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73 大鬼

(オーガじゃな鬼族ではかなりの上級な種族で、この『迷宮』では主に下位の鬼を捕食しておるの、普通ならば余程の事が無くば『迷宮』の外に出てくるような種ではないが多量のゴブリンの死骸に引き寄せられたのかのう)


 いや、そんな冷静に分析してないでさ、どうにかしないとダメだよねこれ。


(あそこに有る死骸を食べ終わったら『迷宮』に帰ると思うか)


 そう有ってほしいなー、そのまま『迷宮』の深層まで戻ってくれるならあのデカくてゴツイのを相手にしなくても良いかもしれないし、だってゴブリンキングより強そうなんだからさ。


(無理じゃろうな、『迷宮』の外は天敵が少なく獲物に満ちておる、一度『迷宮』から出た魔物が元の『迷宮』に戻ることなどまずないのじゃ)


 ああ、なんでこう何でもかんでも俺に都合の悪い方向に進むかな。


(という事だとあれは倒さないとダメって事か)


(であろうな、依頼の内容は鬼の一定数の駆除じゃが、その理由は周辺地域の被害を防ぐことじゃろう)


 そうだよね、てことはあんな強いのをこのまま放置するって事は無理だよね。


「どうするのだリョー殿、戦うのか、戦うのだろう」


 ああ、戦闘狂さんがもうやる気満々だ、と、とりあえず作戦を考えないとな。


「気付かれた、来る」


「リャーどうするのー」


 ああ、もう逃げるのは難しいだろうな、というかこのまま放置してたらほんとに村を襲いそうだし、仕方ないか。


(クソ、このまま作業ゲーで依頼達成できると思ってたのに結局ガチンコの勝負かよ)


(お主はその『さぎょうげー』とやらに抵抗は無いのかの、過去の『勇者』がその言葉を使う時は大抵批判的でおったがの)


 まあ、チート持ちの『勇者』じゃそうなのかもね、無駄に最強で苦労なく敵を倒せるんだろうからさ、無双が好きでもない限りはザコの駆逐なんかはつまらない作業に感じるんだろうな。


 でも俺にとってはさ、作業ゲーは安牌切りと一緒だから。


 作業って呼べるくらい同じことをひたすら繰り返すって事は、冒険を冒さずどんどんノウハウが蓄積されてリスクが減るって事だからね。


 まあ他の状況でこのノウハウを生かせるかは微妙だし、同じ手順に慣れ過ぎてヒューマンエラーが起こる可能性もあるんだろうけどさ。


(ところでいつまでこうしているつもりじゃ、敵は迫って来ておるぞ)


 あぶないあぶない、考えるのは後だよなとりあえずは。


「敵は六体だ、俺が左側の三体を引き付ける、その間に三対三で右側を潰せ」


「それは解ったが、リョー殿は1人で大丈夫なのか」


「倒す訳じゃない、引き付けて時間を稼ぐだけだ。早いところそっちの分を片付けて加勢に来てくれ」


「解った、武運を」


「リャー直ぐ行くから待っててね」


 納得してくれたのか三人が右側の方へと走っていく、さてと頑張るか。


(それは良いがの、お主の力で何とかなるとは思い難いのだがの)


(俺だって思ってない、だからこその時間稼ぎだろうが)



 首輪と口論しながら俺の受け持つオーガに向かう、俺の敵はオスが二体にメスが一体。



 ミムズ達の方は三体ともメス、なんだろう鬼族ってライオンみたいにハーレムを作る習性でもあるのか。ゴブリンと言いオーガと言い。



「ぐうううっらああああ」



 叫び声でけえ、ガタイもでかいし二メートル半くらい有るんじゃねえかこいつ等さ。



(それでどうするつもりなのじゃ、はっきりと言うがのオーガは丈夫じゃぞ)



 ゴブリンズソードで脇腹に切り付けるがあっさりと弾かれる、なんだよこの手応えまるで鎧を叩いた時みたいな。



(肌も硬いがそれ以上に筋肉が硬いのだ、お主の攻撃力では筋肉に弾かれるだけじゃ)



 それを早く言えバカ首飾り。



 振り落とされてきた爪の攻撃を剣で何とかいなすけど、どうするんだよ多少でもダメージ与えられるのが前提の時間稼ぎなんだぞ。



(焦って『鑑定』もせずに戦うからそうなるのじゃ、筋肉の薄い喉や脇の下、下腹部を狙うのじゃな)



