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恋愛脳オタクの初異世界生活と闇翼の黒竜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
【連載版】へし折れ死亡フラグ! 乱立するフラグを選び抜き、恋愛イベントを発生させよ!
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side『???』


「カノト・カヴァーディルだな?」

「………………」


 僕の名前は確かにカノト・カヴァーディルだ。

 父から受け継いだ、数少ない大切なものの一つ。

 後妻に「跡を継ぐつもりがあるなら、見聞の旅に出ては?」と提案されて旅に出て二年になる。

 あの義母の言葉が僕を家から追い出すための口実だという事には気付いていた。

 だが、唯一血の繋がった異母弟が父の後を立派に継いで、責務を果たすというのなら僕はそれでも構わないと思った。

 腰の剣の柄へ手を掛ける。

 旅を始めて二年……流れの傭兵として仕事をしながら安息の地を探す。

 そんなものはないのだと、心の何処かで分かっていても、それでも。


「……竜人族の方々が、僕に何の用でしょうか」


 契約期間も終わったので次の村へと移動している最中、人通りのない道のど真ん中で竜人族に囲まれる心当たり……うーん、ないな。

 しかも名指しときている。

 明らかに目標は僕か。

 武器を持ち、殺気を放つ彼らは竜人族。

 ドラゴンと人が交配して生まれた種族。

 山脈地帯フェレデニク地方に棲まう彼らは、その見た目と寿命の長さから人間と距離を取り、あまりフェレデニクの領地から出てくる事はない。

 王都以外では初めて見たかも。


「恨みはないが、死んでもらう」

「魔獣なりたいのですか?」

「我らはそんなに軟弱ではない。貴様の首など野うさぎのそれと同じよ」

「…………」


 これは話しても無駄のようだ。

 目を閉じる。

 五人の竜人族……さて……。



 魔獣とどちらが強いかな。



 斧を持つ竜人が二人。

 剣を持つ竜人が三人。

 まず剣を持つ竜人が襲ってくる。

 うん、思った通り、遅い。

 身体強化でスピードを上げれば難なく避けられる。

 彼らも使ってくるかな?

 竜人族はドラゴンと同じように体が得意属性の色をしていると聞いた事がある。

 僕と同じ『風属性』が一人。

 他は赤、茶色、紫、黒。

 黒……『闇属性』は要注意かな。

 僕と同じ『風属性』と『闇属性』は、早々になんとかしてしまおう。

 攻撃を避けて、緑色と黒い竜人族に的を絞る。

 殺してしまうのはダメだが、竜人族はタフだからとりあえず様子見も兼ねてーーー


「ぐああああぁぁぁ!?」

「なに!?」


 僕と同じ『風属性』に十二連撃。

 手応えはある。

 少し距離を取り、振り返って結果を見守る。

 倒れた。

 死んではいない。

 このくらいでいいのか。

『土属性』は硬いと思うから、魔法かな。

 でもまずは『闇属性』。


「馬鹿な、一瞬でこれほどの斬撃を加えたと言うのか……!?」

「こ、こいつ、我ら竜人族の鱗すら切り裂くだと……!? な、何者……」

「皆気を引き締めよ! ……こやつ、出来るぞ!」


 何者もなにも、あなた達は僕の名前を知っていたじゃないか。

 おかしな事を言う。

 そう思っている間に『闇属性』と『雷属性』が武器に属性魔法を付属させて襲ってきた。

 面倒だ、二人まとめて……。


「ッガハァ!」

「ぐっふっ!?」


 斬る力の加減は一人目で大体覚えた。

 十二連撃もいらない。

 多分、このくらいの手加減で十分。


「は、速すぎて見えん……! 強い……!」

「こいつ……よくも仲間を……!」


 逆恨みはやめてほしい、先に襲ってきたのはあなた達だ。

 僕は自分の身を守っているだけ。

 残りは『火属性』と『土属性』。

 どっちも苦手だ。

『火属性』は風で消える事もあるが、基本より燃え上がらせてしまう。

『土属性』も、脆いものなら容易く壊せるけれど『風』に大地は吹き飛ばせない。

 けど……そうも言っていられないよね……。

 柄を握り直す。


「ハーファムブート」


 身体強化で体を最大限に軽く、速く。

『土属性』は防御力が高いから一番多く斬撃を浴びせる。

 僕の剣にも風の武器強化魔法がかけてある。

 一撃で何撃もの斬撃を与えるものだ。

 短い悲鳴の後仰向けに倒れる二人の竜人。

 大丈夫、全員息をしている。

 全員の口にポーションを含ませ、傷を治してから早々にその場を立ち去った。

 竜人族は誇り高いから、傷を癒した事怒るかな。

 でも、こっちは命を狙われたんだし……このくらい許してほしい。

 そもそも狙われる理由がーーーー……あ、いや、ある。あった、そういえば。

 義母だ。

 竜人族なら確実、と、彼らに依頼したのだろう。

 ……それは、悪い事をしたかもしれない。

 死ぬつもりはさらさらないのだけれど……、それなら彼らに僕がカヴァーディル家に戻るつもりはないと義母に伝えて貰えば良かった。


「……手紙でも送ればいいのかな……」


 義母……いや異母弟へ。

 お前が立派にカヴァーディル家を守っていく事を祈ると。

 それで義母は納得してくれないだろうか?

 ああ、今日も……憂鬱だな……。

 気を紛らわせるために一昨年二度目の『剣舞祭』参加をしてみたけれど……、優勝も出来たけれど……僕の心は相変わらず虚しい。

 僕は何のために強くなりたかったんだろう。

 誰かを守れる人間になりたかったような気はするんだけど……流れの傭兵になり、たくさんの人に感謝されるようになった今、その目標は叶えられているはずなのに……なんで……。

 虚しい。

 強いって、なんなんだろう。

 剣の腕がある事が強さ、魔法を操る力がある事が強さ。

 でも、大切なのは強さじゃない気がする。

 僕が強くなりたかった理由……それが、一番大切だったはずなのに。

 ああ、だめだ思い出せない……忘れてしまった……。



 僕はなんで強くなりたかったんだろう。



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