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55 詐欺師

この話で、しばらくサミューさん達はお休みです。

「それじゃあ一旦ここでお別れだ」


「わかりました、ですがどうか無茶をなさいませんように」


「もし何かあれば手紙を出すから、心配せずに待っていてくれ」


「リ、リョー様お気を付けて」


「まったく、リョーのせいでわたくしの魔法練習が滞ってしまいますわ。早く帰ってらっしゃい」


 分かれ道でサミュー達に見送られながら、夜道を馬で駆け抜ける。


 本来なら、危険すぎる行為だけど、アラと二人で使えるだけの『照明』魔法をかけて明るさは十分だし、乗馬の訓練はラクナに嫌と言うほどさせられたからなんとかなるだろう。


 とりあえずヤッカに気づかれる前に出来るだけ距離を稼がないと、理想を言えば国境を抜けたい。


 俺達が出発したと知ったヤッカが追いかけて来た場合、『獣態』なら追い付かれる危険性がある、何せ相手は聖馬ユニコーンだからさ。


 だけど国境さえ越えちゃえば、冒険者から狙われてるユニコーンが護衛も無しで出て来るのは無理だろうね。


 もしも、そんな事になっちゃえば、他のユニコーン達や、恩人であるカミヤさんにも迷惑がかかるから、いくらヤッカでもその位の事は解る、よな、たぶん、きっと、おそらくは……


 大丈夫だと信じてるぞ、うんこれはフラグじゃないフラグじゃない。よし。


 サミュー達はあえて回り道をしてから行くから、単純なヤッカはそっちには気付かないで最短距離を取る俺達を追ってくるはずだ。


 だから全速力で国境まで逃げ切れば、僕っ子馬娘に迫られる恐れはなくなる。そうなればいつも通りに、サミューだけを警戒すれば良いんだからって、それも問題な気がするけど。


「すごーい、速いねーリャー」


 俺の前に座ったアラが笑いながら振り返ってくるけど、危ないから、バランス崩して落ちたりしたら怪我しちゃうから。


「アラ、走ってる時は前を見てなさい」


「うんわかった」


 うん、やっぱりこの子は素直で良い子だなぁ。


「リャー」


「どうしたんだ、アラ」


「リャーはアラの事怒ってるの」


 なんの事だろう、イタズラするわけでもないし、良い子だから、たまに注意する事はあっても、怒るような事はないよね。


「アラ、わがままいっちゃったから、リャーは一人で行きたかったのに、アラが付いて来ちゃったから、リャー怒ってアラの事キライになっちゃう」


 そんな、不安そうな顔で振り向いちゃ、せっかくのカワイイ顔が台無しだよ。それでも可愛いけど、ニッコリ笑顔のアラは世界一可愛いから、アラには笑顔でいてほしいもんな。


「そんな事はない、アラは俺の事が心配だから、あんなに一生懸命になって俺に付いて来ようとしてくれたんだろう」


「それは、そうだけど」


 まだ不安そうにこちらを見上げてくるアラに少し寄り掛る様にして密着し、子供特有の温かさを感じる。


「俺は、アラが俺の事を好きだからそうしてくれたと思ってるんだけど。それとも俺の勘違いでアラは俺の事が嫌いなのか」


 少し言いかけただけで、泣きそうな顔をして千切れそうな勢いで首を左右に振る、そんな様子も可愛いけど、さすがに泣かせてしまうのは意地悪だったかなー


「ごめんなアラ、言い方が悪かった。アラが俺の事を好きなのは解ってるし、俺はアラの事が大好きだからな」


「ほんと、りゃー」


 お、昔みたいな幼い感じの発音でりゃーって言ってくれた、やっぱりいいなーこれ。


「もちろんだろ、俺がアラの事を嫌った事が有るか」


「ない、ないけど、リャーはいっつもアラを置いて行くんだもん。アラはリャーが帰ってくるまでずっと心配してるんだよ。置いてくのはめーなんだからね」


 うーん、ほっぺたを膨らませて怒ってるアラも可愛いなー


 でも、やっぱり笑ってほしいもんな。


「分かった分かった、出来るだけアラを置いて行ったりしないようにするよ。でもな、どうしても俺一人じゃないといけないときもあるから、そういう仕方ない時だけは許してくれよ、絶対にすぐアラの所に帰ってくるから」


