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79 焦り

今回は少し短めです。


何とか連休投稿が出来ました。

「ウガ、グガ?」


 集落の外れを単独で歩き回っていた一体のオーガが何かに気付いて足を止める。


 丘の上に寝そべってそれを見ていた俺が合図するのに合わせてプテックが指示通りに動き出す。


「ウッガッガ、ガゴ」


 立ち止まっていたオーガの足が動きだし、徐々にその姿が大きくなっていく。


「来るぞ用意しろ」


 オーガに気付かれない様に丘の反対側を少し下り、そこで待っている皆に指示を出す。


 どんどんオーガが近づいてきてるけど俺達は丘の陰に隠れてるし、あっちは足元に集中してるから気付かれる恐れは少ないだろう。


「グガッ、グガッ」


「もう少しだ」


 どんどん近づいてくるオーガの声にその場にいた全員が頷く。


「ガガガッ、グギャ?」


 丘を登り切り俺達に気付いたオーガが不思議そうな顔をして動きを止める、馬鹿がその隙が命取りだ。


『殺槍投』


 しっかりと構えて力を溜めていたミムズの投げた槍がオーガの左胸に深々と突き刺さり、一瞬で絶命したオーガがその場に崩れ落ちる。


「よし、次に行くぞ」


 オーガの死骸とそのすぐそばに転がっているゴブリンの死骸を『アイテムボックス』にしまい込んでからアラを背負い、透明化してから気付かれない程度に急いで丘を駆け降る。


「次はここらへんにするか」


 離れたところにいるオーガの姿を確認しながらゴブリンの死骸を取り出してロープを結びつける。


 後はオーガの動きに合わせてプテックがロープを引いて釣り上げるだけ。ギャグマンガなんかで使い古された手だけどオーガ相手ならこれでも十分だし、逆に単純な分ミスやトラブルは起こりにくいから。


 エサ替わりのゴブリンは昨日狩りまくったのが幾らでもあるし、ロープは元々『アイテムボックス』に入れてたから準備の手間もかからなかったし。


 問題は騒ぎにならずにどれだけ削れるかと、もう一つは。


「リョー殿、確かにこれは確実な手だが一体引き寄せるだけでもかなり時間がかかっているのはどうにかならないのか」


 ああ、やっぱり指摘されたか、そうなんだよなオーガが餌に気付くまで待たなきゃダメだし、他に気付かれないところまで誘い込むのにも時間がかかるから。


「他に何か有効な手段が思いつくのか、文句を言うのなら対案を出してくれ」


 俺じゃあ説得するのは多分無理だろうから、一番相手を黙らせるセリフを使っちゃったけど出来れば言いたくなかったんだよなこれ。


「そ、それは無いが、だがこれだとオーガを倒しきる前に犠牲者が出てしまうのではないか」


 まあいうと思ったけど、他に手が思いつかないんだよな、今の所は五体を倒せたけどこのペースじゃ夜までにあと十体くらいが限界だろうな。


「だからと言って今の状態で仕掛ければ勝てないぞ」


「考えたのだが、今すぐオーガをすべて退治する必要はないのではないか、追い払う事さえできれば里は救われるだろう」


 それは、希望的な予想じゃないかな、確かに目的は生存者の救出だけど、鬼の駆除も必要だろ。


 確かニュースで見たような気がするけど畑を荒らす害獣を爆竹とかで脅して追い払ったら、今度は山を越えた隣町の畑が荒らされたとかって。


 今回もオーガを別な集落に押し付けるだけになるんじゃないかな、多少被害が出てもここでけりをつけた方が良いと思うんだけど。


 いやまてよ毎回オーガが家畜から食べていくなら追い出して別な集落に移動させてまた追い出す。これを繰り返してオーガを削って行けば人的被害だけは抑えられるかも、いやそれも上手く行くか解らないか。


「ぎゃあああああ」


 判断を迷っていた俺の耳を集落の方から響いてきた叫び声が叩く。


「これは悲鳴か」


「血の匂い」


「そんな、そんな、助けてくれるんじゃなかったんですか」


 オーガとは明らかに違うその声に、ミムズ達の顔色が変わりリサがミムズに詰め寄る。


「解っておる、リサは待っておれ直ぐに自分が」


 槍を構えなおしたミムズが集落の方へと体を向ける。


「待てどうするつもりだミムズ」


 プテックを連れて集落へと向かおうとするミムズの背中に声をかけて止める。


「知れた事だ、このまま突撃し鬼共を追い払う」


「そんな事が出来ると思っているのか」


 普通に考えれば絶対に無理だよ。


「自分やプテックにはまだリョー殿に見せていない奥の手が残っている、それに」


 この後に言うセリフは多分お約束だろうな。


「たとえ敵わずとも、助けを求める民草を見捨てるようでは騎士と名乗ることは出来ぬ、今あの場に命の危機に瀕した者がいるのなら行かねばならぬだろう」


 ああああああ、もうやっぱりこの手のセリフだよ。


(ラクナ、ミムズの言う奥の手ってのは通用すると思うか)


