43 初めての共同作業?
予告通りのハル回です。
タイトルに深い意味はありません。
これでアラはしばらく戦力外か、きついな。
まあとりあえずは無事に小屋まで着かないとな……
てっ、考えてたのに何でだよ~
あとちょっと、あとちょっとで小屋に着いたのに。
ストーンゴーレム LV11×2
身体スキル 硬質 剛腕
なんで、ボスと同じモンスターが普通に歩き回ってるんだよ、レベルが低いって言っても、二匹ってあり得ないだろ、二匹って……
フラグか、俺が無事着けば良いななんて考えちゃったから、フラグが立っちまったのか。
どうするこのままじゃまずいよな、火力のある魔法職二人のうちアラは寝てるし、誰かをアラの守りに付けるとなると、二人ロスだから戦力半減だよな。
このまま逃げるべきか、戦うべきか。
逃げるにしても、小屋に着くまでにこいつらを撒けるかが問題だし、戦うなら戦力ダウンの状況で勝てるかが問題だよな。
「ん、リャー、どうしたの、あれ?」
このタイミングで目を覚ますか、でもこれでしがみ付いて貰えれば、逃げるにも戦うにも多少はマシになるか、それでもまだMPもスタミナも全く回復してないんだろうから、アラが戦闘に直接参加するのは無理だろうな。
どうするか、俺が囮になって、みんなを逃がすか、『超再生』があればやられることは無いだろうし、俺一人なら『軽速』で逃げられるはず。
まあ二、三回踏み潰されてスプラッタになるのくらいは覚悟するか、指輪のMPが切れるまでは付き合ってもらうぞ石人形。
「サミュー、アラを任せた、皆に護衛させて、小屋まで退避しろ」
「え、あ、ご主人様」
「リョー様そんな」
「リャーはどうするの」
放り投げたアラを受け取ったサミューとミーシアが振り返るが、それより先に俺はゴーレムへと向かっていく。
「足を止めずに全力で走れサミュー、ミーシア、これは命令だ、聞け」
頼むから、逃げてくれ、これ以上は……
「ですがご主人様を見捨てるようなことは」
やっぱりだめか、なら、仕方ないか。
「アラを守る気がないのか、今サミューが残ればアラが怪我するかもしれない、だから行け」
出来れば言いたくなかったけど、こうまで言えばサミューも解ってくれるはずだ。
「く、分かりました、どうかご無事で」
背後で駆け去っていく二つの足音を確認しながら、ゴーレムへと向か……あれ二つ……
アラは、抱っこされてるから足音が無いのは当然だけど、それでも足りないよな。足音と金属音がセットになってるからこれはミーシアだよな、でもってこっちに声かけてくるアラの声がだんだん遠くなってくから、抱っこしてるサミューも離れて行ってるはず、となると。
「さてと、それでは行きましょうか」
すぐ横から掛けられたお嬢様言葉に振り向くと、居やがったよカラス女が。
「なんでお前がここに居るんだハル」
「あら、あなたが命令で強制したのはサミューとミーシアだけでしょう。わたくしは先ほど呼ばれませんでしたし」
ハルめ、これを狙ってさっきは声を出さなかったのかよ、でもさ危ないだろう。
「だが……」
「安心なさってちょうだい、いざとなったらあなたの事などその場に放置して、飛んで逃げますから、ご心配なく」
いやそれはそれで腹が立つような……でも。
「残ったって事は何か考えが有るのか」
「ええ、実戦で『溶岩密封』を試してみたいと思いましたの」
おいちょっとまてよ、その魔法は今までの練習だと半分くらいが失敗して発動しなかったよな。
そりゃあの魔法なら決まればデカいだろうけどさ、失敗したらもうアウトだよ、そんなさ、一か八かみたいな真似はハルらしくないんじゃ。
「大丈夫なのか、練習でも不安定だったろう」
「解っておりますわ、わたくしなりに失敗した理由は分析していましたもの」
うわー、さすがカラス娘、頭を使うのが好きなんだなー
でも俺も見習った方が良いのかな、能力がショボい分もっと色々工夫しないとだめだよね。
「それで、どうすればいいんだ」
俺の役目は魔法発動までの時間を稼ぐための囮かな。
「あなたの力をわたくしに貸してもらえないかしら」
はい、なにその漫画やラノベでたまに有りそうなセリフは、似合わないぞー
「わたくしの『溶岩密封』が上手くいかない理由は、わたくしの『魔力回路』がまだこの魔法の組み立てに慣れていないせいですわ」
