9 小鬼の穴
やっと、プロローグの後に戻って来れました、ゴブリンはもうお腹いっぱいです。
(目が覚めたかの)
「うん、ああ寝てたのかMPは回復したか」
隠れてるとはいえ、こんな岩の間でよく寝れたな。
(充分回復しとる、じゃが攻撃魔法には気を付けよ、さっきの火炎呪文、ただ斬られた時より回復時の消費MPが多かったぞ)
まあ、全身火傷だったしなー
(それと休んでいても、寝てはならぬと教えはしなかったかの)
いや、三日も寝てないんだよ、『闘気術』が有るからって流石に辛いよこれ。
(寝ている間に魔物に見つかっておればどうなっていたことか)
確かにそうだけど。
「他の勇者はいったいどうしてたんだ、ずっとこんな事を続けてたのか」
それなら、本当に尊敬できるよ。
(そんな訳はなかろう、大抵の勇者は1日、早い者なら半日でこのような迷宮は踏破しておるわ)
んな、馬鹿な、俺がこんなに苦労してるのに。
(言ったであろう、最長記録じゃと、お主は隠れてMP回復に時間を使いすぎじゃ)
どうせ俺は、弱小勇者だよ。
(それに今までの勇者の場合、大抵は神殿から各国に打診して、勇者の特性に合わせたパーティーを用意してきたしのう)
マジか、じゃあもう少し頑張れば、楽になるのか。
(まあ、お主は例外として自力で探すことになるんじゃがの)
はあ、何でだよ、歴代勇者の中で俺ほど仲間を必要にしてる奴が居たか、居ないだろ、チートならボッチだって大丈夫だろうけど、俺の場合は命がかかってんだよ。
「なあそれって、おかしくないか、逆だろふつう」
(仕方あるまい、各国から来るのは、選び抜かれた一流ばかりじゃぞ)
そう、そういうのが必要なんだよ、俺の代わりに魔物を蹴散らしてくれるような、強力な仲間が。
(優秀な者はえてして我が強く癖もある、そういった者達を、圧倒的な力で強引に従えてきたのが歴代勇者達じゃ、お主にその真似ができるかの)
う、難しいだろうなー
(中には勇者を試すと、初対面で切りかかってきた者も居るぞ)
ごめんなさい、そんな事になったら、ひとたまりも無いので無理です。
(それに、勇者が弱いと各国に知られるわけにはいかぬしな、下手をすれば大量の刺客が送られてくるのじゃ)
マジっすか、勇者ってそんなに嫌われてるの。
(まあ、そんな事よりも、これからどうするか考えるべきじゃな、この程度の迷宮、今日中に踏破してもらわねば、食料も少ないのであろう)
う、確かに、神殿で貰った食料は、もう結構減ってるよな。
アイテムボックスを取り出して中身を確認すると、確かに残り少ない。
これもファンタジーでよくあるアイテムだけど微妙な使い勝手だよな~
武器や防具なんかの装備品は何種類も入るけど、同じ名称の物は三個まで。
薬なんかのアイテムも各五個まで、それ以外の道具類は各一個、食料品は大雑把に『生鮮食』『保存食』『調味料』の分類でしか入らなくて、フルに入れても全部で一週間分程度。
装備品やアイテム以外の宝石、貴金属、大型の物品、衣類、布類、美術品、装飾品、嗜好品は一切入らない。
例外なのは、現金、書物、後はモンスターの死骸や生成物、未加工の薬草などだけって。
これが神殿で用意できる一番いいボックスってか、なんだろこの微妙さ。今は良いけどこれから大変そう。
「これで幾ら位するんだ」
(買い足そうというのならやめておくのじゃな、ボックスは一人一つしか持てん)
うえ、てことは、いざとなったら買換えか~
(それよりも良いボックスはそうそうないぞ)
ええ~、なんか悪意を感じるなこれ、普通なら無条件で幾らでも入るだろ~
はあ、なんかな~、とりあえず現状確認だな。
ボックスに入ってるのは、金貨が二百枚うんこれは大金だ。僧兵用の装備がそれぞれ一個づつ、薬品類が十数種類、ロープなどの道具類がいくつか、食料が入るだけ、以上。
現金のぞけば初心者セットじゃねえか。
ゴブリンドロップの銅剣LV9(レベルアップしました~)が一番強力っておかしくないですか。
