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第二章:アテルの大祭

 話は少し前に遡る―――


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 その日、街は常以上に活気が満ちていた。巨大な湖"アテル"の畔に拡がる街中には、山海の珍味から高級酒まで、あらゆる馳走が満ちている。普段目にすることのない、派手に着飾った人々は、底抜けの陽気さでそれらを飲み食いし、また、その一時を楽しんでいる。

「…一体何なんだ、ここは」

 街中のある一角。比較的喧騒が穏やかな道端で、ようやく一息つけた男がうめいていた。大きな通りから枝分かれした小道であり、道端で開かれた出店の一つに力尽きた様に突っ伏している。

 そのカウンターの反対側で、何やら水洗いを行っていた女性が、面白そうに声をかけてきた。

「兄さん、疲れてるね」

「疲れてるよ…何なんだ、この街は」

 顔を上げる事もなくうめいた男に、幾らか歳上の女は朗らかに笑い声を上げた。

「ははは、この街に来るのは初めてかい。いつもはもちっと静かになるんだが」

「少し…?むしろ、あからさまに静かになるぐらいが、ちょうどいいんじゃないか」

 喧騒は敵だ、とばかりに周囲を睨み付けている男を見て、女が再び派手な笑い声を上げた。

「ははっ、まあ辛気臭い空気より、よほどマシさ。そういうあんたは、若い内に、ちょいと羽目を外そうとは思わないのかい」

「しない…刺激的な人生はもう飽きてきてな」

「へぇ。何か知らないが色々ありそうだね」

 男の見た目は、良くて20代半ばといった所だろう。旅装を纏った肉体は良く鍛えられており、例えるならば、若鹿とでも言おうか。けして大柄ではないが、その分、身に押し込めた強靭さがいかほどのものかは、一見しては見当もつかない。

 女が差し出した水差しを掴んだ手はゴツゴツと節くれだっており、傷だらけであった。

(職人稼業かしらね)

 流れの職人なんて今の時世、聞いたこともなかったが、あえて深く聞く事もない。脇に立て掛けられた長い布包みも、見たことのない様な大きさであったが、何かしらの仕事道具なのであろう。

「…兄さん、何か食べるかい?」

 妙に疲れた表情をしている男は、そのまま力尽きて倒れてもおかしくはないように見える。

「…そうだな。じゃあ、軽いものを適当に」

「まいどー」

 食事の事を今更ながら思い出したのか、少し驚いた様に注文をする男は、心ここにあらず、と言った様子であった。

 ぼんやりと喧騒耐えぬ街に視線を向ける男に麺の入った冷たいスープを渡すと、男は無言のままにすすり始めた。薄い黄色の麺に薬味をのせた透明な液体は、汗ばむ気候に対抗するように冷えていた。

「うまいな」

「だろう。自慢の一品さ」

 無言のままにすすり始める男は、心なしか嬉しげにも見える。ひょっとしたら、見た目よりも若いのかもしれないな、と女が考えていると、唐突に男が話しかけてきた。

「なあ、この街はいつもこんなに…平和なのか?」

 何の気のない、世間話の様な口調。先程と格別何かが変化した訳ではない。にもかかわらず、女の背筋をゾッとした物が通りすぎた。通りを眺める男――一見穏やかに見える様相だが、良く良く見てみれば、その視線は穏和とは程遠い。

 怒り、とは少し異なるか。まるで、敵を見るかのように不満気な瞳は、先に見せた物とは僅かに異なるように見える。

「そうだね。さすがに祭の最中に比べれば、皆静かになるさ。でもね…」

 女の陽気な口が、そこで初めて重くなった。

「最近は、この辺りにも"獣"が出るからねぇ」

 何気なく発せられた女の言葉に、男の眉がぴくり、と跳ねた。それに気付かずに、女の話はなおも続く。

 基本的に、この手の話が好きなのだろう。緊張感のない、気楽な口調は話の内容とは裏腹に、むしろ楽しげと言えた。

「ここ数ヶ月の間の話なんだけどね。結構な回数、襲われてるらしいんだよ。特に、狙ったかのように裕福な人間をね。神出鬼没で襲われた人間は皆殺しが常なんだけど、皆、ついにこの街にも"獣"が来たって、大騒ぎになってるよ」