あれ、それって駄目じゃね、もっと練習して慣れなきゃダメってことだよね、そんなの実戦投入できないよね。
「高熱の溶岩を作り出して、その熱を維持するだけで、回路の容量がほとんど使われてしまい、制御が上手く出来ていないのですわ」
『魔力回路』の問題か、おいまさか暴走覚悟で容量以上の魔法を使うつもりじゃ無いよな、そんなの体力も回復手段も少ないハルじゃ命に関わる事だぞ。
そんな事をさせるくらいなら、俺がダメもとで試した方がまだ安全だろ『魔力回路』も少しは書き足されたはずだし、もしかしたら上手くいくかもしれないから。
「何を懸念なさっているのかは、簡単に想像が付きますけれど、わたくしに自殺願望はありませんわよ」
あれ、違うのか、ならどうするつもりだよ。
「わたくし一人では、制御出来ないのでしたらその分を貴方が『魔力操作』で代用すればいいのですわ」
は、それって……
(おいラクナ、そんな事できるのか)
(さてのう、普通に考えるのならば『共同魔術』として確立された呪文以外ではそのようなマネ聞いたことは無いがのう、じゃがこと魔法だけに関してならば、お主はハルの言うとおり非常識じゃからの、あり得るやもしれぬ。そもそもお主、初歩的な魔法でとはいえすでに今朝の時点で実際にやっておったしな)
そうか、なら一か八か試すか、ダメなら全速力で逃げればいいだけだしな。
「狙いは解ったが、呪文を唱える暇が有るのか、それだと俺も身動きが取れないだろう」
「どこか高所なり狭い場所なりに陣取る事で何とか時間を稼ぐしかないでしょうね」
(確か、この先に小さな洞穴が有ったはずじゃぞ)
そういやあったよな、よしそこに行くか。
「ハル、右の方に行け、手頃な洞窟が有る、そこに隠れるぞ」
「広さは大丈夫ですの、あまり広すぎますと追い詰められてしまいますわよ」
確かあそこは、うん俺の記憶が確かなら大丈夫なはずだ。
「そこまで広くないから奴らは入ってこれないはずだ、だが」
「だがなんですの、何か問題でもあるのかしら」
「出入り口が一つしかないから、失敗すれば逃げられなくなるぞ」
俺の答えにハルが振り返ってきたけど、いい顔してるな。なんかいまにも高笑いを始めそうな自信満々の顔してるよ。
「そんな事ですの、それなら大丈夫ですわ、わたくしの仮説が外れるはずは有りませんもの」
なんかなーその自信は、頼もしいと考えるべきなのか根拠が足りないと不安に思うべきなのか。
「よし、ここならとりあえず時間が稼げるな、急がなくても大丈夫そうだから、すぐ試すんじゃなく少し休んで呼吸を整えてからにするぞ」
「わ、わかりましたわ……」
だいぶ息があがってるよな、これじゃあ慣れない魔法に集中するどころか、落ち着いて呪文を唱えるのも難しいだろうしね。
「それよりも、もう少しだけ離れて下さらないかしら、こんなに近付いてわたくしに何をするつもりなのかしら」
「こんな状況で何をどうするって言うんだ、こう狭くては仕方ないだろう」
俺達の逃げ込んだ洞窟は俺の身長だと、すこし屈んでないとすぐに頭が天井にぶつかるくらいの高さしかないし、幅も両肘を真横に伸ばせば少し余るくらいしかない。
まあおかげでゴーレム達は入ってこれないんだけど、そのかわり奥行きも無いから、ゴーレムが腕を突っ込んで来ると壁ギリギリ位しか安全圏がないんだよね。
あと一、二歩前に出たら指先で引っかけられそうだし。
うーん、はた目に見たらピンチというか、ハ〇ウッド辺りの怪物映画なんかでたまに有りそうなシチュエーションだなぁ。
そんな訳でゴーレムの指先から離れるために俺達は密着してるんだが、ハルはこれが嫌らしいな、年頃の女の子だから仕方ないか、まあ俺も胸元というか腹の辺りに意外と大きな膨らみが当たってて、色々と不味いことになりそうなんだけどね。
「そうですわね、この距離でも我慢するしかありませんわね。ですけれどせめて座って休みたいものですわ」
この状況で座るだと、いやいやダメだろ。
うん現状を整理しよう、ゴーレムのせいで俺とハルはほぼ密着して向き合っている、天井が低いから俺は頭をぶつけないように両足を左右に開いて少し膝を曲げている。
