69 鬼族の街
総合評価が900を超えましたほんとにありがとうございます。
「あれが、『鬼族の街』か結構でかいな」
遠目に見ても結構広そうだよねあれ、しかも『迷宮』だから中身はもっと広いんだろうな、日本のちょっとした都市位あってもおかしくないかも。二十三区ぐらいあったらもうお手上げだよ。
「それで、リョー殿これからどうなさるのだ」
「とりあえず今日はここで野営だ、明日からはここを拠点にして『迷宮』の外を一周してみる」
「ん、すぐに突入するのではないのか」
「もうすぐ夕方だ、暗い中で物陰の多い『迷宮』に入れば、奇襲してくれと言ってるようなものだろ」
実際に『子鬼の穴』じゃ、薄暗いとこではよくゴブリンが待ち伏せしてたもんね。まあ『鑑定』のおかげで少しでも視界に入れば解るから何とかなったけど。
「それに目的と手段を間違えるな、周辺の村が鬼に襲われるのをどうにかしたいんだろ、それならまずは『迷宮』の外に出ているのを何とかしてからだろう」
まあ対処療法みたいなもんだけどね、相手が人間の軍隊とかだったら本拠地を襲っておびき寄せるなんて方法が小説であったけど、魔物相手じゃその手の作戦が効くか解らないもんね。
「うむ確かにそうだ、まずは民草の安寧を確保する事からであるな、自分が思い違いをしていた、だがそれならば明かりを十分に用意すれば良いのでは、自分たちは普段はそうしているが」
そりゃ大人数で照らせば明るいだろうし、照明係と戦闘要員みたいな役割分担も出来るんだろうけどさ。
「四人だけだと、持ち歩ける明りの量も限られるだろ、それに松明やランプだと片手が塞がるからな。だが野営なら焚き火の明りが有る分だけマシだろ」
まあこんなとこで明かりなんて焚いてたら間違いなくゴブリンが寄って来るだろうけど、ここなら全方位見晴らしがいいから接近されてもすぐ気付けるもんね。
まあその分だけ全方位から囲まれるかもしれないけど、ゴブリン位ならなんとでもなるだろうし。
「う、うむそれはそうだが」
「姉さま」
まだ何か言いたそうだったミムズの手を取ったプテックが左右に小さく首を振る。
「そうだな、ここではリョー殿の指示に従うのであったな」
よかった、納得してくれたみたいだね、後はと。
「ついでだ、今のうちに見張りの順番を決めておこう」
「見張りだと、それは一体何のことだ」
あれ、なんかおかしいな、別に変なことは言ってないよね俺。
「念のために聞くがお前たちのパーティーでは、夜間の見張りはどうしていたんだ」
「交代で冒険者と兵士が不寝番」
プテックが答えるけど、騎士は免除なのかな。
(騎士団や軍隊などでは貴族や騎士などが優遇されるのはよくある事じゃな)
やっぱりこっちには身分制度がしっかりあるんだな、今までは直に感じる機会があんまり無かったけど。
「そ、そう言えばそうであったな、それでどうするのだ」
確かアイテムボックスに有ったよな。
「この砂時計は三時間計れる、これを基準にして三交代だ、初めはプテック、次が俺、最後はミムズとアラだ」
夜中に起きて二回に分けて寝るのは意外とつらいもんね。
「え、リャーとがいー」
「なぜこの分け方なのか聞いてもよいか」
まあ、そうだよね普通は気になるよね、でも説明するとなるとな、いやいつまでも隠して置ける事じゃないもんな。
「プテックは耳も鼻も利くんだろう、俺も夜目はそれなりに自信が有る」
(お主の場合は儂の『鑑定』頼りじゃがのう)
うるせえぞ首飾り、余計な茶々を入れるな。
「それとアラは、アラ魔法を解きなさい」
「いいのリャー」
不安そうにこっちを見てくるアラに頷く、ちょっと不安はあるけど、変なタイミングでバレルよりはましだよね。
「わーった」
