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恋愛脳オタクの初異世界生活と闇翼の黒竜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
【連載版】へし折れ死亡フラグ! 乱立するフラグを選び抜き、恋愛イベントを発生させよ!
19/75

第1話!



 異世界『リーネ・エルドラド』へ召喚されて三日目の朝。

 私、水守みすずはあくびをしながら背を伸ばした。

 ふわふわふかふかのベッドは天蓋付き。

 カーテンが開けられる音。

 しかし眩しい朝陽は天蓋のカーテンが弱めてくれる。

 私は三日前、このユスフィアーデ家の見習いメイド、ナージャ・タルルスという猫かぶり腹黒小娘に誤って召喚された。

 なんか古代魔法とかいうとんでもなく古い魔法の失敗だったらしく、元の世界へ帰る魔法……送還の方法はその古い魔法を解析しないといけないという事で、非常に時間がかかるらしい。

 予約してようやく手に入れた私の生き甲斐、新作乙女ゲームをプレイ出来なくなったのは非常に……非っっっ常に悔しいけど!

 この世界で、まさに乙女ゲームのヒロインのような可愛い女の子たちに出会えたからそれはなんとか耐えられそうなのよ。

 今の私の興味は彼女たちの恋の行方!

 まあ、まだ出会ってなかったりもありそうだけど……あのとにかくヒロイン力の高い三人の美少女および美女!

 エルファリーフ・ユスフィアーデ……私がお世話になる事になったユティアータという町の領主の実妹。漫画に出てきそうな純真無垢のリアルお嬢様!

 マーファリー・プーラ……ユスフィアーデ家のメイド。私の専属お世話係。魔法のない大陸からの亡命者で元奴隷という暗い過去を持っているにも関わらず、前向きで明るく優しいの!

 ユスフィーナ・ユスフィアーデ……エルファリーフの姉で、この町の領主。領主になって一年の新米領主でとにかく忙しそう。気配がするのよね、恋の!

 帰れる算段がつくまで彼女たちを乙女ゲームプレイヤーとして、必ず幸せにしてみせる!

 もちろん、本当に幸せにするのは彼女たちのお相手になる男の人だけど!

 そう、これはリアル乙女ゲームなのよ! 私的に!




「ミスズお嬢様、お着替えのお手伝いは?」

「だ、大丈夫よ!」


 ああ、ヤバイヤバイ。

 そんな事考えてたらマーファリーに首を傾げられてしまった。

 とりあえずコルセットは勘弁なので、今日も普通のワンピースを選ぶ……のだが、エルフィの趣味でこれがなかなかに私に似合わなさそうな可愛らしいものばかりがクローゼットに並んでいる。

 普段ジャージで生活していた私には、クローゼットの中が未知の世界のようにすら思えた。

 ……実際ここは異世界なんだけど……クローゼットの中は最早魔王の住むダンジョンのようだわ……。

 レベル5では到底挑めない迷宮よ!


「……マーファリー……どれがいいと思う?」

「そうですね、昨日は黒い御髪にお似合いのお色を選ばせていただきましたが、本日髪を染色されますので……こちらの霞色のスカートにブラウスはいかがでしょう? ピンクの紐リボンを胸元を飾れば、髪を別な色にした後も十分愛らしくなると思いますよ」

「……あ、こんな物もあったのね……」


 でもこのブラウスも襟とか袖にひらひらのレースついてるわよ?

 ……は、恥ずかしい……わ、私なんかにレースなんて……。


「靴は昨日と同じものでよろしいのですか? エルファリーフお嬢様は他にも何足かご購入されておられますけど」

「う、うん。変じゃないでしょ?」

「ええ。それではお化粧させていただきますね」

「よ、よろしくお願いしまーす」


 まあ、確かにエルフィが靴も何足か買ってくれてはいるんだけどね……このピンクのパンプス以外はヒールがあるのよ。

 中にはどこに履いていくんじゃと聞きたくなるほど、派手な白いピンヒールまで……。

 まあ、それを言ったら絶対に裾を踏みそうなドレスが十着くらいあるけど……。

 これもどこにどのタイミングで着るの?

 高そうで勿体ないけど、私がこの素敵なドレスへ袖を通す日はきっと来ないわね。

 マーファリーにお化粧をしてもらいながら、じっとその楽しげな表情と魔法の手を眺める。

 相変わらずすごいなー、他人の顔に化粧するなんてその手のお仕事の人みたい。

 しかも顔だけじゃなく髪も。

 あっという間に編み込みを作って、後ろにおさげを完成させる。


「出来ましたわ。本日は簡単に解ける三つ編みです」

「あ、ありがとう」


 とは言うけれど、髪の結び目にはやはり花飾りがあしらわれてある。

 は、早業……。


「うふふ、毎日お化粧や髪型を弄らせていただける日が来るなんて……」


 と、ものすごく楽しそうなマーファリーは、お化粧が大好き。

 彼女は過酷な奴隷生活で失った人間性を、お化粧によって取り戻したらしい。

 確かに、私みたいな残念すぎる地味女をここまで引き上げてくれるんだから……お化粧ってすごいわ〜。

 もちろんマーファリーの腕前があってこそだろうけど。

 うっとりと私の仕上がりに満足げな微笑みを浮かべるマーファリー。

 可愛いんだけど、可愛いんだけど……若干怖い……。


「あ、そういえばミスズ様はパーティにご興味などはおありですか?」

「パーティ!?」


 ほんの少し気落ちした私のテンションが上限はち切れる勢いで上がった。

 だって、マーファリー、あなた今なんて言った!?

