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8 新たな制約

えっと、今回はちょっとピンクかな~



 火炎弾で奴の頭を撃ちぬいた俺は、そのまま死体を確認する。


「勝ったのか」


(呆けるな、まだゴブリンはおるぞ)


 振り返ると、距離を取って様子を見ていたゴブリン達がこちらへ殺到してくる。


 銅剣を鞘に戻すと足元に落ちているそれを拾う。


「『切り裂きの細剣』か、ただの銅剣よりは強力だよな」


(それを使うつもりかの)


「戦力アップは必要だろ」


 迫って来る一体の腹に剣を当てる。


 うわ、一気に真っ二つだよ、確かに手ごたえは結構あったけど、でもあっさり骨ごとって、これならこの剣なら。


「一気にいける」


 今までと同じ要領で攻撃を躱しながらの一撃で確実に倒していける、この剣があればこれからもやって行けるんじゃないかな。


 今までとは比べ物にならない短時間で、ゴブリン達を切り倒していく。


(武器の性能に踊らされるではない、お主の能力は低いままなのじゃぞ)


 そんなことわざわざ言わなくてもわかってる、てか悲しくなるから言わないで。


 上段から振り下ろされた一撃を細剣を掲げて防ぐ。


(止めぬか愚か者、すぐに下がれ)


 へ、なにおって、えええ。


 銅剣とぶつかった細剣が一瞬で折れる、あ、せっかくの戦利品が。


(まったく、そんな細い剣で分厚い銅剣を防げばそうなるのは、火を見るより明らかだろうに、ゴブリンですら注意していたことに気づかないとは、どうしようもないの)


 う、反論できません、出来ないけどそれよりも今は。


 折れた細剣を捨てて銅剣を抜く、残ってるのは一体だけ、これならなんとでもなる。


「くそったれ」

 

 相手の一撃を銅剣で防ぎ、その直後に腹に叩き込む。


「はあ、はあ」


(まだじゃ穴の中に生き残りがおる、這い上がってくる前に雷撃を放つのじゃ)


「お、おう」


 落とし穴に向かって歩いていくと足に何かが当たる。これは。


「『切り裂きの細剣』か勿体ないことしたな」


(回収しておけ、腕の良い鍛冶屋ならば、短剣に仕立て直せるやもしれぬぞ、武器の予備にちょうど良いじゃろうし、魔道具のかけらならば使い道もある。足環も忘れるでないぞ)


 切り裂きの短剣か、それもカッコいいかもしれないな~





「待て、ここは神聖なライフェル神殿であるぞ、何用か」


 ゴブリンを全滅させて、命からがら神殿にたどり着いた俺にかけられた第一声はそんなものであった。


「いや俺は」


 俺の言葉を聞く気がなさそうな僧兵が二人、槍を構えて近づいてくる、ゴツイのはいやー


「怪しいやつ、そこを動くな、この場で取り調べる」


 ちょいちょい、怪しいやつってそりゃないだろ、これでも勇者だよ。


(お主、自分の風体に気付いておらぬのか)


 俺の風体ってそりゃまあ、『武具の社』を出てからは金がなかったから、風呂にも入れてないし、髭も剃ってない。


 うん、十分怪しいよな、それに若返ってるから顔つきも変わってるだろうし。


「ど、どうすりゃいいんだ」


(儂を見せればそれで理解するじゃろう)


 その言葉に慌てて胸元をまさぐる。


「動くな、じっとしていろ」


「いやこれを」


「んん、な、し、失礼いたしました、すぐに神官長様へご連絡いたします」


 急に慌てて、神殿の中にかけていく僧兵、ああ有るよねこういうシーン。威張り散らしてたのが、いきなりコロッと態度を変えるって、うんお約束だよね。 





「それはそれは、災難でしたね」


 俺の説明を聞いた神官長の第一声がそれだった、いや災難ってそれだけですか。


「この状況をどうにかする方法はないんですか」


 ありますよね、絶対なんかありますよね。


「うーん、そうですね、無いということはありませんが、リョー殿にはより多くの制約を負っていただく事になると思いますし、一朝一夕ではならないと思います」


 うわ、来たよ新しい制約なんてのが、なんだ神殿の言う事は絶対服従とかじゃないですよね。


「それはいったいどんな物になるんでしょうか」


 当たり障りのないところでお願いします。


「ええ、禁欲していただく事になるかと思います」


 はい、禁欲?それってどういった物でしょうか。


「思い当たる解決法ですが、『迷宮核』を鎮静化させる際に、その力を利用して、リョー殿の魔力回路に新しいみちを書き加えます。うまくいけば『闘気術』と『魔法』の両方が使えるようになるかもしれません」