「皆殺しにされてるだけで、なんで"獣"と断定されているんだ」

「目撃証言もあるからさ。人を軽々と振り回したり、屋根から屋根に飛び移ったり、血を吸い取ったり。そんな事をするのは、"獣"しかいないだろうって、皆言ってるよ」

「…ひどいな」

「まあ、所詮は噂だからね。どこまで本当かは判らないけどね 」

 まるで他人事の様に語る女からは、どうにも真剣身が感じられない。

「気にはならないのか?自分の街だろう」

「だとしても、噂通りなら襲われるのは、向こう側の連中だからね」

 手を止めた女の視線は、湖があるであろう方向へと向けられていた。すぐそこには建物があるため見通す事はできないが、しばらく歩いた先にあるのは、街中を分断する巨大な壁があるはずだった。

「あの壁の向こう側からは、行政区になるとか」

「ああ、それと街の運営に関われる人間の家だね。基本的に、税金や寄付金のでかい人間や、あっち側にコネがある人しか住めないよ。昼間には行き来はできるけど、それにも兵隊の目があるからねぇ」

「行政区画以外の行き来もそんな感じなのか」

「まさか。この街には4つの区画があるけど、行政以外の3区は隔離の"か"の字もないね。だから、皆言ってるよ。"余計な物をこっちに持ってくるな"って」

「…こっちの方にも、金を溜め込んでる者は多少いるだろう?そういう者は、襲われない?」

「向こう側の家ならハズレがないから、だろうね。こっちで被害にあったといえば、街中を跳ね回る犯人の影に驚いたり、警備に駆り出されたり、とかばかり。馬鹿馬鹿しい話だよ」

 そういえば、と記憶をほじくりかえすと、祭の騒ぎの中でものものしい格好をした人間は、一人や二人では効かなかった。

 もっとも、物腰からいって荒事に慣れているとも言えず、この騒ぎの中だけの仕事かと思っていたのだが…

「あんな程度じゃ、役にはたたんだろう。"獣"共は、鍛えた兵士数人がかりでも歯が立たないんだぞ」

「そうなのかい?」

 驚く女の顔は、未だ深刻には見えない。困ったような表情も、少し物価が高くなった、と聞いた様な緊張感の無さそうな物だった。

「この街は、真剣身が足りないんじゃないのか?"獣"の被害は国中で出てるが…どこもその防衛に苦心してるぞ。あれは、数でどうにかなる問題じゃあない」

「…そこら辺は大丈夫だろうよ。街の上のほうでは、そっち方面の専門家を手当たり次第に集めてるらしいし」

 聞いた限りでは好ましい話に思えるが、そこで再び女の口は重くなる。苦虫を噛み締めたようななんとも形容し難い表情は、お世辞にも喜んでいる様には見えず、むしろその事については忌避をしたそうにも見える。

「何だか、悪い事を聞いたようだな」

「いや、悪くは無いさ。こちらとしても人が離れれば商売上がったりだからね」

 そこでちらり、と意味あり気に視線が動く。僅かに動いたその瞳の先を予想するに、どうやら通りの対面辺りに何かがあるようであった。

 一体何があるのか。当然興味があった男が振り返って見ると、対面の騒ぎの様相が嫌でも目に入ってきた。

 それは、少々羽目を外しすぎている街中でも、特に騒がしい一角であった。大通りから脇道に入る角地にあるその店は、周りと比べてもかなり大きな敷地に店を構えている。店外に向けて広い日射し避けがあるため、この陽気にもかかわらず、そこに座る人々は快適に過ごしている事であろう。

