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52 休暇

久々の本編なので、サミューさんに飛ばしてもらいました。

後半はやや説明帳かも……

「ここで裏返して胡椒を振りかけてください」


「あ、ああわかった」


 カミヤさんの館の厨房の中で、楽しそうなサミューの声を近くに聞きながら、俺は緊張しながら焼いていた肉をひっくり返す。


「そう、そうですよ、とーっても上手です」


 なんでこんな色気を込めて耳元で……


 いやそれよりもさ。


「サミュー、近くないか」


「いえいえ、この位は当然ですよ、手取り足取りお教えして、御主人様に早くコツを掴んで頂かないと」


 それは解るんだけどね、でも後ろから抱きついて両手を取ってってのはさ、どーかとおもうんだけどな。


「だめです、まだ早いです早すぎです、もうかけてしまうだなんて。量も多すぎです」


 調味料を取った俺の手をサミューが止めるが、ひんやりしてて気持ちいい、じゃないっ。


「優しくしっかりと揉み上げてください。あん、強すぎですそれでは壊れてしまいます、もっと優しくしないと、だ、め、ですよ」


 下味をつける為に塩もみしてるだけなんだが。


「もっと、強く、です、そう、力強く、それでいて、小刻み、に、休みなく前後に振り続けてください」


 なあ、鍋振りの事を言ってるんだよね。


「奥までしっかりと届くように、じっくりとゆっくりですよ、お焦せりになって一気に強くしてしまってはだめですよ」


 火加減の事なのに、なんで……


「もっとかき混ぜてください、もっとおぅ、もっとです、混ざり合って何もかもわからなくなるくらいに」


 マヨネーズを作ってるだけなのに、なんでそんな耳の傍で色っぽく。いやそれよりも当たってるって。


「サミュー当たってるんだが」


「何がでしょうか」


「いやだから、な」


「どこに当たってるんですか」


 このブラックメイド解ってて聞いてるよね、確信犯ですよね。


『料理解析』を取るために、サミューに料理を教えてくれるように頼んだのは確かに俺だ。


 最近は野菜を見るたびに『野菜鑑定』をするようにして熟練度を上げている。そのおかげか派生スキルの『果物鑑定』と『山菜鑑定』も使えるようになったがラクナの話ではまだまだ足りないとのことでサミューに頼んだんだが。


 ブラックメイドめ企みやがったな、今日の俺の服はサミューが用意した薄手の室内着だし、サミューの服も薄いブラウスだ、そして何より。


 このエロメイド、付けてないだと、なぜおれは気付かなかったんだろう、サミューがノーブラだと。


 たった二枚の薄い布地しか隔てていない俺の背中とサミューの胸が密着って……


 膨らみが~


 温もりが~


 弾力が~


 やわらけーよ~


 いや、それよりも何よりも。


 ポッチが~


 当たってる~


 動くたびにコリコリって~


 二つの小さな感触が~


 しかも離れたら離れたで、白い布地越しにうっすらとピンク色が……


 だめだって、理性が理性が~


(ええい、騒がしい、もう少し落ち着かぬか、お主が強く思った事は儂にはダダ漏れなのじゃぞ)


(いや、だがな、この状況下ではしかたないだろうが)


(初心なネンネではあるまいし、この程度で動揺してどうするのじゃ。歴代の勇者の中には数百人の娘をはべらせたり。処女ばかりを好んで抱いていた強者もおったのじゃぞ)


 いやいやいやいや、そんな絶倫さんと一緒にされてもさ。


 そりゃあ俺だってさ、健康な成人男性だし、この体は体力が有余ってやりたい盛りの18歳だしさ、サミューは無茶苦茶エロいねーちゃんだし。


 俺だって、俺だってネット小説の肉食系ハーレム主人公みたいにさ『美味しく頂きました』とか『素晴らしい夜を過ごした』みたいなモノローグのつく体験をしたいよ。


 せっかくの異世界トリップのハーレム状況なんだからさ、『据え膳くわねば……』って行きたいけど、この場合喰った瞬間にアレルギーで破滅ってわかってるような状況でできるかよ。


 できる事なら、このままたぎる欲望に合わせてサミューにあーんな事やこーんなことしてーんだよー





 大変疲れる料理教室のポッチ天国もとい、生殺し地獄のあとで食堂に移動してきたけど、俺達の作った料理は肉が入ってて俺は食べられないので、ミーシアとアラが美味しく頂きました。


