2020年エイプリルフール特別篇 貴方を求めて
今回は別視点になります。
暗い部屋の中で目を覚ますと同時に周囲を見回して、有るはずの無い姿を探す。
「居ない、そうだよね」
誰も居ないのを、あの人が居るはずないのは、解っているのに、それでもどうしても目を覚ました時や、知っている誰かと会った時には、その姿を探しちゃう。
あの人が突然いなくなってから、ずっと、ずっと。
「入りますね、物音がしたので目が覚めたと思ったので、朝食の用意が出来ていますよ」
ノックと共にドアが開けられると、いつもと同じ笑顔を浮かべた彼女と共に、出来立ての料理の匂いが漂ってくる。
「うん、わかった、すぐに着替えて行くね」
「お待ちしてますね。それと、今日は皆さんの集まる日ですから、服は何時ものじゃなく余所行きのを用意しておきますね」
そっか、今日だったっけ、ずっとレベル上げやスキルの練習をしてたから。
「うん、ありがとサミュ」
「それじゃ、食堂で待ってますね、アラちゃん」
サミュが居なくなってから窓を開けて、風と光を部屋の中に入れる。
「もう、あれから三年か、アラはおっきくなったよリャー」
あれから、みんなで頑張って幾つも『迷宮』を攻略して、アラはサミュやハリュと同じくらいに大きくなって、もっと強くなれたから。
一本だけ立てた右手の小指をみて、小さく呟く。
「アラが嫌って言わない限りずっと一緒だって言ったのに、何があっても一緒だって、離れても帰って来るって言ったのに、リャーの嘘つき」
もう、待ってられないんだから、だから……
「それでは、皆様揃われましたので始めさせていただきます。まずは、我が主『虫下し』のリョーの名代で有ります、アラ・フォティの発しました回状に御応えいただき、これほど多くの方が集まられご協力いただけること、主に代わりまして御礼申し上げます」
広間に集まってくれた人達を前に、私の横に立ったハリュが挨拶をすると、集まってくれた人達が礼を返してくれる。
あんまり作法とかを知らない私だと、上手く話を纏められないかもしれないからって、ハリュとトーウがやってくれてるけどいいのかな。
「集まられた皆々の中には、初見の方もいらっしゃいますので、まずはそれぞれの方をご紹介させて頂きたいと思います。皆々様の中には、この場にいらっしゃる方の中に並々ならぬ因縁や柵を抱えておられる方、場合によっては仇と狙う相手がこの中に居るやもしれませぬが、どうかこの場は我が主である『虫下し』のリョーの名に免じて、気持ちを収めて頂ければとお願い申し上げます。また大人数の集団の方々に関しましては代表の方、数名のみの御紹介となる事をお許しください」
ここには、リャーと知り合ったいろんな人達がいるけど、国も立場も違うから、もしかしたらそいう事も有るかもって言ってたけど、だいじょぶかな。
「ではまず、我らが手勢から、『虫下し』のリョー様の養い子にして名代たるアラ・フォティ様と、リョー様よりアラ様が相続された奴隷である、我々ハル、サミュー、ミーシア、トーウの四名」
私の周りに居た皆が立ち上がって、礼をする。
「次にムルズ王国はラッテル子爵家より、昨年、御長子に家督を譲られ隠居された前ラッテル子爵、ゴーイ・ショウ・ラッテル様、その御旗下としてキッシュ卿を始めとされる御隠退された元騎士十四名とその郎党四十名の方々」
トーウのお父さんと、昔『地虫窟』でリャーとケンカした人達が一斉に立ち上がる。
「なおラッテル家の方々は、ムルズ王国に所属される御家の為、参加されている方は全て、家督を譲られ引退された方や、諸事情からラッテル家の庇護を離れ浪人となられた方のみとなりまするので、皆様方も、ここにおられるのはラッテル家、現当主の治められる現在の領府や御家とは無縁の方であることをご了承願います」