 しかし、それはあくまで気候的な話。いかに涼しく快適な環境であろうとも、それ以上に不快な条件が加わればその評価は簡単に覆る。

 ――例えば周囲への配慮を考えない、度の過ぎた客の騒ぎ等がそれにあたる。

 大きなジョッキを手にしているその男達は、どう見た所で堅気の人間には見えなかった。周囲に満ちるこの街の住人達に比べると、持っている雰囲気が明らかに異なる。

 大柄な体格に傷だらけの顔。荒事に慣れている人間らしく、その挙動はいかにも粗野で荒々しく感じられた。溢れんばかりに食事が積まれた机の横に立て掛けてあるのは、幅広の刃を持つ武骨で頑丈そうな剣であった。

 数人、同じ様にガッチリとした体格の男達と共に楽し気に酒を飲み、肉を喰らってはいるが、同じ陽気な空気でも、男達の物は、周りが持つ街のそれとは明らかに異なる。

 住人が持つのは、相手を一緒に盛り上げようとする、祭特有の陽気さだが、彼らは違う。自らのみが楽しむ、周囲を考えない盛り上がり方――食い散らされた食事、周囲の人間への野次、何が気に入らないのか手にした器を叩き壊したりもしている。

「…何だ、あのチンピラどもは」

「ほんとかどうかは知らないけど、あれが"獣"の狩り手だそうだよ」

 眼を覆わんばかりの低俗な男達の姿に、思わず分かりきっていた事を聞いてしまう。

 いずれも優れた体格を持ち、その物腰からも素人で無いことは容易に分かる。しかし、今この場での言動からは、その粗暴な性格ばかりしか伺えず、とても"獣"を狩れるだけの実力者には見えなかった。

「何と言うか…あんなのが頼りになると、本気で思っているのか?国に100万人はいそうな、ただのチンピラじゃないか」

「いや、確かにあまり誉められる人達じゃないけどね…噂じゃ、手土産を持っていって、上の連中に腕を見せつけたって」

「腕?何だ、あの二の腕の筋肉で、領主を締め上げたのか」

 男の不真面目な言動もまともに話している人間の態度とも思えないが、そこを指摘する様な事もせず、女の方もあまり熱心で無さそうに続けていた。

「まあ、あくまで噂なんだけど。"獣"の首を上の連中に突き付けたって」

「…へえ、首を」

「この辺では見たこともない化け物だったらしいよ。それを見て、速攻で雇うのを決めたって聞いたけどね」

「しかし、こんな所で油を売っているが、いいのかね。こんな所にいちゃ、連絡がつかないだろうし、酒が入ってちゃ本来の実力も出せんぞ」

 噂を信じるならば、"獣"が出るのは壁の向こう側だ。こちらにいても、駆けつけた時には、すでに火種が燃え尽きている事であろう。"獣"の身体能力は尋常ではなく、逃げの一手に出られれば追いかける手段はない。その為にも、数を持って押し包むのが有効な戦術と言える。故に、余計な場所へ割り振る戦力がそうそうあるとも思えない。

 そんな男の考えを知ってか知らずか、女はあっさりと答えてきた。

「ああ、彼らの仕事は警備じゃなくて、狩りだから」

「狩り?"獣"を?」

「そうだよ。むしろ外壁の方が都合がいいだろうって、こちら側に宿を用意してね」

「本人達がか」

「いんや、上の連中がわざわざ。…正直な話、ああやって飲み食いしてるだけだからねぇ。厄介な物を押し付けられた感じがするよ」

  忌々し気に喋る口調は、実感が籠った物であった。ひょっとしたら、この店でも無銭飲食等をしていたのかもしれない。

「…いずれにしろ、奴らは対"獣"の戦力として雇われてる訳、か」

「実際には何かしている様には、見えないけどね」

「まあ、だとしても建前には充分だな」

「?」

「邪魔をしたな」

 何やら、会話の最後の方では不穏な空気が見え隠れしていた。懐から取り出した数枚の硬貨を机に置くと、男は無造作に脇に立て掛けてあった布包みを手に取る。重さを確かめる様に2・3度腕を上下させると、そのまま手早くベルトを緩めて背にくくりつけた。

