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96 詐欺師と三つ目の依頼

「それではリョー様、条件に合った奴隷を見つけた際は、ご連絡をよろしくお願いします」


 お茶を飲み終えて、トリップから帰ってきたトーウと、ケーキを四つもお代わりしたアラを連れて席を立つとパルスが再度頭を下げてくる。


「そこまで重要なら、俺なんかに頼まなくても手持ちの駒が有るんだろう」


「それはそうですが、彼らにはより重要な役目をお願いしていますので。ですのでリョー様の様に信用の置けそうな冒険者の皆様にこうしてお願いさせていただいています」


「そうか、まあ他にも依頼人がいる以上、そちらだけを優先は出来ないが、できる範囲ではやってみよう」


「感謝いたします」


 さてと、金も貰ったし、お土産の御菓子も貰ったし、帰るとするか。





「おかしーおかしー、帰ったら食べるんだよね」


「ああ、またあの至福の味を楽しめるのですね」


 アラは楽しそうにスキップしてるし、トーウもまたトリップしかかってるけど、これは釘を刺しておかないとダメかな。


「昼食が終わってからにするんだぞ、先に御菓子を食べると入らなくなるからな」


(やれやれ、まるで母親の様じゃのう)


 いや、そんな突込みはいらないから、あれあそこに居るのは。


「どうも旦那」


(テトビじゃのう、さてさて何の用じゃろうか)


 何かな、こいつがいると碌な話じゃない気がするんだよな。まあ毎回儲け話を持って来てくれてはいるんだが、どうも胡散臭いと言うかなんというか。


「一体何の用だ」


「こりゃ厳しい、いえね旦那たちが『鬼族の街』での『大規模討伐』に参加されるってんで、手頃な情報をお伝えしようかと思いやして」


「それで、何をたくらんでるんだ」


 まあ取りあえず疑って置かないとな、なんだよずいぶん心外そうな顔をしてるな。


「いやですぜ旦那、確かにあっしだって慈善事業をしてるわけじゃねえんで多少は稼がせていただきやすが、旦那にだって悪い話じゃないですぜ。今まであっしが旦那に損をさせた事が有りやすか」


「はじめて会った時は、犬の骨を売りつけられそうになったがな」


「いや、それは、まあ、そんな事も有りやしたね。ま、まあ立ち話もなんですから店の中で食事でもしながら話やしょうや」


「当然割り勘だぞ」


 きちんと言っとかないと、いつの間にかおごることになってそうだもんな。


「わかってやすって、ささ、遠慮せずに奥へ」


 いやここは俺の泊まってる宿屋なんだけどな。






 とりあえず席について食べ物を注文しておく、アラとトーウは別なテーブルで食事をしてもらっている。仕事の話だとは思うけど、もしも変な内容だったりしたら、小さな子には聞かせられないかもしれないもんな。


「しかしまあ旦那、子爵令嬢を受け取られたってのは本当だったんでやすね。いやいや、『青毒百足』を仕留めた後にキッシュの旦那らへ、あんな大金をスパッとくれてやったのを見た時は、この人は大丈夫かと思いやしたし、街の同業連中も大金を持ったチョロイ鴨が見つかったって、騒ぎになったもんでさあ」


 チョロイ鴨って、おれのことかよ。


(まあ確かにあの状況を見ればのう、お主の前で困った顔を見せて少し泣けばすぐに金を出しそうだからのう)


「ところがまあ、あの金で子爵様や騎士様方に指を差し出させて、ご令嬢まで取り上げちまうなんて、流石は旦那でさあ。そのおかげで旦那に近付こうって狙ってた連中は、みんな慌てて狙いを変える始末でして」


 そりゃあ、よかったけど、いやに噂が早くないか。もしかしてこいつが噂を広めたんじゃ。


「それで、ずいぶんと話が早いが、お前が広めたのか」


「まあ、聞かれれば答えやしたがね。何せ旦那が詐欺の被害に遭われちゃ、あっしの良心が痛みやすんで」


「お前が心配なのは、俺の財布からお前に流れる金だろう」


「まあ、そりゃあ、あっしだって食わなきゃ生きて行けやせんし、旦那は大切なお得意様でやすから」


 まあ、理由は腹が立つけど俺の損になる話じゃないからな。


「それで、俺に伝えたい情報ってのはなんだ」


「へい、まずは、今回の『大規模討伐』の主だった顔ぶれが分かりやしたんで、いの一番に旦那へお伝えしようかと。隣で戦う連中の能力次第で旦那の方針も変わるでしょうから。まあ、お駄賃はこの位で」


