59 獣人の戦士
今回リョー君はちょっと暴走します。
「リャー、どうしたのじっとアラを見て」
食事を終えて部屋に入ってから、黙って考え込んでいたせいで、アラを不安にさせたみたいだな。
「いやなんでもない、後で来るミムズに何の話をしようか考えていたんだ」
近づいて見上げてくるアラの頭を撫でながら。ラクナを呼び出す。
(たとえばだが、他のパーティーメンバー、ハルやミーシア、サミュー達もスキルを隠している可能性はあるのか)
出来ればあんまり考えたくはないんだけど。
(あるかも知れぬの、ハルの場合ならば家伝の魔法などが外に漏れぬように隠されるかもしれん。また、スキルとはその者が経てきた経験の証明となる。奴隷となればそれは主の姿を現す鏡となる)
何で奴隷のスキルで、主が出てくるんだ。
(冒険者が売りに出した奴隷のスキルを見ればパーティー内でその奴隷が勤めておった役割、そこからパーティーの戦闘スタイルが見えるじゃろうし、10の子供や男の奴隷が『性奉仕』のスキルを持っていれば主の嗜好がしれよう)
ああ、そう言う事かスキルが付くって事は、それに関することを頻繁にしてたって事だもんな。俺もサミューのスキルで色々考えちゃったし。
(故に、奴隷を売る際には、知られては不味いスキルに隠蔽や封印をかけたり、秘密を守らせるために『強制』の魔法を使ったりするのじゃ。もっとも『見破り』等のスキルが有ればその限りではないがのう。必要ならばスキル取得の方法を教えるが)
どうするかな、もし取れば、隠されているスキルが分かるだろうし。アラの秘密だってわかるかもしれない。
「リャーあ、また、ぼーとしてるー」
「ごめんごめん、アラは何のお話をしたいんだ」
「リャーの事。アラはリャーの事ならいっぱいお話しできるんだよ」
「そうか、アラは俺の事に詳しいんだな」
なんとなくうれしくなって、ふわふわの髪を撫でると、満面の笑みを返してくれる。
「当たり前だよ、だってアラはリャーが大好きなんだもん。リャーの事、いっつも見てるんだもん」
なにこのカワイイ生き物、思わずぎゅっと抱きしめちゃった、やっぱりうちの子は世界一カワイイ。
「リャーあったかい、ぽかぽかする」
「うん、温かいな。うん」
こうしているだけで落ち着いてくるな。うんアラは温かくてかわいくて大切な、俺の愛娘、それだけ分かっていれば、十分だよね。
サミューの時も、俺はサミューが自分から話したくなるまで待つって決めた、だからアラに対してもそうじゃないとね。
ハルやミーシアにも何か秘密が有るかも知れないけど、それを無理矢理聞き出したりはしない。
よし決めた、でももし、仮に、万が一、偶然、たまたま、運良く『見破り』のスキルや、付加アイテムが手に入ったら使っちゃいそうだなー
「リャー、痛いよー」
考え事をしながら、頬擦りしてたら、珍しくアラが嫌そうな声を出してきた。これかなりショックなんだけど。
「わ、悪いアラ、強く抱きしめ過ぎたか」
「ううん、おひげがねジョリジョリってしたの」
髭、そう言えばここ何日か剃ってなかったから無精髭が伸びてるのか。何時もならサミューが毎朝剃ってくれるから、自分でやるってことをすっかり忘れてた。
「ごめんな、すぐに剃るから。あれ、カミソリどうしたっけ」
人任せにしてたから、アイテムボックスに入れてなかったかも、まずい、どうしよう。人と会うっていうのにこれはまずいんじゃないか。
「アラがやってあげる」
そう言ってアラが背中に背負った剣を抜くけど、待ちなさいアラ、それは『出血の細剣』だろう。
切れ味が良いのは確かだけど、それでついた傷は治りにくいんだぞ、『超再生』も効き難くなるのに。危ないから危ないから、ね。
「ア、アラ、気持ちは嬉しいが、そう言うのはサミューの仕事だからな」
ほら、エロメイドの仕事を取っちゃね、ダメだよね。
「サミュいないもん、だから今はアラがサミュの替わりするの」
