67 女騎士の依頼
前回が長めだったので今回は短めです。
「それで、『迷宮』討伐ってどういうことだ、『大規模討伐』をするつもりなら俺等みたいな少人数に声をかけて回るより。頭数を揃えたパーティーを幾つか押さえた方が良いんじゃないか」
とりあえず煮込み野菜を食っちゃわないと、冷めると美味しくないし。それに早く戻らないとアラが起きた時に1人だったら、また泣いちゃうかもしれないしね。
「いや、それには及ばない、自分は貴殿、リョー殿にのみこの話をしている」
あれ、どうなってるの、ミムズもプテックも冗談を言ってるようには見えないし、そもそも冗談を言いそうなキャラじゃないから。
てことはあれか、まさか王族を怒らせた俺を処分するための罠か、人けのない『迷宮』に呼び寄せてから騎士達に包囲されてそのまま。やっぱりやり過ぎたかー
いやいや、まさかなそんな訳ないよな。
「いったい何を考えている、あんたならいくらでも冒険者の当てが有るだろう」
お抱えの冒険者もいるし、いろんなとこに繋がりもあるだろう、今のこの街でなら冒険者だけは選り取り見取りだよね。
「それではダメなのだ、我らと繋がりのある冒険者は殆どが『大規模討伐』や集団戦などを得意とするものや、密偵替わりに調査を行うような者ばかりでな。少数で強力な敵を撃破できるような者は居なくてな」
あれ、それってひょっとして。
(お主が『青毒百足』を倒した事で目を付けられたようじゃのう)
やっぱそうだよね、でもなんでまた。
「俺を買いかぶり過ぎだ、それにもし俺がそんなに強いとしても理由がわからん」
「自分とプテックの両名は一時的に殿下のもとを離れて、腕を磨くことになったのだが、今までと同じような集団の中ではさらなる成長は望めない。なのでリョー殿の様な優秀な冒険者から御教示願いたい」
(優秀、優秀な冒険者か、確かに成績を見る分ではのう、『魔道具』が無ければ弱小も良いところじゃがのう)
うるせえ、黙ってろバカ首飾り。
しかしここで依頼を受けるメリットはなにかあるかな、とりあえずここでミムズと繋がりを作っとけば、昨日の事はチャラになったりするかな、ついでに一国の王族や貴族とコネが有るってのはいざって時役に立つのかな。カミヤさん一人じゃ不安な気もするし。
でもな、下手に一緒に行動してて俺が『勇者』だってばれると面倒な気もするし、どうしようかな。
「報酬は金貨三十枚でどうだ」
「ぜひ、やらせてもらおう」
やべ、思わず金額に反応しちゃった。
(お主、金には困っておらぬだろうに今の持ち金だけでも金貨千六百枚を超えておろう、田舎の小領主程度ならば1年分の税収を超えるのだぞ)
まあ日本円換算で一億六千万くらいか、サラリーマンだった俺の生涯賃金と比べると、いや考えないでおこう。でもさ三十枚だよ今までこんな稼ぎのいい商売なんて無かったから。
(三十枚ごときで踊らされおって、『大規模討伐』などの相場で言えば金貨十枚に働き払いというのがざらにあるのじゃぞ)
なぬ、そんなにおいしいのか『大規模討伐』って。十枚って百万円だぞ。
(目的の魔物以外からは逃げ回っていても問題の無い通常の討伐や採集等の依頼や、『迷宮』に入る事の無い商隊の護衛などとは違い、『迷宮』でひたすら戦い続ける事が前提の『大規模討伐』は危険度が違うからのう)
つまりは、今回の依頼はそれだけ危険度が高いって事かな、安請け合いしちゃったかも、今更もうキャンセルは無理だよね。
(念のために言って置くがの、よほどの理由が無いかぎり契約不履行や一方的な契約破棄は、冒険者が信用を失う最大の理由じゃ、あの冒険者は信用できぬなどと噂が一度でも立てばその近隣でまともな依頼は受けられぬと思うがよい)
うわ、マジですか、てことはもう受けるしかないって事ですよね。早まったなー何であんなあっさり受けちゃったんだろう。書類にサインしてない口約束だからセーフなんてことは無いだろうしなー
あれ、そう言えば依頼の内容を詳しく聴いてないよな。
「リョー殿ならばそう言ってくれると思っていた。それで依頼の内容なのだがリョー殿は『鬼族の街』という『迷宮』を御存知であろうか」