 そう言えば『鑑定』してなかったな、忘れてました。



オーガ LV (20~24)×6

技能スキル 拳 爪法

戦闘スキル 殴り付け 裂爪 

身体スキル 硬筋



 結構レベルが高いな、とあぶねえ。



 地面すれすれに放たれてきた拳を必死に避けるけど、反撃の攻撃はほぼ無効ってどういうことだよ。くそ、『軽速』と『切り裂き』が使えればな。



 オーガの身長が高すぎるから『闘気術』だけのジャンプ力じゃ下腹部くらいしか狙えないし。



(おい、雑魚にしてはレベルが高くないか)



(下位の魔物を捕食する魔物はそれだけで経験値を稼ぐからのう。レベルやスキルも多いのじゃ)



 こうなったら仕方ない、やりたくなかったけど。



 オーガから少し距離を取りゴブリンズソードをいったんしまう。



(お主は一体どうするつもりなのじゃ)



(試してみるだけだ)



 今まで『軽速』で戦ってきた分、体捌きにはだいぶ慣れてるし何とかなるはずだ。



 振り回される拳を躱しながら距離を詰めて一体に肉薄し速度と体重を乗せた肘打ちを叩きこむ。



 これなら効くはずだ、肘は『青毒百足』の殻で作った籠手で覆われてるし、なにより。



「アガ、ゴゴア」



 オスオーガが股間を両手で押さえて崩れ落ちる。



 うん、やっぱり効いたな、『金的』が人型の雄モンスターに有効なのはゴブリンキングで証明済みだからな。



 崩れてくる巨体からいったん距離を取りながらゴブリンズソードを抜く、この高さなら。



 前屈みになったことで丁度俺と同じ高さになったオーガの顔に向けて剣を振るう。



「グガアアア」



 股間から手を放したオーガが代わりに両目を押さえる、よし視力を潰したしこれで一体はほぼ無力化できたな。



「グルラアア」



 俺を挟むように左右から振り下ろされる三本の腕を必死に避け、もう一体の雄に向き直る。



「な、ウソだろ」



(まあ、オーガにも学習能力が有るという事じゃの)



 この野郎片手で股間を守ってやがる、お前はPK時のサッカー選手か。



(一見マヌケじゃが有効じゃのう、オーガは手の筋肉も強い、お主ではどうやってもあの肉の壁を越える攻撃は出来まい)



 確かに蹴りや肘打ちじゃあ無理だろうな、アイテムボックスにある細剣や長針で指の隙間から突き刺すか、う、想像しただけで痛そうだけど、その分有効かな。



 アイテムボックスにゴブリンズソードを戻し、適当に入っていた細剣を取り出す。



(止めて置け、アラの様に針の穴を通すような正確さが有るのならともかく、お主の技量ではまだ無理じゃろう)



 だめか、となるとどうするか。



「グルガアア」



 くそオスに気を取られてる間にメスの攻撃が、あぶねえ当たったら頭砕けてたんじゃ、だって手が地面にめり込んでるし。



 くそ一撃でも貰ったらアウトかよ、他の連中はどうなってるんだ。



「はああああ、食らうがいい」



 ミムズはメスオーガとガチンコで戦ってるよ。



 突き出された穂先が脇腹に刺さるのも気にせずにオーガが振り下ろす爪を素早く戻した槍の柄で受け流し、そのままの勢いで石突で膝を打つって。



 あれ、槍って確か相手と少し距離を取りながら使う武器じゃないの、間合いが広いから中に入られると不利だったんじゃ。



「オーガと言ってもこの程度か、攻撃が単調すぎるぞ」



 うん全然距離を取る様子がないな、一歩も引かないと言うかオーガが下がるとその分踏み込んでるし。



 ん、何か呟いてるなまた戦闘が物足りないとか言ってるのかな、てかおかしいだろこの状況を楽しむとかさどんだけ戦闘狂なんだって。



「はあ『風曝』」



 腹部に手を当ててゼロ距離から放った魔法でオーガの上体が落ちてきたところに、槍を構えてどうするんだ。



『対空槍』



 おお、真上への突き上げでちょうど落ちてきた喉を貫いたよ。



(ふむ、簡易の衝撃魔法で姿勢を崩し、上空迎撃用のスキルで止めを刺すか、典型的な魔法戦士の戦い方じゃな。よく覚えておくのじゃな、あれが魔法戦士としてのあるべき姿じゃ『金的』や『目潰』など邪道じゃ邪道)