「『虫下し』殿は、我がラッテル、いや息子の家にとっての恩人、ましてそこに居るトーウを思えば、参陣は当然の事、我らはこの国の地理に明るい者も多く、お役に立てるかと」
ラッテルの人たちは、現役の人が関わっちゃうとラッテル家が反逆したって言われちゃうんだよね。
「次に、クレ侯爵家御家臣のカター・ナーシ様、エル・シルマ様、他、騎士三名、郎党四十二名の方々」
ハリュのお兄ちゃんと、『鬼族の町』で一緒にトンボさんと戦った人たちだ。
「かつて『鬼族の町』でアンデッド騒ぎとなった際、『虫下し』は多大なる功績を上げていながら、幾許かの金貨を与えたのみで、十分に報いる事が出来なかった、此度の働きで侯爵閣下に代わりかの冒険者への恩を返したく思い参戦つかまつった、またこれらの三名はその際に『虫下し』に命を救われた者であり、命の借りを命で返すべく志願いたしました」
「一度没落した我がシルマ家が、再興を成し遂げる事が出来たのは、『百足殺し』殿が『迷宮攻略』の戦利品の分配を公正にしてくださったおかげ、恩には恩で返すものでありましょう」
「続いて、ライワ伯爵家より『王毒蛇』のクリグ・ムラム様、『毒喰い鳥』のサラン・パヴォ様、ユニコーン族のヤッカ・ラーン様の御三方と郎党八十三名の方々」
あ、ヤッカだ、それに毒蛇のお姉ちゃん。
「リョー殿は我が伯爵閣下の御盟友、微力ながらご協力は惜しみませぬ」
「僕だって、じゃない、私も我が氏族だけでなく、多くのユニコーンにとって大恩ある伯爵閣下とリョー殿のために頑張ります」
「其方は、元リューン王国騎士のミムズ・ラースト様とその郎党三名、それとミムズ様のご友人であるパルス様、尚パルス様は諸事情からお身元を明かす事は出来ませぬゆえ、ミムズ様のご友人として義気により参加されたとご了承くださいませ」
ミムズの隣に居るのは、御姫様だったよねいいのかな。
「この場におられる方々の何割かの方はお見知りおきいただいておりますが、ミムズ・ラーストに御座います」
「パルスと申します、よろしくお願いいたします」
「続きまして侠客『金剛杖』様とその子分衆の方々百十四名」
えっと、リャーのお友達のおじちゃんだよね、盗賊さん達をやっつけた時の。
「侠客なんて呼ばれるのは恐れ入る、知っての通り博徒やら盗人やらの元締めをしている『金剛杖』ってモンだ、身分や立場のある御歴々の中にゃ、うちの傘下のモンに盗られて恨みの有る方や、裏稼業の物と同席するのに抵抗のある方もいらっしゃるかも知れねえが、どうか、この場は堪えて貰えるようお願い申す」
「傭兵『百狼割り』様と、その御舎弟八十名」
あ、あっちもリャーのお友達だ。
「まあ『虫下し』の奴とは色々と縁が有るしこれも付き合いなんでね。ここに居る旦那衆には是非とも、俺達の戦働きを見て貰って、何かあった時には声を掛けて貰えるようにお願いしやすぜ」
お仕事上手だね。
「続きまして、傭兵『四弦万矢』様とその御仲間三名」
あ、キテシュのおじちゃん達だ。
「『虫下し』殿と、ライワ伯にはこちらのピリム・カテン卿の一件で便宜を図って頂きましたのでな。それにアラ殿の事も心配ゆえ、此度の話を頂き矢も楯もたまらず駆けつけ申した」
「最後に、ライフェル神殿よりラッド大師、フレミラウ法師、コンナ法師の御三方と、その御弟子十二名」
お坊さんたちの中に、ミカミのおばちゃんもいる。
「以上の方々が、今回の一件にご賛同し協力して頂ける方々となります。これより、皆様ご承知かとは存じますが、我らの悲願と今回の方針についてご説明させて頂きます」
ハリュの言葉に合わせて、トーウ達が机の上に地図を開く。