(やれやれ、ちゃっかりしておるのう)


 テトビが指を数本立てるのに合わせて銀貨を数枚テーブルに置く。


「解ってると思うが、もし情報が間違っていた時は」


「そりゃあもちろん、この商売は信用が第一でやすから」


 こんなこと言ってるけど、まあ参考程度にして置くか、あんまり頼り過ぎて失敗したら目も当てられないからな。


「それで、どんな連中がいるんだ」


「ええ、『鬼族の街』みたいなたいして金にならない『迷宮』には珍しい面々ですぜ。まずはこの地方の領主クレ侯爵の騎士団と領軍百五十、領軍の兵士はまあ並みでやすが、治療師二十は貴重ですし、騎士団の三十名はそこそこ強いですぜ。何せこの辺りは三つの『迷宮』が有るんで、小規模な討伐を繰り返して鍛えてやすから、まあ『地虫窟』が危なそうなんで、これ以上の数は出てこないでしょうが」


 兵士もスキルは二、三個使えるらしいし、騎士だと多少レベルが有れば十ぐらいはスキルが普通に有るもんな。


「次が神殿の派遣してきた四十、僧兵や聖騎士は戦闘はもちろんですが、光属性の攻撃魔法や回復魔法も使えやすから、より安全になったかと。まあここまでは別に変じゃありやせん、『迷宮』の安全確保は御領主の御役目ですし、ライフェル教の教義はこの世に有る『迷宮』を人類で管理して、脅威から民衆を救う事でやすからね」


 へー、それで『勇者召喚』なんてやってたのか。


「ところが、リューン王国の王女様とその護衛隊が参加なさるってんで、一気に参加希望者が増えやして、それまではまだ実績のない若手や、食い詰めた連中ばっかりでやしたのに。この街に集っていた有名どころやデカいパーティーなんぞが参加しだしやして」


 まあ、この街に集まってた連中は金目当てだけじゃなくて、あのいろいろ問題のある王女様達とコネクションを持ちたいんだろうからな。金目当ての連中は薬を換金して直ぐに他の街に行ったらしいし。


「まずは、ラマイ子爵家の私兵隊六十ですね。ここはそこまで有名じゃありやせんが、何しろ爵位もちの中央貴族様が他領にこれだけの兵を出すってんで、しかも御当主の子爵様は『魔術騎士』としてもそれなりらしいですし」


 げ、それって、マイラスのとこの連中じゃねえかよ、うわーまた面倒なことになりそうだな。やっぱりサミュー達を置いてきて正解だったかな。


「次がシルマ家の皆様方、以前の『地虫窟』討伐で没落しかかってやすが、何とか持ち直しやしたし。今までずっとクレ侯爵の魔術師長を輩出してた家だけ有りやして、生き残ってる方々も相当強力な魔法を使われるらしいでさあ。まあ『地虫窟』を『活性化』直前にしちまいやした一件で、一族は登城禁止、跡目を継いだ若様も正式な家督相続の認可が下りてやせんから。今回活躍して汚名返上を狙ってはりきってやすね」


 うわ、てことは、ガル・シルマもいるんだろうな、ああ、俺嫌われてそうだもんな。からまれなきゃいいけど。


(リューンのアクラス王女、ラマイ子爵家、シルマ家とはお主にとっては四面楚歌と言ったところかのう)


(他人事みたいに、上手く言ったつもりか)


「でもって、ラッテル領の旦那方ですね。まあ旦那と『青毒百足』の一件で、この街での評判は最低でやしたが、『鬼族の街』で毒持ちの魔物が出るって噂が流れてからは、期待の声も上がってやすね」


 ああ、そう言えばポイズンオーガなんかの事もミムズが報告したらしいからな。まあ、見慣れない魔物の情報が有るか無いかで危険度も変わるだろうしね。まあラッテルの連中も金が必要だろうし、この街での評価が祖国に流れたらシャレにならないんだろうな。