 おお、チート臭くなってきたんじゃね、どちらかしかできない攻撃法を俺だけ両方できるとか、いいねいいね。


「とは言え、一度に全て書き足すのは負担が大きすぎますので、『迷宮核』に触れるたびに少しづつ強化していくしかありません。一度目ではごく初歩的な魔法が精いっぱいでしょうし、ある程度、書きあがるまでは魔力に比べて威力は低い物になるでしょう」


 あれ、強くなれるんじゃないの。


「また、新しい魔力回路の容量を超えた魔法を使えば、暴走して体を傷つけかねません。魔力暴走で傷ついた体は自然回復以外では治りにくいので、『超再生』も効きにくいでしょう」


 暴走って、怖いんですけどそれ、うん魔法は慎重に行こう。


「またリョー殿は魔術関係の技能スキルを複数持っていますが、新しい回路を使えるようになるには、基礎的な魔術の修行が必要になるでしょう。どなたかに習っていただく必要があります」


「ここの神殿には、教えてくれる人はいませんか」


 美人の巫女さんに、手取り足取りというのも悪くないかも。


「残念ですがこの神殿は勇者召喚を目的としたもので、神官や巫女の魔術もそちらに特化しております。一般的な攻撃魔法が使える者は一人もおりません。またリョー殿がこのような状態であると外部に知られるのは得策ではありませんので、神殿として魔導士を手配することも出来ません」


 どっかで師匠を探すしかないってことですか、そういえば禁欲の話はどうなったんだろ、まだ説明無いけど。


「また書き足している途上の魔力回路は不安定ですから、回路を乱すような行為は避けていただきます。魔力回路が乱れれば最悪の場合『魔法』と『闘気術』の両方を失いかねません」


 そんなことになれば、俺は完全な役立たずですね。あ、なんかやな予感がしてきた。


「どんな行為がいけないんでしょうか」


「まず、飲酒です」


 マジですか、酒飲んじゃダメなんですか、労働者の数少ない楽しみが。


「しゅ、酒類全般ですか、例外とかは」


「ありません」


 にっこり断言しないでください、落ち込みますから。


「万が一料理なんかに入っていた場合は」


 お菓子なんかにもよく使ってるよね。


「熱で酒精が完全に飛んでいれば問題ありませんが、残っている食べ物には手を付けないでください」


 うわ、これって食べ物も制限されるんじゃ。



「次に肉食です、これはなまぐさ全般が入ると思ってください」


 え、てことは肉も魚も貝や甲殻類もアウトですか。


「ぐ、具体的には」


「生き物を殺傷して得られた食物全てです」


「では、乳製品などは大丈夫ですね、卵などは」


「無精卵であれば大丈夫ですが有精卵は食べないでください。また一般的なチーズは家畜の子供から胃を切り出し、取りだした消化液を使って固めている場合が多いので、市中で食べる際は酢や果汁、樹液等で固めた『巡礼向け』や『僧侶向け』の物を頼むようにしてください」


