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448 奴隷娘達の四者四様+α

「最近の様子はどうだ」


 謁見の間で伯爵閣下から掛けられた御言葉に跪いたまま返上する。


「は、閣下から受けております『成長補正』の御加護と領軍の方々の御指導のおかげも有り、レベルやステータスが上がり、スキルも元からあった『槍術』や『棒術』の熟練度が高まっただけでなく『刀法』や『盾法』、『剣術』などの新たなスキルも入手できました」


 ボクは間違いなく強くなれた、領軍の一員として幾つもの『迷宮』へ優先的に派遣され戦闘を経験させて頂き、多く達人から訓練を受ける事が出来たから。


 だけどまだまだ足りない、きっとアイツやアイツの仲間たちはもっと多くの経験を積んで、もっと強くなってるはずだから、それに強くなる事が目的じゃなくて、強さは目的のための過程でしないんだから。


 ボクの目的は一族全ての望みでもあるんだから、だからこそ何としてもアイツをボクが篭絡して見せる。


 次代の為にも一族へ新たな血を、より強くより優れた血を一族へ取り込み繁栄の礎を作る。


 それだけじゃなく、我がラーン一族を始めとして同種族の他部族も庇護してくださっているライワ伯爵家との繋がりをより強固にする。


 その為にも優秀な『勇者』であり、伯爵閣下と直接の関係が有るアイツを魅了しその子供を一族へともたらす事は、我がユニコーン族全ての望みなんだ。


 確かに、我がラーン氏族や他の氏族の娘達が、伯爵閣下やその御子息たちへの側室に入ることが決まっているけれど、繋がりも新しい血もより多い方が確実だろうから、それにアイツはラーン氏族にとっての恩人だし。


 だからこそ、大任を任されたからには、ボクはアイツからの印象を悪くするわけにはいかない、いつかアイツの下で戦えるようになった時にボクが足手纏いになる訳には絶対に行かない、強くもっと強くならないと。


 そうだ、これは任務だから、一族の為の任務だから仕方なく、他に適任者が居ないからこそボクが仕方なくやるしかない。いや、だからこそ全力でアイツを、ア、アイツを、ゆ、誘惑して、ろ、篭絡しなくちゃ。


「それで、新しい武器の使い勝手はどうだ」


「は、閣下より賜りました長盾とナギナタ、どちらもまだ慣れぬ武装ゆえ十全に使いこなしているとは言えませぬが、先の戦闘ではかなり助けられました」


 楕円形をした長盾は半身を十分に隠せるほどに長く防御にも使いやすかったし、楕円形の両端が尖ってて攻撃にも使えそうだから慣れれば色々と使えそうだから。


 でも、ナギナタはボクが前から知っていたのとも、領軍で当初習っていた物とも大分形状が違ってたから、まだ使い慣れてない。


 刃はかなり長くボクの背の7割ほども有るのに、柄が刃よりもやや短い形状は薙刀というよりは長巻という武器に近いように感じるんだけど、それ以上に予想外なのは柄の反対側にも同じ形状の刃が逆向きについている事なんだよな。


 柄を中心に回転させて振り回せれば二本の刃が交互に敵を斬りつける事が出来きそうだけど、振り方を間違えば自分を傷付けかねないし、刃の峰の方で敵を殴りつけちゃった事も有ったしな。『棒術』のスキルも持っていたからまだ何とか使えたけど、事前の訓練で取った『薙刀』のスキルはあまり役に立たなかった。


 どうして閣下はこんな使いにくい武器を……


「ビー〇ナギナタを始めとするゲル〇グ装備には男の浪漫が有るんだが、さすがにビームは再現できないようだし、スキルだけじゃすぐに使いこなすのは難しいか」


 ロマン、確か『ロマンス』とか『ロマンティック』という異世界語は、恋愛感情を惹起させるような状況や場所に対して使う言葉の筈だったよな、という事は、この武器は異世界人である『勇者』達に対して恋愛感情を惹起させるような形状だという事なのか。


 流石は歴代の『勇者』達の故郷だな、こんな使い易さよりも威力を重視したような、代わった形の武器でそんなふうに思う事が出来るなんて。異世界の者達は戦闘狂という事なんだろうか、いや、そうだからこそ『勇者』を異世界から呼ぶのか。


 そんな『勇者』を篭絡するのなら、ぼくも戦闘狂にならないと、そしてもっと、もっと強くならないと。


「今はまだ拙くとも、必ずやこの形状の武具を使いこなして見せましょうぞ」


「良い答えだ。ふむ、これならば問題はないのか」


「そのようかと存じますれば」


 ボクの返答に頷かれた伯爵閣下の御言葉に、側近の方々も頷かれて何か小箱を運ばれてこられたけど、どうしたんだ。


「一部の者達から、お前をリョー達の下へ早期に派遣してはどうかと言う意見が出ていてな、俺としてはお前が狙われやすいユニコーン族という事も有るし、実力的にもまだ不十分だろうと考えている。お前をリョー達のもとへ送るのは時期尚早だろうと判断していたのだがな。お前自身はどう思う」


