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409 突入せよ


「では、始めます。お願いしますミーシアさん」


「は、はい、よ、よろしくお願いします」


 頭を下げたディフィーさんに同じように頭を下げてから、ミーシアが特大の盾を掲げ鎧で包まれた身を屈めて山荘の方へとゆっくり向かって行くと、山荘の各所から投石や射撃が行われ盾や鎧の表面で弾ける。


 よし、やっぱりあの程度の威力の遠隔スキルならミーシアの装備で十分防げるな。


 問題は炎や爆風が鎧の隙間を通ってきたり、熱が表面から伝わるリスクがある『火炎瓶』や『腹爆破』だけど、爆破の方は中近距離のスキルだからあそこまでは届かないだろうし、『火炎瓶』のほうも……


「フギャ」


 窓の奥にあるバリケードの向こう側から『火炎瓶』がミーシアの方へと投げ放たれる。


「参ります『水弾』」


 すかさずディフィーさんが放った魔法が瓶を包み込み、先端に灯っていた火を消す。


 魔法を使ったディフィーさんはミーシアのすぐ後ろにぴったりと付いて、射撃スキルから守られ、ミーシアにとって危険な『火炎瓶』はディフィーさんが魔法で防ぐから、この状況ならそれほどリスクはなく山荘に近寄れるよね。


 いくらミーシアの鎧に魔法防御の効果があるとはいえ、スキルにまで対応できるかはわからないからさ、念のためにディフィーさんに防いでもらってるけど、これならいい感じで近くに行けそうだな。


 まあ、これもミーシアが昔の機動隊みたいなでっかい盾を使えるからできたやり方だよな。


「さてと、ミーシア達は十分近寄れたな」


 あの位置なら射程は十分か。


「参ります、『直水流』」


 ミーシアの背後から伸ばされたディフィーさんの手の先に大量の水が生まれ、それが直線的な放水となり山荘の壁を叩く。


「ぐべ、がぼぼば」


 消防車の高圧放水よりもぶっとい水の柱がガラスを砕き、バリケードに使われている瓦礫を弾き飛ばし、その奥に居るトロル達を押し下げる。


「よ、よいしょ、え、えええい」


 ディフィーさんの放水で、山荘からの射撃が減ったのに合わせてミーシアが右手を『アイテムボックス』に入れ、そこから取り出した獲物を頭上で円を描くように振り回して行く。


「うんしょ、うんしょ」


 回転数が増すたびに、空気を切る音が大きく重くなり、鎖が伸びていくのに合わせ、巨大な鉄球が信じられない速度で円を描いて行く。


 ミーシアが使ってる新装備の『巨球の鎖』は鎖の長さと鉄球の大きさを自由に変えられる『魔道具』だから、ミーシアのパワーと合わされば、それこそ解体現場というか、昭和の立てこもり事件で使われた重機みたいなマネが一人で出来ちゃうもんな。


「よ、よいしょおおお」


 十分な回転で速度の付いた棘付き鉄球が山荘の壁を横薙ぎに削り取って銃眼を潰し、窓の奥のバリケードや更にはトロルも叩き潰していく。


 うんやっぱり、ミーシアの鉄球は強力だったな、とは言えあんまりやり過ぎたら建物を丸ごと壊しちゃいそうだから、とりあえず今の間は牽制と壁の一部破壊程度に留めて貰わないとな


「もー、ミーシャたちの邪魔しちゃめーなんだよ」


 鉄球と放水でバリケードや銃眼を失ったトロルが、それでもミーシア達を狙って壁の穴から半身を出してスキルを放とうとしてるけど、そう言ったトロルが姿を見せた直後にアラが弓を構え相手がスキルを使うよりも先に仕留めていく。


 さっきまでは、バリケードの隙間や銃眼から槍先だけを出して遠距離スキルを放ったり、楕円軌道の投擲を物陰から放って来るせいで、相手の姿が見えずアラが上手く反撃できなかったけど、ミーシアとディフィーさんのおかげで隠れる事が難しくなったから、射撃戦はもうこっちの物だよね。


「よし、そろそろ俺も行くか」


 今ならトロル達の意識はミーシアの方に向いてるし、外の様子を見ようとするトロルはアラの弓とディフィーさんの放水で抑え込んでるから、山荘に近づく俺の存在は気付かれにくい、何よりも今ならミーシアの開けてくれた大穴が幾つも有るから侵入経路も選び放題で楽だし。