このままハルが座るとやっぱりまずいな、うんハルの顔の位置がね。俺のとある部分の正面に来るのは色々と問題がありそうだよね。
「止めておけ、地面が濡れてそうだ」
ほんとは乾いてるけど暗いからわからないはずだ。
「それでしたら、まず貴方が座って貰えないかしら」
おい、俺に濡れろって事か、何でだよひどくね、そもそも俺が座ってハルが立ってたら……
うん、やっぱり色々と問題がありそうだよね、こっちの場合も顔の位置がね。さっきとは逆だけどさ。
「早く座っていただけないかしら」
いや、そういってもね、顔の位置がさ、おじさんはどうかと思うな~
「いつまで待たせるつもりなのかしら」
あーもうわかったよ、座れば良いんだろう座れば。
壁を背にしてあぐらをかき、すぐ目の前にある物を意識しないように、両目をつぶる。
「そ、そのまま動かないでいらして」
なんだ声が少し緊張してるような、なんだろう何かで顔を撫でられたような、くすぐったいけど気持ち良い変な感じだな。
ん、足が少し圧迫されてるような気がするな、あれなんか凄く良いにおいが、これもっと嗅ぎたくなるな。
思わず顔を前に出すと柔らかな何かにぶつかる、なんだろうこれ高級なシルクみたいな……
「ちょ、ちょっとお待ちなさい、あなた、自分が何をなさってるのかをわかってますの」
え、なんだ。
目を開けた先には、艶やかな黒髪と同じ色をした翼があり、その隙間から白いうなじが……
てっ、え、ハルが背を向けて俺の上に座ってる、足に乗った圧迫はハルのお尻……
「ちょ、ちょ、な、なにを」
反射的にハルとの距離を取ろうと体が動き出す。
「お待ちなさい、わたくしを殺す気ですの」
やべっ、突き飛ばしかけたせいでハルとゴーレムの指先の距離が。
慌ててハルの体に腕を回して自分の方へと引き寄せる、結果としてハルを後ろから抱きしめるような格好になっちゃったけど、どうしよう。
「ハ、ハル、これはどう言うことだ」
やべっどもった。
「し、仕方ないでしょう、他に二人同時に休める方法が無いのですから」
あれ、ひょっとして気を使われたのか、ハルの顔が赤いし、これは恥ずかしいのを我慢してこうしてくれたのかな、お嬢様だもんなこんな体勢を取るのは恥ずかしいに決まってるよね。
こうしてるとハルの体温が暖かいな、良いにおいがするし、何より羽の感触が、癒されるわ~
じゃない、おちつけ俺、ハル相手に何を興奮してるんだ、相手は16歳の女の子だぞ……日本ならJKか、じゃなくて、俺には禁欲が有るんだし、そんな奴隷相手に無理やりなんてサイテーだろう。
とりあえず深呼吸して、ああいい匂いが、じゃなくて、冷静にならないと。
「ね、ねえ、わたくしの勘違いかもしれませんけれど、先ほどよりもゴーレムの指先が近いように思えるのですけれど」
うん、俺も何かそんな気がするんだけどな、どうなってるんだ。
(どうやら、入り口の壁が少し崩れ出したようじゃの、このまま崩れ続ければ、お主らに手が届くじゃろうの)
うわあ、そうだよな気のせいじゃないよな、この調子じゃあんまり時間が無いよな。
「仕方ありませんわ、呼吸だけでも戻りましたし、『溶岩密封』行きますわよ」
俺の上に座ったまま呪文を唱え出すハルに、魔力操作を合わせる為にハルの魔力に意識を集中しながら、ハルの両肩に手を置く。
ハルの魔力が変換されていき、俺達の足元に大量の岩石が生み出されそれが高温で溶けていくのを感じだす。まずはこれを誘導して、ゴーレムどもに、ってコントロールしにくい。
これは土の中で作り出されたから圧力で周囲に溢れ出してるのか、こっちにも上って来てる、せめて俺らの真下だけは避けないと。
「これでは、せ、制御しきれませんわ」
上ってくる流れをなんとかずらしてゴーレムの手前、穴の中に無理やり突っ込んできた肩の下あたりに誘導する、でもこれが限界か、思った以上に制御するのが難しいな、これで多少はゴーレムにダメージが有るだろうけどこの上で密封ってのはちょっと厳しいか。
「こちらにも流れてきていますわ」
やや緊張したハルの声で見つめる先には、こちらへと流れてくる溶岩が……
今週中にもう一回ぐらい更新したいなー
H26年11月9日 句読点、三点リーダー、一部語尾修正しました。
H27年2月16日 誤字修正しました。
H27年4月5日 誤字修正しました。




