91 聖女と一つ目の依頼
とりあえず、担保の件は保留にしてもらった。
額が額なので考える時間が欲しいと、とりあえずしばらく待って貰う事にしたからな。まあ長くても『大規模討伐』が終了するまでには答えなきゃダメだろうけど。
(ただ単に問題を先送りにしただけじゃろうが)
いやまあ、そうとも言うけどさ、でもしょうがないだろあの場では断りにくいって。
(しかし、そのおかげで『大規模討伐』に参加することになったのう)
討伐終了まで待って貰う以上はね、俺もそれまでこの街を離れられないからそれなら参加した方が良いよね。
(それで、終わったらどうするつもりなのじゃ、今のうちに決めて置かんと後で悩むだけじゃぞ)
いやそれはそうだけどさ、今くらいは難しい事を考えずにリラックスさせてもらえないかな、さっきまで部位欠損が回復できる制限時間が終わるまでオッサンたちと一緒にいたんだからさ。それに今はさ。
「あわあわー、リャーもっと」
俺の手の中のスポンジを泡立てて洗ってやるとアラが気持ちよさそうな声を上げてくれる。
やっぱり日本人には風呂だよね、これも異世界トリップのお約束かもしれないけど、これが有ると無いとじゃやっぱり気分的に大違いだよね。まあ風呂というよりは大きなタライにお湯を張っただけって感じだけど、温かいお湯で体を洗えるだけでもありがたいからね。
まあこれだけの為に結構な別料金がかかるってのは微妙だけど。
「ほら、頭を洗うから目を瞑って耳を塞いでろ」
「うん」
いい値段のした髪用の石鹸を泡立ててアラの艶やかな髪を洗ってやる。ああ、ふわふわの髪の毛をワシャワシャしてると手触りが良いなー
(しかしまさかこっちの世界に入浴の習慣が有るとはな)
(以前は、『勇者』とその影響を受けた一部の物だけの娯楽であったが、数百年前に訪れた『勇者』が『公衆衛生』とかいうものを持ち込んでからは、手洗いや、上下水の区別などと共に定期的な入浴も広まったからのう)
なんだ、俺がこうやってお湯を浴びれるのも以前の『勇者』のおかげか、こう言うのも内政チートに入るのかな。
小さな桶にお湯をすくってアラの体に付いた泡を一気に流してやる。
「ぷはあ、ありがとリャー、じゃあアラがリャーの背中洗ってあげるね」
そう言って石鹸の付いたスポンジを持って俺の後ろに回ってごしごしと背中に押し当ててくれる。
「んしょ、んしょ、ごしごし、んしょ」
ああー極楽極楽、とりあえず面倒な事は考えたくないなー
「呼び出し俺にか」
朝食を食べに食堂に降りたら、宿の亭主に呼び止められた。
「はい、先ほど見知らぬ騎士の方が来られてこれを」
宿屋の主人が出してきたのは蝋で封じられた手紙だけど、誰からだろう。
「一応確認するがエルフ族やラッテル家の連中じゃないんだな」
「はい、人族の御方でしたし、ラッテルの御家の方々は先日お見かけして御顔を覚えてます。それに来た騎士様は怪我をしてませんでしたし、こう言ってはなんですが装備もかなり良い物でしたので違うかと」
そこまで言うなら違うだろうな、ラッテル家の連中はどこかに部位欠損が有るはずだし、それに金に換えたせいなのか装備も貧弱だったもんな。何しろ思わずゴブリンドロップの鉄の装備を貸しちゃったくらいだし。
「まあいいありがとう」
開いてるテーブルにアラと一緒につくとウエイトレスさんが注文を取りに来る。
「何日かは、鳥料理がお勧めですよ、三日前に生きたまま二十羽仕入れたんで。毎日何羽かずつ絞めてるので新鮮ですよ」
いや、笑顔でそんな物騒な事を言われてもさ。まあこっちの世界じゃ普通なのかもしれないけど。
「それなら、この子に何か鳥料理を、俺はいつも通りパンとサラダ、後は豆のスープを頼む」
