64 謁見
ごめんなさい、前回の後書きで新ヒロイン登場とかって煽ったのに、予定が狂いほんの数行しか出てきません。
ミムズから渡された礼服に袖を通し、アラにもサミューが仕立て直した服の中で一番良い物を着せて来たんだけど。
「いくらなんでもいきなりすぎだろこれは」
「何か言われたかリョー殿」
「いやなんでもない」
目の前に有るのは、ミムズ達の泊まっている宿屋なんだけどさ。入り口の前に完全武装の騎士が二人いるってどこのお城だよ、いやまあ王女様が二人もいるんだから、仕方ないんだろうけどさ。
「冒険者のリョー殿をお連れした」
「はっ」
おお、騎士がドア開けてくれたよ、なにこのVIP待遇。ただ単に薬を届けてたってだけだよね。
いやでも、ロシアのラスプーチンとかは皇族の病気を治して取り入ったんだっけ。他にも似たような方法で権力者に取り入った悪党の話も聞いた事あるし。
そう考えると不治の毒に侵された王女を治した俺はそれなりに評価されるのかな。テンプレだとこのまま、お姫様と身分違いの恋にと行くんだろうけど、禁欲の有る俺にとってそれは自滅ルートだもんなー。
「リャーこないだのお姉さん」
アラが見ている先では、パルス王女が大階段を下りてくるけど絵になるなー、先日と違ってきれいなドレスを着てるし。
「いらっしゃいませ、リョー様。このたびは妹を救って頂きありがとうございます。心より御礼申し上げます」
王女様が俺の目の前に来て、スカートを広げながら腰をかがめてって、王女様ってこんな簡単に頭下げていいのか。
「パルス殿下、いくらなんでもそこまでなさることは」
やっぱそうだよね、ミムズが慌ててるよ。
「よいのです、ミムズ。リョー様、お呼びしておいて申し訳ありませんが、アクラスの身支度がまだ整っておりません。しばらく別室でお待ちいただけないでしょうか」
「それは別にかまわないが」
まあ、病み上がりだし、女の子ましてやお姫様だもんね、そりゃ用意に時間がかかるよね。
「それではこちらにどうぞ」
パルスに案内されるままにテーブルに着くと、二人のメイドさんがお茶とケーキを持ってきたけどって、おおおおお。
「お茶に砂糖とミルクはどうしますか」
このメイドさん、犬耳だ、いや狼かも、なんにしろ犬耳メイドとはなんとマニアックな、いや小説なんかだとよく有るキャラだけどさ。
スカートに空けられた穴から出てるフサフサの尻尾が何とも、モフりたい、モフりたい。いやいやダメだって。
「どうしたのリャー」
(お主、またボーっとしておったぞ)
あ、いや思わずさ、しかしプテックの無口系猫耳も良いがこのメイドさんの犬耳も、非常によい。どうなってるのこの異世界のエルフ族は、テンプレで排他的な種族なのかと思ってたら何だよこのモフモフパラダイスは、サイコーじゃないですか。
「いやなんでもない、アラはなんにする、あんまり苦いお茶だと飲めないだろ」
サミューだとアラ用に甘く作るんだけど、さすがにそれは期待できないもんな。お店のお茶とかだと飲めないときがあるし。
「うー、でも」
「それでしたら、温めたミルクを用意させましょう。サーレンお願いします」
「解りました」
パルスに言われて犬耳メイドさんが出ていくけど、そっか、彼女の名前はサーレンちゃんか。待てよ、て事はもう一人の子も獣人娘なのかな。
「失礼いたします」
すぐ横から、手が差し出されてケーキとお茶が置かれる、俺のすぐ横に獣人メイドさんが、さあこの子はなんの獣人なんだ。
「ありが、とう……」
あ、目が合った。
「どうかなされましたか」
瞳孔が縦に細長く裂けてますが。まるで爬虫類系モンスターの様な。
「いやなんでもない」
うん、気のせい気のせい、耳は見当たらないな、髪は短めだけど中に隠れてるのかな。口を開けた時に尖った牙がずらっと並んでるように見えるのも気のせいだよね。
白い肌に濃い緑色の髪の毛をした美人さんだよね、うん、同じ色の鱗と突起に覆われたぶっとい尻尾がスカートの裾から垂れて床をのたくっているのも気のせいだろう。
いや、現実逃避はやめよう、多分この子はワニとかトカゲとか恐竜とか言った感じの獣人さんなんだろうな。
「お代わりが必要でしたら、遠慮なくお申し付けください」
ああ、きれいな笑顔は、素敵なんだけど。にまっとすると大量の牙が覗いてさ怖いです。
「ディフィー、用意が出来たのなら、あなたも座ってお飲みなさい。サーレンあなたもお座りなさい」
御菓子を並べ終えたワニ娘さんと、ホットミルクをアラに入れてくれた犬耳メイドさんが、目を見合わせるけど、どうしたんだろう。とりあえずワニメイドさんの名前はディフィーさんと。
「お客様がいらっしゃいますが、よろしいのでしょうか」
「本国のエルフ族や貴族の方々でしたらともかく、リョー様はそう言った事を気にされるようには見えませんし」
パルスが微笑みながらそんな事を言ってくるのに、頷く。本当なら種族とか身分とかいろいろあるんだろうけど、俺には関係ないもんね、大体の冒険者はあんまり気にしないんじゃないのかな、男に限れば獣人との混成パーティーなんてよくいるし、エルフもたまに見かけるから。
「ああ、構わない、人を立たせておいて自分は座っているというのは落ち着かないしな」
うん、ここら辺はやっぱり俺って庶民なんだろうなー
「ありがとうございます。失礼します」
