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78 器

ふう、二日連続投稿成功。


「リャー朝だよー」


 うう、膝十字痛い、腕ひしぎ辛い、三角絞め苦しい、一本背負いビビる。


 ラクナの馬鹿首飾りめ、人の事を散々いたぶりやがって、おかげで目が覚めたのに体中が痛い気がするよ。


「リャー起きたー」


 抱き着いて来たアラをキャッチして『アイテムボックス』からリンゴを取り出す、これが最後の食事か。


「ほらアラ、朝ご飯だ、食べなさい」


 俺が差し出したリンゴをアラが放り投げて一瞬で五等分にし空中でそのままヘタまで取る、なにその曲芸。


「はんぶんこ、じゃなくてみんなで一緒だよ」


 水平に突き出した細剣の刃を横にしてリンゴを並べたアラが笑ってくる、やっぱりうちの子は世界一いい子だ。


(ええい叫ぶでないこの親ばかが、お主が強く思えばその分が儂に強く聞こえるんじゃぞ)


 いいじゃないか別に、こんな気を使える子供そうそう居ないぞ。


「見事な腕だな、子供とは思えぬ」

「驚いた」

「なんなんですかこの子」


 まあ普通はそっちに驚くか、俺もびっくりしたもん、でも取りあえずは。


「このリンゴが最後の食料だ、大切に喰うんだな」


「ああ、解っている。あと半日も行けばリサの集落につく、鬼を排除すれば夜には集落の食料で宴会が出来る事だろう」


 なんだろ、フラグにしか聞こえないんだけど、これが戦争物で相手が人間とかなら焦土戦術を取って来て現地調達を不可能にするとかなんだろうけど、さすがにオーガが相手じゃそれは無いか。


「さてとそれでは出発するか」


 あっさりとリンゴを食べ終わったミムズの宣言に頷いて俺達は立ち上がった。





 あー腹減ったな、さすがに昨日の昼飯以降はリンゴ一切れのみじゃ体持たないって、精神年齢はオジサンでもこの体は十代の育ち盛り食べ盛りだってのに、てかみんな同じくらいの歳なのに平気なのかな。


 まあ間違っても疲れたとか腹減ったなんて言葉は口にできないよな、何しろ。


「アラ疲れてないか、おんぶしようか」


「だいじょぶだよ、それよりリャーは疲れてない」


 小っちゃなアラがこうやって頑張ってるんだもんな、俺が我儘を言う訳には行かないよな。


「さてと集落が見えて来たぞリョー殿、それでどうするのだ」


 あー着いちゃったか、全員空腹で補給は無しの中を精神論だけで強敵に挑んでいくって、イ〇パールを目指した父方の親戚はこんな気持ちだったのかな、八月になると爺様が毎年線香上げてたなー


「とりあえず俺達が潜入して偵察してくるから、集落を迂回して丘の向こう側で待ってろ、この距離で隠れてればバレないだろう」


 アラを肩車するとすぐに察したのか頭の上から呪文が聞こえてくる。


「行くよ『幻影』」


 アラの魔法が発動すると同時に俺達を黒い霧が包みこんでから姿が消える。


「まさかこのような魔法が有るとは、魔法には詳しいつもりであったがまだまだ不勉強という事か」


 上手く行ったよ、アラと触れ合ってないといけないって制約はあるけど予想通りだな。


 アラの使う『幻影』は術者の体の周囲に任意の映像を映し出すって原理だから、変身したい何かの姿の代わりに周りの風景を映せば『光学迷彩』みたいなことできるんじゃないかなと思ったんだよね。


 気分は某狩猟狂宇宙人かな、たしかあの題名って捕食者って意味だから、人間の俺が人食い鬼のオーガ対策で使うのは皮肉っぽいけど。まあ色々欠点はあるんだけどね。


「でも、匂い」


 そうなんだよな匂いや音は誤魔化せないし、普通に変身するより処理する映像が多いからアラの負担が大きい上に、あんまり速く動くと映像がブレル、まあでも注意してれば何とかなるかな。


「それじゃあ行ってくるくれぐれも見つからない様にしろよ」


「解っている」


 ミムズ達が俺達に背を向けて移動していくのを確認してから『軽速』で一気に駆け抜ける。


 うわ、やっぱりこのスピードだと処理速度がガタガタだな、まあ遠目じゃよく解らないし、近くに行ったら物陰に隠れながらやれば見つからないだろう、問題は匂いだけどオーガの嗅覚ってどうなんだろう。


(基本的には視覚に頼っておるが人よりは鼻が良いゆえ注意せよ)