さてと何が書いてあるかなと。
「本当に呼び出しだな、朝食後に来てほしいか、場所は……」
この街の神殿って、給料日はまだだったよな。
「お久しぶりですね」
神殿に行くとすぐに通された応接間にどこかで見た事のある女神官がいた。あれ誰だっけこの人見覚えはあるんだけどな、この清楚そうに微笑んだ顔も、結構なスタイルも、鮮やかな金髪も見覚えが有るんだよな。えーと。
(ええい、神官長殿じゃろうが、いくらなんでも忘れるなどありえんじゃろうが)
ああ、そう言えばこんな感じの人だったっけ、『子鬼の穴』に入る前が最後だからすっかり忘れてたわ。だってさ、異世界トリップ物だとさ、召喚した相手がそのままもう出てこないとか結構あるじゃない。
「少し込み入った話をしたいので、お連れの方は別室でお茶でも飲みながらお待ちいただけないでしょうか」
それもそうか、この相手は色々と知ってるからどんな話が来るか分かったものじゃないからな。
「アラ、他の部屋に御菓子が有るみたいだから、そこでちょっと待っててくれないかな」
「リャーと一緒じゃめーなの」
「すぐに俺も行くから、どの御菓子が美味しいのか調べておいてくれないか」
「うん、わかったすぐ来なきゃめーだからねリャー」
来客係らしい若い女性神官に連れられて、アラが出ていくのを見送ってからソファに座り神官長に向き直る。
「それでは改めて、お久しぶりです『勇者』様」
「本当に久しぶりですね、それで何のようでしょうか」
一応俺は神殿に雇われてる立場だから敬語の方が良いよね、馬車貰ったり身分証明して貰ったりしてるし。
「まずは御礼を、『子鬼の穴』に続き『寒暑の岩山』を鎮静化して頂きありがとうございます。また『地虫窟』では『青毒百足』を討伐して頂いたそうで」
「ムカデの件はこちらの個人的な理由が大きいので、気になさらないでください」
それに『寒暑の岩山』もカミヤさんからお金貰ってやったことだし。
「それでもです、あの魔物が浅い階層を占拠していたために、冒険者の被害が大きく探索が進まないばかりか、『活性化』までの猶予期間が見る見る減っているような状況でしたので」
ああそっか、『フロアボス』級の魔物が勝手気ままにうろついてるとそう言う事も有るのか。
「これは少ないですがお礼です、『勇者』様の御役に立てばいいのですが」
そう言って出してきたのは『アイテムボックス』か、みんなのよりも性能が良さそうだからサミューに持たせようかな。
「ありがたく頂戴します」
「中に幾つか武器を入れておきました、よろしければお供の方にお渡しください」
どんなのが入ってるかな、楽しみだな。
「それで、今日はどうしたんですかまさかこれだけの為に来たわけではないのでしょう」
「もちろんです。表向きは『活性化』の近い『地虫窟』の視察ですが、本題は『勇者』様に依頼したい事がいくつか有りまして」
さてと、『勇者』を指名してくるって事はけっこう面倒な内容なのかな。でも俺が弱いのはこの人も知ってるはずだし。
「その前に確認したいのですが、『勇者』様は『鬼族の街』の『大規模討伐』には参加されますか」
「一応はそのつもりです、せっかくですのでいい経験になると思いまして」
「それは良かった、実は依頼したい内容はこの『迷宮』に関してなので」
『迷宮』についてか、なんだろう。ムカデみたいに面倒な魔物がいるから倒してくれとかじゃなきゃ良いんだけど。
「実は先月とある『勇者』の手記が見つかりまして。それによると『鬼族の街』に有る隠し部屋に細工をして、宝物庫代わりに使っていたようなのです」
