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60 地虫窟

えー仕事のからみで来週の更新が難しいので急遽更新しました、今回は長めです。

それと、前回リョー君が心の叫びで「ベルクマンもアレンも知ったことか」と言ってましたが。

ベルクマンの法則、寒い地方の哺乳類は大型になる。アレンの法則、寒い地方の動物は耳や尻尾などが小さくなる。という内容です。

「勝負の方法は、近郊の迷宮『地虫窟』へ赴き二階層以下に出るという大型魔獣『青毒百足』を仕留め、死体か証明部位としての牙を持ち帰った者を勝者とする」


 早朝、街を守る門が開く直前にミムズが俺達に対して宣言する。


 隣を見ると、諸悪の根源クラムズ・キッシュが頷いてやがる、後ろには同僚や従者なのか武装したむさ苦しい連中が完全武装で十数人馬に乗ってやがる。


 俺の方も馬に乗って前にアラを載せているけど。あー、本当なら今頃、薬を渡してたはずなのになー


 こんな事のせいでユニコーンに被害がでたら、こいつらどうしてくれよう。まあ俺が何とかしなくてもカミヤさんがただじゃ置かないだろうけどさ。この世界では舐められたら終わりだとかって前に言ってたし。


「それでは、開始」


 ミムズの合図と同時に十数頭の騎馬が一気に駆け出す。向こうと比べてこっちは軽装だし、二人乗りって言っても俺は『軽速』で体重を極端に軽くできるから実質は小柄なアラ一人分の重量、ごつい金属鎧纏った大男連中と比べればはるかに早く『迷宮』に着けるはずだけど。


(ラクナ、『地虫窟』ってのはどんな『迷宮』なんだ)


 何か聞き覚えが有るんだよなー


(以前の勇者と何度か潜った事が有るのう、あそこは文字通り地虫が主な魔物で他にも芋虫やミミズ、ヤスデにムカデなどの地を這う細長い虫型の魔物ばかりじゃ)


 げ、マジかよ、確かに蟲系の魔物もいるとは聞いてたけどやだなー、鳥肌が立ちそう、地虫ってあれだよね蛆虫とか蜂の子とかカブトムシの幼虫みたいな白くてうねうねした奴。


 やだなー、生理的に無理って程じゃないけどさ、どうしても気持ち悪いし。いやそれよりも情報収集をしないとな。


(それなら『青毒百足』はどんな魔物だ)


(読んで字のごとく青色の巨大な毒ムカデじゃな、毒はかなり強力じゃが『超再生』ならば問題はあるまい)


 それなら、アラは噛まれないように気を付けないとな。


(本来はもっと深層階のフロアボスなのじゃが、『活性化』が近づいておるゆえ上がってきたのじゃろうな)


 げ、マジかよ、『活性化』間近ってうそだろ。


(仕方あるまい、少し前に大量に死者が出たのじゃからな。『迷宮』自体も活気づいておろう)


 ん、あ『地虫窟』ってあれか、ハルの実家が『大規模攻略』に失敗した。そう言えばそんな名前だったなー


(まさかお主、忘れておったのではあるまいな)


(まさかそんな訳ないだろう、うちのパーティーメンバーの事だぞ)


 ま、間違ってもイエスなんて言えないよね。


(当然じゃな、あの後も遺品目当てで多くの冒険者が中に入っておるじゃろうから、その後もある程度の死者が出てるじゃろう、お主もそうならぬよう気を付けるのじゃぞ。パーティーが全員居るならばなんとかなるじゃろうが、お主ら二人ではやや荷が重いからの)


 そんな不吉な首飾りの声を聴きながら、俺は見えてきた『迷宮』の入り口を見つめていた。





「暗いな」


「くらいねー、でもいっっぱい音がする」


 入り口から覗いても、ほとんど先は見えないけど、虫特有のワシャワシャといった感じの音がして思わず鳥肌が、『子鬼の穴』の時はゴブリン達が所々に明りの松明を置いてたからよかったけど、これはどうしよう。


