丈夫? あなたのお連れ?」

「あ、はい」


 エルフィとの会話を打ち切り、私に向き直るお色気ムンムン美女。

 そこでエルフィが「ミュエベール・フェルベール先生です。わたくしが以前通っていた魔法学校の先生ですの」と紹介してくれた。

 あれ、フェルベールって……。


「愚弟がいつも迷惑をかけてるわね?」

「い、いいえ」


 や、やっぱりドS騎士のお姉さん!?

 女性初の『剣聖』の、あの!?

 ひえーー!? こんな若くて美人でお色気ムンムンな人が『剣聖』〜〜!?

 しかも魅惑の女教師!? なんて盛りだくさんなの!?


「こちらは我が家の客人ミスズ様と、我が家のメイドのマーファリーですわ」

「ミスズ……? もしかして、異界から事故でいらしたという?」

「……あ、は、はい……」

「そう、あなたが……。魔法の事故に巻き込まれるなんて災難だったわね……」

「……そ、それは、はい……まあ……。でも、特に不便もなく手厚くもてなしてもらっているので不満はないです」


 これは本当だ。

 エルフィは可愛いし、ユスフィーナさんも忙しいながらちゃんと私に気を遣ってくれる。

 マーファリーなんてトイレやお風呂の時に必ずお世話になるし……。

 本当、有り難い限り。

 もし言葉も通じず、放り出されていたら世界を呪いながら死んでる自信があるわ。


「それならいいのだけれど……。今現在困っているようだったわよ?」

「あ、はい……ヒールが履きなれなくて、踵が……」


 実際足もかなりクタクタ。

 踵は皮が剥けて血がストッキングにどろりとついている。

 マーファリーとエルフィが「きゃあ……っ」と痛そうに声を上げるが、実際痛い私は声もあげられないし足もこれ以上動かない。

 プルプル立ち竦むのみだ。


「わ、わたくしの治癒魔法で……」

「いけません、お嬢様! このような廊下の真ん中で……!」

「ですが……」


 しゃがみ込もうとするエルフィをマーファリーが制する。

 確かに、ロングドレスのエルフィがしゃがむのは少しお行儀が悪い。

 私もドレスの裾をまくらないといけないから、少し恥ずかしいし。


「私も得意属性は『火属性』と『雷属性』で治癒魔法は使えないのよね」


 ……わ、わおう、お姉様、なんて攻撃的な属性……!


「あ、ちょうどいいところにちょうどいい奴が……ランスロット!」


 突然お姉様が私の向こう側に声を掛ける。

 そこには右肩に鎧を付けた赤いマントの騎士がいた。

 黄土色の髪と瞳の大柄な人物は「これはミュエベール殿!」とまるで大型犬のように駆け寄ってくる。

 彼の横に立っていたプラチナブロンドの髪と緑の瞳の優しげな超イケメンも、彼に続いて近づいてきた。

 同じく肩に軽微な鎧をつけた薄い水色のマントの騎士服の男性。


「こんばんは、ミュエベール様」

「どうかなされたのかな!?」

「……ランスロット団長、少し声量をお控えくださいと申し上げたばかりですよ」

「おっとすまんすまん!」


 ……全然声量が下がる気配のない大柄な人物……。

 ……ランスロット、団長……!

 それって……!


「ま、まあ……エーデファー団長様……! ご、ごきげんよう……」

「ん! こちらはユスフィアーデ家の! ご無沙汰している! お元気であるかな!?」

「は、はい。姉共々……」

「それはなによ、り!?」


 挨拶もそこそこに、ランスロット団長の側頭部をミュエ先生がチョップでぶん殴る。

 な、なぜに!?


「声量を下げなさい! パーティ会場でもその声量だったらつまみ出すわよ!」

「……はっはっはっ! また怒られてしまったよスヴェンくん!」

「……そうでしょうね」


 ランスロット団長の横にゆっくり歩いてきた超イケメンも笑顔で頷く。

 というか、やっぱり……この甘いマスクの超イケメンさんが……!


「ご無沙汰しております、ユスフィアーデ嬢。大きくなられましたね」

「ごきげんよう……お久しぶりですわ、ヴォルガン様」

「お姉様はお元気ですか? 領主となられたそうで」

「はい。日々忙しそうにしておりますが……」

「先日は大変でしたね……ハーディバル隊長が数十年ぶりのレベル3と対峙したと言っていましたが……町の被害は……」

「幸い、もうお一方手練れの者がおりましたので町や民の被害は最小限に済みました。御心配ありがとうございます」

「ふむ、我々も駆けつければよかったのだが……」

「ストップ! 仕事の話はそれまで!」


 がすっ!

 またもランスロット団長の側頭部にミュエ先生のチョップが入る。

 ……結構痛そうな音がしているのに、ランスロット団長全然平気そうだな。


「ランスロット、こちらのお嬢さん、足をくじかれたようなの。別室に運んであげて」

「なんと! それはお辛いな! では少々失礼させていただこう!」

「へ!」


 どーん! と胸を叩いたランスロット団長に、まるで小型犬か猫のようにひょいと担がれる。

 いわゆるお姫様抱っこで。

 状況は分かるが頭が追いつかない。

 え? 待って、ちょっと待って。

 お姫様抱っこって、そんな、え、これはちょ……このシチュエーションは……!


「こっちよ。休憩用の部屋が用意してあるからパーティが始まる前に治療しましょう」

「わたくしが!」

「では私が……」


 ミュエ先生が案内してくれた部屋に軽々運ばれる私を治療する役目に、エルフィとスヴェン隊長が名乗りをあげる。

 が、正直それどころじゃないし、出来ればエルフィにお願いしたい。

 だって、ランスロット団長ってっ……そんな、私が想像してたより全然色気たっぷりの大人の男じゃない!?

 ななななななによこの人のこの色気!?

 性格は全然お色気担当っぽくないのに!

 いい匂いするし、あったかいし、胸板厚いし逞しいし……っ!

 包容力? これがマーファリーの言ってた包容力なの!?


「大丈夫か?」

「……は、はひぃっ」

「心配ない、パーティが始まる前には治る。スヴェンくんは治癒魔法のエキスパートだからな! ははは!」


 ……スヴェン隊長決定?

 いやいや、それより顔の近くで喋んないで!

 私、こんな、男の人にこんなに近くで喋られた事もなければこんな密着した事もないしですね!?

 お姫様抱っこなんてゲームや漫画の中で見てキャーキャー言ってるだけの……あれです、喪女というやつなんですよ!!

 免疫ゼロ! 経験どころか免疫がないんですぅ! ゆるしてぇぇぇ!


「大丈夫?」

「…………………………」


 別室に連れていかれ、豪華な部屋を見回す余裕すらなく、俯いて椅子に座らせられた私。

 先ほどの熱い胸や腕の感触に凍りついたというか熱で茹でたというか。

 頭が混乱から抜け出せない!



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