「ちょっと、あんた…」

 不安になって声をかけた女の方には目もくれず、男は無表情で歩き始める。先程まで発していた怠惰な気配は既に欠片もなく、歩みを進める背中には、こちらを威圧するかの様な近寄りがたい空気を背負っており、それ以上声をかけるのを躊躇わせていた。

 道行く人々もただならぬ気配を感じたのか、男を中心として先程までとは異なるざわめきが浸透し始めている。自然、男の歩む先の人垣は割れ、まるで何かのパフォーマンスが行われているかの様に、男は何の障害もなく彼らの前に立った。

「…ああ、何だ?てめえは」

 仲間内で大騒ぎをしていた彼らは、このパフォーマンスも意にかいさなかったらしい。周囲の動揺に気付いたのか、いぶし気に顔を上げた男は前に立っている男にようやく目を向けた。

「ああ…少し、頼みたいことがあってな」

「ふざけんなよ、このガキ。俺らは忙しいんだよ」

「へえ、街の人にたかるのが?」

「っ、このガキっ!」

 何の変化もない直球での物言いは、言われた本人のみならず、その周囲を動揺させるのに十分であった。立ち上がった男達は、誰もが目の前に立つ男に比べて頭一つ分は大きい。その腕力が見た目以上の物であることは、街の人々にとってすでに熟知の事だった。

 何より、荒事で身をたてている男達の気性の荒さは、介入を躊躇わせるに十分な物であった。

 が、その様な事情を知らぬ男は、遠巻きに眺める周囲の非難の視線を物ともせずに、さらに言葉の刃を繰り出していた。

「食うだけ食って仕事をしない、穀潰しどもが。せめて、少しくらいは他人の役に立って貰おうか」

「この野郎、なめてんのか!いいか、俺らはこの街の害になる"獣"を狩る…」

「害になってるのは、貴様らだろう。それに、貴様らの様なヘボに狩れるのは、飼い慣らされた兎がせいぜいだ。鎖に繋がれた犬の吠え声で逃げ出しそうな根性なしが」

 返答は、ない。

 顔を赤黒く染めた男達は既に会話とは無縁であり、自慢の腕力にて物を言わせる態勢となった。手にそれぞれの獲物を取り構える男達は、その剣呑な雰囲気と合わさって素人とは違う凄味が発せられている。

 だが、向けられた先の男はといえば、未だ構えもせずにつまらなさそうに向けられた刃物の先を見つめているだけだ。

 目の前の刃物に欠片も反応しない男に、周囲の見物客は、何事かと燻しむ。ある者は肝が据わっている事に感心し、ある者は実際に刃物を出された動揺、と失望を顕にする。

 それなりに腕に自信があった故か、男達の大半もその態度を後者、と捉えていた。手にした剣を見せびらかす様に構えて不用意に近づく姿は、見るからに隙だらけだった。

 そうした威嚇だけで終わっていれば、全ては平穏に済んでいたかもしれない。しかし、それはいわゆる無い物ねだりと言えた。今まで、その威嚇を持って街での立場を維持してきた男達にとっては、あれだけの事を言われて温情を見せるような考えは持ち合わせていない。そして、あれだけの暴言を放った男の方でも、最初から平穏に終わらせるつもりはなかった。

「――っ」

 短く、しかし鋭く吐いた息と共にその視界が一瞬の内に入れ替わる。

「――え?」

 はたして気付いたのが先か、声が漏れ出たのが先か。ふわり、宙を舞う自身を自覚したのは一瞬の事であり、視界に広がる澄みきった空の意味を知るのと同時に、その体は受け身すら取れず、容赦なく石畳に叩きつけられていた。

 あまりの痛みに声もなくうめく男達の手から滑り落ちた剣が、乾いた音をたて、石畳に転がる。

 ほんの僅な間、全てが凍るような静寂が周囲を包んだ。

「まずは、2人…」

 男がつまらなそうに呟くと同時に、爆発したように歓声が巻き起こった。

 遠目に眺めていた観客は元より、争いに慣れているであろう男達にも分からぬ、一瞬の早業であった。ほんの僅か、それこそ瞬き一つしたかと思うような間に、その体が間合いを飛び越えて移動し、気付いた時には音もなく2人の男が倒れ伏している。