(いつまでこうしているつもりじゃ、ゴブリンばかりでは飽きてくるわ)
まあ確かに、この一か月ゴブリンばっか相手にしてるしな~オスメスの区別も解るようになったし、同じレベルでもメスの方が弱いんだよね。
周囲に注意して迷宮の中を進むんだけど、微妙に壁が光ってるのがありがたいよな~でなきゃ松明にゴブリンが寄ってきそうだし。
(ふむ、おかしいのう)
「なにがだ、つまらないことなら無視するぞ」
(ここに来て急にゴブリンが居なくなったのでな)
「平和でいいことじゃないか」
エンカウントせずにクリアーなら最高じゃね。
(ここはすでに最下層じゃ、本来ならもっとも魔物が多いはずなんじゃが)
おお、ここに来て運が回ってきた、この世界に来てからろくな事なかったからな~その分の反動かも、ん、この匂いはここ最近で嗅ぎ慣れた。
(ゴブリンじゃな、その角の先あたりかのう)
臭いでわかるって、どんだけゴブリン慣れしてるんだろ俺、とりあえずちょっと覗いてみて作戦考えなきゃな~ってええ~
(全滅しておるの)
「ああ、どうなってるんだ、仲間割れか」
俺の見つめる先には、大量のゴブリンの死骸、とんでもない量だな。
これだけの数を一度に相手にしたら、何回『超再生』をしてたかな、確実にMPは無くなるだろうな~
(ふむ、どうやら大規模討伐でもあったようじゃな)
ああ、なんかよく聞く単語が出てきたよ、一応確認しとくか。
「なんだそれは」
(大人数での迷宮攻略じゃ、名目は活性化した迷宮の鎮静化じゃが、一過性の事業として迷宮深層部での収集の場合が多いの)
「なるほどな」
誰がやったか知らないけど感謝感謝、おっ爪を回収せずに放置してるじゃん、これ素材として売れるんだよな、ラッキーこれだけの量有ればそれなりの額に。
(ええい勇者ともあろうものが、せこい真似をするでない、とはいえ『子鬼の迷宮』では大した稼ぎにならん、こ奴らは鎮静化が目的じゃろ)
て事は、このまま何もしなくても、ミッションクリアできるんじゃない。
(何を考えているかは予想がつくが、お主が直接鎮静化せねば『社核』は功績と認めぬし、魔力回路の書き直しもできぬぞ)
それってやばくない、急がないと。
『軽速の足環』を発動させて先を急ぐ、所々にゴブリンの死体と、全身鎧の死体が、装備回収したいけど後回しかな。
(まて、一度止まるのじゃ)
「どうした」
急停止して、周囲を見回すが特に変わったことはない、一体なんだってんだ。
(この先がボス部屋じゃ、心して進め)
一度深呼吸をして、ゆっくりと進む、前方に意識を向けるが特に大きな物音はしないよな。
「静かだな」
(もう戦闘は終わっておるようじゃな、我らより先に攻略されてしまったか、あるいは)
「全滅したかだな」
どっちもいやだな、先を越されたらここ数日の苦労が水の泡だけど、全滅してたら、これだけの戦力を撃退するようなボスの相手なんてしたくないよ。
俺一人で何とかなるのかよ、でも待てよ、さっきまで戦闘してたボスがノーダメージってことは無いよな、て事は漁夫の利いけるんじゃね。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
(鬼しかおらんぞ)
ああ、なんかこのやり取りもお約束な気がするな~
ゆっくりと部屋の中に入っていくと、奥にそれはいた。分厚く筋肉の盛り上がった両腕、割れた腹筋、筋肉でパンパンのズボン、右手には肉厚の長剣、金属製の胸当てに兜、籠手までしてやがる、明らかに今までのゴブリンとは雰囲気が違うな、これがボスの貫録ってやつか。
ゴブリン・キング LV11
技能スキル 長剣 剣術
身体スキル 腕力上昇
戦闘スキル 強斬撃 三連続斬
俺とキングの間には鎧の死体が四体、予想通りダメージはあるみたいだな、キングの体には所々傷があり、それを他のゴブリンが手当てしている。さすがはキングだな、ん、よく見るとこの部屋にいるキング以外のゴブリン全部メスじゃね。