なるほどね、『迷宮』ってそう言う使い方もあるのか。確かに魔物がいるから盗賊なんかは来にくいだろうし、結構な広さが有るから、しらみつぶしに探すのも難しいもんね。
「しかも、その細工と言うのが『勇者』ならば比較的簡単に解除できますが、そうでない者には相当難しいとの内容でして」
「そんな都合のいい仕掛けが有るんですか」
何だろう『勇者』特有の魔力とか、そんなのに反応するみたいな感じなのかな。アニメとかだとあるよね選ばれた者しか入れないとか。
「『武具の社』以外でそういった物は確認されていません。ですが、かなり自信が有る書き方でしたので人手を送るか迷っていましたが、幸い『勇者』様がこの街に居りましたので」
てことは俺がいるってのを確信してここまで来たって事か。そう言えばなんで俺が攻略した『迷宮』の事を知ってるんだろ、『子鬼の穴』は神殿を出た直後だけど、『寒暑の岩山』は。ひょっとして定期的に調べられたりしてるのかな。まあ月一で神殿には顔を出してるんだからどこら辺にいるかはすぐ掴めるだろうし。
「そこで、この宝物庫にあるはずの『勇者の武具』である『属性付与の弓兵弓』と、『暗殺者の毒殺刀』を回収してほしいのです」
なるほどね、『勇者の武具』が有るんじゃそりゃ回収したいよね。
「報酬は宝物庫にあるその他の物品全てでどうでしょうか」
あれちょっと変な気がするけど。
(なあ、普通に考えれば宝物庫の中身は全部発見した俺の物じゃないのか、それを報酬にするってどういうことだ)
(広い『迷宮』の中を、自力で隠し部屋を探す自信が有るのならばそうするのじゃな。おそらく手記にはその部屋の位置が詳しく書いてあるのじゃろう、神殿が案内をして、お主が仕掛けを解除するのなら、発見したものは折半と言われてもおかしくあるまい。その権利を神殿側が放棄するという事じゃ)
なるほど、確かにそうだよな。広い『迷宮』のどこにあるかもわからないんだから俺だけじゃ無理か。
「承知しました、その条件で依頼を受けましょう」
「そう言って頂けると助かります。それと、この依頼に付属した別途依頼として細工の解除方法を記録して頂けないでしょうか、上手く記録できた場合は追加で金貨を25枚支払いましょう」
そりゃあずいぶんと美味しいお話で、やる事にひと手間増えるだけでそんなにもらえるって。
(その位の価値は十分あるじゃろうな、『勇者』しか解けぬとなれば、この世界では解ける者はいないじゃろ。納める物によっては色々と宝物庫が役に立つじゃろうな)
まあそうか、『勇者』がその専用装備をしまうくらい厳重な隠し倉庫だもんな。
「分かりましたそれも受けましょう」
「ありがとうございます。それではこれをどうぞ」
神官長さんが出してきたのは香水瓶サイズのひし形の宝石、このタイミングでこんなアイテムって事はやっぱりアレかな。
「『記録の石』という『簡易魔道具』です。魔力を通せばその間、周囲の景色を記録する事が出来ます」
やっぱりか映像記録アイテム、これが有れば色々と便利そうだよね。
「それとこれが最後になりますが。今回の『大規模討伐』には、初心者同然の冒険者が多数参加する可能性が有ります。彼らが大量に死亡すると『鬼族の街』が『活性化』する恐れが有ります。何が有っても、これだけは防いでください。これは依頼では無く、神殿と『勇者』の制約に基づく『鎮静化迷宮の指定』だと思ってください」
初めて来たな、『鎮静化』する『迷宮』の指定。でもそこまで『活性化』が近づいて無い『迷宮』なのに何でだろ、どっちかって言うと『地虫窟』の方が危ないんじゃ。
「この『活性化』の防止は、最優先事項だと思ってください。今回の『大規模討伐』には、神殿からも僧兵と聖騎士を40名ほど出しますが、『鎮静化』する際は彼ら全員を犠牲にしてでも成功させて下さい」