 パーティ!? パーティって!


「実は、一ヶ月後にフレデリック殿下主催の『第三回、御三家の嫁大募集お見合いパーティ』があるんです」

「王子様の主催!? ……って……いうか……え? お見合いパーティ!?」


 御三家の嫁って、なに!?

 なにその題名の付いたお見合いパーティ……!?

 世に言う町コン!?

 親に言われても参加した事ないけど……王子様の主催って聞くと心が傾く!


「はい。現在御三家の一人息子であるランスロット・エーデファー騎士団長とスヴェン・ヴォルガン天空騎士隊隊長、そしてフェルベール家の次男、ハーディバル魔法騎士隊隊長がなんと全員独身! 婚約者も恋人もなしなのです!」

「ハッ……」


 ハ、ハーディバルって、あのドS騎士!

 え、そりゃああんな毒舌でキッツイ性格してたらいくら綺麗な顔してても彼女なんか出来るわけないわよ!

 ……とは思うけど……参加男性全員騎士団の、隊長とか団長の偉いところなんだけど、ど、どうなの?

 地位は高いって言う感じ?

 聞いただけだとかなり女子の好きそうな職業と地位よね?

 仕事が忙しくて彼女が作れないのかしら?

 それで王子様が気を遣って……?

 でも『第三回』って言ってなかった?


「ご、御三家ってなに?」

「あ、そうですね。ご存知ないですよね。御三家とはエーデファー家、ヴォルガン家、フェルベール家の三家の事です。アルバニス王国建国当初は無数に存在していた王国の元王族の一族なのですが、アルバート陛下が即位されてからは同盟国、その後はアルバニス王国に吸収合併され、以後、アルバート陛下を支え続け、尚且つ衰退する事なく残っている唯一のお家なのだそうです」

「へ、へぇ……つまり元々は王族の一族なんだ?」

「はい。そういうお家は少なくないのですよ。バルニアン大陸の地方を治める領主のほとんどはそういうお家だそうです。ユスフィアーデ家も大昔は王家だったそうですから。ですが、国王陛下のお側で陛下を支え続け、バルニアン大陸の隣接する小大陸にその名を与える事を許されたのはエーデファー、ヴォルガン、フェルベールのみ! これはすごい事ですよ」

「え!? 大陸の名前になってるの!? す、すごっ」

「はい! 領地も大陸そのものを頂いているんです! それ故に尊敬を込め、御三家と呼ばれているんです!」


 あ、あいつそんなにすごい家のお坊ちゃんだったのー!?

 エルフィの誕生会に招待されるっていうから、それなりにいいところのお坊ちゃんなのかなーとかぼんやり考えてたけどむしろ格上!?

 というか、そんな凄い家の跡取りたちとのお見合いパーティってやばくない!?


「ちょ……そ、そんな凄い家の跡取りのお見合いパーティの話になんで私が興味持つと思ったの……」

「あの、実はユスフィーナ様とエルファリーフお嬢様、招待されているんですけど……二人ともお断りしようとしているんですよ」

「ええ!? なによそれ勿体ない!?」


 というか最高のシチュエーションじゃない!

 完全に恋愛フラグよ!?

 それを断る!? エルフィなに考えてるのー!?


「ですよねー。はぁ……ユスフィーナ様は領主としてのお仕事が本当にお忙しいからのようですけれど、どうやらエルファリーフお嬢様はユスフィーナ様に気を遣ってらっしゃるみたいなんです。お姉様のユスフィーナ様が先に幸せになるべきだとお考えのようで……」

「な、なんていい子なの……! でもそれはそれよ! 勿体ないわ! 絶対行くべきよ!」

「ええ、ですからミスズお嬢様が興味をお持ちならエルファリーフお嬢様の付き添いとしてご一緒して頂けないかな、と。ミスズお嬢様が一緒なら、行っていただけるかもしれません」


 御誂え向きな展開きたーーー!


「ええ、勿論いいわよ! 私に任せて!」

「本当ですか!? さすがミスズお嬢様です! はあ、ご相談して良かった〜」

「……で、でも私みたいな平民が行っていいのかしら……」

「え? そんな大丈夫ですよ。招待客はエルファリーフお嬢様のような領主の親族やそれなりのお金持ちの方々ですけれど、応募して抽選が当たればどんな貧乏人も参加出来ます。そう、まさに一発逆転玉の輿イベントなんです!」

「玉の輿イベント!」


 拳を掲げるマーファリー。

 そ、それは確かにすごいイベントだわ!