サーレンさんずいぶん浅く座るんだな、そっか尻尾がつかえるのか。なるほどねあーやって横に垂らして座るんだ。
「では、わたくしも」
ディフィーさんも同じように座るのかな。でもあの長いしっぽだと隣の席に当たるんじゃないかな。
「よいしょっと」
ああ、なるほど、尻尾を抱え上げて膝の上に乗せるのね、あれならちょっと横幅取るけど1人分のスペースに座れるのね。
「リャー、これおいしーよ」
メイドさん達に見とれていた俺に、アラが御菓子を食べながら笑ってくるけど、あーあーもうクリームがほっぺたに。
「アラ動くなよ」
ハンカチを取り出して、クリームを拭き取ったけど、またすぐに汚れそうだなー
「リャーありがとー」
ほら、またすぐにケーキにかぶり付いちゃって。
「ふふ、おいしいですかアラ様」
「うん、すっごくおいしい」
満面の笑みで答えちゃって、でもクリームがお髭になってるぞー
「そう言って頂けると、作ったかいが有りました」
え、てことはこのケーキは王女様の手作りって事か。これどんだけのレアアイテムだよ。
「ええ、全て私が作りました。幼い頃に教わってからは定期的に作っていまして。こう見えて『菓子作成』のスキルも持っているんですよ」
おお、料理系スキル持ちの手作り、これは味も期待できるか、まずはこのクリームたっぷりのショートケーキを……
まてよ、ケーキのスポンジって材料なんだっけ。確か卵を大量に使ってたよね、もし有精卵が一つでも混じってたらアウトだよね。食べたい、お姫様の手作りケーキを無茶苦茶食べたいけど、ほとんどロシアン料理というか、ほぼ毒料理みたいなもんだよね。
くそー、こんな事ならもっとまじめに『料理解析』を取っておけばよかった。お姫様の手作り、手作りケーキがー
「俺の分も食べなさい」
内心で号泣しながら、目の前の皿をアラの前に回す。
「いいの、リャー、これすっごいおいしいんだよ」
「ああ、気にしないで食べろ」
「ありがとーリャー」
うーん満面の笑みで、お礼を言われるとうれしくなるな。ケーキは惜しいけど。
「お気に召しませんでしたか」
「そう言うわけではないが、甘い物はあまり、お茶は美味しくいただいています」
ウソです、甘いもの大好きです、日本にいたころはコンビニスイーツを買いまくってました。
くそーこんなチャンスもうないかもしれないのに、こうなったらみんなと合流したら、無精卵を買いまくってサミューに思いっきり作ってもらうぞ。
「そうですか男らしいのですね」
あれ、いい方に勘違いされたみたいだ。まあいいか。
「失礼します、パルス殿下。リョー殿、謁見の用意が整った、広間まで来ていただきたい」
部屋に入ってきたミムズが、椅子に座っているサーレンさんとディフィーさんを見て何も言わないって事は、二人がこうしてパルスと一緒にお茶を飲むのは普段からよくある事なんだろうな。
「わかった、ではパルス様、ごちそうさまでした」
「ええ、謁見の場には私も向かいますので、よろしくお願いします」
「ではそこで跪かれよ、許しが下りるまでは頭を上げぬように」
ミムズに言われて部屋の真ん中の長絨毯の上に跪くけど、この姿勢は慣れないな。王族と会うんだから仕方ないのかもしれないけどさ。
「それでは、両殿下が御入室される」
しかしよくもまあ宿屋の広間をここまで改造したもんだな。入室した時に見た分だと家具の類は全部取っ払われて、高そうな赤絨毯に、ピカピカのでっかい椅子、正面の壁には多分王国と王家の紋章らしいタペストリーが張っ付けられてるし。
明り取りの燭台も高そうだし、どうやって取り付けたのか天井にシャンデリアまであるし。
一枚当たり金貨何枚するのか解らないような赤絨毯に跪いてる俺とアラの左右には武装した騎士が三人ずつ、これは何かあったら切り捨てるって事なのかな。
俺達は剣どころかアイテムボックスも入り口で預けたってのに。まあ指輪や腕輪なんかの『魔道具』は持ち込めたし、アラには魔法が有るからいざって時は、アラを連れて逃げれるかな、まあそんな事は無いだろうけどさ。
「リューン王国、王太子アクラス・ラメディ・リューン殿下、並びに第一王女パルス・ラメディ・リューン殿下、御入来」
声とともに足音が入って来るけど、この数はどう考えても、二、三人じゃないよな。
「苦しゅうない面を上げよ」
言われるままに頭を上げると、玉座のすぐ右側に先ほどよりも豪華なドレスを纏ったパルスが、少し離れた左側に鎧を纏ったミムズが立っている。
更にパルスの横の壁際にはさっきの獣人メイドさん二人が、ミムズ側の壁際にはプテックとさらに二人の剣士が並んでるけど、この二人も獣人だよ。
一人は多分プテックと同じ猫科のお兄さん、黄色に黒いブチの耳と尻尾は豹とかチーターなのかな。
もう一人は鳥人族、茶色っぽい立派な羽は多分、鷲とか鷹みたいな猛禽類みたいだな、ハルと違って背が高いし、あんなのが『鳥態』を取ったらどんなサイズになるんだろう。
しかし、ミムズ以外の近侍を獣人ばかりにするとか、ここの王族はエルフ嫌いなのかな。
まあいいや取りあえずは本命の王女様はっと。
「貴様があの薬を持ち込んだ冒険者か……余計な事を……」
ちょっと待て、今こいつボソッとなんて言った、なに、薬持ってきちゃダメだったの。
ちなみに、今回出てきた獣人メイドお二人と獣人騎士達はあくまでも脇役です、これから先の出番は……ちょっと?
H27年6月7日 誤字、句読点修正しました。