「我らの主『虫下し』のリョーが不当に捕えられてより早三年、偽りの大義名分を得たムルズ王国の宣戦布告にて始まった戦争は、神殿に反目する諸国の介入も有り泥沼の状態となり、未だ決着が見えません。此度の作戦の主目的は、我らの主を助け出す事でありまするが、これは同時にムルズでの戦乱に終止符を打つための布石でもございます。ゆえに今回の皆様方に依頼するための回状の名義は、アラ様を筆頭に、ライフェル神殿のステミ猊下とライワ伯爵閣下に連名を頂きました」
本当は、アラ達だけでやりたかったけど、間違いなくリャーを助けるにはこっちの方がいいっていうから。
「お集まり頂いた方の中には、義気により参加しているので報酬など不要と言われる御方もいらっしゃるかも知れませんが、我らにも『虫下し』の後継、従者としての意地がございます。本来我らのみですべき主の救出に、ライフェル、ライワという2つもの勢力の御名をお借りし支援を頂いたばかりか、これほど多くの方の御助力を、ただ御厚意だけで頂くわけにはまいりません。義侠心を金で贖うが如き行いは下劣で侮辱も同然と気分を害される方もいるかとは思いまするが、どうか我らが主との縁に免じ、アラ様と我らの顔を立てると思って、些少な報酬ではありますが御笑納いただければと。これらの品は我らがこの3年の間に攻略した幾つかの『迷宮』で得た『魔道具』やボス素材等をこの日の為に蓄えていた物でございます、これらの品が此度の作戦において皆様方の一助となればそれに勝る喜びは有りません」
サミュが、報酬の目録を配り出す。
「これほどの品々を用意するとは、ここまでしながら、『雷滅剣弓』の2つ名を持たれるアラ殿ほどの御方が、両勢力の支援を受けられるとはいったい何ゆえ、いやそもそもライフェル・ライワほどの勢力が、こう言っては申し訳ないがリョー殿という一私人の救出という私的な件に協力されるのはいかような事情が」
「ミムズ様、どのお家どの方にも事情は有る物でございます、余り深入りするような問いは」
ディフィーがミムズを叱ってるけど、いいのに。
「お気になさらずディフィー様、この件に関しましては神殿からもライワ家からも、皆様にお伝えする許可を頂いておりますので。我が主『虫下し』のリョーこと、リョー・サカキは諸事情から全力を出す事が出来なくなっておりますが『今代の勇者』に御座います」
「なんと」
「やはりそうでしたか、あのリョー様が」
「そうであったか、ならばこれまでの様々な事の説明が付く」
「まことなのか」
「この場には、ライフェルの武闘大師たるラッド殿が居るのだぞ、そのような嘘が許されるはずはない」
「では、本当に、ならばアラ殿は『勇者の従者』、いや、今論ずることではないか」
「これに付いては、拙僧よりご説明させて頂こう」
ざわめいていた会場がラッドのおじさんの声で静かになる。
「皆様ご存知の通り、我がライフェル教は『勇者』に対して最大限の協力を教義の一つとしております。『勇者』リョー殿が捕えられた際、僧兵による救出作戦が数度行われましたが、『薬師』の妨害によりすべてが失敗に終わりました。それにより、ムルズ側もリョー殿の正体こそ解らずとも、その重要性に気付いたようで、かの御方の行方は隠されてしまい、更にムルズは神殿との戦闘で不利になるたびにリョー殿の処刑を匂わせ、譲歩を迫り、結果として我ら神殿側は戦争を終わらせる決定打となる一撃を放てずにおりました。ですが先日、とある筋よりリョー殿が現在捉われている場所の確実な情報が入ってまいりました」
あのへんな話し方の兎さんが教えてくれたんだ、リャーがどこにいるのか。
「現在、『薬師』はライワ伯ご自身が囮となった誘いにおびき出され、複数の元勇者により包囲しており身動きが取れなくなっております。もともとあの元勇者は我がライフェル教より処断の回状が回っていた相手ですので」