「……今のところ玉の輿に乗れた女性はいないんですけど……流石に今年は三回目……誰か一人くらい……そろそろ……」

「そ、そう」


 あれ、いきなりテンションがさがった。

 あーん、でも確かにそんな凄い家の跡取りの奥さん候補だもん……競争率が乙女ゲーム舞台チケット争奪戦並に凄そう……。


「ねえ、男性はその御三家の三人しかパーティには参加しないの? それに対する女子の数は?」

「え? えーと、招待客は確か十二人、同行者は二人まで……当然親族の方が来られますね。それと、一般応募の方は十八名です」

「……う、うわぁ……恐怖ね……」


 つまり約三十人の奥さん候補に、プラス二十四人くらいが来る……総勢五十人越えでたった三人の争奪……。

 そ、それはお嫁さん決まらないな〜……。

 王子様、パーティの形式が失敗してると思うわ!


「ですが、男性は御三家の方以外にも未婚の騎士団の方やお城で働いている方が参加されると聞いた事がありますよ」

「あ、そうなのね。よ、良かった……」


 流石に五十対三はきついものね……。

 それに騎士団やお城で働いてる人か……あぶれても、割とちゃんと玉の輿が狙えるって事か!

 素敵な企画ね〜、さすが王子様!

 ……そして王子様主催って事は……当然王子様も挨拶に来たりするはずよね……?

 つまり王子様に会えるかも!?

 これは、間違いなく恋愛イベント発生の予感……!

 なら、私のやるべき事は一つだわ!


「ねぇ、マーファリーも一緒に行きましょうよ!?」

「………………。え、は……はいいいい!? わ、わたし!? いえいえいえいえ! む、無理です無理!」

「なんでよ? だって別に身分は関係ないパーティなんでしょ? 同行者は二人までって事は、人数的にはオッケー! むしろぴったり! それに、私はこの世界の事にまだまだ疎いわ! エルフィはパーティ慣れしていそうだけど……私はパーティなんて行った事ないから不安だし……。その事でエルフィを私に付きっきりにさせたら意味ないでしょ?」

「うっ……」

「ね? お願いよマーファリー」


 ユスフィーナさんはガチで仕事の都合みたいだけど、マーファリーはこの家のメイド。

 仕事の都合なら付けられるはず!

 ここは是非、イケメンと出会って素敵な恋に落ちてほしいー!

 あたふたと顔を青くしたり赤くしていたマーファリーは、両手を強く握りしめると俯いて考え込んでしまう。

 ふっふっふっ……エルフィのため、といえばこの家のメイドであるマーファリーは断りきれないはず……ふっふっふっ……。


「……………………しょうか……」

「ん?」


 なに?

 マーファリー、今何か呟いて……。


「……フレデリック殿下に……お会い出来るでしょうか……」

「……………………………………………………」


 フレデリック……殿下。

 に、お会い……会いたいと。


 ………………………………………………………………。


 ……ほああああああああああああああああーーーーー!?!?!?

 既に恋愛フラグ立ってたあああぁぁぁあ!?!?!?

 そうだマーファリーはフレデリック殿下に助けられてこの国に来たって、来たって!

 つまり! やっぱり恩人の王子様と再会して禁断の恋に火がつくあれだぁぁぁぁーーー!!!!!!


「ち、違うんです! 分かっているんです、私なんかがお会い出来る方じゃないって!」


 違う事あるかーい!

 よっしゃキタァァ!

 赤い頰、両手でその頰を包み、あたふたと弁解する姿!

 恋する乙女ぇぇぇ!


「でも、わたし……ずっと……」


 ずっと……ずっと!?

 ずっと王子様の事が……!?


「ずっと王子様に……お礼が言いたかったんです!」

「………………………………。お礼?」

「はい。助けていただいて、ありがとうございました、って……」


 ……んんん!

 な、なんて、なんて……!

 く、くぅ、わ、私の頭が恋愛脳すぎて汚れていた……!

 マーファリーは、マーファリーは私の想像を遥かに凌ぐ……純粋なヒロインだったぁぁぁ!!

 お礼! 助けてもらった、お礼!

 くぁぁあ! まずはそこから! でも、それも、良い!

「王子様、あの時は助けてくださりありがとうございました」……照れながら、そして数年ぶりの再会に浮かされたようなマーファリーは頰を赤らめ眼前に佇む憧れの恩人へと長年の思いを告げる。

 そして王子は、あまりにも美しく変化した彼女に一目で恋に落ちてしまう。

 長い年月積もった想いを吐き出して、緊張に震えていた肩に手を置いた王子はマーファリーへゆっくりと顔を近付ける。

 ピンクの唇へ吸い寄せられるように……自らの唇を、重ねてええええええーーーー!


「……勿論、あの時助けてくださったジョナサン殿下やハクラにも改めてお礼を言えたら良いんですけど……ジョナサン殿下はあまり人前にはお出になられないと言いますし……お礼を言えるとしたら、やっぱりハクラとフレデリック殿下ですよね……。……ああ、でも、そもそもお会い出来るかどうか………………ミスズお嬢様? あ、あら? ど、どうされたんてすか? そんな真顔で固まって……ミスズお嬢様? ミスズお嬢様!?」


 ミスズお嬢様ーー!


 ……ナージャが迎えに来るまで、私の妄想は終わらなかった。


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