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死者の改札

作者: 遥あおい
掲載日:2015/04/23

宿題も終わった。

明日は朝練があるから、早く寝てしまおう。

私はいつもより早くベッドにもぐりこむ。

春はもうすぐだというのに、まだ肌寒い。特に今日はいつもより冷えた。

体を布団へもぐらせると、自然と重くなる瞼。


「おやすみなさい。明日もいい一日でありますように・・・。」


私はすぐに眠りへと落ちていく。

けれどそれは、不思議で悲しくなる体験の入り口だったことに、私は気がつかなかった・・・。


* * *


ざわざわざわ・・・。


人の声がする。

近くで私の名前を呼ぶ声もする。

目を開けると、私は知らない駅の改札にいた。

人が流れるように改札を通っていく。


「………ちゃん。」


また、私の名前が呼ばれた。


(誰だろう?でもこの声、知ってる。)


ゆっくりと振り返れば、私の祖母がいた。

祖母は笑って私に手を振っていた。


「おばあちゃん!!」


思わずおばあちゃんに駆け寄る。

ふわりと香ったお線香の匂い。

おばあちゃんは笑顔で私を抱きしめたあと、すぐに表情を暗くする。


「本当はそのまま一人でいこうとおもったんだけどねぇ、最期だと思うとどうしてもあなたに会いたくて、

思わず呼んでしまったのよ・・・。」


髪を撫でる手が心地いい。


さいごって・・・・どういうこと?


おばあちゃんの家は近いから、すぐに会えるじゃない。


そう尋ねようとしたけど、声が出なかった。

最後におばあちゃんが笑って言う。


これで何も、未練はない・・・・と。


すぐそばの改札を、嘆き悲しみながら通る人がいた。

すがすがしい顔をしながら通る人もいた。

そこにはいろんな表情があった。

おばあちゃんは晴れやかな顔をして改札を通った。


私はなぜか、おばあちゃんを止められなかった。

ううん、止めちゃいけない。

この改札を通る人たちを・・・・。本能的に、そう感じた。


「おばあちゃんっ!!」


遠ざかっていく姿に叫ぶと、おばあちゃんは振り返って私を見た。

私の存在を自分の中に焼き付けるように・・・・。


駅に電車の発車時刻を知らせる放送が入り、人の動きがせわしなくなる。


『まもなく5番ホームから電車が発車します。

乗り遅れのないよう、ご注意願います。』


アナウンスの声が遠くなっていく。

おばあちゃんの姿もかすんでいく。


さようなら、おばあちゃん・・・・。


私は姿が見えなくなるまで手を振り続けた。


* * *


明け方、けたたましい電話の音で目を覚ます。

ゴンという、受話器を落とす音で私はベッドから起き上がった。


リビングへ行くと、お母さんが涙を溜めて座り込んでいる。

私の姿に気付いたお母さんは、震える声で告げた。


真夜中、おばあちゃんが亡くなった。


ああ、やっぱり・・・・。

私は取り乱すこともなく、静かに一人で納得した。

きっとあそこは、死者が通る改札だったんだ。


そう思う私の目から、ふと、熱い涙がこぼれ落ちる。

おかしいな。おばあちゃんと別れるときは、全然悲しくなかったのに・・・。


おばあちゃんの笑った顔が、脳裏に浮かんで消えていった。


***** 死者の改札 *****


電車の改札を見ていて、なんとなく思いついた作品。

死者の電車は、銀河鉄道の夜みたいな感じなのかもしれないなー。

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