「ラッド大師、ご説明ありがとうございます。今有りました通り薬師は今動けない為、我らの敵はムルズ王国軍と貴族諸勢力により構成された手勢のみ、ですが神殿軍やライワ家は現在の戦況の為に動かせる戦力は限られ、皆様方のご協力を仰ぐ事となりました。主が捉われているのは、ここシェル子爵領のラッツ砦です」
ラッドのおじさんから説明を引き継いだハリュが、地図の一か所を指さすけどあの場所はハリュは。
「御存知かもしれませんが、シェル家は主の捕縛に功績が有ったとして男爵家から昇爵した家でございます。今はこの家がリョー様を収監する任の監督役に当たっているとの事です。大人数で不自然に警備し神殿側にリョー様の居場所を察せられることを恐れてか、砦自体の兵員は極端に多くありませんが、それでも砦一つの配備戦力にしては厚く、更に周辺には複数の部隊が待機し何かあれが数刻で集結できるようになっております。多くの手勢を率いて来られた皆様には、我らを始めとした少数の者が砦を襲撃している間、これらの部隊を牽制し足止めをお願いたします」
ホントは、みんなで行ければいいんだけど、リャーが見つかる前に囲まれちゃったら大変だもんね。
「現地までの移動は敵に見つからぬよう分散し、裏街道や密輸路を利用しますが、各地の顔役へのあいさつや根回しなどは全て終えていますのでご安心を。また帰路に付きましては、主の救出が確認され次第、ライフェル神殿及びライワ伯爵家の軍が一斉攻勢をかけてムルズ側の注意を其方へ向けさせ、それに合わせて神殿側の諸勢力から成る船団がシェル子爵領に面する川を遡上し上陸部隊でミュデュシュン伯爵領を強襲するのと入れ替わりで皆様方を回収、そのまま水路にて国境外ヘ脱出する手筈となっております。細かい内容は、資料を用意しておりますので、皆様お目を通してくださいますようお願いします。なお、強襲部隊への参加を希望される場合は、神殿が別に傭兵契約を結ばれるのでラッド大師にお申し出下さいますようお願いします。それではアラ様」
ハリュがそこまで言ったら、サミュとミーシャ、トーウがお酒の入ったコップを配り出す。
「えっと、神殿よりお酒を頂きました、この器は私たちで用意しましたがミスリル製だから壊れる事はないでしょうし、記念の品としても良いと思いました。晴れてリャー、じゃないリョーを救出した後は、皆様方内揃って祝杯をあげられるよう願い、どうぞ御一献」
一生懸命憶えた言葉を言って私が一口飲んでから、みんなが一斉に飲み始める。絶対に、絶対に助けるんだから、待ってて、リャー。
「いよいよだよ、リャー」
暗い中で光って見える砦を見て、小さく呟く、あそこにリャーが居るんだ、頑張んなきゃ。
一緒に来てくれた人達は、敵の援軍を迎え撃つのに持ち場に行っちゃったから、今いるのはアラ達とミムズ達、あとはフレミアウとミカミのおばちゃんだけ。
「アラ、時間になりましたわ、行きますわよ。ミーシア解っていますわね」
「は、はい、思いっきり行きます」
「お願いね、ミーシャ」
鎧を着たおっきな熊さんになって背中に破城鎚を縛ったミーシャの引っ張る戦車に、みんなで乗ったらすぐミーシャが走り出したの。
「え、ええい、がおおおおおぉぉぉぉぉぉ」
おっきな声で吠えたミーシャが、走って行くと威圧で動けなくなった兵士達の間を抜けてくの。
「も、もうすぐ、ぶ、ぶつかります」
「頑張ってミーシアちゃん、皆さま、しっかりと掴まっていてください、それと瓦礫にもご注意ください。トーウさんは飛び移る用意を」
「承知しております、城壁の上にいる弓兵の対処はお任せくださいませ、ですから何としても旦那様を」
サミュの声にみんなが戦車に掴まってると、どんどん砦の門が近くなってく。
「いっけえええ」
思いっきりぶつかったミーシャの背中に付いた破城鎚が城門をバラバラにして、残ってた破片もミーシャの鎧や戦車がどんどん壊していくの。
「や、やりました、わ、わたしは、こ、ここで頑張ります」