(魔法で明かりをつけるしかあるまい)


(光に魔物が寄ってこないか)


(それは心配ないじゃろう、ここの魔物は視力がほとんどなく嗅覚に頼っており特に血や体液の匂いに敏感じゃ、ゆえに倒した魔物の近くに長くいたり、返り血を浴びるなどすれば魔物が集まるじゃろう。注意せよ)


 返り血に注意か、気を付けないとな、服を多めに着ておいて汚れたらすぐ着替えるか。


「リャーはいらないの」


「アラ、長袖のお洋服をもう一枚着ようか、汚れたらすぐに言うんだぞ」


「うん、わかった」


 幸い今回はアラと一緒だからな、アラの持ってるアイテムボックスは衣類が大量に入ってるから着替えには困らないだろう。


「『照明』よしいくかアラ」


「うん」


 防具の上から大き目の服を着て少し着ぶくれしたアラを連れて、洞窟の中へと進んで行った。





「アラ狙えるか」


「うん、行くよ『雷弾』」


 照明魔法の弱い光を頼りにして、アラの放った雷撃が目の前の地虫を仕留める。


「よし。上手だぞアラ」


「えへへへ」


 アラの頭を撫でながら、地虫の死骸に近付き『アイテムボックス』の口を当てる。ものの数秒で魔物の体は『アイテムボックス』に吸い込まれて消えてなくなる。


「よし、次に行こうか」


「うん」


『迷宮』に入ってからは比較的順調だ、出来るだけ血を流さない様に表面を破壊せずに仕留められるタイプの魔法を使い、死体も匂いを出さない様にすぐに『アイテムボックス』にしまっている。ありがたい事に俺の『アイテムボックス』は魔物の死体ならサイズに関係なく幾らでも収納できるから。


 まあ、後でまとめて解体するのは大変だろうけどさ……


「でもさ、リャー」


「どうしたんだアラ」


「いっぱい魔物さんが来たらどうするの」


 そう言って笑うアラの背後には、少なくとも三つ以上の蠢く物影が有った。


「アラ少し下がって魔法で支援だ、できるだけ弓は使うな」


 アラを残して、魔物の中心に躍り込むと、俺の匂いに気付いた魔物が動き出す。よしタゲ取りできた、後はこのまま魔物を引き付けながらアラの魔法を待てば……


(作戦はよいが、これまでアラは何回魔法を使ったかの)


 あ、そう言えばここに来るまでほとんどアラの魔法ですましてるもんな、魔物の数も多いし戦闘の間隔も短いからMP回復してないかも。


 俺を追いかけている虫共の隙間を通り抜けて、一定の距離を取りながら声を張り上げる。


「アラあと何回くらい撃てそうだ」


「わかんない」


 元気な声で答えてくれるけどさ、それじゃあ困るんだよな。万が一『魔力枯渇』なんかになっちゃったら。


 転がってきた蛆虫をジャンプして飛び越えると、俺に突進してきた勢いそのままで蛆虫が壁に衝突しちゃったけど、これで怪我とかしてないよな、こんな事で血が流れて他の魔物が集まってきたらシャレならないぞ。


「もし、魔力が少なくなってきたと思ったら、我慢しないで言うんだぞ」


 最悪の場合は略称『馬のふん』を使うか、使い切ればミムズに渡せなくなるけどしかたない。ユニコーン達には悪いが、俺にとってはアラの方が大事だし。


「わかった。行くよ『雷弾』」


 一撃で痙攣して絶命する芋虫を無視し、俺に向かってくる青虫の糸をギリギリで避ける。お約束的には拘束攻撃なんだろうな。


(気を付けよあの糸も微かに臭いを出しておる、早く焼くなり仕舞うなりせねば、他の魔物が集まって来るぞ)