 俺達の前に並んでいるのは、カミヤさんのお抱え料理人が作ってくれた麺料理、底の深い器にタップリのスープ、少しちぢれた麺にタップリの炒め野菜。


 これはラーメンだ、まさかこっちの世界でほんとに食えるとは。


「おいしーねー」

「す、すごくおいしいです、この肉も」

「なんですのこの麺は、食べにくいですわ」

「確かに食べにくいですね。アラちゃんお口についてますよ」


 うん、みんな美味しそうにフォークで食べてる、おいしいんだろうなー


 でも俺のは……


 美味しいんだけどさ、やっぱりちょっと物足りないんだよなー


 制約のある俺の分は、みんなとは別に作ってくれたんだけど、チャーシューや煮卵はもちろん鶏ガラも、豚骨も、魚介も使ってないラーメンというのはちょっともの足りない。


 美味しいんだけど残念な感じになっちゃった。


 こんな事なら、何が食べたいか聞かれた時にラーメンだなんて言わなきゃよかったなー


 昨日食べた野菜天ぷらの方がよっぽどよかった。


「リョー殿、昼食後に伯爵がお会いになりたいとのことですが」


 クラナさんがそう言ってくるけど、こっちが断れるわけないじゃん。


 今の状況で話って事はユニコーンがらみだろうし、これも俺の方から持ち込んだ話なんだからさ。


 でも何の話だろ。





「急に呼んですまなかったな」


 精進ラーメンを食い終えて伯爵の執務室を訪ねると、カミヤさんと一緒にユニコーンの長老の姿もあった。


「いえ、それは御気になさらず、それでどうしたんですか」


 ヤッカがやっている『濃縮』はもう何日か掛るらしいし、ユニコーンの村の立ち上げや他のユニコーン達の保護等に関しては、俺は関与してない。


 俺が関係ある事と言えば薬が出来次第、それをレイドの街にいるリューン王国のバカ様へ届けることくらいだろうし。


「この機会に取り分を決めておこうと思ってな、長老とは以前から話し合っていたが、リョーはまだだったろう」


 取り分、そういえば話の起こりはバカ王子に薬を売って金を稼ぐって事だったんだもんな。


 さすがに俺が報酬の全取りって訳には行かないよな、ユニコーン達やカミヤさんにも分配しないとな。


「今いるユニコーン達の数と、領内で取れる薬草の量から予想される生産量、それに魔法薬の相場価格を考えると月に金貨二千枚の収益となる試算がでたんだが」


 あれ、今回のリューン王国相手の取引についてじゃなくて、これからの事業としての話なのか。なんで俺まで呼ばれたんだろう、無関係だよね。それにしても金貨二千枚って日本円にすれば二億って、すげー。


「それでだ、使い道を協議した結果、まず30%になる金貨600枚を使って、定期的に若い戦闘奴隷を買い、俺が近場の『迷宮』で育ててから部隊として組織しユニコーン護衛隊を結成する」


 なるほどね、角の迷信が完全に払拭されない限りは、ユニコーン達はこれからも狙われるだろうし。『強化濃縮調合』の事を知られれば薬を作らせるために攫われる恐れもあるだろうしな。


 伯爵領の軍隊は今の任務が有るだろうし、冒険者じゃ護衛の為にずっと拘束って訳にも行かないだろうから、雇う相手を間違えば何が有るか解らないもんな。


 奴隷なら、何年でも同じ任務に就けれるし、ユニコーンを攫って逃げる心配もない、カミヤさんが直々に育てるなら『成長補正』のおかげで精鋭になるだろうし。


「護衛隊は新しいユニコーンの村で住み込み警護と、町などで働くユニコーンの護衛に当てる。男女比は一対一が目標だ」


 ふーん、確か軍隊なんかが買う戦闘奴隷は男ばかりって聞いてたけど、これは違うのか。まあ女の子の護衛にむさ苦しい男ってのは嫌だろうから、カミヤさんなりに気を使ってるのかな。


「一定年数働いた護衛隊員は領軍に編入するか、俺のお抱え冒険者にする。例外はユニコーンと結婚した場合だ、その時は除隊させて領軍の予備役にする。どの場合も秘密が有る以上は完全に解放する事は出来ないが、除隊後は結婚や財産所有など一定の自由を与える予定だ」