 左様ですか、まあそうだとは思ったけどさ。


 近くまでよるとやっぱりいるなオーガがそこらじゅうにゴロゴロ、寝てるのや、じゃれ合ってるの、中には見張りなのか周りを見回してるのもいるし。


 とりあえずは生き残りの確認か、リサの話だと集会場の中に集められてるって話だけど。


「ギャガラ」


「グラガラ」


 目の前を数体の鬼が歩いて行くけど気付かれた様子は無いか、これならいけるかな。


 落ち着けゆっくり動くんだあんまり急げば不審に思われそうだし、ああダンボールが欲しい気分だな、いくら見えてないとはいえ身を隠すものが無いってのは心理的に来るな。


 臭いはオーガの体臭なのか生臭い匂いが集落中に漂ってるからバレ無さそうだし、『軽速』中だから足音は大丈夫だよな。


 あ、『軽速』が有ったんだった、それならこんな某蛇男みたいな真似なんてしなくてもよかったんだ。


 鬼の目の無い物陰へ移動してから一気に高く跳び上がって屋根の上に登る、この辺は平屋が多いけど、そこそこ屋根が高いからオーガの目線よりは上にいるな、これなら見つからないかも。


 ありがたい事に集落の道幅はそこまで広くないし、そこらじゅうに壊れた荷車や家の残骸なんかが転がってるからオーガ共は足元を見ながら歩いてるし、多少の不自然さは気付けないだろうな、これで偵察の効率があがるな。


 しかし、狭い道だな、家沿いに荷物が積まれたりしてるから、荷車がすれ違うのがギリギリで馬車じゃ一台が限界そうだな、それに足場も悪いし障害物も多い、『軽速』と『切り裂き』を使った俺やアラなら小回りが利くからデカ物のオーガを相手にするには有利かもしれないな。


 だけど、ミムズやプテックは大型武器を振り回すから下手をするとつっかえるかも、俺も『ゴブリンズソード』を使う時は気を付けないとだめかも。


 それに木造藁葺きの家が密集してるから『雷炎』は気を付けて使わないと火事になりかねないな、『迷宮』の中やゲームなんかなら建物の中でも平気で火炎魔法使ってるんだけどな。


 いやいっそのこと火攻めにしてみるか『念力』と組み合わせれば効率よく焼けそうだし、いやダメだな生存者まで焼死しかねないもんな、それじゃあ手段と目的をはき違えてるし。


 あくまでもこれは救出ミッションなんだからな、さてと肝心の生存者はと。


 少し助走をつけて集会場の屋根に飛び乗り、周囲を見張っている鬼に注意しながら静かに地面に下りて開いているドアから中を覗く、結構人数がいるな七、八十人って所か、年齢層もまちまちで老若男女揃ってるな。


 これは予想外だったな田舎の集落だし家の数もそんなにないから老人中心で人数も少ないかと思ったんだけど、それは現代日本の限界集落の話だったか。


 考えてみれば機械化されてない時代の農村じゃ子供は立派な労働力だし、この集落自体が一つの共同体として長年成り立ってるんだろうから、ピラミッド型の年齢分布になるのが普通か。


 そう言えばここに来てからオーガと人間は見たけど家畜の姿を見てないな、ここまで小規模な集落は来た事ないけどたいていの農村だと庭先なんかで豚や鶏、農耕や輸送用に牛とか馬なんかを飼ってるもんなんだけどな。


(おそらくは、先にオーガの餌食となったのじゃろうな、人と違って家畜を管理するのはオーガには難しいじゃろうからの)


(という事は人的被害はまだそれほど出ていないって事か)


(かもしれぬ、とはいえもう家畜が残っておらぬ以上これからは一気に増えるじゃろうがの)


 急いで向かったおかげで最小限の被害に抑えられたのか、てことはミムズの判断が正しかったって事かちょっと悔しいかな、ああ年を取ると臆病になるものかね。


 まあ取りあえずの情報収集は出来たか、幸いなことに見つかるとかそう言ったイヤーなイベントは起こらなかったしミムズ達と合流するか。





「それでは、大量の生存者が集会場に集められているという事だな」


 合流した俺達の報告にミムズが嬉しそうに頷く、ああやる気満々だな。


「それはそうだが、オーガも50体以上居る事を忘れるなよ」


 解っていると信じたいけどこのまま特攻とかされたらもう玉砕しか見えてこないからね。


「もちろん解っている、それでリョー殿はどうするつもりなのだ」


 あれ、こっちに丸投げかよ、いやいや信用して任せてもらってるって思おう実際ミムズに任せると、『突撃あるのみ』とか言い出しそうだし。


「そうだな、今から街に戻って応援を要請すると言うの……」


「ダメだ、時間がかかり過ぎる」


 言うと思いました。


「なら夜になるのを待って、オーガの大半が寝付いてから忍び込んで仕掛けると言う所か、気付かれないように接近して起きだす前に出来るだけ数を減らして置けば勝算も上がるだろうし」


