446 奴隷娘達の四者四様+α ~アラ~
「うーん、おっきくなってないな」
お風呂に入ってるから、体を見てみたんだけど、あんまりおっきくなってないの。
「どうしたんですか、アラちゃん、アラちゃんはとっても大きくなったと思いますけど」
一緒にお風呂に入って背中を洗ってくれてるサミュがそう言ってくれるけど、やっぱりおっきくないの『迷宮核』でおっきくなれたはずなのにな。
「もっと、おっきくなれると思ったのに」
「少しですけど、背も伸びてますし、顔もちょっと大人びてますよ」
そうじゃないの、そうじゃなくて。
「どうしましたか、わたしの方を見て……」
不思議そうに首をかしげるサミュの優しそうなお顔の下には、とっても大きくてとってもフワフワなお胸が有るけど、アラのお胸は……
「トーウより、おっきくなったかな、でもまだまだ全然なの」
ホントにちょびっとだけ大きくなった気がするけど、でも、サミュもハリュもミーシャもおっきいのに、アラはまだちっちゃすぎるんだもん。
おっかしいな、大きくなったら、お胸もおっきくなるはずなのに、そうなるのは間違いないはずなのに。
「アラちゃんは、見た目で考えれば、人族の11歳か12歳くらいでしょう、それならその位の膨らみは普通だと思いますよ。もう少し成長すれば、すぐに大きくなりますよ」
でも、これじゃダメなの、リャーはきっとおっきなお胸が好きだもん。アラはリャーのお嫁さんになるんだから、リャーが好きになってくれる姿にならなきゃダメなの。
「それに、あまり大きくなりすぎても大変ですよ、肩もこりますし動きにくいですし、アラちゃんの場合だと、剣や弓の使い方にも影響するでしょうし」
それはそうだけど、そうじゃないの。
「まだまだ、成長期なんですから、焦らなくてもこれからもっと大きくなって行きますよ」
「それじゃダメなの」
アラはダークエルフなんだもん、なのにリャーは『勇者』だけど人間だもん、リャーが『勇者』を止めちゃったら、リャーはどんどん年を取ってくのに、アラは全然大きくなれないんだよ。
アラが大きくなって、サミュみたいな大人で、ぼんきゅぼんになる頃にはリャーはおじいちゃんになっちゃうもん。それじゃ、リャーのお嫁さんにはなれないもん。
「もっと、おっきくなんなきゃ」
急いでおっきくなってサミュやハリュ位にお胸もおっきくなって、それでリャーのお嫁さんになるの。
「だからもっと強くなんなきゃ、今よりももっともっと、何倍も強くなんなきゃ」
アラがおっきくなるには、『迷宮』をやっつけなきゃダメなんだから、いっぱいの『迷宮』を急いでやっつけれる様になって、どんどん『迷宮』をやっつけるんだから。
それに、アラが強くなればリャーを守ってあげられるし、『迷宮』をいっぱいやっつけたら『勇者』のリャーはみんなからいっぱい誉めて貰えるもんね。アラが頑張れば、アラもうれしくて、リャーもうれしいんだから、やっぱり強くならなきゃ。
「なにか、とんでもなく非常識な言葉が聞こえたのですけれど、あのお子様が今の数倍も強くなるですって、現状でもすでに非常識な戦闘能力だと言いますのに。あの子は『勇者』の単独撃破でも目指しているのかしら」
「え、えっと、ア、アラ様は、と、とっても強いのに、わ、わたしもがんばんなきゃ」
「旦那様の為、たゆまぬ向上心、流石でございますアラ様」
あれ、ハリュが何か頭を押えてるけど、痛いのかな。
「まあ、いいですわ、もうあの子とあの男の事について常識に当てはめて考えるだけバカらしくなってきましたし」
「あ、アラ様は、何か職を取られるのですか」
「ううん、前に『四弦万矢』のおじちゃんから弓のお仕事を幾つか貰ったし、魔法や剣のお仕事も有るから、新しいのはまだいらないの」
「まあ、あれだけ質と量が共にあれば、そうでしょうね、あれ以上を望むなんて言ったらそれこそ非常識ですわ」
「じゃ、じゃあ、アラ様は、こ、このまま、レ、レベルを上げるんですか」
「うん、いっぱいレベルを上げるの、それにまだあんまり使えない技も有るから練習しなきゃ」
『四弦万矢』のおじちゃんや『剣狂老人』のおじいちゃんに教えてもらった、弓とか剣の技と、後ハリュの教えてくれた『溶岩』の魔法が、ちょっと使いやすくなったけど、まだまだ全然たんないんだもん。
「そう言えば、『四弦万矢』のおじちゃんが、人と戦うんならコレが良いよって太い矢をくれたけど、どうしてだろ」
「あの『四弦万矢』カン・キテシュのススメですって、確かあの方の御家は対人戦闘というか暗殺特化の職とスキルを受け継いできていたのですわよね」
「ええ、その通りの筈ですハル様、以前アラ様が技の伝授を受けられた時に、見取りの御許可を頂いた際に確かにそのように仰っておりました」