サミュ達が戦車の留め金を外したら、動き回れるようになったミーシャが前庭に居た兵隊さん達に襲い掛かって行く、ミーシャが頑張ってくれてる間にリャーを助けに行かなきゃ。
トーウもぶつかる前に思いっきり高く跳んで、壁の上でミーシャを狙おうとしてる兵隊達をやっつけてるし。
「行きますわよ、アラ、サミュー、『熱岩弾』」
ハリュの魔法が建物の入り口を壊して、みんなで中に入ったらここの広間にも兵隊がいっぱい。
「あら、あそこにいらっしゃるのは、まさかこんな所で会えるだなんて思っても居ませんでしたわ」
「き、貴様ら、ここが国王陛下よりこのブラインドが守護を命ぜられたラッツ砦と知っての狼藉か、ど、どう言うつもりだ」
騎士の人達の間に居る偉そうな人が赤い顔で騒いてるのを、真っ直ぐに睨んでたハリュが笑ったままで前に出たけどどうしたのかな。
「アラ、ここはわたくしに任せて貰えないかしら。リョーを助け出すには退路を確保する事が重要でしょう。外はミーシアが居ますけれど、ここもしっかりと抑えておきませんと。それに乙女の都合でどうしても灰にしておきたい相手がいましたの」
「それでしたら、あたくしと師父も魔導師さんのお手伝いをしますね。あれだけの数を相手に前衛無しでは大変でしょうから、それに……」
ミカミのおばちゃんが、何か御馳走を見るような目で兵隊さん達を見てるけどどうしたんだろ。
「爵位持ちの貴族様の腸の色なんて、そうそう見れる物じゃないですから。魔導師さんもその方が面白いんじゃなくて」
「そうですわね、貴女の趣味に賛同するつもりはありませんけれど、今回ばかりは応援できそうですわ」
「全く、ミカミの悪癖が治るどころか、賛同者を得てしまうとは、全ては導けぬこの師の不徳、とは言え見捨てるわけにもいかぬか。行くぞミカミ」
フレミアウのおばちゃん達が付いてるならハリュも安心だね。
「さ、アラちゃん先を急ぎましょう、情報ではこの先の地下に御主人様が居るはずです」
「アラ殿、母様、自分達がお供いたします。パルス様もこちらへ」
「ええ今行きますミムズ」
サミュとミムズ達と一緒に奥に行ったらまたたくさん人が待ち構えてて。
「ふん、いつか来ると言われてはいたが、まさか本当にあんな冒険者風情を助けに来るとはな。まあいい、貴様らはここで終わりだ、なにしろ我ら王宮騎士団の分遣隊がここに控えていたのだからな」
ここの人達はそこまで多くないけどみんな強そうな武器を持ってて、レベルも高そう。
「なに、心配する事はない、お前達が多少なりとも腕が立ち、それなりの時間持つのならば、そのうち届く奴の首を拝めるだろうさ」
この人、今なんて言ったの、リャーの首を、持って来るって……
「変事が有れば捕えている虜囚を処刑しても良いと言われているからな。今頃は奥の連中が物音を聞きつけて処刑の準備を始めてるだろうさ。まあ、あの虜囚は再生能力が高くて、今までも多少の拷問じゃすぐに治るんで、今回も早々に死にはしないだろうから、お前らがそれなりに持たないと間に合わないか、ぐばっ……」
リャーを殺すって言ってた騎士の頭をサミュの鞭が砕くと、ミムズ達も一斉に切りかかってく。
「アラちゃん、ここは私達が斬り開きますから、先に言って御主人様を助けて下さい、急がないと、ミムズ様、ご協力お願いしたします」
「心得ました母様、貴様ら騎士にあるまじき卑劣な言動、生きて帰れると思うな、プテック、サーレン、ディフィー行くぞ、パルス様はその場で支援をお願いします」
「うん、い、く」
「行きますよー、サーレンは殺っちゃいますよー」
「人が相手では、食べるわけにはいきませんが、経験値にはなるでしょうから、お命頂戴いたします」