「ほんとだよ、リャー」


「もちろんだ」


「約束だよ、絶対だよ、ウソ吐いちゃめーなんだからね」


 やっと良い顔で笑ってくれた。俺はこの笑顔を楽しみに生きていると言ってもいいよね。


(それはよいがの、薬が上手く効き、褒美を取らせるために謁見などとなった時はどうするつもりなのじゃ)


 なんだよこの首飾りは、せっかく俺とアラが二人っきりの親子の時間を楽しんでるってのに。


(何か問題でもあるのか)


(忘れておるのか、リューンはエルフ族主体の国じゃぞ)


 そう言えば、お姫様達もハーフエルフって言ってたもんな。十一歳か、エルフでその年じゃ言葉が通じるのか、小さい頃のアラよりも大変なんじゃ。


(エルフ族は魔族、ことにダークエルフを敵視しておる者が多い、アラを連れて行けばそれだけで問題になりかねんぞ)


 え、そうなの、不味いなそれは、アラがいじめられるなんて耐えられないし。かといって一人で置いて行くのも心配だよね。こんなかわいい子が一人で居たら誘拐されかねないし。


(どうにか方法は無いのか)


 今からサミュー達と合流して預けるってのは時間がかかり過ぎるし、それにアラは納得しないだろうなー


(方法としては、ローブなどで全身を覆う事が一つじゃが、王族に会うならば素顔を晒さなければ無礼となろう。化粧などで肌色を隠すのも手じゃが、魔法で見た目を変えるのが確実じゃろうな)


 ユニコーン達が使うような幻術か、だけどアラにその手のスキルはなかったよな。


(一番よいのは『幻術』魔法じゃが、光魔法や闇魔法でも似たようなスキルが有る、お主ならアラに伝えられるじゃろう)