 なにせ今まで出入りの出来ない無警戒だった場所にいきなり穴がどんどん開いてるんだからさ、見張りはそんな場所には配置されてないだろうし、いきなりの事だからすぐに持ち場を変えて対処するってのも難しいだろうからね。


 物陰から回り込んで行くようにして山荘に近づき、『軽速』を使って二階に空いた穴へと飛び込む。


「全く、俺が来たのはチート物の異世界ファンタジーな筈なのに、なんで段ボールに隠れる陸軍特殊部隊員ゲームみたいな事をしてるんだろうな。いや、ここが洋館だって事を考えると生物災害な警察特殊部隊員の方かな。まあ、どっちにしろ見つからないようにして、戦うなら先手必勝で気付かれる前に仕留める、最悪でも集団に囲まれないようにするのが重要って事か」


 まあさ、俺の場合『聖者の救世手』や『感知の鬼百足甲』のおかげで、山荘の中に居るトロルの現在位置と進行方向、更には現在の様子まで文字通り手に取るようにわかるもんな。うん、レーダー機能って重要だよね。


 ついでに言えば『軽速』が有るから本来なら足場やとっかかりにならないような小さなくぼみでも、指やつま先の力だけで体を支えられるんで、天井や窓の外にしがみ付いてやり過ごす事も問題なく出来るからね。


「プドレダリィアーー」


 廊下の向こう側からこちらに向かってくる反応に、近くの部屋に飛び込んでやり過ごし、ヤモリのように天井に貼り付いて、手と足の突っ張る力だけで暗い廊下を進み見張りの頭上を通り抜ける。


「確か、テトビの話だと『魔道具』が湧く部屋は毎回ほぼ決まっていて、法則性があるってことだったが」


 とりあえずは三階に上がらないとダメか。


 階段の所に立っているレッド・トロルの様子を『聖者の救世手』で確認してみるけど、動く様子が無いな。


 他の階段も見張りは似たような感じで、見張りの居ない階段はなしか。かと言って外に出て壁をよじ登るにしても、三階の侵入できそうな窓のある部屋にはどこもトロルが数体ずついるんだよな。


「となると、あの階段を上るのが一番安全そうなんだが、問題は三匹居る見張りをどうするかだよな。となれば……」


 指にはめた『術送の指輪』に向けて俺でも使える弱い魔法を数回放ってから、トロルに気付かれないように隠れながら距離を詰める。


「5、4、3、2、1」


 小さな声でカウントするのに合わせて、魔法を送り続けてタイミングを合わせる。


「ゼロ」


 俺の声と同時にミーシアの鉄球が壁と廊下を破壊しながら進み、見張りに付いていたレッド・トロルの一体を肉塊に変える。


「ヒギュ」


 鉄球が鎖に引かれていく直後に空いた穴からアラの放った矢がもう一体のトロルを仕留め、最後の一体がそちらに気を取られている間に、一気に物陰から飛び出して距離を詰め、背後からトロルの喉に『斬鬼短剣』を合わせ気管と左右の頸動脈を同時に切断する。


 こうしておけば、声は出せないし、短時間で仕留めれる。


 ついでに言えばミーシアが何度も鉄球を叩きこんでるせいか、トロルは多少の物音には駆けつけて来なくなったから、絶命までの間に多少暴れられても叫ばれなければ仲間は来ないだろうからさ。


 念のために『魔道具』の効果で周囲の状況を確認し、トロルがこっちに向かってきてないか警戒した後で階段を昇って行く。


「確か、この階段を上がって右側二つ目の部屋だったな」


 周囲に魔物がいない事を目視でも確認して廊下を進み、静かに目的の部屋に入る。


「鬼がいないのは確認済み、この階に居る鬼の現在位置や動きを考えればしばらくはここへ来る事は無いだろう、さてと『魔道具』はっと……」


 薄暗い部屋の中を見回しながら『鑑定』を使う。これなら暗くても大丈夫だし、どんな『魔道具』か分からなくても、それが視界にさえ入れば名前だけじゃなく『付加効果』や『付与効果』が付いてるかも分かるからすぐに見つけられるもんね。


 もしも、こうして見える範囲で見当たらなければ、棚とか箱の中とか何かに隠れているって事か、あるいはこの部屋には無いって事になるけど。


「そうなると、面倒かもしれないな、いや……」


 うん、『鑑定』の必要なかったわ、いかにもな感じの宝箱が部屋のど真ん中に置いてあったわ。


「というか、これよくレッド・トロルに回収されなかったな」


 まあ、時間も限られてるんだし解りやすいのは良い事か。待てよ、こうもあからさまな宝箱に鍵がかかってないなんて事はあるのか、そうでないとしても罠が仕掛けて有ったりは。