俺に頷きかえしたアラが『幻影』を解除する、さあどうなるか。
「こ、これは、アラ殿、まさか」
「ダークエルフ」
あーやっぱり二人とも驚いてるよね、まあ仕方ないか。
「リョー殿これはいったいどういう事だ」
「エルフとダークエルフの関係は知っているし、リューンがエルフ族主体の国という事も解ってる。だが俺はアラ無しで戦うつもりはない」
これでアラを外せってんなら、依頼はここまでだよな。信用を無くしたって遠くに移動すればいいんだ、どうせこの世界にはまともな通信手段なんて無いんだろうからどうとでもなるだろ。
「そ、それは、だがダークエルフとなどと」
「姉さま、プテック達だけじゃ、無理」
やっぱりミムズよりもプテックの方が冷静に計算できるんだな、まあ無口っ子だし。
「そうだな仕方あるまい。リョー殿、ダークエルフはリューン王国ではは多少の交易など制限付きではあるが門戸を開いている。とはいえ、本質的にエルフにとって敵である事には変わりない、だがここは国内では無いし、今この場で我らが優先するべきは鬼共の脅威にさらされている民衆を救う事だ、先ほどリョー殿が言われたように目的をはき違える訳には行かぬ」
よかった熱血だけど、とりあえずの理性がある子でほんとよかった。見た目だけは委員長キャラなのになー
「すまないな、話を戻すがアラは視力と聴力が良いから見張りに適している。見張りに慣れていないミムズと組ませるのは仕方ないだろう」
「なるほど、仕方あるまいな」
「リャーとが良いけど、わーった」
うん、二人とも納得してくれたみたいだな、多分夜には襲撃が有るんだろうから出来るだけ早めに食事を済ませておこう。
あ、そうだこれも言って置かないとね。
「それと悪いが、俺は肉類を食べる事が出来ない、『迷宮』内やこの近辺で果物や山菜が十分に取れるなら別だが、そうでない場合は定期的に食料品を補充しに村や町に戻るぞ」
「それは仕方あるまい騎士団でも補給は重要だからな、自分達としても獣型の魔物がいるならともかく鬼族では食べる気にならないからな」
「プテックも嫌」
ああ、確かにいくら魔物でも人型じゃね、倫理的にもそうだろうし気分的にどうかと思うもんね。
「起きて、起きて」
ん、なんだ眠いっての、あと五分いや四分半でいいから。
「早く」
幾らなんでもまだ交代の時間には早いだろう、どうしたってんだ。
「魔物、来た」
その言葉で一気に飛び起きて周囲を見回す。
(やれやれ現金な反応じゃのう)
呆れたような首飾りの声は無視して周囲を『鑑定』すると、前後からゴブリンが集まってるよ。変に高レベルのゴブリンはいないな、後はゴブリン・ファイターが数体か。
「敵か、やっとだな」
プテックに起こされたのかミムズが横に並びアラも目をこすりながら起きてきている。
「ああ、前後から挟まれた」
「なんと、ではどうする」
前から来るのは七、八十体で、まだ距離は十分にあるな、後ろは二十数体で結構近い、となると。
「後ろの方が少ない、俺がこっちを先に潰してくる、アラはここから弓で前の方の鬼を牽制してくれ」
「わーった、リャーがんばってね」
アラの声援を聞きながら駆け出す、さてがんばるぞ。
(言って置くがの、よほどの事が無ければミムズ達に手の内をすべて見せるでないぞ)
(どういう事だ)
敵の数が多いんだからさ、いざって時は全力出さないと結構きついと思うよ。
(お主が『勇者』だと気取られる可能性は低いじゃろうが、もしも知られた場合は敵になる可能性が高いゆえ、奥の手を残して置くのじゃ)
俺が『勇者』だとミムズ達が敵になるって、なんでまたそんな、あれかあのアクラスとかって王女様のせいか。
(お主が先ほど確認したじゃろうが、ダークエルフとエルフは敵対しておる、アラが『成長補正』の恩恵を受けるなど、エルフ族やその協力者達にとっては悪夢のようなものじゃろうて)
