89 幼女のなぐさめと
今回はロリロリでロ〇コンの皆さんに、もといアラファンの皆さんへのサービス回になります。
里からレイドの街までの移動は、比較的楽だった。里の連中は文句も言わずに大人しくついて来たし、まあ俺を見る目が無茶苦茶ビクついてたのはご愛嬌だろう。里を出てすぐに襲撃してきたゴブリンを俺とアラだけで撃退したのを目の前で見てたのが大きかったかな。
まあ取りあえず無事についてよかった、途中でディフィーさんから荷車も返してもらえたし、ミムズから成功報酬として金貨を貰ったし、これで任務完了かな。
うん今回は稼げたな、後はオーガの角とゴブリンの爪に武器類が幾らになるかだな。
「リョー殿には世話になったな、感謝している。そう言えば『鬼族の街』への『大規模討伐』が決まったらしいがリョー殿も参加されるのだろう」
うーん『大規模討伐』か、一回くらいは経験のために参加してみたい気もするけど、でもこれ以上サミュー達をほうっておくのもな。
(『勇者』をしておれば、いずれ参加せざるを得ない場合も有ろう。『鬼族の街』ならばそれほど危険もないじゃろうし、試してみるのも悪くないかもしれぬのう)
行った方が良いのかな、まあ、とりあえず保留ってところかな。
「どうするか考えておこう、奴隷達を待たせている事だしな」
「そうかリョー殿は奴隷を持っていたのだったな、と言う事は……」
なんだ急に黙り込んじゃって。
(冒険者の持っている奴隷と言えば大半が戦闘奴隷じゃし、そうなるとのう)
そっか、個人が買える戦闘奴隷は女性ばかりだったっけ、てことはもしかして俺が手を出してないか疑ってるのかな。ミムズはそっち関係は潔癖だったもんな、これはまた揉めるのか。
「いや、リョー殿の事だ間違いなど起こすことは無いだろう、失礼した」
おお、説得せずに自分で納得してくれた、いやーびびった、絶対に説教されると思ったのに。
「気にするな、それじゃあ俺等はこれで」
ミムズ達と別れてからアラを連れて以前泊まっていた宿屋に向かう。
「お、お帰りだね、ずいぶん長かったが大丈夫かい」
「ああ、多少厄介ごとに巻き込まれたがな」
店主が差し出してきた宿帳を受け取って必要事項を書いていく、しかしこれも凄いよな。名前に職業、宿泊期間、滞在の目的、更にはここの前にいた町と泊まった宿、次に行く町をそれぞれ前後三つまで、更には最終的な目的地や拠点にしている街、出身地まで書けるようになってるし、狩に行くときは戻ってくる時期を考えて予約もできる。
更に驚く事は、数枚の銅貨さえ払えば誰でもこの宿帳を見れると言うことだよな。
個人情報保護とか、顧客情報流出とか、特定秘密とかで騒ぎになる現代日本の感覚からすると信じられない話だけど。
まあ考えてみればスマホやネットはもちろん、ポケベルや固定電話はおろか、電報や安定して届く郵便すらないこの世界じゃあ、こうでもしないとまともに連絡を取れないんだろうね。
実際こうやって宿帳を使うことで、はぐれた仲間を見つけたり、有名な冒険者を探して依頼したり、目当ての物品を扱う商人を追いかけたりするらしいし。中には空欄に仲間宛の暗号メモを残していく上級者もいるらしいから。
書きたくなきゃ書かなくてもいいらしいけど、秘密が多いと面倒な客だと宿屋も警戒するし。領主や地元の有力者に守備隊なんかも定期的にチェックして、周辺の街の宿帳と比べて御尋ね者が居ないか調べたりするらしいからな。
店主から鍵を受け取って部屋に入るとやっと一息つける。
「はあ」
装備だけを外してベッドに横になる。
「くそ」
もう気を張っておく必要はないか、やっと落ち込める。
今回の件のいくらかは俺の責任だよな、考えなしで暴走したミムズとは違って俺はどうなるのかある程度は予想できたし、『鑑定』ができた分だけミムズよりも多くの情報が有ったから、より良い判断が出来るチャンスも有ったはずだ。
ミムズが言った通り引き返すチャンスはいくつも有ったし、そうすればより少ない犠牲に出来た可能性が高い。それを俺が説得を諦めて流されたせいで、あんな結果になった。
もっとしっかりと説得すれば、それこそミムズの首に縄をくくりつけてでも連れ帰っていれば。いや俺に『鑑定』スキルが有る事やいっそのこと『勇者』だって事を話して置けば。
ダメだな、俺までifの話を考えるなんてな、考えたってどうしようもないってのに、それよりも考えなきゃならないのは……
「リャー、どうしたの」
アラが俺の腹の上に乗っかって尋ねてくると服越しにぬくもりが伝わってくる。
「今回、俺は間違えたんだ、もっとやりようが有った。俺がもっとしっかりしていれば、自分の事だけを考えなければもっと多くを助けられたはずなんだ」