 言われて、頭の中の魔法一覧を確認したらあったよ『幻影』とか『闇幻』なんかなら、アラも使えそうだな、今のうちに教えておかないとな。





 国境を越えてからも毎日馬を急がせて、やっとレイドの街に着いた。


 夜は途中の宿場に泊まって、アラに魔法を教え続けたら、予定してた二つの他にもいくつか『視野暗幕』、『偽痛覚』、『幻聴』なんかまで覚えてしまった。


 やっぱりうちの子は天才だ、将来は『大魔導師』かいやいや剣も使えるから……


 と、いけないいけない、街に入る前に確認しないとな。


「アラ、これからはお外にいる間は魔法で変身しているんだぞ、やめていいのは宿屋の部屋なんかで俺と二人っきりの時だけだからな」


「わかった、『幻影』」


 アラの全身が黒い靄に数秒包み込まれ、それが晴れると変身が終わっていた。


 髪や瞳の色は変わらないけど、特徴的な褐色の肌が白くなり、エルフ族と同じ細長い耳も消えて、一見するとふわふわの金髪に隠れているように見える。


 うんこれなら誰もアラをダークエルフとは思わないよな。


「リャー、アラ変じゃないかなー」


 色の違う肌に慣れないのか、アラが自分の両手を見ながらそう聞いてくる、小さくても女の子なんだなー


「大丈夫だ、どんな格好でもアラはとってもかわいいから」


 愛らしい顔立ちも、耳に残る声も変わらないんだから、この程度でアラの可愛らしさが損なわれるはずがない。


「リャーは、こっちのアラの方が好きなの。サミュもハリュもミーシャも白いもん」


 この子はなんて悲しい事を言ってるんだ。


「何を言っている、アラはアラのままが一番可愛いに決まっているだろう、この状態でも可愛いが、普段のアラは世界一可愛いんだからな」


「ほんと、アラ可愛いの」


 うん、特にそうやって笑ってる時が一番かわいいぞ。


「俺がアラに嘘をついた事が有るか」


「ない、リャー大好き、ぎゅー」


 俺に抱き着いてくるアラの頭を思いっきり撫でてあげてから抱きあげる。


 よし、それじゃあ町に入るか。


 馬に乗ったままじゃ街には入れないから降りたままで、関所の列に並ぶ。


 しかしこうしてみると、やっぱり冒険者が結構いるな。


「旦那、薬はいかがですか、ユニコーンの角の欠片が金貨六枚ですぜ中で売れば倍値になりますぜ」


 いかにも怪しげな男が、怪しげな白い欠片を差し出してくるが『鑑定』してみたら『犬の骨』と出た。まあよく有るパターンだな。


「ユニコーンが犬の仲間とは初めて知ったな」


 片手で男の手を取って逃げられないようにしてから、周りに聞こえないような声で話してみる。おおー動揺してる動揺してる。


「か、『鑑定』スキルをお持ちでしたか、こりゃ失礼を、あっしはこれで、失礼しやす」


 青くなった顔で逃げようとする男の前に回り込みながら、他から気付かれないように短剣の先を当ててみる。


 力尽くで逃げようとしたら、俺のステータスじゃ取り押さえるのは無理だし、こんな所で刃傷沙汰が出来るわけないけど、男にとっては恐怖だろうなー


 だまそうとした相手から逃げようとしたら、回り込まれて剣を当てられてるんだから。


「だ、旦那、冗談はよして下せえ、ほんの軽い冗談じゃねえですか」


「それにしてはずいぶんと現実的な値段だったな。なに、大人しくしていれば手荒な事はしない、今日この町に着いたばかりでな、最近の話を聞かせてもらいたいだけだ。知りたい事を教えてくれれば後は好きにしろ、ただし嘘だった時は、わかるな」


 少し声を低くして脅すだけで、こんなに汗をかくって、詐欺師には向いてないんじゃないか。


「へ、へい、こんな状況で嘘をつくような度胸は、あっしなんぞにはありませんて、旦那はもう順番待ちの整理券を取られたんで」


「ああ、まだかかりそうだが」


「さようで、でしたら、時間つぶしもかねて、そこらの茶屋で酒の一杯でもやりながら話しやしょう」


「いいだろう、俺は酒を飲まないが、情報の内容次第では酒代くらいは出そう。それとうちの子はこう見えて優秀な魔法職だ。下手な気を起こしても、何かする前に黒こげになるからな」


「ご、御冗談を、こんなかわいらしいお嬢ちゃんが、そんな訳ある訳ねえじゃないですか」


 うちのアラを可愛いって言うのは当然だけど、じろじろ見ないでほしいなー教育に悪そうだし。


「そう思うなら、試してみるか」


「止めときやしょう、旦那に追いかけられて逃げ切れる気がしやせん」


 そのあと温いお茶を飲みながら、目の前の詐欺師テトビの話を聞いたが、知りたい事は大体聞けた。


 列に並んでいた冒険者はやはり薬を売りに来ているのが殆どで、家伝の薬や『迷宮』で取ってきた薬草などが殆どで、それほど自信の無い連中は結構テトビにだまされるらしい。


 大量の冒険者が流入していても、街中の治安は悪くなく、元からの警邏隊と王族付きの騎士が見回っているらしい。


 肝心のリューンの王族は、街で一番大きな宿屋を丸々貸し切っているらしくて。薬の持ち込みは午前中に受け付けて、昼から王族付きの冒険者が『薬品鑑定』で確認し、その結果に応じて夕方に代金が支払われるらしい。


「という事は明日の朝、持ち込めばいいという事か」


「へえ、本当ならそうなんですが、実は持ち込む冒険者が多いせいで、受け付け自体も制限がかかって、順番待ちになってるんでさあ。よほど名の売れた冒険者や身元のしっかりした騎士様なんかなら、次の日には受け付けてくれやすが、そうでなきゃ何日も並ぶことになりやす。『鑑定』スキルを一日中やってるせいでお抱え冒険者がばててるらしいですぜ」


 それなら大丈夫かカミヤさんの紹介状もあるし、最悪『聖職のメダル』を出せば何とかなるだろ。


「ユニコーンの角、もしくはユニコーン自身を持ち込んだ冒険者はいるか」


「角は何回か持ち込まれてやすね、どれも古い物だったらしいですが、良い値が付いたって事で、あっしもそのお零れを」


 という事は、カミヤさんが気にしてた大量にユニコーンを捉えた集団はまだ来ていないと。


「そう言えば、昨日着いたお貴族様の集団が大量に持ち込んだって吹聴してやしたが、本当かどうかは。偽物を扱ってるのはあっしの他にもいくらでもいやすんで」


 あちゃーやっぱりマイラス達も来てたか、サミュー達を置いてきたのは正解だけど、絡まれたりしないと良いな。


「そうか、取って置け」


 十数枚の銀貨を出してやると、すぐに受け取った。ちょっと多い気もするけど、欲しい情報は貰えたから良いか。


「こりゃどうも、それじゃああっしはこれで」


「ああ、そうだもう一つ、野菜料理の旨い宿屋はあるか」



なんだろう、リョー君がどんどん親バカに……


総合評価が700を超えました。

更に評価してくださった人数が30人もありがとうございます。


H27年2月16日 誤字、句読点、一部台詞の語尾修正しました。

H27年4月23日 誤字修正しました。

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