二章 始まり
二章
ーー始まりーー
「…ここか。」メモを読みながらついたのはアパート。広さは大体7畳。牢屋に比べれば断然いい物件と言えるだろうが、普通に生きてきた人間にとっては少し不自由に感じるかもしれない
先程のカジノにいたディーラーが家を確保していてくれた。カジノで儲けたお金で買った弁当屋の弁当(350円)をテーブルの上に置き、一つ欠伸をする。「人を欺くゲームか…」
楽しみにしてはいるが、その裏でいろんなことが脳裏に過るのだ。
俺があのカジノの常連であること。ポーカー台ばかり行くこと。極めつけは、こんなゲームを行うこと自体だ。深く考えても仕方ないと弁当をほおばりながら手紙に目を通す。
その手紙の内容はこうあった。
おめでとうございます!あなたは70億人の中から選ばれた幸運ものです。
deceive gameはまず、あなたの手元にある一億円からスタートします。
それはゲーム終了時に必要となりますので、お気をつけください。
えぇ、別に使われても結構ですがね…
…如何にも怪しいものだ。しかしながら詐欺ということではないことは確か。
その担保のようなものとして一億円が渡されているのだと思う。そして最後の一文。
あなたの対戦相手はこの方です。ルールについては後日封筒を送らせていただきます。
「なんだと…」俺の目の前には有り得ない顔写真があった。如何にも性格が悪そうな顔立ち、そのシワだらけの中にあるのは依然、鷲の様に尖っためをしている。俺が殺人のために詐欺のいろはを教わった師。髄 スイケンだ。俺は全力で勝ちに行くことを決めた。
勝負は一週間後にある…
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そして一週間の時がたった。
俺はこの一週間、特に変わらない日常を送った。悪いようにいえばニート。よくいうと“印刷”ばかりしていた無職物。どちらにしても退屈な一週間であった…数日を除いては。
ゲームの開始は朝10時から。内容はポーカーだそうだ。あぁ、俺の一番得意なゲームでよかったよ。と心に念じながらコートを羽織る。黒のカバンにキャリアケースを入れ、ポケットには一応携帯電話を用意する。8:30分だ、今から行くとなれば9:30にはつくだろう。早すぎると感じる方も居るだろが、今から得体も知らないところへ行くのだ。現場に早くついて情報収集をするのはあたりまえであろう。無論、イカサマをされてないか調べる事も出来る。…イカサマを仕組むこともな。
そんなかんだで牢獄よりは十二分によくとも常人にはすこし狭く感じるかもしれないアパートを出る。何時もは通勤ラッシュ等ですこし騒がしい住宅街はやけに静かだ。嵐の前の静けさなのかもしれんな…。
考えるうちに街の中心部、少し古い型の電車に乗る。ここから10駅。そこそこの長旅だ。
乗車客は基本サラリーマン。寝坊したのであろうか、電車の中で化粧をする学生、これぐらいだ。特に変わったこともない。これが日本の朝の醍醐味とも言えるであろう。
そして10駅たった。そこからタクシーで向かうこと15分、会場前についた。会場はシーンとしており、様々な娯楽の道具が置かれている。その中の五階…ポーカーエリアへ俺は足を運ぶ。五階はガラス張りの綺麗な空間となっている。そんなもの見向きもせず、ポーカーエリアのドアを開ける。そこには見慣れた顔、行きつけの裏カジノでポーカーをしているディーラーだ。そして俺は…「頼んだぞ…。」と、ディーラーに声をかける。ディーラーはありがちな仮面で顔を隠し、「あぁ、任せろ。俺のイカサマは付き合いが長いやつにしかバレやしない。」…仕込みは完璧だ。
そう、俺は師にすべてを騙した。ゲームの開始時刻、会場、ゲーム内容。無論、ポーカーも正々堂々と勝負する気なんてサラサラない。彼の特技「イカサマ」で俺の思うようにゲームをすすめるのだ。そして、師が持っている金を全額巻き上げる。そして俺は本来のゲーム会場に行き、相手の不在で不戦勝。完璧な計画だ。…俺はポーカー台に腰を掛け、堂々と脚を組んで師を待つ。
ー終幕ー