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65 王太子

今回は、いつもと雰囲気が違ってると思います。

「貴様があの薬を持ち込んだ冒険者か……余計な事を……」


 どう言う事だよ、お前が毒受けて苦しんでるからって、こんな騒ぎになってるんだろうが。


 目の前にいる王女様は、癖の無い緑色の長い髪が一纏めにされて肩に垂らされてて、白い顔の作りは隣にいるパルスと全く同じ整ったものだけど、眉毛の色とその下にある紫の目だけが違う。ああ、あと目つきが悪いか、ミムズと比べてもかなりキツイぞ。


 服装は、男物の上着とズボンなんだけど、端的に言えば中二や乙女が喜びそうなデザインだなー。


 黒地に純白のマント、両肩には、ごてごてした肩章が付いててそこから胸元へ金モール、所々に銀糸で刺繍されてるし。


 マンガやアニメの帝国なんかで出てきそうな服に包まれた体は、よく言えばスラッとした細身、悪く言えば凹凸の無いツルペタ。うん、これぞエルフ体型。


 しかし、左右にナイスバディのミムズとパルスがいると、アクラスの胸元の寂しさが引き立つなー


 なんか、アクラスより、ミムズの方がパルスと姉妹みたいに見えるなー


 まあいいやとりあえず『鑑定』するか、でも多分。


アクラス・ラメディ・リューン

???? LV??  ???? LV??


技能スキル ??

戦闘スキル ??

身体スキル ??

生活スキル ??


 やっぱりな、しかも今回は念のいった事に職業まで隠されてるよ。


(これは、不味い事になったかもしれぬ、お主『鑑定』スキルの事はバレておらぬじゃろうな)


 ずっと一緒に行動しててその質問はおかしくないか。


(少なくとも、この街に来てからならテトビぐらいしか知らないだろう、奴が誰かに話せば別だが)


(あやつか、叩けば埃の出そうな詐欺師が、王族や騎士と進んで繋がりを持つとは思えんが、念のため確認して口止めした方が良いかもしれぬの)


 なんだ、首飾りが珍しく慌ててるな、どうしたってんだ。


(いったいなんだっていうんだ、他の連中もステータスを隠してたけど、そんな反応しなかっただろう)


(今までとは話が違うのじゃ、職業までもを隠すなど、ましてそれが一国の王太子となれば)


 そりゃあ、偉くなれば秘密も増えるんじゃないのかな。


(スキルやレベルを隠すのならばともかく、職業を隠すのは異常じゃ、まして自ら王太子と名乗っておるのじゃからな。お忍びでの旅ならばともかく、こうも堂々と名乗りながら職に『王太子』と無ければ偽者と断ぜられかねぬ。そこまでの危険を冒してでも隠さねばならぬ秘密が有るという事じゃ)


(もう王太子じゃないって事か、実は廃嫡されてるとか)


(もしくは、さらに上の位へ進んだかじゃ)


 それって、まさか……


(どのような内情じゃろうと、ことは一国の枢密、それも王位継承に係わる内容じゃ、お主が気付いたと知られれば)


 暗殺とか、『迷宮』内で刺客に囲まれるとかそんな感じかな。そんなのは嫌だー


(分かった、気取られないように慎重に行動しよう)


 よし頭を切り替えよう、今は薬の報奨を貰う事と、ユニコーンの件だけを考えて行動して、余計な事を言って疑われないようにしないと。


「それで、あの薬はどうしたものだ、冒険者風情が持ち込んだとは思えぬ品だが」


 ここはやっぱり敬語だよね。ちょっと時代劇っぽくいった方が良いかな。


「は、あれは、ミーナ王国はライワ伯爵領にて、作られた秘薬にございます。とある依頼の報酬の代わりに伯爵様よりあの薬を賜りまして」


 うん、ここは宣伝しておこう、あの薬の売れ行きは俺にとっても重要だから。これだけ羽振りのいい王室がお得意様になってくれれば。


「ほう、ライワ伯爵と言えば、以前は『重剣の勇者』として名を馳せたあの、彼のもとならばあれほどの薬も納得がいくか。まあ良い、これは謝礼の金だ」


 アクラスの言葉の直後にミムズが俺の前に持ってきたのは皮袋が四つ、これはまさか、テトビ達が持ってきたのと同じ、てことは。


「金貨八百枚だ、一冒険者ごときには過ぎた額であろう」


 何だろう、病み上がりでイラついてるのかな、いちいち言う事にトゲが有るな。


「これほどの大金ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、伯爵家ではあの薬を定期的に作って諸国へ販売する予定とのことです」


「ほう、あれほどの薬をな、これは良い事を聞いた、それで冒険者、礼金の他に何か望みはあるか。些細な物なら叶えてやるぞ。言ってみよ、仕官か魔道具か奴隷か、それとも金の増額か」