剣を構えたままでアラがこちらへとにじり寄ってくる、ま、まって、せめて石鹸くらいは付けて滑りを……
「えーい」
目にも止まらない速度でアラの剣が次々と目の前で振るわれるけど、怖くて身動きが出来ない、痛みは無いけど、大丈夫だよね俺の顔……
「よし、できたよー」
手早く鞘に剣を戻したアラの笑顔を見ながら恐る恐る顎に手を当ててみる。
うん、つるつるのすべすべ、傷はおろか深剃りもなさそうだな。
(これは、恐るべき剣の腕じゃのう)
お、ラクナまで感心してるよ、いやでも確かにこれは凄いよな、これなら相手の服だけ切って「またつまらぬ物を……」とか言ったら似合いそうだな。どこの怪盗だよって話だけど。
(面白いかもしれぬの、上手くすればお主の『念力』の様に新しいスキルになるやもしれぬの)
使い道が有るのかな、いや上手くやれば威嚇になるのか、熟練度が上がれば防具破壊とか……
試してみようかな。
「リャー、そろそろじゃないの」
ん、あ、そうかもうそんな時間か、ミムズが来るのに備えないとな。
「リョー殿よろしいだろうか」
と、噂をすればか、ノックの音と共に廊下から声がかけられてきた。
「ああ、来たか今開ける……え」
ドアを開けた先には、ミムズともう一人少女がいた。
「え、これは……」
な、なんだと、これは。
「ああ、これはプテック、自分の従者だ。二人で押しかけては悪いかとも思ったが、この者にも後学の為に話を聞かせたいと思い連れてきたのだが」
黙ったまま頭を下げる少女は、ミムズと同じ男物のいわゆる騎士服を着ているけどこっちは半袖だ。いやそれはどうでもいい。
豊富な髪は顔の周囲と両肩さらに背中までを黒味がかった黄色で覆っている。しかし、凄い髪の量だなこれは、いやそれよりもさ。
腰には剣の代わりに、大きめの片手斧を二つ吊っていて、小柄な彼女には不釣り合いだ。いやそうじゃない。
パッチリした釣り目の美少女だけど、顔を動かさずに目線だけが警戒するように部屋の中を見回している。いやそこじゃなくて。
顔と腕にはメイクなのかそれとも刺青や痣なのか、黒い線が走っている。いやそれだけじゃない。
頭の上からはやや丸みがかった大きな耳が、そして腰からは黒と黄色の縞々の長いしっぽがそれぞれ生えている。
獣人美少女来たー
そうだよやっぱり異世界トリップと言えばこうでないと、おっきなお耳の獣人美少女。
ミーシアも熊さんだけど、残念なことに白熊なので耳も尻尾も服や髪に隠れるくらい小さいうえに、背が高いから撫でにくくてあんまり獣人美少女という感じが無いんだよな。いや嫌いとかじゃないんだよ、というか好きだよ、性格もいい子だし、可愛いし、強いし、いろいろ助けられてるから。
でも獣人美少女になるかというとちょっと、くそー、ベルクマンもアレンも知った事か、生物学よりも萌えだろうが。
いや、ほかにはヤッカもいたけどさ、馬だよ馬、普通馬の獣人って言ったら男だろ、でもってノクターンとかでデカ〇ンとかが自慢でさ。
馬耳少女ってどんだけ需要あるんだよ。やっぱり獣耳と言えば犬(狼)、猫(虎、豹)、兎のスリートップだろう、これに並ぶ事が出来るのはエルフ耳位だが、うちにはアラが居るからちょくちょく触らせてもらってる。
そして今俺の目の前に有るのは、少し丸みが有る猫耳、おそらく彼女は虎の獣人、ファンタジーではそれなりによく出てくるヒロインだ。撫でたい、ぜひ撫でてみたい、だけど初対面の相手の耳をいきなり撫でるとかまずありえないよな。
くうう、しずまれ我が右腕よ。
撫でちゃダメだ、撫でちゃダメだ、撫でちゃダメだ。
落ち着け、落ち着け、よし。そうだいま撫でなくても仲良くなってからお願いすればいいんだ、最悪新しく猫耳や犬耳の奴隷少女を買うって手もある、これからは予算に余裕もできるんだしね。
よし、まずは『鑑定』だよな。
プテック
斧騎士 LV?? 獣戦士 LV??
技能スキル ??
戦闘スキル ??
身体スキル ??
生活スキル ??