さすが王様、ハーレムですか、けっ。なんか奴の顔が男前に見えてきたし、ああ、もういいやさっさと殺っちまおう。なんか一気にやる気が出てきたな。
奴が剣をつかんで立ち上がる。
「シャー、クアー」
訳のわからない叫びをあげるキングに向けて剣を構え、『闘気術』と『軽速』を同時発動させて一気に距離を詰める。
「先手必勝―」
直前で『軽速』のみ解除し、銅剣を振るう。
防がれた、加速し背後に回り込む。
「食らえ」
無防備な首筋貰った~
「シャラーーー」
げ、反応しやがった、防ぐかあれ。
もう一度だ、兜で視野が狭いはず死角に入れば。
その腹筋をぶった切ってやる。
長剣が光り、銅剣が弾き飛ばされる。
(素手になってしまったのう)
落ち着いて解説してんじゃねー、『軽速』で後退し剣を回収して回り込む。
このまま攪乱してやる。
高速で奴の周りを移動し続ける。
これで分身とかできてたらカッコいいんだけどな~
このタイミングなら。
「もらった」
「キアーーーー」
大きな音があたりに響く。
剣を振りぬいた姿勢で俺は固まっていた。
「うそだろ」
俺の腕の延長線上に銅剣の切っ先はなかった。
半ばあたりで折られた先端部はそのまま弾き飛ばされて、俺の背後に落ちる。
(ええい、お主はすぐ呆けるその癖を何とかせい、反撃が来るぞ)
アドバイス遅ええ、もう目の前に長剣があああ。
胸元をざっくりと切られると同時に吹き飛ばされる。
ぐっ、てええええ、痛え、クソ。
仰向けに倒れた俺に奴がゆっくりと歩いてくる。
「ケハーーー」
ちょっと、そんな思いっきり剣を振りかぶってどうする気ですか、まさかトドメを、やめましょここは平和に話し合いは、無理かな。
「なあ、あれ食らっても『超再生』で大丈夫だよな」
(一度や二度ならともかく、何回も繰り返し斬られれば、MPが尽きるじゃろうな)
クソ来るな、こっち来るな。
近づいてくるゴブリン・キングの口元がゆがむ、この野郎笑ってやがる。
くそ、王様で、ハーレムで、男前で強いってか、どこのイケメンだこのリア充が、リア充ゴブリンが、お前なんてもげてしまえ、腐り落ちてしまえ。
「ん、まてよ」
視線を転じる、そこには声援を送るメスゴブリン。
視線を戻す、ゆっくりと向かってくるオスゴブリン(キング)。
(早く起き上がらぬか、やられてしまうぞ)
ちょっと黙っててくれよ、考え中だから。人型だよな、でもってオスメスがあるんだよな。
「クラーーー」
奴は俺の上にまたがり、頭上に掲げられた長剣が鈍く光る。
再び大きな音が響く。
「クア、クアア」
振りかぶられた剣がゆっくりと手の中から零れ落ちていく。
苦悶の表情を浮かべちゃってもう、イケメンが台無しだよ。
まあそりゃあ『闘気術』使って思いっきり蹴り上げたからなー
俺の睨む先では、つま先が狙い通り食い込んでいる。
奴の、股間に。
「カ、カ、カ」
とりあえず人型モンスターには金的が効きそうだな、まだ立ってるかもう一回。
「フガアアア」
両手で押さえていたその上に靴底をたたき込む、これは潰れちゃったかなー
お、崩れ落ちた、メスゴブリンが必死に腰トントンしてるよー
もう一発、さてと。
俺は、落ちていた長剣を拾う。
ゴブリンズソード LV2
このレベルで、俺の銅剣折ったのかよ、結構いい武器なのかな。
ゆっくりと近づいていく、蹴られないように注意しないとね。
開脚で座ったまま、片手を股間に、もう片方の手をこっちに伸ばして嫌々って、女の子がやればそそるけど、ガチムキのゴブリンがやっても不気味なだけだよな。
「なーに、何回も蹴り上げて去勢するようなことはしない、さくっと経験値になってもらうだけだ、安心しろ、周りのメスもすぐに送ってやる」
(どちらが鬼かわからなくなるような言いぐさじゃな)
次はいよいよ女の子が出てきます。
次の更新はおそらく明後日かひあさってになると思います。
H26年4月8日一部台詞、誤字句読点修正しました。