「ミーシアも、トーウもいないんじゃ解除は無理だよな」


 俺にはそう言ったスキルも知識もないからさ、かと言って前にディフィーさんがやったみたいに強引に破壊するっていうのも難しいだろうし。


 というかあの人よく宝箱を噛み砕けたよな、アレで罠が有ったらどうするつもりなんだろ、口の中で火炎放射とか爆発とか、毒ガスとか毒針とか、まあミミックとかならあの人はそのまま食べちゃいそうだけど。


「まあいいか、俺なら『超再生』が有るんだから漢探知のつもりでいれば罠が作動しても問題はないし、鍵がかかってるだけならミーシアの所まで持って行けばいいだけの事だ。『アイテムボックス』に入らなくても『軽速』を使えば、手に持ってるものも軽くなるんだから、時代劇の泥棒が千両箱を盗むみたいに肩に担げばいいだけか」


 まあ、デカい箱を抱えてたらバランスがとりにくいし、遠距離スキル持ちからは良い的だろうからあんまりしたくないけどね。となればやっぱり……


「よし、とりあえず開けてみよう」


 部屋の真ん中で、いかにも罠に見える置かれ方をした箱の蓋へ右手を伸ばす……


「よし、開けるぞ」


 蓋の上に置いた手に視線を向ける……


(開けぬのかの、時間が無いのじゃろう。早くせねばトロルが来てしまうかもしれぬぞ)


 いや、解ってるんだけどね、解ってるんだけどさ、こう罠が有る確率がかなり高そうだっていうのに、それを防ぐ手段が無くて、痛みに耐えるしかないって解っちゃってるとね。


 どうしても、開けるのに勇気がね。


(何をしておるのじゃ、普段のお主ならば多少のダメージなど気にせずに、耐えておるじゃろうて)


 いやそれはさ、そうしないとヤラれる様な状況とか、でないと早くしないとみんなが危ない時とかのさ、追い込まれてる時だったから出来た事であってね。


 こう、命の危険もないし、困るのは俺だけって状況だと、なんかね。


 痛い目に合うのが解ってて、自分でやるっていうのはなんか罰ゲームみたいじゃね。


(早うせぬか、お主がこうして居る間も外ではアラやミーシアが時間を稼いで居るのじゃぞ、お主が遅れれば『活性化』直後の『迷宮』内じゃどのような不測の事態が有ってもおかしくはあるまいて)


 そ、そうだった、俺がここに居る以上はレッド・トロルを完全に排除できないんだから、その間に別な魔物の群れが近づいて来て、みんなが挟まれるなんて事も有るんだから。早くしないと……


「ええい、幾ら痛くても死ぬ訳じゃあるまいし、でええい…… あれ……」


 両手を伸ばして一気に蓋を開けるけど、何も起こらないな。


「鍵もかかってないし、もしかして罠なんてなかったのか」


 うわあ、恥ずかし、誰も居なくてよかったわ。いやそうじゃない、とりあえず中身を確認して回収しないと。


「これは、短弓と女性用パンツか」


 一つの箱に二つも『魔道具』が入ってたよ、これはもしかしてついてるのか。


自射の短弓LV1

付加効果 次矢生成 MP威力化 自動射撃 


(初めの二つ、『次矢生成』は矢を放った後に弓自らが一定間隔で矢を魔力で生み出して弦に番える効果じゃし、『MP威力化』は魔力を籠める事で弓矢の威力を高めるという効果じゃのう。これらの効果の付いた『魔道具』は時折あるが、最後の『自動射撃』と言う弓自体が自動で弦を曳き矢を放つ効果は初めて見るのう。ソルジャーの遠距離スキル等の影響なのじゃろうが、これならば片手で矢を放ち、もう片方の手で別な武器を使うなどという事も出来そうじゃのう)


 うん確かに、矢の残数を気にしないで良いとかっていうのはラノベなんかでよく見る効果だし、MPを使って威力を上げれるっていうのも、『四弦万矢』の『加剛の弓』みたいに、いざって時に使えそうだよね。


 うんアラの新しい弓には丁度いいかも、それに片手で使えるなら剣で戦いながら弓も使うなんて事も出来るだろうし。


(まあ、この弓の生成速度は十数秒に一本という所じゃから、一斉に連射するというのは出来ぬから、アラの連射速度を考えればある程度は通常の矢も持ち歩く必要があるじゃろうし、スキルを使うには自らの両手で通常通り弓を曳かねばならぬようじゃがの)