またこのパターンかよ、まあ仕方ないか。
「ああ、この狭い部屋でいいなら、何人でも別にかまわないが」
「そうかではお邪魔させてもらおう。プテックも来なさい」
「はい姉さま」
お姉さまだと、これはまさか、多少デザインが違うとはいえ二人とも男物の騎士服だし、凛々しい感じでどっかの歌劇団っぽい男装の麗人。その二人でおねえさまとくれば、あれか百合か百合なのか。
「リャーどうしたのさっきから黙ったままで」
あれ、考え込んだせいでアラが不安になっちゃったかな。
「すまないな、何の話をしようか考えててな」
「そっか、それじゃあ……」
「こちらにリューン王国騎士ミムズ・ラースト卿が御出でと聞き申した、ラッテル家が家臣クラムズ・キッシュがお目通りを願いたい」
外から響いてきたでかい声がアラの可愛らしい声をかき消すけどなんだ、どうも用件は目の前の二人みたいだけど。
「む、どうやら自分に用件が有るようだな、リョー殿こちらから押しかけておいて申し訳ないが、少し待っていてもらえないだろうか。自分が行かねば宿に迷惑がかかるだろう」
「別にいいが、大丈夫か、かなりの剣幕で怒鳴ってるが、手伝いはいるか」
あの声は面会の申し込みというよりは、怒鳴り込みって感じだったよな。昔あったよな職場に押しかけてきたとある職業の人……
「いや、自分も騎士だ、この程度の事は自分で解決できねば、王族の直轄などできないだろう」
「ここにおわしたか、わたしはムルズ王国が子爵、ラッテル家に仕える騎士クラムズ・キッシュと申す。主家の命で秘蔵の薬を二日前にお持ちしたがいまだ受け取っていただけず、更に四日以上待たされるとの事。これ以上は待てぬ故、無礼とは存じながらもこうして伺わせていただいた」
おいおい、宿泊客とその来客しか入れないはずの二階に堂々と入ってきたよこの騎士さん。
「キッシュ卿のお気持ちは解りますが、今この街には数えきれぬほどの薬が集まって来ており、『鑑定』をする冒険者の体力や、主が実際に服用される量にも限界がある以上、一日に受け取れる量も限られる。であれば受け付けた順番を守っていただかなくては困る」
まあそうだよな、ミムズに直接持ち込めば横入りできるなら今度は彼女の前に列が出来ちゃうよ。
「納得が行きもうさぬ、聞けば冒険者や騎士の中には順番を通り越して優先される者もいるとの事、私にもその措置を取ってはいただけぬか。紹介状ならば主君の直筆とは別に、いくつか持って来ておる」
なんだろ、いい歳してずいぶんな事を言ってくるなこの人、顔を赤くしてどれだけ必死なんだか、騎士のメンツが有るのかな。
「優先に関しては、順番の受付にて説明しておるはずでは。主が服用して多少なりとも効果のあったもの、もしくはいまだ試していない物を優先し、効果の薄かった物に有っては通常通りの順番を守っていただいている。これはこの街にいるすべての冒険者や騎士、貴族の方々にも守っていただいている事。失礼ながらキッシュ卿がお持ちになられたのは『人魚の滴』のはず、その薬はすでに三度試して効果が見られなかった」
おお、きちんと反論してるよ、やっぱり委員長キャラか。
「では、そこの小僧は違うという事であろうか」
だんだんオッサンの口調がきつくなってきたような。てかこっちに飛び火した。
「リョー殿は『迷宮踏破者』、その方が持ってきた聞き覚えの無い薬ならば期待するのは当然であろう」
「ふん、『迷宮踏破』など本人が言っているだけかも知れぬ。明確な証明のできる者でもあるまいし。いくらでも騙ることは出来よう」
うわー難癖付けられてる。
「う、うむ、確かにそれは、そうだが」
あれ、いきなり気弱になっちゃったよ、いやそんな疑わしそうにこっち見なくてもさ。何こんなオッサンの言いがかりでそんな簡単にこっちを疑うの。
「ならば、わたしが直々に試してくれよう、わたしが負けたならばこれ以上文句は言わぬ。だが、わたしが勝ったのなら、その小僧よりも先にわたしの薬を受け取って貰いたい」
え、なんでそうなっちゃうの、てかミムズさん、そんな納得したように頷かないで。
「ふむ、それも仕方ないか」
いや仕方なくないって、しかも、俺のメリット何もないじゃん。
「リョー殿すまぬが、試させてもらいたい。そうした方が自分も納得できるし」
いや俺が納得できないんだけどさ、でも言っても無駄なんだろうなー
すみません諸事情で、しばらく半端チートより奴隷侍女の方の更新が多くなってますが、もうしばらく続きそうです。
H27年5月11日 誤字および一部語尾等修正しました。