えっと、そう言えばあのおじちゃん、そんな事言ってたっけ。そう言えばこの太い矢をくれた時に、スキルを使わないで体力を減らさずにやっつけられるって言ってたっけ、あとは……
「えっとね、この指輪と一緒に使うと良いよってこの矢をいっぱいくれたの」
リャーに貰った指輪を見せたら、同じ指輪を付けてるミーシャとトーウが不思議そうな顔をしてるの。
「え、えっと、それは、ひ、『引き戻しの指輪』ですよね」
「それが、対人戦で役に立つのですか、この矢の形状は、確かに矢柄も太めですが、それ以上に鏃を太めの筒に替えた物ですか。中は空洞で外周の部分は薄く刃のようになっていますから、これだと刺さるというより、焼き菓子を作る時の型のように、この形に肉をえぐりながら食い込みそうですから、確かに普通の鏃よりも傷は大きくなるでしょうから、確かに殺傷力が高そうですけれど、ああ、引き戻して連射して、脆い人体を数で圧倒するという事でしょうか。いえ、ですが」
「えっと、こ、これじゃ、や、矢が重くて、と、飛ばしにくいし、さ、刺さりにくいかも」
「確かにそうでしょうけれど、アラの技量やステータスならそれほど難しくはないでしょう。それに新しい弓は『魔道具』としての効果だけでなく、弓としての性能も高いのでしょう、それなら……」
うーん、そんなんじゃなさそうなんだけどな。
「あ、ああ、そう言う事ですのね、まったく何を考えてこんな幼子にそんな悪辣なというか非常識な事を教えるのかしら、まあ、アラ相手では気にするだけ無駄かもしれませんけれど」
ありぇ、またハリュが頭痛そうにしてる、どうしたのかな、考えすぎて痛くなったのかな。
「え、ハ、ハル様、わ、解ったんですか」
「一体この組み合わせにどのような秘密があるのでしょうか」
「全く、わたくしより貴方達の方が先に気が付いてしかるべしでしょうに、特にトーウ貴方は前に暗殺者の職を持っていて、それの対策をしなければならない護衛の家系で、更には『鋼指掌法』まで習っておいて、まだ気が付かないのかしら」
「わたくしであれば、気が付いて当然と言う事でしょうか、一体それは……」
「まあ、まだわたくしも、予想でしかありませんけれど、アラ、おそらくは貴女はその矢を使う時には特定の部位を狙うように言われたのではなくて」
「うん、えっとね太腿の内側とか二の腕の力瘤の下とか狙って、刺さったらすぐにこの指輪で引き戻したらいいよって」
盗賊さんとかなら、走りやすいように手とか足にあんまり防具を付けてないから、スキルを使わなくても狙えば刺さるって言ってたし、頭を壊す時みたいに『鏃潰』とか『衝射』を使わなくても倒せるって言ってたけど、なんでだろ。
「やっぱりでしたわね、まったく本気の殺人手段を子供に教えるだなんて」
「え、えっと、な、なんで、これが、さ、殺人技、なんですか」
「手足を狙うとなれば、継戦能力や行動能力を奪って生け捕りにするための手段ではないのでしょうか、これだけの太さの筒が刺されば、まともに歩くのも難しいでしょうし、痛みもかなりの物になるでしょうから」
「全く貴方達は、トーウ、貴方はもう一度『点穴譜』を読み直したらいかがかしら、アラが今言った部位には何がはしってまして」
「その位置に有る物と言えば、大腿四頭筋、上腕二頭筋、その付近に大腿動脈と上腕動脈が、あ、そう言う事でございますか、確かにこれは回復手段のあまりない野盗などにとっては致命的な攻撃となりましょう」
「え、えっと、け、血管が有って……」
「ミーシア、『鬼軍荘園』の防衛戦で、貴方が対応した負傷者で、最も多い死因は何だったかしら」
「た、多分、し、失血です、回復魔法で、ち、血を止めたら、も、持ち直す人も多かったです」
なんだろ、ハリュが先生みたい。
「ですわよね、であれば解るのでなくて、先ほどの位置に矢が当たれば先ほどトーウの言った血管が傷つきますわ、ましてこの筒状の鏃なら肉が円形に抉られて大きな穴が空きますわね。矢が刺さったままでしたら、矢柄が傷を押えこんでそれほど出血しないでしょうけれど、『引き戻しの指輪』で矢がアラの手元に戻れば、後に残るのは大きな空洞と破れた血管ですわ、そうなれば」
「あ」
「破れた動脈からの血は留まることなく貫通創から吹き出し、瞬く間に失血した敵はすぐに立っていられなくなり、意識を失い、そのまま死に至る事でしょう。確かに、これはわたくしがまず気が付くべき事でございました」
そっか、これの矢なら、がんばんなくても盗賊さんをいっぱいやっつけられるんだ、じゃあ頑張んなきゃ。
それでもっと、もっと強くなんなきゃ。
それで、いっぱい頑張って、もっと大きくなって、もっと強くなって、リャーに喜んでもらってお嫁さんにして貰うの。
でも、アラはね、リャーにね、内緒なの、アラはね、ホントはね……
R1年7月30日 誤字修正しました。
R1年9月11日 タイトル番号のずれを修正しました。