 そう言われると、若干微妙かもな、アラは『三段撃ち』とか『制圧射撃』なんかの連射系スキルをよく使うし、いやでもそれ以外の時は矢を節約できるのは悪くないか。それに武器のレベルが上がれば、精製の間隔も短くなるかもしれないしね。


 さて、もう一つの方はと、まあパンツだし、あんまり期待しても、というかよく見たらトラ柄だし、関西のおばちゃん用か。


鬼の下着LV1

付加効果 雷撃生成 避雷 不破 不汚

付与効果 形状変化(微) 防御補正 効果波及(微)浮遊(微)


(こちらは、一応防具のようじゃのう。まあこれ自体が覆える範囲は少ないが、補正も有る事じゃし、何より『不破』という事は、よほど強力な攻撃でなくば斬る事も貫く事も出来ぬゆえ、打撃などには効果が無いじゃろうが、刃物に対してならば覆える部分の守りは堅くなろうて。『不汚』が有れば毒液や酸なども防げるじゃろうし、『避雷』は向かってくる雷撃が装備者の周囲で軌道が逸れて、当たらなくなる効果じゃ)


 うーん、幾ら防具として頑丈だとは言え、パンツだからね、覆う布地が少ないしいまいちかも。


 まあ、『雷撃生成』っていうのは攻撃の選択肢が広がっていいのかもしれないけど。


(まあ、『形状変化』が付いておるからのう、現状では体格に合わせて大きさを変える程度じゃろうが、効果が高まればより広い範囲を覆える服などに変化する事も出来るかもしれぬのう。それに『効果波及』は装備者の身に着けている他の装備品などに、その『魔道具』と同じ効果を劣化させて一時的に与える効果じゃ、強力な斬撃は防げぬじゃろうが、そこらの鈍ら程度ならばただの布服であっても、それなりの使い手が相手でなくばそうそう斬られはせぬじゃろうて)


 てことは普通の服にも多少の防御力を期待できるようになるって事か、雨に備えて用意したフード付きマントが有るからあれを着れば全身防御になるし、着続けてレベルを上げていけば、それ自体が十分な範囲を覆える防具としても期待できるって事かも。


 まあ、布だから刃物を通さないってだけで衝撃は防げないんだろうから、この効果だけを過信し過ぎれば剣の攻撃で斬られはしないけど、金属バットで殴り倒されたようなダメージになる恐れがあるか、なら他の防具と併用って感じかな。


 問題は誰にあげるかだな、『電撃生成』の効果を考えれば、それ系統の魔法が使えるアラやハル以外の方がよさそうかな。そう言えばサミューはカミヤさんの計らいで装備を更新した時、下着類も作って貰ってたんだっけ、付け替えるのはもったいないかも。


 そうなると、ミーシアかトーウ、いや防御補正って事を考えれば前衛で紙装甲なアラでも……


 いやいや、うちのアラにこんな大人向けっぽい形状のパンツ早すぎる。でもミーシアだと元々が硬いし、攻撃力も有るからこれを渡してもあんまり効果が見込めないような、かと言ってトーウに俺がこんな下着なんかを渡したら……


「最近サミューの影響を受けてか、変な方向で積極的だったりするしな、いや考えてみれば、元々……」


 なんか、不味い事になりそうな予感もするな。


「まあいい、とりあえず回収して置いて、誰に渡すかは後で考えればいいか。ん、なんだこれ、うわ」


 箱の中にばっかり気を取られてたけど、顔を起こしたら、蓋の裏に鏃をこっちに向けて弓矢が仕掛けられてたよ、あぶねえ、たまたま不発だっただけだったのか。


 この罠が作動してたらのど元に矢を食らってるところだったな。


「まあ、食らっても仕方ないつもりではいたが、やはりこうして実際に目にすると、肝が冷えるものだな」


レビューを頂きました、本当にありがとうございます。


おそらく春にかけてストーリが進む予定ですが、それに関係して一部のキャラが謎の行動を行いますが、一応ストーリー上の必要性のためで、おそらくは5月ごろぐらいには行動の理由が解る話を出せると思います。

それまではネタバレになる可能性が大ですので、それらの行動についての感想を頂いた場合、すぐに御答えが出来なくなる場合がありますので、ご了承ください。


次の投稿は2月27日ごろを予定しております

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