(解らぬの、今までの戦いを見る分ではあまり期待できぬが、まがりなりにも王太子の側近となるほどの騎士ならばもしかすれば、と言ったところかのう)


 そうかい、結局はもう一か八か当たって砕けろって事かよ。


(待てお主正気か、今までの自分の言動を考えてみよ)


「リョー殿何を」


『アイテムボックス』から『切り裂きの短剣』を抜いて丘を下り出した俺にラクナとミムズがそれぞれ声をかけてくる。


「この状況で他にやる事が有るのか」


 武器を用意して曲芸でもやるように見えるってのか。


「解っているのか、生きて帰れるか解らぬのだぞ」


 やっぱり勝算無しで突っ込むつもりだったかこの熱血バカは。


「危なくなったらアラを抱えて逃げるだけだから気にするな、名誉の戦死なんて趣味は無いから安心しろ」


(やれやれ、何だかんだ結局はこうなるのじゃな、やはりお主は馬鹿じゃのう)


 この石ころ笑いながら人のことを馬鹿って言いやがったよ。


 さてと、こうなったら殺れるだけ殺りまくるしかないよな。


「アラ、今回はいつも通り俺が前に出るから後ろから支援をしてくれ、危なそうだったらすぐに逃げるんだぞ」


「すまぬなリョー殿、巻き込んでしまって」


 え、こいつ巻き込むつもり満々だったんじゃないの、まさか全部天然で考えなしに突っ込んだ結果ってか。


「そう思うなら、報酬を増やしてくれ。俺の地元じゃ危険手当って言うんだ」


「いいだろう、行くぞ」


 そこまで行ってミムズが一気に駆け出す。


「聞けえ鬼共よ、我名はミムズ・ラースト、ラースト家当主にして、リューン王国ラメディ王家は王太子付き筆頭、我槍を恐れぬのならば姿を現せい」


 うわ、思いっきり名乗りを上げたよ、どうせなら気付かれないように忍び込んで何体か始末したかったんだけどな。


「行く」


 隣を走っていたプテックが前屈みになって両手を地面に付きながら四つん這いで走り出す。これは『獣態』になるつもりか。


「ガアアアア」


 スレンダーなプテックの体がどんどん膨れ上がっていくけどデカいな、白熊状態のミーシアと同じくらいのサイズが有るかも。細かった手足もぶっとい筋肉の塊に代わってるし。


 手足や顔に有った黒く細長い模様はそのまま毛皮の模様になり、周りの毛がやや暗い黄色に変わっていく。豊かで黒みがかった毛髪はそのまま伸びていき頭全体を覆っていく。


 強靭そうな四肢には鋭い爪が並んでるし、大きく開かれた口も牙が鈍い光を放ってる、大雑把な特徴は明らかに猫科だけどこれはトラかライオンか。


(なんと、この姿はまさか)


(知っているのかラクナ)


(十年ほど前じゃが『獅子虎』という名の盗賊が各地を荒らしまわっておったが、もしかするとプテックはその同族かもしれぬ、だとするとかなりの強さじゃろうな。噂では『獅子虎』一人で二十数名の騎士を返り討ちにしたと言うからの、最後は『剣魔』が直々に討伐せねばならなかったという話じゃからのう)


 獅子虎ね、あれかライオンとトラのハーフ、ライガーだっけ、いかにも強そうな名前だよな今度プテックにプロレス技を教えるかな。もしくは雷系の魔法とかあのアニメ好きだったよなー


 いや、重要なのはそこじゃないよな、重要なのはプテックにたてがみが有るって事だよ、だってあれは雄ライオンにしかないよね、雌ライオンには生えてないもんね、という事はプテックの性別は。


 いや確かにスレンダーで凹凸が少なかったけど、まだ成長しはじめる前なのかなって思ってたし、服装も男物だけど騎士見習いだしミムズも同じ服装だったからてっきり女の子だとばかり思ってたのに。


 まさか、まさかコスプレ以外にリアルでの『男の娘』を見る事が有るなんて。


 し、信じられない破壊力だ、現実は小説よりも奇なりとはよく言った物だよ。


(お主一体何を呆けておるのじゃ、というかこの状況でよく呆ける事が出来るものじゃ)


 おお、危ない危ないそうだよな、今はとんでもないピンチなんだから考えるのは後だよな。


 前方は見渡す限りオーガが並んでるしね、すぐ隣には男の娘じゃなかったプテックの上に跨ったミムズが槍を構えている、うーんすごく絵になってるんだけどな……


 いやいや、今は気を引き締めて行かないと。


 すぐ近くまで来たオーガを観察しながら『軽速』を発動させた俺は短剣を構えながら飛び上がった。


しばらくはシリアスと宣言したばかりなのにこの終わり方って……


ちなみに、ラクナが言ってた獅子虎ですが、『奴隷侍女』の方で暴れてたりします。


H27年7月17日 誤字、句読点、改行、ミムズの名乗りを修正しました。

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