 マジかよ、こうなったら血がどうとか言ってる場合じゃないな、考え方を変えよう短時間で仕留めて避難を優先だな。


『切り裂きの短剣』を取り出して、周囲を確認する。青虫が一匹と蛆虫が三匹、糸を警戒するなら青虫からだな。


 頭を大きく振って、俺にぶつけようとしている蛆虫から距離を取り、『軽速』で天井に飛び上がってからそのまま一気に青虫の頭へと飛びかかる。


「食らえ」


 思いっきり振りかぶった短剣を頭に突き刺すと、しばらく暴れてから青虫が動きを止める。


「もう一回いくよ、『雷弾』」


 よし、アラの魔法のおかげで後一匹、なら一撃で。


 蛆虫に一気に近寄り、連続で切り付けて倒し、血の付いた服をその場で脱ぎ捨てて一気に走る。


「アラ、逃げるぞ」


「え、え、リャー」


 いきなり言われて付いていけてないアラを小脇に抱えて、そのまま走り続ける。ここにはすぐに魔物が集まってくるだろう、でもそれなら他の場所のモンスター数は逆に減るはずだ、エンカウントが減るならそっちの方が効率いいかもしれないし。


 すごい勢いで先ほどの場所へと向かっていく虫を隠れてやり過ごしながら、二階層へと向かう、たまに俺達の匂いに気付く虫もいるけど、なんとか倒してやっと見つけた。


「おっきいねー」


「そうだな」


 いや本当は、そんな状態じゃないんだけどさ、なんというか今までの虫もでかかったけどさ、こりゃないだろう。


 例えるなら、列車三両分を上から押しつぶして半分にしたような……


 こんなにでかい化け物をどうしろって、てかこれがフロアボスなら、ダンジョンボスはどうなるんだよ。


「アラ、今までと同じで行くぞ、俺が引き付ける間に魔法を撃ちこめ」


「うん」


 後ろに下がるアラとは逆に前に出たけどはっきり言って怖い。特徴的なでかい牙は鋭いうえにトゲトゲで噛み付かれたら鉄の鎧でも簡単に喰いちぎられそうだし、脚も一本一本が人と同じくらいの長さと太さで尖った鉤爪に引っ掛けられたらそのまま切り裂かれそうだなー


 こんな化け物を俺ら二人で倒せるのか、ミーシアの『鉄壁防御』かハルの『溶岩密封』が欲しい所だなー。


 回復とスピードのある俺は囮になれるけど、アラが狙われた時の盾代わりにはなれないだろうな、あの牙じゃ二人一緒に切り裂かれるのがオチだし。


 アラは色々魔法が使えるけど、どちらかというと範囲攻撃で雑魚を一掃するような魔法ばかりで、こういった大物にガツンといけるような魔法は無いんだよな。


「さて、どうやって倒すのがいいのか」


(こやつが生きている間は他の魔物は恐れて近寄ってこぬ、傷だらけにしても倒してすぐに対処すれば何とかなるゆえ、全力で戦うがよい)


「そりゃありがたい言葉をどうもありがとう」


 全然慰めにならないんだけど、でもやるしかないか。



 短剣を抜いてとりあえず斬りかかる。



 でもなあ、ここは天井が高いし、ちょっとした野球場くらいの広さがあるうえに障害物も少ない。巨大な奴が動くのに支障はないのに、俺にとっては足場が無いから、ノミの様に飛び跳ねるか、せいぜい小石を使って方向転換するしかない。