 あれ、これってひょっとして、ユニコーン達とのお見合い兼ねてるのか、それで男女比が1対1なのね、うまくやったなー


 長老が期待してた、若くて健康でステータスが高くて秘密が守れるって条件が全部そろっちゃうし。


 カミヤさんにしても、今までの予算を全く使わないで領軍の強化が出来ちゃうし。


 奴隷達にとっても強くなれるし、ある程度の自由が手に入るなら悪い話じゃないだろうな。


 これが噂のウィンウィンって奴か。


「次に10%の二百枚を、伯爵領内で商売などを始めるユニコーンへ融資する基金に充てる。今まで幻術で人に化けて働いていたユニコーン達の技術や経験を無駄にするのは惜しいからな」


 これもウィンウィンか、ユニコーンは生活の向上につながるし、伯爵領の産業振興にもなる、しかも資金は毎月増えていくってんだから……


 カミヤさんって商売上手だったんだな。


「残った分はユニコーン族と伯爵領で30%の六百枚ずつ折半することになった」


「我々ユニコーン族の分は、当分の間は村の開発に充てるが、百枚程度は実際に濃縮を行った者たちに分配する予定だ」


 ああ、そうだよな、村の皆の為ってだけでいつまでも働けるわけないもんな、本人たちにもメリットがないと続かないよね。


「それでだ、この契約の見届け人に成ってもらいたい、報酬は伯爵領の取り分の内から5%づつ、金貨百枚を出そう」


 づつぅ、づつって言ったの今。てことは毎月金貨百枚って事なの、嘘だろ月収一千万円ってどこの金持ちだよ。


「いや、ただの見届けでそのような大金を受け取るわけには」


 法外だよね、あり得ないよね、こんな美味しい話には絶対裏が有るはずだよ。


「これは、今までの労をねぎらう為でもある。リョーがいなければ『寒暑の岩山』にいたユニコーン達は全滅していただろうし、伯爵領を頼ることは無かっただろう。これは、我が領に多大な貢献をしてくれた、お前に対しての正当な報酬だ」


「あのままでは、我らはあの里を捨てて、多大な犠牲を払って別な『迷宮』に移り住んでいただろうし、冒険者に狙われ続けていただろう。それにあのままではさらに出生率が下がっていた事だろうしな。リョー殿は一族の恩人だ」


 な、なんなのこの背中がかゆくなってくる展開は、すっごい居心地が悪いんだけど。


「本来なら俺の家臣に取り立てて、地方貴族にでも任じる所だが、そういう訳にも行かないのでな。リョーの取り分は毎月俺の方で預かっておくから、定期的に取りに来るようにな」


 そう言う事か、やっとカミヤさんの狙いが分かったよ。


 毎月金貨百枚は魅力的すぎる、これはこれからの俺にとっては既得権益になっていくだろう。


 これからの家計はこれを当てにするだろうから、何かの理由でこれが失われるような事態があったりしたら、全力で何とかしようとするだろう。


 結果としてカミヤさんや伯爵領、ユニコーン達に危険があれば、助けに来るしかないって事だよ。


 定期的に金をとりに来るなら、カミヤさんとしても依頼をしやすいだろうし。


 制度的に神殿以外に所属できない『勇者』をこういう形で手駒にしようとするなんて、やっぱりこの人油断できないわ。


「いや、そこまでして頂かなくても、わたしはいつ何が有るか解らない冒険者なので、失礼とは思いますが報酬として一定額を今すぐ頂ければそれで十分なのですが」


 この金は今までの仕事分だからこれで貸し借りなしだもんね。


「そうしたいのはやまやまだが、ユニコーン村の開拓や、他のユニコーン達の保護などで十分な予算がない。すまないがこれで我慢してくれ」


 く、こう言われちゃうと、無理に言えないよな。と言ってこのまま何も受け取らないで、下手に貸しを作っておくのも後が怖い気がするし。


 仕方ないか。


「分かりました。伯爵様のご厚意、ありがたく受けさせていただきます」


 さてと、せっかくお金が入って来るんだから使い道を考えないとなー


「我らユニコーン族としても、リョー殿に何か礼が出来ぬか考えているので、楽しみにしていてくれ」


 こっちは、あとくされの無い物だといいなー


気が付けばユニーク総合が2万を超え、PV総合も15万を超えました。


わーいわーい。


H27年4月14日 誤字修正しました。


H27年2月16日 誤字、句読点、一部台詞を修正しました。

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