「これが上手く行けば、ライフェル教やライワ伯だけでなく、今代の勇者様にも大きな貸しが出来る訳ですから、負けるわけにはいきませんね。上手く状況を乗り切れば我がリューン王家にも勇者の血が……」
「解った、直ぐにリャーを連れて来るから」
「はあ、はあ、はあ」
急いで、出来るだけ急いで石の階段を下りてく。
この先に、この先にリャーが居るんだ、ずっと、ずうっと会いたかったリャーが……
「行かせないんだから」
おっきな斧を持って奥に行こうとしてた人達を弓で狙い撃つ
リャー、アラね頑張ったんだよ、いっぱい、いっぱい頑張ったんだよ、それでいっぱい強くなったんだから……
「邪魔しちゃめーなんだから」
剣を持って向かってきたおじさん達をすれ違いざまに剣で斬り倒す。
リャー、アラはずっと泣いてないんだよ、リャーが居なくなった時はいっぱい泣いたけど、強くなるのに、ずっと、ずっと泣くの我慢してたの……
「そこどけて」
繋がれている魔物さん達を雷撃魔法でやっつける。
でもね、リャー、なんでか我慢してるのに、涙が出てきちゃうの、ずっとずっと我慢出来てたのに、止まらないの、変だよね、リャーを迎えに行く時は思いっきり笑顔でって思ってたのに……
「開いて」
鍵のかかってるドアをスキルで壊す。
リャー、やっと会えるの、リャー、アラはね、アラはね……
「どこ、どこ」
暗い部屋の中で、幾つも有る鉄格子の中を覗いて求めている姿を探す。
リャー、リャー、リャー……
「こんな時間に、誰だ、そうかとうとう処刑なのか」
一番奥の牢屋で絶対に聞き間違えない声がした。
いた、リャーだ、髪や御髭がボサボサでちょっとやせちゃってるけど、アラの大好きなリャーだ……
「リャー、見つけたよ、リャー」
「その声、それにその呼び方、まさかアラ、アラなのか」
リャーが鉄格子のすぐ傍までやって来る。
リャー、やっと見つけた、三年間ずっとこの日の為に頑張って、なのにね、涙が出てきて、リャーがよく見えないの……
「アラ、こんな所に来るなんて、無茶して、俺なんかの為に」
「ムチャなんてしてないよ、アラは、ううん、アラ達はリャーの為なら、なんだってできるんだから」
リャーが、鉄格子の間から伸ばしてくれる手を両手で掴んで頬に当てる。
アラだけじゃない、サミュもハリュもミーシャもトーウも、みんななんだってできるんだもん、『迷宮攻略』だって、ボス退治だって、『活性化鎮圧』だって、護衛だって出来るんだから、リャーが一人で頑張る事なんてもうないんだから。
「リャー、すぐに開けるからね」
鉄格子のカギを魔法で壊して戸を開けたら、リャーが出てきて抱きしめてくれる。
リャーだ、リャーの匂い、ずっと一緒だった優しく抱っこしてくれたリャーの匂い。
「こんなに大きくなって、かわいいアラはいつの間にか大人になってたんだな」
リャーに抱きしめられたまま、顔をあげて、涙をぬぐいながら、ずっと見たかった顔をしっかりと見上げる。
ずっと、ずっと頑張って来たんだよ、だから、だからリャー。
一生懸命の笑顔が出来たけど、声が震えちゃって、もうちょっとだけしかちゃんと言えないと思うから、だからこれだけは言わなきゃ。
「お帰りリャー、約束したんだから、ずっと、ずっと一緒じゃなきゃめーなんだよ……」
Fin
半端チート完結……
なわけないですね皆さまお分かりかと思いますが、エイプリルフールです。
もしかしますと、昨日の投稿を、日付間違いで投稿してしまったエイプリルネタと思った方もいるかもしれませんが、あっちはガチです(カウントダウンも昨日に当たるように数えてましたが)
という訳で次回の投稿は、リョー君が捕まった後からになります。
ちなみに今回アラがメインだった理由は昨年活動報告でやった人気投票の結果によるものです。
R2年4月4日誤字修正しました。
R4年4月16日誤字修正しました。
R4年3月1日誤字修正しました。