 はっきり言って不利だよなー



 俺を狙って迫ってきた大顎を横に飛んでかわし、目の前の脚に切り付ける。



 くそ、太ってえ脚だな、短剣じゃあ完全に切り落とせないってどんだけだよ。



 でもまあ、半分近くは切り裂けたし、プラついてるから使い物にはならなく、がっ。



「リャー」



 視界が一瞬で切り替わる、くそ切り裂いた次の脚に吹き飛ばされたか。さすが百足ってことか。



 空中で姿勢を直し、爪先が地面に触れると同時に一気に跳ぶ。



 こうなりゃヒット&アウェイで削ってやる、邪魔くせえ脚全部切り落としても暴れられるのか。



 横から近付き軽く跳ぶ。



 奴の背中に飛び乗り、脚の付け根に切り付けてすぐに移動する。



『雷弾』



 アラの魔法が頭に直撃するけど効いて無さそうだな、せめて痺れてくれでもすればよかったんだけど。て、やばい。



「アラ、逃げろ、奴が行くぞ」



「え、あ」



 魔法攻撃を受けたせいか、『青毒百足』がアラの方へ一気に走っていく、まずいタゲ取りをしないと。



「こっちだ化け物、こっちに来ないと脚が全部使え無くなるぞ」



 背後から追いかけて、後ろから手当たり次第に脚に切り付けていく。



 何で止まんないんだ、アラじゃなく俺を狙えよ蟲野郎。



「アラーーー」



「えーい」



 あれ。



(見事な動きじゃな『速度上昇』と『快速』のスキルが有ると違うのう)



 あっさり避けちゃったよ、それどころか。



「行くよー『三連刺突』」



 やりかえしたよ、おいおい、ムカデの殻をしっかり切り裂いてるし。



(お主の斬撃より威力が有りそうじゃのう)



 どうせ俺は弱いよ、しかし、『出血の細剣』は威力や切断力は普通のはずだよな……



「アラ魔法を使ったらすぐに移動するんだ、それと氷や冷却の範囲魔法を使え」



「うん、わーた」



 でかくても虫は虫だ体温が下がれば動けなくなるだろ。



(先ほどの様にアラの魔法を囮にしてお主が背後を取るか、いっそのことアラと二人で接近戦に持ち込んではどうじゃ)



『氷水の指輪』で氷の塊を頭に落としてやったら、こっちに振り向きやがった。



(馬鹿を言うなよ、アラにそんな事させられるか)



 アラの防御力は紙同然だぞ、確実に防げるミーシア以外をあんな化け物に近寄せられるか。



 俺の方へ頭から突っ込んでくるムカデ野郎を上に飛びあがってかわす。



「しまった」



 考え事してたから思わず上に飛び上がったけど、これじゃあ後は落ちるだけだ、百足の頭がこっちを狙ってる、石、石、あれ、無い。



「リャー『強風』」



 アラの魔法のおかげで何とか俺を狙ってきた大顎をかわす。



 そのまま目の前にあった奴の背中に短剣を突き刺し『軽速』を解除する。



 俺を食うために上体を垂直に起こした奴の背中は壁みたいに見えるけど無防備なんだよ。



 柄を掴む手に体重をかければ、奴の背中を切り開きながら一気に背中の上を滑り降りていく。



「これでどうだ」



 背中から飛び降りて様子を見るけど、あれ、ピンピンしてる……



(短剣の長さでは殻や肉は切れても、急所まで刃が届かぬようじゃな)



 くそ、行けると思ったんだけどなー



「リャー離れて、『吹雪』」



 よし、風に乗った大量の雪が奴を覆ってる、多少は動きが鈍ったか、これを続けられれば。



 アラがタゲられる前にもう一度氷の塊を頭にぶつけてから突っ込む。



 振り下ろされる脚を避けざまに短剣で切り付け、別な脚の一撃を細かく走りながら避ける。



 よし動きが鈍ってやがるこれなら。



 俺の頭を狙ってきた脚をギリギリで避けてから軽く跳び根元を切り裂く。



 背中に飛び乗り、まだ無傷の脚の根元に切り付けるけど、この蟲野郎、振り落とそうと暴れて、クソ、ロディオかよ。



「落とされてたまるか」



 脚の根元にしがみ付いてそのまま切り付けてから、奴の動きにタイミングを合わせ別な脚に移っていく。



「もう一回『吹雪』」



 アラの魔法が奴の脚と腹を雪まみれにしてくれる、これならもう落とされる心配はないか。



(しかし、相変わらず華の無い戦い様じゃのう、背中にしがみ付いてチクチク刺すとはこれではどちらが虫か解らぬの)