 マジか、どうしよう、あれとかこれとか、いやいやここでお願いすることはひとつか。


「では、畏れながら、もしこちらにユニコーンの角もしくはユニコーン自身が有りましたら、頂けないでしょうか。または街の中にすでに連れ込まれていたり、これから連れ込まれる予定が有りましたらそれらも全て、できれば角の付いたままの生きた状態で」


 カミヤさんの把握していないユニコーンがいるかもしれないもんね、そう言った取漏らしも助けれるようにしないと。


「ユニコーンの角か、ずいぶんとつまらない物を頼んだな。確かにあれは多少の効果が有ったが、それもあの薬と比べれば天と地ほどの差が有る、毒の進行を数刻抑える程度だったからな」


 おい、今このガキはなんて言った。こいつのせいでユニコーン達がどんな目にあったのか解って言ってるのか。


 今の物言いだと少なくとも数回はユニコーンの角を摂取してるみたいだし、それが墓からの回収ならともかく、もし殺して奪い取ったものだったら。


 こいつはそれが解って言ってるのか。


「畏れながら申し上げます。殿下はユニコーンにとって角がどのような物なのか、冒険者にそれを奪われるという事が何を意味するのか、御存知でありましょうか」


「ふむ、角はユニコーン達が冒険者たちを通じて献上したものではないのか、それ相応の謝礼は払っておる」


 こいつは、解ってないんだな、だけどそれで許される事じゃないだろ。


「角はユニコーン達にとっては力の源、奪われれば命にも係わります。冒険者達は角を手にするために、ユニコーン達を襲って殺め、あるいは攫い、墓を暴いて角を持ち去っております。殿下はこの事を御存知か」


 この驚いた顔は、知らなかったって事だろうな。


「馬鹿な、余はそのような事命じては居らぬ、余が命じたのは薬を集めよと……」


 やっぱり解ってないな、権力者の一言ってのは、それが何気ない物であってもまわりには強い影響を持つって事を。


 陰謀物の映画なんかであるあれだ『~に何かあると大変だろうな』なんて親玉が言うと、それを察した部下が実行するけど、捕まった時に命令は受けてませんとか言ったり。少女漫画の学園物なんかで、グループのトップが『あの子目障りだわ』なんて言うと主人公が無茶苦茶に虐められるとか。


 俺だって、取引先のお偉方が『~が好物でね』とか『~のチケットが手に入らなくて』なんてセリフ言ってたら、無理してでも取り寄せて持っていったりしたもんだ。


 本人が意識して言っているか、無意識で言っているかは関係ない、周りがどう取ってどう行動するかが、重要なんだ。力を持っている人間は、そこまで考えて言わないと周りが迷惑することになる。


「お言葉ですが、実際にユニコーン達の里は焼き打ちに遭い、一度路頭に迷いました。少なくない犠牲も出ております。全ては殿下に角を届けて金貨を得るためにです。私があの薬を持ってきたのは、この騒動を収めるようユニコーン達から依頼を受けたからです」


 別にこいつらの国がどうなろうと知った事じゃないけど、似たような事でまた俺達に影響が出たりすると困るからな、言うべきことはしっかり言って置かないと。


「そ、そんな、余は、そのようなつもりは」


「殿下にそのおつもりがなくとも、周りがそう受け止めれば事は起こります。殿下はその点に今後ご留意頂きたい」


 よーし言ってやった言ってやった。あーすっきりした。こいつのせいでこっちは散々な目に遭ってるんだからな、『寒暑の岩山』じゃあ数十人の冒険者と殺し合いになるし。サミューの前の主人やハルの兄貴に絡まれるし。ユニコーンの長老には変に目を付けられてヤッカをあてがわれそうになるし。『地虫窟』じゃ蟲のエサになりかけたし。