 ユニコーンであるボクがムルズに行くのは確かに危険だ、あの国は伯爵閣下とラッテル子爵家の取り決めにより、王族や有力貴族の雇い入れていた毒見役達が一斉に引き上げられたうえ、ライフェル教との緊張とそれに伴う混乱により、かの国の貴族達は毒殺を恐れて貴重な薬を求めているという。


 伯爵閣下はムルズ関係者への薬が少数しか回らないように手配されているらしいから、そんなところへユニコーン族の僕がのこのこと行けば……


 伯爵家の販売している『聖馬の不苦無痛丸』がユニコーン族のスキルで作られている事は、外部に漏れてはいないだろうけど、ユニコーンの角が万能薬になるという迷信はいまだに広まったままだ。


 あの国の貴族達やその配下の者達からすれば、僕の存在は薬が無防備に歩き回っているような物だろうから、今の状態でボクがムルズに入れば確かに狙われる恐れはあるだろう。


 だというのに閣下の言われる通り、ボクの実力はアイツらには遠く及ばない、この地まで伝わって来る『羅斬らせつ』のリョーの噂を考えれば、いくらボクが戦績を積んできたと言っても、まだまだ及ばないどころか引き離されているんじゃないだろうか。


 何しろ具体的な話がある程度しか伝わって来てないというのに、『羅斬』という新しい二つ名を聞いただけで、熟練の冒険者や百戦錬磨の騎士、古参兵等の尽くが、顔を青くして内股になり、きまり悪げな表情を浮かべるほどなのだから。


 今の僕では、アイツらと共に戦うにはまだ不十分だろう、でも常に『迷宮』を渡り歩て激戦を経験しているだろうアイツらとボクとじゃ、遅れれば遅れるほど引き離される。


「確かにまだ未熟ではございますが、『幻術』の熟練度は上がり常時角を隠す事も出来るようになりましたゆえ、種族を気づかれる恐れは少ないかと。また新装備にしましても手ごたえは感じておりますれば、使い慣れた暁にはリョー殿の声名にふさわしい戦力となれると確信しております」


 だからボクは今すぐにでもアイツを追いかけて距離を詰めていかないとダメなんだ。追いつけなくなるほどに引き離されてしまう前に。


「よし、それならいい」


 満足げに伯爵閣下が立ち上がられ、側近の方の掲げられた小箱から何かを取りだされてからこちらへと向かってこられるけど、アレは刀剣なんかの柄かな、だけどなんで柄だけを……


「まあ、これもロマン武器っちゃロマン武器かも知れねえがな、お前にやる」


 なんだ、柄が一気に伸びて、短剣の柄程度の長さだったはずなのに今は長槍ほどにまでなってる。


「この柄は30cmから5メートルまで長さは好きに伸び縮みする。更にはな」


 今度は元の長さまで縮んだ柄の両端に大太刀位の刃が伸びて。


「両端から好みの形で刃を出せる、長さは片側2メートルまで、形状は片刃曲刀と両刃直剣、幅や厚みもある程度の範囲までなら好きに出来る。要はこれ一本で短剣、短刀から大太刀や大剣、薙刀や槍まで好きなように使い分けられるって事だ、まあ斧槍や三又みたいな形状にはならないが、棍としても使えるだろ」


 いや、それでも柄や刃の長さを変えられるんなら、状況に合わせて武器を用意して持ち替える必要が無いから、大半の状況に対応できるし、それに一つの武器だけを使う事になれば経験値も分散させずに済む。


 これを、ボクにくださるのか。


「まあ、単純に武器としての切れ味や強度は、そこそこの名剣程度だし他には何も効果が付いていないが、刃毀れやヒビができても形状を変えれば元に戻る。銘を付けて『双刃の自在柄』、まだ実験中の『簡易魔道具』だがレベルを上げればそれなりの武器になるだろうし、複数のスキルを取ったお前には丁度いいだろ」


「ありがたく拝領いたします」


 まさか、伯爵閣下のからこれほどの武器を授かれるなんて。


「そいつを使いこなせるように成ったら、ヤッカ・ラーン、お前を正式に騎士叙任してリョーの所に送る。急ぎたいのならせいぜい頑張るんだな」


「は、必ずや」


「今のムルズは政情が不安定だ、お前が間に合えば俺の臣下という立場がリョーの役に立つ事だろうさ。俺としても俺の庇護下に有るユニコーン族とリョーの関係が深まるのは望ましい、お前が強くなるのに領軍の者や騎士達が出来る限りの便宜を図れるよう手配しよう。当家の騎士として他国に赴く以上は実力だけでなく立ち振る舞いや礼式等も覚えてもらう必要があるが、そちらも頑張る様」


「御意」


 大恩ある伯爵閣下のご期待に応える為にも、一族の願いをかなえるためにも、アイツを何としてもアイツを……


ここで薬価も書いた理由はカミヤさんが作中で語った通りです。

それと夏のイベント期間に入ったため、次の更新は遅れ来週後半、もしくは再来週以降になると思われます。

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