な、なんだよ、ずいぶん物々しい話だな。どうなってるんだよ一体。
(おそらくは、『勇者の武具』が長期間保管されていた為であろうな、しかも鬼族の多い『迷宮』じゃからな)
(どういう事だそれは)
(以前言ったであろう、長期間『迷宮』に有るものは『型』の元となると)
ああ、そう言えばそんな話が有ったな。
(あれは、形状とは別に機能や『付加効果』もそれぞれ別々に『型』となる。『迷宮』が『魔道具』を産む時は、それらの『型』から確率で組み合わされて新しい『魔道具』が作られるのじゃ。つまり、同じ『付加効果』を持った別な武具が作られるかもしれんという事じゃ)
て事は『勇者の武具』の効果も複製出来るのか、てことは『超回復』の付いた鎧とかも有りか。
(『勇者の武具』の機能を丸々移しこむ事は、よほど力のある『迷宮』で無くばできぬが、劣化した能力複製ならば大抵の『迷宮』で可能じゃ。よい例がプテックの『重砕の大斧』じゃな、あの『魔道具』の『付加効果』は、元々アキラの持っておった『剣士の重圧剣』に有った『超重殺』の劣化能力じゃからの)
そう言えばカミヤさんは重たそうな大剣を片手で振り回してたっけ、あのパワーでプテックの斧みたいな効果の武器を使ったら凶悪だろうな。
(それと、今言った事はアキラには話すでないぞ気にしておるでな)
なんだよそれ。
(どういう事だ、強力な『魔道具』が増えるのは良い事じゃないのか)
あ、でも誰の手に渡るのかわからないのは問題なのかな、犯罪者とか敵対する冒険者とか。
(本来ならばそうじゃが、生み出される過程に問題が有ったのじゃ)
過程って『迷宮』に装備を置いておくだけだよね。
(アキラは一時期、とある『迷宮』に長期間籠っていた事が有ったのじゃ。何でもそこの『迷宮』では、農作物に転用可能な野草や山菜がいくつもあるという事じゃったが。義務を果たすために他の『迷宮』を『鎮静化』すると、その『迷宮』に何か月も籠り、期日が近づけば他の『迷宮』を『鎮静化』する。という事を何年も繰り返しておったのじゃ)
ああ、カミヤさんならあり得るかも、あの人は食生活の改善の為なら結構な無理をしそうだもんね。まあ、だからユニコーンの時はピーマンと唐辛子が役に立ったんだけど。
(そうしておるうちに、アキラの装備の機能が一部『型』になったのじゃ、結果としてその『型』を元にした『重砕』の武器が数十本できたのじゃ)
(そんなにできたのか)
確かカミヤさんはこっちに来て二、三十年くらいのはずだから、単純計算なら数年に一個は『魔道具』が回収できるって事だよな、上手くすれば一年ぐらいで行けるかも。工夫すればパーティメンバーに『超回復』や『軽速』、『切り裂き』の装備をさせられるかも。
(本来ならそんな事はありえん、強力な武具や『魔道具』、魔物ほどより多くの霊気を必要とする。一部とはいえ『勇者の武具』の効果を複製した品など、数十年に一度しか生まれん。例外が有るとすれば、『鎮静化』した際に発散された霊気の一部で生成した場合。あるいは最上級と呼ばれるような強大な『迷宮』の中じゃろうな)
そっかアラの『出血の細剣』もそうやって手に入れたんだもんね。しかし『最上級迷宮』って近づきたくもないな。
(それじゃあ、なんで『重砕』はそんなに出来たんだ。強力な『迷宮』だったって事か)
(確かに、そこそこ脅威度の高い『迷宮』じゃったがそこまででは無い。『活性化』したのじゃ、『活性化』の際『迷宮核』はそのうちに溜め込んだ霊気を一気に吐き出すと言ったじゃろう。ゆえに強力な魔物や装備も大量に作られるのじゃ)