ああ、そう言う事か、確かにただでさえアラは強いのに、このまま俺と一緒にステータス上げて行ったらすごいことになりそうだもんな。
(『勇者の従者』というのは、それだけで本人にも祖国にとってもかなりの影響が出おる、アラの出自がはっきりすれば事は大きくなりかねん、気を付けよ)
なんかなー変な所でドロドロしてるよなこの世界って。
(分かった出来るだけ手の内は残して置こう)
(最低でも『超再生』と『念力』、出来るならば『軽速』も隠して置くがよい、指輪は『雷炎』は知られたが、他は残して置くのじゃ、武器もゴブリンズソードにした方が良いじゃろうな)
あれ、そこまでするのかでも。
(『切り裂きの短剣』はもう知られているだろう)
(知られているのは切れ味が良いと言うだけじゃ、それならば牽制の効果もあるがの生物にしか効果がないと知られれば対策などいくらでも立てられよう。使うのはここぞという時のみにしておくのじゃな)
ああそうだよね、ゴブリンの持ってる銅剣とぶつかっただけで折れるような脆さだもんね、だけどさ。
(『軽速』も『切り裂き』も無しで何とかなるのか)
この二つは俺にとっちゃ最強コンボなんだけどさ。
(お主は忘れたかもしれんが、初めの頃はタダの銅剣のみでゴブリンを倒してきたのじゃぞ。お主の剣技は儂が保証するし、攻撃力以外のステータスはそれなりに上がっておる、それほど体表が硬くない鬼族ならば何とかなろうて。後々の事を考えればゴブリンズソードのレベルを上げて使い方に慣れるいい機会じゃろう)
簡単に言ってくれるけどさ、まあやるしかないのか。
ゴブリンズソードを抜き、『鑑定』を頼りに暗闇の中で目の前の一匹の腹を切り裂く。
内臓をこぼしながら崩れる一体から飛び離れて、別な一体の首筋に刃を当てる。
(『闘気術』での加速ならば『軽速』の様な独特の動きは無いゆえ、気取られぬじゃろう上手く使うのじゃぞ)
「解ってる」
とはいっても暗くて、急所を取りにくいんだよな。
脇の下を斬り腕の血管を破る。
血しぶきを浴びながら、次々とゴブリンを倒していきながら、徐々に感覚が戻ってくる。
そうだよね、一人だった頃はこんなのばっかだったもんね。
振り下ろされてきた銅剣の刃を左手で弾く。
うーんこれはテトビに感謝しないとな、約束通り俺の防具を作ってくれたおかげで助かったよ。
真っ先にテトビが用意してくれたのはムカデの殻で作った籠手と胴鎧にブーツ。普段は必要ないけど『超再生』を隠したいときにはこれ有りがたいわ。
正面のゴブリンの顔を左手で殴りつけ仰け反ったところで喉を切り裂く。
(ふむ、思ったよりも早かったの)
最後の一匹を蹴り倒してから止めを刺して一息つく、さてと戻るか。
「リャーお帰りー」
飛びついて来ようとするアラを身振りで押さえておく、今は血まみれだから抱き着いたら汚れちゃうもんね。
「リョー殿、その姿は大丈夫なのか」
あれ、ミムズが慌ててるな、まあ普通はそうか。
「全部返り血だ問題は無い」
まあゴブリン相手だからね、そんなに心配ないって。
「そうか、それならばいいのだが」
なんだろ、なんか引っかかる言い方だな。
「あのね、リャー、アラがんばっていっぱい倒したんだよ」
そうだろうな、アラは弓が得意だもんね。
「だけどねリャー、あのね」
だけど、なんか変な接続詞が来たな、どうしたんだ。
「鬼さん増えちゃったの」
アラの指差す先を『鑑定』すると、見渡す限りに文字が浮かんでるんだけど、どうなってるのこれ。
えーストックが切れました、なのでまた更新ペースが落ちると思います。
H27年6月19日 誤字、句読点修正しました。