戦闘中の俺は、俺とアラさえ無事なら後はどうでもいいとさえ思ってたんだから、ただ単に優先順位を付けるんじゃなくて、他を始めから見捨ててた。だからその場その場での案は出しても、無理やりにでも方針転換をさせようとしなかった。その結果が。
「リャーはめーな子なの」
俺の上に乗ったままアラが俺の顔を見上げてくる。
「ああ、俺はやってはいけない事、悪い事をしたんだ」
「そうなんだ、リャーはめーな子なんだね」
アラが顔をそむけることなく俺の目を見続けている、どうしたんだろ。
「でもアラは、リャーにめーって言わないよ」
「え」
「だって、リャーがめーな事するのはいっつも誰かのためだもん。おうまさんの時も、はりゅが囲まれた時も、このあいだえるふのお姉さんと喧嘩した時も、いっつもリャーは誰かの為にめーな事するんだもん」
少し涙目で必死そうにアラが俺の方を見てくる。
「だから、きっとリャーが今めーなのはアラのせいだもん、だからアラはリャーをめーって言わないよ」
(確かにのう、アラがダークエルフで無くばお主が『勇者』だと明かしてもそれほど問題にはならなかったかもしれぬしのう)
黙れ首飾り、余計な突込みをするなアラは悪くない。ただダークエルフってだけで問題にする方がおかしいんだろ。
「だからね、リャーごめんね、アラのせいでリャーをめーな子にしちゃって」
「アラそんな事ないぞ、悪いのは俺の判断なんだから」
「じゃあ、アラが居なかったらリャーはめーだった」
う、いきなり鋭い事を、確かにラクナの言うとおりだけどさ。
「それは」
「やっぱりアラのせいなんだよね、ごめんねリャー、アラのせいでリャーは」
「アラ」
これ以上は言わせちゃダメだな。
両手を伸ばしてアラの脇を抱え、俺の胸元にまで引き上げて抱きしめる。
「アラ、俺はアラが居てくれて助かってるんだ、ムカデの時も、ゴブリンに囲まれた時も、それに火事の時もアラが居なきゃ俺は大変だったんだから」
俺がアラの言葉を止めようとしてそう言っても、アラは泣いたままで続ける。
「ありがとうねリャー、でもね、でもね、リャーはめーじゃないの、リャーはめーな事なんてなんにも無いんだからね」
一生懸命俺に掴まりながら言ってくるアラが急に何かに気付いたような表情を浮かべたけどどうしたんだ。
「あ、でもねリャーが一人でどっかいっちゃうのはめーなの、リャーだけが痛いのはめーなの、アラとの約束破ったりするのはめーなんだからね」
さっき以上に必死そうなアラの顔に思わず笑いそうになってくる。この子はこんなに俺の事を思ってくれてるんだな。
「あ、あとね、はーってするのも、めーなんだからね」
「そうだな、ため息も気を付けないとな」
まるで考え込みすぎるって怒られてるみたいだな。
「そうなんだよ、めーだからね」
やっと笑顔になってきたアラを抱きしめてぬくもりを感じてる間にだんだん瞼が重くなってきた。
子供特有のポカポカした体温を抱きしめながら気持ちよく眠っていた俺を無粋な声が起す。
「旦那、旦那いるでしょ、知ってますぜ」
なんだ、人が寝てるってのにうるせえな。
「旦那、居るのは解ってるんですぜ」
「んん、リャーお客さんなの」
「そうらしいな」
あれなんかこんな事がこのあいだも有ったような、あの時は確か。やばいまたドアを壊されるか。
「旦那、あっしですぜテトビですって、旦那に言われてた件を調べてきましたぜ」
ああ、あの詐欺師かそう言えばそんなこと頼んでたな。
「悪いが寝起きなんだ、少し待っていてもらえるか」
俺はともかく寝起きのアラをテトビなんぞに見せられないもんね。
「そうですかい、そんじゃあ下の酒場で飲んでやすぜ、これも必要経費にしても……」
「ああ、銀貨三枚までならな」
「こりゃ、ありがてえ」
離れていく足音を聞きながら視線を向けると、アラはまだ眠そうだな。
「アラちょっとお買い物に行ってくるから、お部屋で待っててくれ」
「リャー、帰ってくるよね」
少し不安そうに見上げてくるアラの頭を撫でて視線を合わせる。
「もちろんだろ、晩御飯には帰ってくるから一緒に食べに行こうな」
「うん、やくそくだよ」
「ああ、約束だ」
さてと、テトビの話を聞きに行くか。
ユニーク総合が10万、総合評価が3900、お気に入りが1400になりました。こんなになるなんてホントありがとうございます。
それとこれは、とあるお気に入りユーザーさんのマネなんですが。
か、書きたい方がいればレビューを書いてくれてもいいんだよ。
それと今回は久々に今日明日と連日投稿してみます。
H27年8月6日 誤字、句読点、段落修正しました。