「後はまあ、それなりに名前の知れた冒険者が十数人ってとこですね、それぞれパーティーを持ってやすから、総数は五百ってとこでしょうかね」


 そりゃすごいな、いやでもシルマ家が『大規模討伐』を主催した時も三百人だったんだっけ。てことは『大規模討伐』ってのはこんな感じなのかな。まあ今はそれより。


「まあ、これが主な編成でやすが、それよりも旦那にちょっとした儲け話を持ってきやした」


 ほらな、この金の亡者が銀貨数枚の情報提供で終わるはずがないんだよ。


「リューン王国の騎士様が御領主にあげた報告書の内容は、旦那も一緒にいたから御存知でしょ」


「読んではいないが、何を書いたかは想像がつくな」


 パルスも馬鹿正直に書いたって言ってたもんな。


「まあ、誰が何をしたかなんてのは、あっしにはどうでもいいんですが。重要なのは新種のオーガが三種類も見つかった事でさあ。あの『迷宮』はめったに冒険者が入りやせんから、新種も生まれやすいんでそこまで珍しくは無いんでやすが。それが魔法まで使うってなりゃあ話は別でさあ。あちこちで魔物使いや魔物商人が騒ぎ出してやして」


 ああ、オーガ・ヒーラーとオーガ・メイジか。


「魔法を使う鬼ってえとゴブリンが有名でやすが、あいつらは腕力も体力も有りやせんから、使い魔にしても後衛で守ってやらにゃいけやせんが。オーガなら基礎能力が高いんで状況に応じて前衛も後衛もこなせるって寸法でして」


 まあ、回復にしろ攻撃にしろ、魔法が使えるメンバーってのは貴重だもんな。ハルやミーシアが買えたのが幸運なんだし、サミューが魔法を使える様になりそうなのも『成長補正』のおかげだもんな。

 

 そう考えるとオーガ・メイジやヒーラーを使い魔に出来ればいいよね。うんオーガ・ヒーラーなら、回復だけじゃなく接近戦も出来るから。量産型ミーシアって感じだもんね。


「まあ、そんな訳でして、あちこちから新種のオーガの捕獲依頼が入ってるって訳でやして。五体満足ならこの位、最悪でも繁殖が出来る状態ならこの位、もちろん金貨ですぜ悪い話じゃないでしょ。もし、手加減できずに倒してもこの手の魔物の採集品は『簡易魔道具』や魔石の材料になるんで買い取りもしやすぜ」


 たしかに、テトビの提示した額は魅力的だけどさ。


「魔物を捕えるには『魔物狩人』でないとダメだと思ったが」


「確かに『魔物狩人』の『馴らし』スキルでないと、捕えても使い魔には出来やせん。なので罠にはめたり、手足を傷付けて動きを止めてから、討伐に同行する『魔物狩人』を呼んで頂くってのが正式な内容でして。その時にあっしの紹介だと言って頂ければ直ぐに話が付くようにしてやすんで、よろしく頼みますぜ」


 動きを止めるか、まあ『切り裂きの短剣』で足の腱を切ったり、ミムズがやってたみたいに足を凍らせてもいいし、雷で気絶ってのも有りか。


「いいだろう、見つけられるか解らないが、見つけた時は出来るだけ生け捕りができるようにやってみよう」


「ありがとうございやす。ところで旦那は魔法対策は出来てやすか、いくら手足を潰しても回復されりゃあ逃げられやすし。『魔物狩人』が魔法で殺されりゃあ取引もぱーですぜ。そこで『魔力封じの鎖』が有るんですが、ほかならぬ旦那相手ですんで一本銀貨十二枚で良いですぜ」


 うわ、こいつちゃっかりしてるな、俺も見習わないと。


(確かに魔法を使える相手を捕えておくには『魔力封じ』の付加が付いた『簡易魔道具』が必要じゃろうな)


「ちなみにそれは、他だと幾らなんだ」


「数日前までは銀貨八枚でやしたが、この依頼の話が広がってやすから、道具屋で買えば銀貨十五枚はしやす」


 なるほどね、こいつは値上がりを予想して安い時期に買い込んでたんだろうな、まあ安く買って高く売るってのは商人の基本だし俺も損する訳じゃないか。


「ちなみに話を広げたのは誰なんだ」


「あっしでさあ、何しろ似たような依頼は何本も入ってやすが、その半分はあっしが仲介してやして、『魔物狩人』の手配もあっしがしてるんで」


 こいつこのネタで、結構稼いでそうだな。こういう商売上手な奴は上手く使うといろいろ便利そうだな。俺も見習おう、これからはビジネスチャンスを逃さないぞ。


 俺は金貸しや慈善家じゃないんだ、俺はジャパニーズビジネスマンだ。


「解った、鎖を十本貰おう」


 とりあえず今日は、負けを認めておこう。


すいませんこんな話で。


ちなみに活動報告の方でちょっとしたアンケートを取っています。

もしよければご協力お願いします。

この結果が、話に少し影響する予定です。


H27年8月27日 誤字修正しました。

H27年9月5日 誤字追加修正。

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