(カミヤさんが『活性化』を見逃したってのか)
それはおかしくないか、あの人なら『活動期』に入った瞬間に『鎮静化』してノルマ消化するだろうし、一度『鎮静化』したら数十年は大丈夫なはずだろう。
(もちろん普通ならばそんな事にはならぬ、アキラが長期間籠っていた事を知った者どもが『魔道具』を狙って、人為的に『活性化』させたのじゃ)
(そんな事できるのか)
人工的に『活性化』って、なんかすごいことしてないか。
(たいして難しい事では無いじゃろうが、『迷宮』で大量に死者が出れば生命力を『迷宮核』に吸い取られると言うのは、お主も知っておる事じゃろう)
それって、まさか、いやそんな事するはずがないよな。
(安く買い集めた奴隷や、攫ってきた子供、貧民街の住人を金で丸めこんだりして大量に『迷宮』へ連れ込み殺したのじゃ)
やっぱりか、そんな事されちゃカミヤさんもたまったものじゃないよな。しかし、そんなものを神殿や治安機関は放置してたのか。
(もちろん、そのような事を見過ごすことは出来ぬゆえ、僧兵や国軍が討伐に向かったが、間に合わずに『活性化』しおった。それによって不届き者共は魔物の餌食となったが、討伐隊や周辺にも大量の被害が出たのじゃ)
ちょっと待てよ『活性化』させたって事は、その連中も魔物に襲われる事は対策済みだったんじゃないのか。
(『活性化』によって大量に発生した魔物の中に数十体のミノタウロスが居ってな、これが大量に被害を出しおった)
ミノタウロスか、ゲームなんかじゃ結構強い場合もあるよな。まあ雑魚の時も有るからそこまで極端に強い気がしないんだよな。
(フロアボス級の魔物とは言え、もちろん対策は立てられておった。じゃがミノタウロスの群れはそのほとんどが『重砕』の効果が付いた『魔道具』を装備しておったのじゃ)
それは、多分パワーファイターだろうミノタウロスに『重砕』の装備って、文字通り鬼に金棒じゃないかよ。しかもそれが集団って。
(『切り裂きの細剣』と『軽速の足環』を装備したゴブリンに苦戦したお主ならわかるじゃろう、『魔道具』を装備した人型の魔物がどれほど脅威か。ましてそれが『フロアボス』級の魔物と『勇者の武具』の複製となれば)
あ、それは終わったな。
(ミノタウロスの怪力対策として用意された防具は一撃で粉砕され、重装備の前衛やそのまま肉薄された後衛は全滅、逃げられたのはお主の様にひたすら攻撃を躱し続ける事が出来た、軽装の者ばかりじゃったがそれも他の魔物に追い回されて生き残りは居らんかった)
まあそうだろうな、プテックが使った時でも威力がすごかったもんな『重砕の大斧』それが何十個じゃね。
(その後、魔物は『迷宮』の外へ溢れだしおった。迎撃用要塞の城壁も都市の防壁も、ミノタウロスが全力で振り下ろす『重砕』の武具を前にしては、紙同然に破られ市街地へなだれ込んだ魔物に多くの民衆が襲われ。アキラと『元勇者』三名が直接鎮圧するまでに大量の犠牲者が出たのじゃ)
チート戦士が四人がかりで鎮圧って『活性化』こえええ。
(これを理由としてアキラは『勇者』を引退し、『迷宮』に入る際は通常の装備しか使わぬようになったのじゃ)
ああ、それは確かにカミヤさんにこの話は出来ないな。トラウマになってそうな感じだし。
(これ以降、神殿は所在のわからない『勇者の武具』を積極的に探索回収するようになり。『迷宮』で『魔道具』を複製する際も『地虫窟』や『薬師の森』の様に、人型の魔物がいない『迷宮』に限るよう各国へ通達を出したのじゃ。まあそれでも影響はあるが人型に使われるよりはマシじゃからの)
まあ完全に禁止したら、隠れてやる国とかが出てきそうだもんね。
