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第7話 第一部完! 黒歴史は永遠に

 呼び出されていたほかの悪魔は、シュナイゼルが倒れた直後、魔界へと送り還された。そのおかげで、城門で戦闘を繰り広げていたハインツ達の被害は最小限に止まったらしい。


 北方侯ラグノスは捕らえられ、死罪を免れたものの、爵位(しゃくい)剥奪(はくだつ)され幽閉ゆうへいの身となった。王宮内外の様々な勢力の思惑が絡んだ末の、高度な政治的判断というものらしい。大人の話はわたしには良く分からない。


 シュナイゼルが漏らした情報をサリサリに問い詰めると、どうやら契約を済ませていなければ、召喚された存在は、自分の意志で元の世界に還る事が出来たらしい。もっとも、召喚魔法の知識を持つ悪魔たちと違い、わたしには自力で帰るすべがなかったのは事実なのだけど。


            §


 夜に家を抜け出して、翌朝ズタボロのセクシーなコスプレ姿で帰ったわたしを目にし、お父さんは「年頃の女の子はな……いいか、女性というものはだな……」と、何か言いかけたけれど結局何も言わず、首を振ってひとつため息を吐いてみせた。口下手か!?


 お母さんはわたしに日ごろから容赦ないほうだから、往復ビンタくらいは覚悟していたが、何とも言えない優しい目でわたしを見つめたあと、ぎゅっと強く抱き締めてくれた。


 心配してくれたんだ。そう思って泣き出しそうになったが、まなざしに込められたものが、痛々しい衣装を着た我が娘に対する哀れみだと思い至り、別の意味で泣きそうになった。


 後日、お母さんの本棚に、『代償行為から抜け出すには~隣人にさしのべるやさしい手~』『異常心理研究』『異装の文化史――日本武尊からコスプレイヤーまで』という本が、付箋(ふせん)をたくさん貼られて並んでいるのを目にし、2時間ふとんにくるまって呻き続けるハメにもおちいった。


 朝帰りのうわさはいつの間にか学校に広まっていた。コスプレ姿で帰宅というオチまで知れ渡っていたので、不順異性交遊をほのめかし、不良少女を装うという手も使えなかった。


 奇行に走るコスプレマニア。それが皆のわたしに対する新しい認識らしい。長く苦しい高校生活になりそうだ。これならオタばれのほうがよっぽどましじゃない!?

 ……死にたい。


 あれだけひどい目に合わされたというのに、何故だか黒歴史ノートを捨てる気にはなれなかった。ボロボロになったページを丁寧(ていねい)修繕(しゅうぜん)し、再びみかん箱の底に隠すと、押し入れの奥深くに仕舞いこんだ。


            §


 別に期待していた訳じゃあない。でも、そんな予感は確かにあった。

 再び押し入れから光が漏れだすのを目にしたのは、冒険から帰った3日後の夜のことだった。


「たびたびお騒がせして申し訳ありません、サワコさま!」


 見覚えのある魔法使いの部屋。目の前には上目遣いで愛想笑いを浮かべるサリサリの姿。これは北方侯(ほっぽうこう)に『偽・万魔録(ゴエティア・オルタ)』を貸し与え、裏で糸を引いていた黒幕登場のパターンだ。


「ふうん。 またわたしの力が必要な事態ってわけ?」


 わたしは腕を組み、訳知り顔の出来る女をイメージした表情で、サリサリに微笑んで見せる。あくまで、話くらいなら聞いてあげてもいいというポーズ。学校ではクラスメートにコスプレマニアのレッテルを張られ、家では親に可哀想な子を見る目を向けられる日々が続いている。ちょっとだけ開き直って、憂さ晴らしでもしたい気分。


「いえ、あの……シュナイゼルがサワコさまの連絡先を聞くまで還らないと、北方侯の城に居座ってしまって……その、わたしからお教えしても構いませんか?」


「あ”ぁッ!! あ”あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!」


 そっちか!? せっかく忘れかけてたのに!! 乙女ポエムのほうか!!?



                               了

※ここでいったん第一部完な扱いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ww確かに黒歴史だw。悶絶死してもおかしくないw
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