 うるせえ、勝てばいいんだよ勝てば、ってうわっ。



 前半分だけで振り返って、背中の上の俺を狙ってきやがったよ、できたのかよそんな姿勢。



(愚か者、また上に飛びおって)



 だってさ、いきなりでびっくりしたんだって。



 でもこれは不味いかも、アラは魔法使った直後だし、石は拾えてないし……



 やっぱり俺を狙ってきますよね、うわ、ごつい大顎を開かないで、怖いから、むちゃくちゃ怖いから。



 こうなりゃ一か八だ、『軽速』を最大にして体重をほぼゼロにし大顎の牙だけに意識を向ける。



 柳みたいに軽くて抵抗の無い物を切ったり貫いたりするのは難しいはずだ、格闘漫画でそう言ってた、だからきっと。



 信じられないような早さで閉じられる大顎の片側にある鋭い牙の先端に爪先を当て、その勢いを利用してさらに上空へ飛び上がる。



 よし、上手く行った、怖かった、ほんと怖かった。もう一回やれって言われたら絶対嫌だ。



 でもこの飛距離なら。



 両足を『闘気術』で最大限まで強化して天井を蹴り付ける。



「くらえーー」



 これだけ速度を乗せて頭に直撃すれば多少は効くだろう。



(な、この速度で避けるとは)



 まだだ、何とか空中で体を捻って大顎の牙に切り付ける。



「とりあえず一本切り落としたか、これで挟み切られる心配はなくなったか。アラ、まだ行けるか」



「う、うん」



(疲れておるの、子供の体力では仕方ないとはいえ、このままではまずいぞ)



 確かに、今アラが狙われたら、こうなったら仕方ない、前にマンガで見た手を試してみるか。



『氷水の指輪』でタゲ取りをしてからもう一度近付く。



 よし、動きはまだ鈍いままだ、これならギリギリで避けて背中に乗れる。



(予定通りに飛び乗ったはよいがどうするつもりじゃ)



「こうするんだ」



 切り裂きの短剣を頭の頂点部分に根元まで突き刺してそのまま切り開き傷口に片腕を突っ込む。



「くたばれ」



 突き込んだ腕にはめられた『雷炎の指輪』と『風砂の指輪』の魔力を一気に解き放つ。



 風圧と高熱で内側から頭部を破壊された『青毒百足』がやっと動きを止める。



「なんとか勝てたか、え」



 なんだこれは、俺の腹と肩それに両足に矢が、それに矢に付けられてる、この白いのはなんだ。


「りゃーーーー」


(まずいぞ血が付いてしもうた、このままでは魔物が呼び寄せられるぞ)


 これはぜんぶ兎かしかも首と腹が大きく切り裂かれている、これは俺に血の匂いを付ける為か。


(すぐに服を着替えるのじゃ、いやそれよりも肌には付いておらぬか)


「ダメだ、下着までぐっしょり濡れてる、多分全身血まみれだ」


(洗い流すことは出来ぬか)


「無理だ『氷水の指輪』は魔力切れだ、アラは水系統の魔法が使えないし、俺じゃあ全身を洗えるほどの水は出せない」


(では、どうするのじゃ、そもそも誰がこのような事を)


 そうだよな、攻撃されたって事は敵がここに居るって事だ。


「まさか本当に二人で『青毒百足』を倒せるとは」


 俺が視線を向けた先には、クラムズ・キッシュとその仲間たちって、何人か減ってるな、それに装備もボロボロになってるし。ここまで来るのに苦労したんだろうな、いやいやそうじゃなくて。