 ユニコーンの救出の時に使った手だけど上手く行ったからな、ミムズ達が潜入に向いてるかは微妙だけど、俺だけが先行して忍び込んで騒ぎになったら突撃させるとかにすればいいか。


「いや、それだと夜までの間に犠牲者が出そうだ、出来るだけ早くケリを付けたい」


 またそれは無茶な注文をしてくれるな。


「単純な戦力だと俺達は6、7体までなら同時に相手にして何とか勝てると言ったところだぞ、あそこにはその8倍近くがいるんだ、何かの有利な状況がなきゃ勝つのは無理だぞ」


「それなら、ゴブリンの時にしたように雷で目潰しをしてはどうだ」


「それこそ夜を待った方が良い、あれは相手が暗い中で目を凝らしているから効果が上がったんだ、耳だけなら確実に潰せるかもしれないが、ゴブリンの時で解っていると思うがアレは一時的な効果でしばらくすれば回復する、限られた時間内で丈夫なオーガをすべて無力化できるのか」


 多分無理だろ、ある程度タメが必要な大技じゃなきゃダメージにならないし、俺が制限なしでやっても距離が空いてたら半分が限界だろうな。あの手の奇策は2発目だと警戒されて効果は薄いから、1回で勝負を決めなきゃダメだし。


「ならば、先ほどの魔法で潜入して仕留めていくと言うのは、もしくはあの魔法で救出は出来ないのか」


「無理だ攻撃が届くくらい近くで動き回ればいくらなんでも気付かれるし、アラ以外の1人を見えなくするのが限界だ、老人や女子供では鬼の間をすり抜けて逃げると言うのは無理だろうし、そもそもアラのMPが持たない」


 今の偵察だけでMP回復用の魔法薬を一本使っちゃったから、その計算だと半分も助けられないよね。もっと熟練度が高ければまた違うんだろうけど今言っても仕方ないし。


「どうにかならんのか、こうしている間にも犠牲者が出ているかもしれないのだぞ」


 ない物ねだりをされてもなー


「ミムズ、樽の中の酒を水袋に移そうとすればいくらかは零れるものだし、入りきらない分も出るものだぞ」


「それは自分の器が小さいと言いたいのか」


 別に喧嘩を売ってるわけじゃないんだからそんなにイラつくなよ、ただのたとえ話だろうが。


「全部を欲しても一人で持てる量には限界が有るって言いたいだけだ」


(お主が言っても説得力を感じぬのう)


(昨日も言っただろう俺は自分で抱えられる分しか守らないし、無理な分は諦めるか人に頼ってるぞ)


「リョー殿、それは貴殿が零された滴になった事がないから言える言葉ではないだろうか、工夫をすれば零さずに済むかもしれぬし、別な容器を用意できるかもしれないだろう」


「欲張れば重すぎて持てなくなるだろうし、無理に詰め込めば袋が破けて全部だめになると思うが」


 言っても聴かないんだろーなー


「それでもだ、何とか手を考えてくれこれは依頼だ」


 はあ、ここまで言われるとやらない訳には行かないよな。


「リャー、はーはめーなんだよ」


 ああ、思わずため息を吐いちゃったか、さてどうするか。


 一度に全部を相手にするのは不可能だし無力化する工夫や全体攻撃みたいな裏技もないから普通に考えれば分散させて各個撃破だよな。


 出来るなら一体づつ、多くても三体くらいまでで何とかしたいな、何か手は無いかな今まで見た中でのオーガの習性や特徴で何か手は無いか。


 とりあえず解ってる事は、肉食で人はもちろん家畜やゴブリンなんかも食べてる、知能はそこまで高くないけど連携や食料の保存や携行という事が出来る程度にはある、戦闘能力は高くてかなり丈夫って所か。


 今ある戦力は武器アイテム類は。


「待てよ」


「何か手が有るのか」


「やってみないと解らないが、とりあえず試してみよう」

 


今回からしばらくはシリアスで続きます。

ああ早くリョーとサミュー達を合流させて色ボケトークに戻りたいです。


ビックリしましたもう1300を超えてる、ありがとうございます。


H27年7月13日 誤字、句読点、改行修正しました。

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