「どうやら、ラクナからの説明は終わったみたいですね」
おいおい、タイミングを見計らったように言って来たよこの人。まあ、ラクナは元々神殿の物だもんね、性格や知識は把握していてもおかしくないのか。
「もし、『活性化』で大量に作られた『魔道具』を、オーガやさらに上位の鬼が装備して溢れ出せば、周辺の被害は今までの比では無くなり、この街も放棄せざるを得ないでしょう。そうなれば『地虫窟』の攻略は前線基地を失ってさらに難航し、最悪の場合『活性化』の連鎖という事態になりかねません」
そうなったら、『青毒百足』みたいなのがわんさと湧いてくる危険性もあるのか。確かにこれは何とかしないとダメだな。
「分かりました、『鬼族の街』の『活性化』は全力で防ぎましょう」
こう言うしかないよね。
「快諾して頂きありがとうございます。それではわたくしはこれで失礼します。隣室には昼食も用意していますので、どうぞごゆるりとおくつろぎ下さい」
そりゃありがたい事で。
「ご飯美味しかったねー、リャー」
嬉しそうにお腹を叩くアラが、振り返って来るのに思わず俺も笑い返してしまう。
「そうだな、それにいろいろ貰えたしな」
アイテムボックスに装備に、そこそこのお金。どんな装備が入ってるか楽しみだなー
「お菓子も美味しかったし、ばんごはんもすっごかったねー」
確かに、あれは凄かったな。神殿の中なのに半分くらい肉料理ってのはどうかと思ったけど。
(ここの様な都市の神殿では地元の名士等との付き合いも有るのでな。ある程度は戒律も緩むものじゃ、それゆえ神官長殿は食事に手を付けずにすぐ帰ったのじゃろうな)
そう言えば俺が召喚された本神殿には、欠片くらいの干し肉とコップ一杯程度のお神酒しかなかったもんな。
あーあ俺も肉料理食べたかったな。
「アラ、お肉は美味しかったか」
「うん、すっごくおいしかったよー」
ああ、でも今はその笑顔だけで癒されるなー
しかし、これだけで一日使っちゃったか、できるならアイテムとか買いに行きたかったんだけど。まあ明日でもいいか。
「お、帰ったのかい、遅かったな」
宿に戻ったら、親父が笑いながらそんなこと言って来たけど、確かにもう暗くなってきてるもんな。
「別に門限が有るわけじゃないだろう」
親父の前をスルーして鍵を出しながら階段を上がるけど、いやにニヤついてるな。
「まあそりゃそうだ。おっとそうだ、良い夜を」
なんだ、別に酒場で飲むわけじゃないし、後は寝るだけだってのに。
「どうしたんだろーね、ふわ」
ああ、アラが眠そうに欠伸しちゃってるよ、かわいいけど早く寝かせてあげないとね。
鍵を開けてドアを開ける、そしてすぐに閉める。
「どうしたのリャー」
「いや、部屋を間違えたかもしれない」
キーについているナンバーとドアのナンバーを確認する。間違いないよな、念のため鍵を差し直してロックをかける。うんきちんと鍵が掛ってるからキーも間違ってない。
となると見間違いか、そうだよな俺の部屋でそんな訳ないよね。薄着の女の子がベッドの上に座って三つ指をついて迎えてくれるなんて、そんなことある訳。
「開けるよーリャー」
有ったよおい。
「お待ち申し上げておりました」
アラが開けたドアの向こうには、さっきと同じ姿勢をした子爵令嬢の姿が有った。
皆さんの感想が多くて、ビックリですありがとうございます。
いやー意外と二番が多いのがびっくりでした。
一番の人も積極的な人もいましたが仕方なくって人も結構いましたし。
一人ぐらいはネタで四番とかあるかと思ったんですがゼロでした。
総合評価が4000超えましたありがとうございます。
H27年8月7日 誤字、分かり難かった一部表現を修正しました。