 俺にはそれくらいしかやりようが無いんだから仕方ないじゃないか、まあ取りあえずミムズは大丈夫か、まだオーガは生きてるけどだいぶ弱ってるから。他はどうだろう。



「ララララアアア」



 大柄なオーガが振り回す太い腕がその度に細い腕に弾かれてるけど、どう考えてもおかしいよねこれ。



「軽い」



 いやプテックさん、そんな簡単にいってるけどさオーガの一撃で地面に穴が開いてるんだよ、それを片手で弾くって。



「ググググガガアアア」



 らちの明かない殴り合いに痺れを切らしたのか、片足を上げてローキックを仕掛けて来たよ体重も乗ってそうだしあの怪力と巨体じゃ。



「これも、軽い」



 おかしいから、絶対おかしいから、そんなのを片腕で受け止めるって。



 いやミーシアも怪力だけどさ、プテックはそれ以上じゃないか、体格だってミーシアと違って小柄だっていうのに。



 そもそも普通なら骨が折れるはずだよね、一体どうなってるの。



「それに脆い」



 プテックの振った大斧がオーガの太ももに半ばまで食い込んでるし。



(おいラクナ、オーガの筋肉はものすごく硬いんじゃなかったか)



 確か大腿筋って人体でもかなり大きいはずだよね。



(そのはずじゃがのう、普通ならばスキルか武器の『付加効果』や『付与効果』が無くば深手は負わせられぬはずなのじゃが)



 スキルは使ってないよな、『付加効果』にしてもそれに合わせて重くなってるはずなのに軽々と真横に振ってたよね。



「止め」



 プテックの大斧の色が黒味がかって来たけど、まさか『付加効果』を使ったのか。



 多分そうなんだろうな、だってプテックの足が地面にめり込んでるしその周りにヒビまで入ってるから、あんなに重くして戦えるのか。



「行く」



 おいおい片手で振り回してるよ、一撃でオーガの片腕を斬り飛ばして、そのまま飛び上がるってあり得ないだろ。



(ふむ、あの二人どうやら思っていた以上に高レベルの様じゃな)



 いやそんなに冷静に分析してないでさ。



 オーガの頭上よりも高く跳び上がったプテックが斧を振り落として、オーガが防護のために掲げた腕ごと肩から胸筋腹筋までを一気に切り裂く。



 でもさ、あれ一体どんくらい重量あったんだろ、地面に当たった時に少し揺れたのは気のせいじゃないよね。



(見事な物じゃのう、さすがは一国の王族の護衛と言ったところか)



 すごいよな、俺なんて倒すの無理だからオーガ2体の攻撃を必死に避けまくってるってのに。



 そうだアラは大丈夫なのか、二人の無茶苦茶な戦い方で忘れてたけど、俺としてはアラを庇いながら戦ってほしいから三対三って言ったのに、これじゃあ一対一が三つあるだけじゃないかよ。



「行くよー『六連斬』」



 素早く連続で切り付けてオーガに細かく傷をつけてるな。



 まあ身長差が有るから足にしか攻撃できてないけど、オーガの膝から下はもうボロボロでまともに動けてないし。



「グアアアア」



 オーガの反撃は、小っちゃくて素早いアラには全く当たってないし。



「えーい、『風槍』『飛斬』」



 アラの放った魔法とスキルが足をやられてまったく避ける事の出来ないオーガの上体を襲う、ここまでくればもうただの的かこれならアラも大丈夫かな。



「リャーあれ」



 ん、あれは、まさか、冗談だろう。



(オーガじゃな、どうやら匂いに引き寄せられた群れはこやつらだけではなかった様じゃの)



 追加で四体か、どうすれば。


あんまり戦闘に緊迫感が無いような……


総合評価が1000を超えましたありがとうございます。

ついに四ケタ突入、しかもお気に入りも300に到達しましたありがとうございます。

特に、ポイント評価で1000ジャストに合わせてくださった方ありがとうございます、思わず笑っちゃいました。


それと、前回書き忘れましたが、12月29日付の活動報告で『半端チート』と『奴隷侍女』の両方を読んでる方向けのご相談というかアンケートがあります、もしよければご協力ください。


H27年6月28日 誤字、句読点修正しました。

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