 特に気負うでもなく、自然体で佇む男が尋常な相手では無い事に気付き、色めきたつ男達だが、彼らの行動は結局すべてが無駄に終わる。

 仲間が倒れ付したのを見て即座に剣を繰り出した男は、間違いなく心臓を狙った刃先が、相手の腕のほんの僅か脇を通り過ぎていくのを見て、目を見開く。まるで一瞬で移動したかのような錯覚に、どっと衝撃のような物を感じる。視界が暗転したのは、気持ちのみならず、物理的な衝撃の結果であった。

 崩れ落ちる男を尻目に、僅か体を開き相手を打ち据えた体勢で構えていた体が、霞む。

 未だ椅子から体を起こす事もできずにいた3人の男の内、間合いの近かった2人が、椅子ごと派手に横転したのと、最後の1人の胸元にナイフが突き付けられたのは、果たしてどちらが先であったのか、判断はつかない。

 ナイフはテーブルに置いてあった、肉を切り分けるのに使用するような小ぶりな物だったが、だからと言って安心出来るものでは無い。男が振るえば気付かぬ内に急所を切り裂かれる事は確実であろう。そう思わせるだけの事を男の行動は示している。

「な…何が望みだ」

 かろうじて絞り出せた声は、隠しようもなく揺れている。

「分かってるのか!?俺らに手を出すのは、この街の顔役に泥を引っ掻けるようなもの……」

「関係ないね」

 遂には権力者の威光に頼り始めた男の言葉に対しても、その表情を微塵も揺るがせる事はない。深い藍色の瞳は、ナイフ以上の鋭さをもって男に突き刺ささり、有無を言わせぬ迫力は半ば物理的な圧迫感で男にのしかかる様であった。

「お前達、私を雇い主の所まで案内しろ」

「へ?…い、今から」

「すぐにだ」

「いや…こちらから行くには、連絡を…」

 先程までの威勢の良さとは打って変わり、弱々しく反論を試みる男だったが、その様な悪足掻きが通用する男でないのは、誰が見ても明らかであった。

「別にお前達を門番に突きだして通行証代わりにしてもいいんだが」

「…わ、分かりました」

 断れば、本気でやりかねない。そう思わせるだけの迫力を持つ男に対し、弱々しくも強情を張り続けた心も遂に折れる。一体、何を考えているのかは分からなかったが、下手をすると、本気で首だけを持って行かれかねない。

 同意の言葉を聞くと、ようやく胸元のナイフが離れ、心なしか相手から受ける圧迫感も緩んだようであった。

「…おい」

 相手の機嫌を損ねぬ内に急いで皆を叩き起こそうと焦っていた男であったが、突然声をかけられ、たまらず硬直する。

「…何変な格好で固まってるんだ」

「お、お気になさらずに…」

「まあいい…何人かはここに残して、後片付けだ。いいな」

「わ、分かりました」

 急いだ様子で仲間に駆け寄る男を見ながら、胸中軽く嘆息する。

(少々、派手すぎたかもしれん。まあ、この手の人間を処理できたのは、無駄ではないか。後々、役にたってもらうとしよう)

 未だ興奮覚めぬ様子の周囲を見渡しながら、そんな事を思う。向けられた視線も、騒ぎを起こした事による非難ではなく、どちらかといえば清々しい物だ。それだけで、石畳で伸びている男達がどう思われていたかが分かろうというものであった。

 手段はどうであれ、それはアレスが街人に認められた事を意味していた。

 さて、今回は再び視点が彼の方に戻ります。

 いわば、前回はプロローグ、今回からが本編の開始と言えます。

 あと、更新が遅く申し訳ありません。もしこんな話しの続きを待ち望んでいるならば、それに勝る喜びはありません。

 それでは、次章で再びお会いしましょう。

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