 卵は気を付ければセーフか、でもってチーズも種類に気を付けなきゃダメと、じゃあ。


「脂で炒めたものは」


「植物油かバターにしてください」


 なら……


「戦闘中に返り血が口に入ったら」


「飲み込まず全て吐き出してください」


 まあ、そうですよね。


「食物に血がかかったら」


「廃棄してください」


 徹底しなきゃダメってことですね、焼き肉もビールも、もうダメだなんて……


 これは確かに禁欲だわ、耐えられるかな。


「最後に」


 げっ、まだあるの。


「異性との濃厚接触です」


 えと、濃厚接触、それって。


「性交やそれに類する行為、具体的にはどちらかの粘膜がもう片方の体に触れること全てです」


 えっと、それって。


「舐めたり、舐めさせたり、入れたり、擦らせたりですね」


 え、えーと、聞き間違いですよね、こんな神殿のど真ん中でそんなセリフさらっと口走る聖職者なんていないですよね。


 きっと別な意味だよな、駄目だなー俺は、こんな清楚な人の言葉をそっち系でとっちゃうなんて、溜まってるんだな~


「勇者殿たちの世界の言葉でいえば、本番はもちろんですが、○ェラ、ク○ニ、指○れ、手こ○、全○舐め、ディープキスなどはだめです、もちろん後ろの方を使ったり、同性同士でも駄目ですよ」


 ちょっと待てー、この清楚面、微笑み浮かべながらなんつった、今さらっと、とんでもない単語を連続でいわなかったか。


「粘膜がふれない行為、軽く唇を当てる程度のキスや、胸を揉む撫でる、ス○リッ○鑑賞、ぶっ○け、玩具の使用などは大丈夫ですよ」


 大丈夫か心配なのはあんたの頭の方だ。


「どうかされましたか、酒類や肉類の時に細かく知りたそうでしたので具体例を挙げたのですが」


 すいません、私が悪かったです、聖母像のような顔でそんな言葉を連呼するのはやめてください。



「以上が制約の内容になります、この手を使われるかはリョー殿次第ですが、どうされますか」


 と言われてもな、『闘気術』だけでこの先どうにかなるとは思えないし、取った方が……でもな、せっかく異世界チートなのにハーレムどころか贅沢一切諦めるってのは、なら……


「新しい勇者を呼ぶってのはどうですか」


「そうなる場合は、引退していただいてラクナを返していただきます。そのうえで元の世界とこの世界のどちらで過ごされるか選んでいただきます」


 だめか、もとの世界に帰るのは論外だよね、数秒後に死亡するから。この世界に残るにしても、ラクナがなきゃ言葉も文字も常識も解らない、勇者を止めるわけにはいかないよな。


「何も一生というわけではありません、魔力回路が完全に書きあがれば、何をなされても問題ありません」


 それを早くいってくれよ、ならそれまでの我慢だよな、不老不死なんだし時間はいくらでもある、頑張るぞー


「解りました、その方法でよろしくお願いします」


「それではラクナをお借りします、魔力回路を書き直すための術式を組み込みますので、それと迷惑料としてこれから必要になるであろう物品をいくつか用意いたします」


「迷惑料ですか」


 なんのことだろ、召喚したことならこっちも命を助けてもらってるし。


「『闘気術』の事です、歴代の勇者にこのスキルを薦めるのは神殿の方針だったのですが、そのためにリョー殿を今のような事態にしてしまったので」


 それは仕方ないんじゃ、過去の統計からリスク回避するのは当然だし、今まで有効だったから続いてたんだろうし。どちらかと言えば今回が想定外の事態だったってことで、しかも対策案も出してもらえてる。


 うん、狙ってやった訳じゃあるまいし、別に恨んじゃいないんだけどな~


「別に怒ってはいないので気になさらないでください、貰える物はありがたく頂きますけどね」


「そういっていただけると助かります」

 

 あ、そうだこれだけは確認しとかないと。


「魔力回路が完成するまでどのくらいかかるんでしょうか」


 俺の言葉に神官長は優しく微笑んで答える。


「そうですね、迷宮の鎮静化を五、六十回もしていただければ十分かと」


 うわ、聞きたくなかった……



こ、この位じゃあ、ノクターンとかにはならないですよね、大丈夫ですよね


それと、今までの分を少し訂正しました、リョーの職業を魔道師から魔法士へそれに伴って武具の名前も『魔法輪』に変わってます。


H26年4月8日誤字句読点、一部文章変更しました。

H27年2月22日、生臭の説明でチーズに関する記述を追加しました。

H28年6月26日誤字修正しました。

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