「だまれ、冒険者風情が、賢しげに差し出口を叩きおって」


 やべえ、逆切れしやがった、これはあれか『手打ちにしてくれる』とかってパターンか、不味い囲まれてる、こうなったら指輪の魔法と『念力』で……


「おやめなさいアクラス。自らの非を指摘されて激高するなんて、君主としての見識を疑われます」


「だがパルスこの者は、いやそうではないなパルスの言うとおりだ。だがこの者の言った事は事実なのか」


「ええ、本当の事ですアクラス」


 え、今このお嬢さんなんて言った、今の物言いだとパルスは知ってたって事だよね。ミムズや他の連中も驚いてるって事は、知っていたのは。


「パルス、それはどういう事だ、お前は知っていたのか。知っていて角を余に飲ませたのか」


 アクラスが、驚いた顔で隣にいる姉を見てるけど、パルスは冷静だな、こないだと同じような優しげな微笑を。


「ええ、知っていました、薬が必要だと周辺に公示した時はこう言う事になるかもしれないと思いましたし。ユニコーンの角が持ち込まれた時はやはりと思いました」


「なぜだ、解っていたのならなぜ止めなかった、パルスが止めてくれれば余は余はこのような事は」


「貴方を失う訳には行かなかったからですアクラス。リョー様、少なくない数のユニコーンが犠牲となったと言われましたね」


 なんだろう、この威圧感笑ってるのに、そう見えない。


「亡くなった方々には、どれほど御詫びしても足りないでしょう。ですが私はたとえ百本の角が持ち込まれても、それをすべて買い取るつもりでした。私達にとっては会った事の無いユニコーン百人の命よりも、アクラス一人の方が大切だからです。アクラスは近いうちに玉座へと即きます、そのアクラスを今ここで失えば、後継争いで内乱になりかねません。アクラスと私には百万を超える民に対しての責任が有るのです」


 ああ、この子は本物の君主なんだ、清も濁もしっかり認識して、自分の行動をしっかり把握して責任を持つ。


「リョー様が言われた件は間違いなく履行いたします。ユニコーン達の安全はリューン王国の名において保障しましょう。それでも納得されないのでしたら、私をこの場で切り捨てて、亡骸をユニコーン達の元へ持ち帰り下さい。ですがそれ以上の事はお止め下さい。全ては私が画策したことアクラスにもミムズにも罪はありません」


 あちゃー、これは俺がこういう時には行動に移せないって事を読んでて言ってそうだな。昼間のキッシュ達とのやり取りも知ってそうだし。


 自分が悪だと自覚のない悪党はそれだけでタチが悪いけど、自覚のある悪党は腹が据わってぶれないから怖いってのは誰のセリフだっけ。この子はそれだわ。


 第一ここでそんなことしたら、絶対後でお尋ね者になるよね。もういいやこれまでだ。


「あんたを殺しても、何の解決にもならないだろう。ユニコーンの安全が保障されたらそれで十分だ、行くぞアラ」


 跪くのを止めて立ち上がり、隣で黙ったままでいたアラを立たせると、周りの騎士たちが反応して槍を構える。


「おやめなさい」


 パルスが止めてくれたか、一言くらい言って置くかな。


「あんたが、どんな覚悟かは知らないが、そうやって甘やかしていると、そこの王女様はまた無自覚に暴走するぞ」


 さてと、宿に帰ったら早いとここの街を出ないとな。騎士達には嫌われただろうし、これで薬の買い取りがおじゃんになるだろうから、この街にいる冒険者達からも恨まれるだろうから。





 朝になったら、すぐ街を出る、つもりだったんだけどなー


「ごめんねーリャー」


 ベッドの中から少し赤い顔をしたアラが話しかけてくるのに布団を直しながら答える。まさかこのタイミングで風邪をひくとは。


「疲れてたんだろう気にするな」


 ここ数日休みなしだったもんな、騎馬で長距離移動したり、『迷宮』に百足狩りに行ったり。


「でもー」


「大丈夫だから、なにか食べれそうか」


「んー、たべたくない」


 やっぱりね、用意しておいてよかったかな。


「すりおろしたリンゴだけどどうする」


「たべる」


 アラは果物が好きだもんな、すりおろしリンゴなら水分もとれるし栄養も有るからちょうどいいかな。


「ほら、あーん」


 スプーンにリンゴを掬ってアラに食べさせる。


「おいしーね」


「そうか」


 でもこれだけしか食べないって訳には行かないよな、ハチミツ生姜湯とか玉子酒でも作ろうかな、いやアラじゃ飲めないか、焼きネギも嫌がりそうだし、梅干しは無いよな。


(ラクナ、何か子供の風邪に効く食べ物ってないか)


(そうじゃのう、パン屑を牛乳で煮込んだミルク粥等じゃろうかの)


 それなら、宿の料理人に頼めば作ってくれるかなパンもミルクも売ってたし。


 アラは寝たか、濡れタオルを絞ったら、食事がてらにミルク粥を頼んでみるかな。





「おお、リョー殿まだここにおられたか」


 宿屋の戸を開けると同時にかけられてきた声に、食べかけの煮込み野菜が気管に詰まる。


「げっほ、げっほ、なんでだ」


 何でミムズがここにくるんだ、しかも武装してて後ろに控えてるプテックも武装してるし。まさか俺を倒しに来たのか、やっぱり昨日は言い過ぎたのか。


 それとも、『鑑定』スキルの事がばれたのか、いやだぞ暗殺者や刺客に狙われ続ける人生なんて。


 いや考えてる暇はないな取りあえず武器を。


「リョー殿、自分と共に『迷宮討伐』をして頂けぬか」


 あれ、なんだそれ。


次回は番外編になります。


H27年6月7日   誤字修正しました。

H28年11月13日  誤字修正しました。

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