「どういうつもりだ」


「すまぬが、手柄を奪わせてもらう」


 あいつが持ってるのは、ムカデの牙、さっき俺が切り落としたやつか。


「ふざけるな、卑怯者が」


 取り返すのは無理か、この距離だと俺が剣の間合いに入るよりも向こうの弓の方が早い、第一腕の火傷があるせいで両足の矢傷もまだ治ってないから、『軽速』を使ってもいつもの様には動けないだろうし。


「騎士道にもとる事をしているのは承知している、家名が地に落ちようと後ろ指を指されようとかまわん。事が済めばこの首を切り落としあの世で幾らでも詫びよう。だが我らはどうしても今すぐ金が必要なのだ。許せ」


 許せるかボケー


 といっても逃げていく奴らを追う余裕はないな、多分この部屋から出たら血の匂いですぐに魔物に囲まれる。


(ムカデは死んだばかりじゃすぐには他の魔物はこんじゃろうが、しばらくすれば徐々に集まって来るじゃろう)


「アラ、すぐに高い所に上がれ」


「やだリャーが」


「傷が治ったら俺もすぐに行く、俺なら一跳びで上がれる」


「アラもそっちに行く」


 俺の方に走ってこようとするアラをどうにかしないと。


「ダメだ今の俺に近付けばアラにも血の匂いが付く、アラが一人で上に登るなら時間がかかるだろうから、先に行ってくれ」


「だって、リャーが」


 ああ、かわいい顔がぐちゃぐちゃじゃないかもう、笑ってほしいのに。


「いいから、俺もすぐに行く」


(急げ、すでに入り口近くまで蟲共が来ておるぞ)


 くそ、はやすぎだろう。


「わかった、でもすぐきてよリャー」


 もう数匹、入ってきてる、アラはよし、壁に有ったでっぱりの上に登ったな、あそこなら飛べない虫には襲われないだろう。足は治ったなよし。


「アラ、直ぐ行くからな」


『軽速』を使ってアラの所まで行ったのは良いけど、これからどうしよう。血の匂いが付いたままじゃ逃げ切れないだろうな。


 案一、『超再生』を期待して虫を全滅させるのが先かMPが切れるのが先かのガチンコ勝負に持ち込む。


(却下じゃ、今ある『聖馬の不苦無痛丸』五つを使ってもお主のMPが切れる可能性が有る以上、止めておいた方が良いじゃろう)


 そうだよな、もう、下は虫でいっぱいになってる、これだけいると攻撃を食らわないで倒し切るっていうのは難しいよな。


(ここを無事に抜けたら、ああいった集団の中での戦い方を練習するかのう)


 それは、生きてたらな。


 案二、アラに固定砲台に成って貰い虫を一掃する。


(無理じゃ、火力が足りん)


 だよなー


(これは、あくまでも案の一つとして聞いてもらいたい、お主は怒るじゃろうが、儂の役目は勇者を助ける事なので言わぬわけにはいかぬ)


 ん、ずいぶんと前置きしてどうしたんだろ。


(言ってみろ)


(アラを囮にする方法じゃ、奴らはいちばん近い血の匂いに引き寄せられる、これ以上は言わずとも解ろう)


 ふざけるな、いや、ラクナも本気じゃない、だからあれだけ前置きしたんだろうし。


 でもどうするか、確かにこの状況じゃそう言う考えが出てくるのも解るが。


 囮、囮か、こうなったら仕方ないのか、普通に考えれば二人とも無事日常へ戻るのは無理だろうし。


 もう、これしかないか。俺の方を見ているアラの方へと向き直る。


「どうするのリャー」


 無条件に俺を信じてくる、可愛らしい目を見返しながら口を開く。


「アラ、俺が何をしても文句を言うなよ」


えーと、次の更新は8日以降になるかと……

こんなところで止めてごめんなさい。


H27年5月11日 誤字、一部セリフ、モノローグの分かりにくかった箇所を修正しました。

H27年5月26日 誤字追加修正。

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