(ラクナ、知ってるか)
(この街の近郊にある『迷宮』の一つじゃのう、元々は人の街じゃったが三百年前に大量発生した鬼族に乗っ取られての、そのまま『迷宮化』してしもうたのじゃ)
なんだ『迷宮化』って、いやなんか聞くと長そうだからまた今度の機会にしとくか、大体想像つくし。
「聞いた事はあるが、それがどうした」
鬼族って事はゴブリンとかかな、それならそんな問題ないよな。
「うむ、最近の事らしいのだが、そこの鬼達が『迷宮』の外に出るようになり周辺の村や旅人を襲いだしているとのことだ」
それって、前に似たような事が有ったよな、てことはまさか。
「ひょっとして『活性化』が近いのか」
「いや、そうではないらしい。『鬼族の街』が『活性化』するのはかなり先らしいのだが、冒険者からすると危険な割りに旨味がないらしく、ほとんど討伐がされておらんのだ」
確かにゴブリンの牙とか爪とか安かったもんな、量を集めないとそこそこの値段にならなかったし。
「結果として、『迷宮』内で魔物の数が増え過ぎたようなのだ、中心部の魔物の一部があぶれて中間部へ、中間部の魔物が押し出されるように外周部へ、そして外周部の魔物が『迷宮』外へそれぞれ移動しだしているらしい」
ああ『蝙蝠の館』でもっと上の方にいるはずの『空虚の鎧』が二階に出てきたのと同じような現象かな。あれ、でもそれだと解決策って。
「そこでだ、『迷宮』にいる魔物の数を一定以下に減らせばすべては解決する」
つまりはあれか、他の魔物をやりくりして目標の撃破とかじゃなくて、一定範囲の殲滅戦ってか。普通なら大兵力で圧倒するんだよね、それこそ『大規模討伐』みたいに。
「ためしに聞くがメンバーは誰だ」
「自分、プテック、リョー殿、アラ殿の四人だ、他にリョー殿のパーティーメンバーがいれば別だが」
まじですか、黙ったまま座っているプテックに視線を向けると、目を瞑って首を横に振った、これは諦めろって事かな。
ミムズって見た目は委員長キャラに見えるけど、ひょっとしてアホな子なのかな。
「他に声をかける予定はあるのか」
あるよね、もう何十人か揃えるんだよね、でないと厳しいってそんなの。
「いや無い、先ほども言った通り、少数で敵を撃破する経験を積む目的も兼ねているのだからな」
そう言えばそうだっけ、あれでも俺が指導する形になるんだから主導権はこっち持ちでいいのか、それなら危ない時は撤退すればいいんだよね。
「必要な判断は俺がするって事でいいか、少数で危険を冒す以上は引き際の判断も必要だからな」
頼むよ、これで全滅させるまで撤退はしないなんて言い出すなよ。
「ふむ、確かにその判断も必要だろうな、いいだろう指揮権はリョー殿にお任せしよう。それと『迷宮』で取れた採集物は全てリョー殿に渡そう」
よし、これで生還率が上がったな、でもこれ誰が依頼したんだろう、やっぱり周辺の村とか交易路を使ってる商人とかかな。一応確認しておいた方が良いかも。
「この討伐の依頼主は誰なんだ、念のため聞いておきたいのだが」
「何を言われているのだリョー殿。自分に決まっているだろう」
ん、どういう事だろう、これだとミムズ達のメリットって経験値稼ぎと戦闘訓練くらいしかないんじゃ。
「俺に支払う金貨三十枚はミムズ達が出すという事か」
「当然であろう、他に誰が出すと言われるのか」
ますます意味が解らない、じゃあなんの旨味が有ってこんなこと始めてるんだ。
「ミムズ達の目的が分からないんだが」
「ん、当然ではないか、他国とは言え無辜の民が魔物の危機に瀕しているのだ、騎士が戦う理由が他に必要か」
ああ、この子アホな上に熱血だったんだ、そう言えば人の部屋のドアを開ける為に斧で壊させるぐらいだもんね。
しかし、これだと結構期間がかかりそうだな、アラの熱の事も有るし合流が遅れるってサミュー達に手紙を書いとくか。
PV総合が25万に行きました~~~~
次回は番外編として久々にサミュー達になります。
H27年6月13日 誤字、句読点修正しました。




